トリップ☆ポケットモンスターBW2!   作:全テヲ識ル帝ノ龍

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閲覧数が2000越えてたり評価してもらったりと色々ありがとうございます。お気に入り登録もじわじわ増えていっててうひょおってなってます。

レシラム、自分も好きですよ。もふってみてぇ。


触れればわかる、その世界
2-1:引き摺られてサンギ、誓いの林へ


 ズルズルとメイに引き摺られたまま19番道路を越えるとは思わなかった。おかげでスゴく尻が痛い。

 摩擦で破けてるんじゃないかと思ったけどやはり冒険の適している服なのか全く無傷だった。

 それよりもメイの筋力の方が驚きだが。涼しい顔で俺を引き摺る姿はまさに怪力のそれ。何がすごいかって引き摺ったまま野生のポケモン相手にツタージャへ交戦指示を出していたということ。変なところで器用な一面を見せられた。

 

「…」

「お兄ちゃん?」

「……メイ、鍛えてたのか?」

「え?鍛えてないよ?」

「…そうか」

「そんな事よりも、ここがサンギタウン?」

 

 期待に満ちた目で聞いてくるメイ。

 入ってすぐに見える大きな時計台とその奥には前チャンピオンのアデク宅らしき一軒家が。やはりゲームとは違って宿など知らない施設や家が多いが、この二つだけでここがサンギタウンだということは理解できた。

 

「ああ。ここがサンギタウンだ。大きな時計台がシンボルマークで…前チャンピオンのアデクさんの家もサンギタウンにある」

「そうなんだ…」

(…そろそろ来るか?)

「よーお!新米トレーナー!」

(来た来た…って、アイツは……!)

「えっ?ええっ!?」

 

 人が飛び降りたらまず死ぬであろう崖を軽く飛び降りて着地して此方にやって来たのはアデク…ではなく、アデクの孫であるバンジロウ。

 

「ほー…お前、ツタージャを選んだのか!」

「う、うん…えっと、貴方は……」

「おいらはバンジロウ!じいちゃん…アデクの孫だ!」

(まさかアデクとバンジロウが変わってるとは…いや、アデクがジムリーダーになったから流れでいけばそうなるよな)

「ふーん…お前はともかく、そっちのにーちゃんのポケモン…かなり長い付き合いだろ?」

「…分かるのか?」

「おう!多分相当お前と戦ってきたんだろうな。お前のこと、信頼してるヤツばっかだ。ミジュマルはまだ苦労がたりねぇみたいだけど」

「会ったばかりだからな」

「なるほどな!納得できたぜ!」

 

 流石はアデクの孫、俺の厳選ポケモンを一目で見抜いた上になつき度MAXであることも教えてくれた。

 確かにBW2には最新作のUSUM系列やその前作であるORASと違って努力値を簡単に割り振れる施設がなかった。なので栄養ドリンクやパワー○○といった努力値加算アイテムを持たせて対応した努力値を持つ野生のポケモンを倒しまくることで初めて完成するのが極振り個体というもの。グレイシアの特攻を極振りにするために何度ヒトモシを狩ったことか…今となっては懐かしい。

 そんな苦行とも呼べる作業を続けてきた俺とポケモンの間に絆が出来ているのは嬉しいことだ。

 

「今すぐにでもバトルしてぇけど…じいちゃんとの約束があるからな。まずはそっちからだ」

「アデクさんとの約束…?」

「おう、お前らを誓いの林に連れてけって」

「誓いの林……?」

「ま、行ってみりゃわかる。案内してやるよ!」

「ああ。ありがとう」

 

 気にすんな!と元気に返してくるバンジロウ。いずれバンジロウもアデクのようになるのかと思うと…容易に想像できた。うん。アデクの特徴をしっかりとらえた初老になりそうだ。ここまでくるとバンジロウの親が気になるが…多分会うことはないだろう。

 

「誓いの林かぁ…誓いって呼ばれてるくらいだから昔に結婚式とかで使われてたのかな?」

「かもしれないな」

 

 ゲームだと配信限定ポケモンの「ケルディオ」に固有技「神秘の剣」を覚えさせるためのキーイベントとして描かれている。なのでケルディオを所持していないユーザーには縁の無い場所だが…もうゲームの知識を信じる訳にはいかない。

 きっと誓いの林にも何かカギがあるに違いない。

 

「おーい、どうしたんだー?」

「ああ…って速いな」

「おまえらが遅いんだよー!」

「バンジロウくんとは鍛え方が違うのー!!」

「…合ってるようで合ってない気がする」

「え?そうかな…?」

「はやくこねーとおいてくぞー!」

「仕方ない、少しペースを上げようメイ」

「うん!」

 

 

 ………………

 

 

 バンジロウについていくこと数十分…道なき道を行くバンジロウに俺とメイは既に疲弊していた。何で路地裏とか屋根の上とかを通るのだろうか。忍者や怪盗じゃあるまいし…と内心で愚痴りながらも必死についていった辺り自分達も大概だと思われそうだが。寧ろ自分がついていけた事に驚きだ。兄の運動神経様々といった所か。

 

「よーし、ついたぞ!…どうした?」

「いや、どうしたもこうしたも…大丈夫か、メイ」

「な、何とか大丈夫だよ…お兄ちゃん」

「なんだ、まさかバテたのか?」

「「いや、あのルートはバテる(だろ/よ)…」」

 

 息を整えながらバンジロウの異常性を指摘する俺とメイ。当の本人は何を言ってるのか分かりませんという顔をしたあとに「都会育ちって大変だな」と同情してきた。本当にバンジロウの親が見てみたい。いったいどういう教育したらこんなパワフルになるのだろうか。

 

「まぁいいや、ここが誓いの林で…あそこにある岩壁に亀裂が入ってるのが見えるか?」

「…ああ、あれか?」

「すごい大きな亀裂だね…ポケモンの技でできたの?」

「おう。伝説のポケモンの技でできた爪痕らしいぞ」

(コバルオン、テラキオン、ビリジオンの3体だな)

「で、この亀裂のおかげでこの岩壁にはその伝説のポケモンの力が宿っているみたいでご利益として触れに来る人もいるんだと」

「パワースポット、ってやつだな」

「そうなんだ…ねぇ、触れてみてもいいかな?」

「いいぞ。ってかその為に案内したからな」

「それじゃ遠慮なく…」

 

 岩壁に近付いてそっと亀裂に触れるメイ。一分ほど触れた後にあまり実感が沸かなかったのか疑問の表情で此方に戻ってきた。

 

「…これでよかったのかな?」

「まぁご利益みたいなもんだからな」

「何か釈然としないなぁ」

「まーそういうなって。んじゃ次、お前な」

「俺もか?」

「いかねーの?」

「いや行くが」

 

 そういって今度は俺が岩壁に向かい、亀裂に触れる。

 

(……まぁ、だよな)

 

 ヒオウギでの一件で変に身構えてしまったがやはりここは特にこの世界とは関係ない事だと思い手を離そうとした瞬間…突然"ソレ"は起きた。

 強烈な目眩と頭痛が俺を襲い、その痛みに耐えきれず膝をついてしまう。

 

「お兄ちゃん!?」

「おい、大丈夫か!?」

「っぐ…ぅ!」

 

 突然起きた体調不良に慌てて駆け寄ってきたメイとバンジロウが心配の声を投げ掛けるもそれに答える余裕もなく、ただ痛みに抗うように唸るしかできない。

 目眩に意識を持っていかれそうになった瞬間…一筋の線が視界を過ったと思った途端に"今見ている視界とは別の映像"が俺の視界に映し出された。

 

 

………………

 

 

「じゃあ、メイは…!」

「ああ。このままだと………に……かな」

「…どうにか、どうにか方法はないのか!?」

「あるにはある。でもそれは………」

 

 第三者視点で映し出された光景にいたのは誓いの林で張り詰めた空気を出す俺と…何か。

 俺が見上げながら話しているということは少なくとも身長は俺を悠々と越えているみたいだ。

 視界が悪いのか、辺りは靄がかかっているように真っ白で見渡すことはできない。

 その上、会話の所々でノイズがかかっているみたいに聞き取りづらい箇所が多く、肝心の情報が歯抜けの状態でもどかしく感じてしまう。

 何かによって告げられた"方法"に膝から崩れ落ちる俺。余程残酷な方法だったのだろうか、表情が絶望に満ちていた。

 

「そん、な…」

「これが現状で…とキミで行える最善の方法だよ……でないと、イッシュは文字通りの死地となる。他ならぬ………によってね」

「じゃあその前にメイを…!!」

「…そうしてほしいけど、そうもいかないみたいだ………が此方に気づいた」

「くそっ…!是が非でも近付けないつもりか…!!」

「みたいだ。一旦退こう」

「っ…絶対に、助けるからな……!!」

 

 何かに追われている、と言うところで映像を強制的に打ち切るようにまた線が視界を過った。

 

 

………………

 

 

「っはあっ!はぁっ……!!」

「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!!」

「おい、しっかりしろ!!」

「……っ、は…メイ、バンジロウ…?」

「っ、お兄ちゃん!!」

「うぉっ!?」

 

 メイが抱きついてくる。人目を気にしろと言いたいが涙目になっていたのを見てしまったので言うに言えない。

 

「良かった…良かった……っ!」

「…どうなったんだ?」

「えっとだな…簡潔にいうと、あの亀裂に触れたお前が急にうめきだして倒れた…大丈夫か?」

「……ああ、今はもうなんとも。多分亀裂にふれても「だめっ!!」…だそうだから触れないでおく」

「だな。さすがのおいらも止める…その、すまん!」

「気にするな。誰も予想できなかった事だ」

 

 流石に激痛イベントを用意されていたとは思わなかったが、それに見合う重要そうな情報を得ることもできたからどちらかといえばプラスのイベントだった。

 メイを撫でながら気にしてないと再度伝えると、バンジロウが何か決めたようでよし!と声を張った。

 

「お前ら今日はおいらん家泊まっていけ!」

「え…いいのか?」

「詫びってヤツだから気にすんな!じいちゃんにはおいらから言っておくから大丈夫だ!」

「そうか。ならお言葉に甘えさせてもらうよ…メイもそれでいいか?」

「…」

 

 こくん、と頷くもやはり俺を離そうとしない。悪い気分ではないのだけどもバンジロウの視線が気になる。

 

「……お前らもしかして付き合ってんのか?」

「いや兄妹だからな?」

「えっ、そうなのか…あんまり似てないな」

「…お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」

「あー…ブラコン、ってやつだな!」

「ち、違うもんっ!ちょっと皆よりお兄ちゃんが大事ってだけだもん……」

(それがブラコンって言うんだぞ…)

「まぁいいや…立てるか?」

「ああ…メイ、立つから退いてくれ」

「大丈夫?立てる?手伝おうか?」

「…そんなに重症でもないだろうに」

 

 メイの過保護っぷりに苦笑を溢しながらもその日はバンジロウの計らいによりアデクの家で一泊過ごすことに。誓いの林からでた頃には既に日暮れで星が輝き出していた時間だった。

 

 

 


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