狩人と、ゼロの主従   作:蜜柑ブタ

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グラビモスにリベンジじゃなく、老山龍・ラオシャンロンの緊急クエスト(ソロ)という展開にしました。

結構無理がある展開にしました。


第二十三話  老山龍(見学編)

 二時間後、火傷が治ってきて意識を取り戻したサイトは、ルイズを目にして驚いた。

「ルイズ! どうしたんだよ!?」

「サイト、もうだいじょうぶなの?」

「俺より…おま…髪が!」

「ああ…、焼けちゃったからちょっと切ったのよ。」

 そう、グラビモスの熱線で少し焼かれてしまい長く美しかったピンクの髪を半分切ったのだ。

 サイトは、ルイズの美しかった髪が酷いことになってしまったことを知りショックを受けた。

「髪なんてまた伸ばせばいいわ。」

「けど、おまえ…。」

「今は美容のことなんて気にしてる場合じゃないわ。」

「……そ、そうだな。」

「私の髪…、好きだった?」

「…ああ。」

「…ありがと。」

 二人の雰囲気が、良い感じに…。

 

「あ、起きたか。サイト。」

 

 なったところで、セエが帰ってきた。

「あ、えっと…セエさん、お帰り。」

「火傷は? …あと少しっぽいね。」

「……。」

「どうしたんだ?」

「……なんか自信が無くなって…。」

「急にどうした?」

「アイツが吐いた炎…、あんなの見たら…。」

「俺も最初はそうだった。」

 自信を失っているサイトに、セエが言った。

「あんまりにもクエストをクリアできなくて、グラビモスだけじゃなく、他の竜とも戦うのが怖くてたまらなかった頃があったよ。」

「セエさんは、一人でずっと戦ってましたもんね。」

「…けど、なんとかなるものさ。」

「なんとかなる…。」

 サイトは、それを聞いて俯いた。

 その時だった。

 

「セエ! いるか!?」

 

 村人がセエの家に転がり込むように入ってきた。

「どうたんだ?」

「ラオシャンロンがまたこの村に接近してるって知らせが!」

「!? いつ頃だ!?」

「あと三日ほどで砦まで来るらしい!」

「三日か…。」

「らおしゃんろん…。」

「山のように大きな竜のことよね?」

 ただ事じゃない様子にサイトとルイズは、顔を見合わせた。

 セエは、立ち上がり、アイテムボックスの中を確認した。

「十分だな…。」

「や、やってくれるか?」

「ああ…。」

「ありがとう! 村長に伝えてくる!」

 村人はホッとした様子で、セエの家から出て行った。

 セエは、閉めたアイテムボックスに手を置いたまま、フーッと息を吐いた。

「セエさん…。」

「だいじょうぶ…。」

 セエは、無理矢理に笑ってそう言った。

「お、俺たちにも手伝いさせてください!」

「いや…それは…。」

「セエさん一人が背負い込む必要なんてないわ! 私達だって戦える!」

「サイト…、ルイズ…。ありがとう。」

 セエは、そう言って俯いた。

「じゃあ、準備を整えよう。あと、三日しかない。」

「はい!」

 

 まず大タル爆弾Gを用意し、さらに小タル爆弾を用意する。

「爆弾を使うんですね?」

「ラオシャンロンの進行するところに設置するんだ。それで顔の下に来たところを小タル爆弾で爆破させる。……まあ、小石なり、蹴るなりして爆破させてもいいんだけどね。」

「どうして?」

「爆弾二個の方が威力ありそうじゃん。」

「あ、なるほど。」

 こうして、対ラオシャンロンの準備が整った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 しかし、問題が発生した。

「ダメじゃ。」

「どうして!?」

「なぜです、村長?」

 サイトとルイズが、ラオシャンロンの緊急クエストに挑むことを、村長は良しとしなかった。

「正式にハンターになったばかりの未熟な者にやらせるには、あまりに困難じゃ。踏み潰されてお終いじゃろう。」

「俺が…サポートしますから!」

「それでは、ラオシャンロンの侵攻を止めるうえで邪魔になる。ずっと一人でやってきたお主がこの事態に急に複数で挑んで勝てる見込みがあるか? おそらくいつも通りの方が事を容易く進められるじゃろう。」

「っ!」

「で、でも俺達は!」

「お主はまだよい。問題は、そちらのピンクの髪の娘の方じゃ。」

「わ、私!?」

「聞くところによると、良いところの家の生まれらしいが、お主が山のように巨大な竜を前にして、足をすくまさず戦える自信はあるか?」

「それは…。や、やってみないと!」

「ソレではダメなんじゃ!」

「ひぅ…。」

「わしは、村長として、確実な方を選ぶ。」

「……分かりました。」

「セエさん!」

「ですが、二人に見てもらうのはダメでしょうか?」

「えっ!?」

「……邪魔をせんという制約を守れるならよい。絶対に手を出してはならん。守れないなら、ハンターとしての資格を剥奪する。」

「そ、そんな!」

「…分かってます。俺一人で勝ちます。」

「うむ…。では、行って参れ。」

「…行ってきます。二人とも、行こうか。」

「セエさん…。」

 二人は信じられないものを見る目で、セエを見た。

「…邪魔は絶対にしないって約束してくれ。」

「………はい。」

 二人は渋ったが、仕方なく返事をした。

 

 三人は、村を出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 砦に着いた瞬間、小刻みに地震が来ていた。

「地震!?」

「いや、ラオシャンロンの足音だ。」

「地震を起こすほどって、どれだけ大きいのよ!?」

 砦を登り、岩の壁が両側を隔てている大きな道が見下ろせる場所に来た。

 地震は、どんどん激しくなる。

 そして……。

 

 ヌウッと曲がり角の道の向こうから、信じられないほど巨大な生物が顔を出した。

 道の反対側にある道を一望できる砦の下を、悠々とその竜はゆっくりと通過していく。

 しかし、突如足を止め、周りを見回すように首を振った老山龍・ラオシャンロンは、前足をあげ、急に二本足で立ち上がる。

 そして、低くとてつもない大きな咆吼をあげた。

 

「ーーー!!」

 その巨大さに、サイトとルイズは、声にならない声を出していた。

 ゆっくりと前足とあげていた上体を降ろしたラオシャンロンは、ゆっくりと、侵攻を始めた。

「行こう。」

「……。」

「二人とも。急がないとココット村が潰される。」

「は、はい!」

 ハッとした二人は、慌ててセエの後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 道に降りたセエは、爆弾を取り出し、道の途中にある土嚢と岩の前に設置した。

 霞んだ道の先から、ゆっくりとやってくるラオシャロンの顔が見えてきた。

 大タル爆弾Gの下に、ラオシャンロンの顎の下が来たとき、セエは、素早く小タル爆弾を置いて離れた。

 点火している小タル爆弾が爆発し、引火した大タル爆弾Gが爆発した。

 爆発によるダメージによるものか、ラオシャンロンが煩わしそうに首を振った。

「よし!」

「えっ、なんで?」

「うぉおおおおおおお!」

 セエは、答えず、大剣リオレウスを抜くと、ラオシャンの頭を下から切りまくった。

 しかしラオシャンロンは、切られても怯むどころか、まるで気にせず、歩み続ける。

 まったく、こちらを認識してすらいないのだ。いや、認識する価値すらないのだろう。

「なんて奴だ!」

「まったくね!」

 踏み潰されないよう岩壁側に避難しながらセエを追いかけて移動しているサイトとルイズが叫んだ。

 ラオシャンロンの頭ばかりを狙って切りまくっていると、ラオシャンロンが時々煩わしそうに首を振って立ち止まる。しかしすぐに歩み出す。その繰り返しをして、やがて土嚢と岩が見えてきて、ラオシャンロンがそこを越えていくまでに胸や腹を攻撃し、それからセエは、砦を登ってエリアを移動した。サイトとルイズも追いかけ、次のラオシャンロンの通過地点を目指した。

 次の地点も、さっきの場所と同じように土嚢と岩の前に、大タル爆弾Gを用意し、ラオシャンロンの到着を待ち、顎の下で小タル爆弾を設置して爆破。それから大剣で攻撃する。

 ココット村の命運がかかっているだけに、セエの顔は鬼気迫るものがあり(もともと余裕がないが)、元々激しい大剣による攻撃がさらに激しさを増しているように見えた。

 しかし、それでもラオシャンロンは、止まらない。やがてこのエリアを越えていった。

 そしてまた砦を登り、別のエリアへ移動。そして、爆弾、攻撃。

 そして、土嚢と岩をラオシャンロンが越えたら次のエリアへ。

「次で…、最後だ。」

「えっ?」

「行こう。」

 爆弾を調合し、斬れ味が落ちた大剣を研ぎながらセエは、そう言い、それが終わると急いで砦を登っていった。サイトとルイズは、顔を見合わせ、それからセエを追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 最後のエリアは、ココット村を守る砦の扉だった。

 セエは、土嚢と岩の前に爆弾を置き、ラオシャンロンの顎の下で爆破させ、それから、攻撃を続けた。

 それでも止まらないラオシャンロンがやがて、広い砦前のエリアの中央で少し立ち止まった。そして唸る。

 そして、後ずさったかと思ったら、首を曲げて、砦の巨大な扉に体当たりをした。

 セエは、すぐに砦の扉の上に登ると、ラオシャンロンが立ち上がり、砦の扉に迫るまで待ち、最終兵器、撃龍槍を起動させた。

 ゴリゴリと、砦の扉の周りから巨大な棘が伸び、ラオシャンロンは、刺されてよろめいた。

 急いで飛び降りたセエは、砦の扉に体当たりを繰り返すラオシャンロンの足や腹を切りつけ続けた。

 時々、巨大なラオシャンロンの足に蹴られるが構わず攻撃する。

「倒れろ、倒れろ!」

 ラオシャンロンを切りながらセエは、叫ぶ。

 やがて時間が迫ってきた。ラオシャンロンのクエストの失敗は、ソレすなわち砦を破壊されてその先にある集落を破壊されることだ。

「うおおおおおおおおおおおお!」

 焦りによって叫んだセエが、渾身の斬撃を繰り出したとき、ラオシャロンが断末魔の声をあげて、横に倒れた。

「や、やった!」

「セエさん!」

 死んだラオシャンロンの剥ぎ取りをしているセエに二人が駆け寄った。

 セエは、二人に目もくれず、黙ったままラオシャンロンをナイフで切り裂いていた。

 やがて甲殻と爪が取れた。

 セエは、それを両手で見つめていたが、やがて地面にへたり込んだ。

「セエさん!」

「……勝った…。」

 セエは泣いていた。

 ラオシャンロンにトラウマがあるセエにとって、故郷であるココット村を守り切れて緊張の糸が切れたのだ。

「…お疲れ様です。」

 サイトとルイズは、顔を見合わせて、それからセエを見て微笑んだ。

 

 

 老山龍・ラオシャンロン、緊急討伐クエストは、こうして終わったのだった。




村長が許可してくれなかったというのは、無理があったかな…。
ですけど、一人に慣れすぎているセエが急に複数クエストができるかって言ったら出来そうにないと思ったし、ラオシャンロンの討伐クエストは、特殊だからサイトとルイズに気を遣っている場合じゃないというのもあるのでそういう展開にしました。


グラビモスへのリベンジは次回かな。

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