Fate Kaleid Divider   作:オスミルク

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江野 友人 の休日

5月も終盤の第四日曜日

 

俺の名前は江野 友人 漢字だけで読むとユウジンとなるが実際はユウトだ。

親は何を思ってこの名前にしたのかは、名付けた本人はもう居ないので不明だ。

 

「シーキー君遊びましょ!!」

 

ピンポンを鳴らし名前に反して俺の数少ない友達の名前を呼び出て来るのを待っていたが出てきたのは俺の予想に反した人物だった。

身長は165~6㎝と年齢からしてみれば少し低い方だが鍛えているおかげだろう、平均的に見れば体格自体は良い方だ。

そして髪は少しだけ特徴的で一見すると不良少年に見えそうなとても明るい色でオレンジ色と赤色の間で位の色だが、顔立や目つきはとても真面目そうでとても落ち着いた印象を受ける、そんな青年だった。

 

とまぁ、無駄に長々と説明したがこの青年の素性を簡単に言う事が出来る。

凄いね!!

 

「あれ?士貴の兄ちゃん? 」

 

「ああ、悪いな友人 士貴ならさっき出掛けた所なんだ」

 

 

なんてこった今日の予定が全て狂ってしまった!!

士貴は引きこもり属性だから外にはそう簡単には行かないと思っていたのに!!

ってあれ?

 

「女性のお客さん……」

 

玄関の靴を見て思わず呟く、士貴の家にはいつも来ていたので分かる。

今まで見た事の無い女性物の革靴のローファー、そこから導き出される答えは…。

 

またやったのかこの人…ッ!!!

幾つもの女性を無意識で口説きかけたり口説いたりして初等部にまでその噂が轟いていたりしなかったりで、ついたあだ名が穂村原のブラウニー…。

あれ?なんか違う?

中等部の桜さんとか森山の姉さんとか噂だけならいくらでも聞くそれにとなり町の副生徒会長さんと仲睦まじく歩いてたとかの噂も聞いたことがある。

あの女たらしめと妬みの声も聞く…。

 

「おい…友人 なんか不穏な事を言おうとしてないか…?」

 

俺が声を出すより先に士貴の兄ちゃんは恐ろしい形相で睨んで来た。

どうやら士貴の兄ちゃんは俺の心が読めるらしい。

 

「むぅ、士貴がいないなら仕方ないや、士貴の兄ちゃんの邪魔しちゃ悪いし…」

 

「なあ、さっきの士貴もそうなんだが、なんでお前ら俺の事そう言う奴みたいにしようとするんだ…?」

 

 

「じゃっ 士貴の兄ちゃん 俺は別のとこに遊びに行くよ」

 

「聞けよ!!!」

 

怒る士貴の兄ちゃんをスルーして家を去る。

さて、どこへ行こう。

と、あてもなく町をブラブラする、お金もないので買い物も出来ない…。

 

そう一人で考えていると不意に声をかけられた。

 

「おい !そこのオマエ!

ココら辺で この人を見なかったか!!」

 

そう言って俺の返答を聞く前に目の前へ見せて来たのはこの町の地方誌で日付は去年のヤツだった。

 

剣道 中等部全日本 三年連続優勝

聖 ジョージ女学園中等部 竜崎 アルトリア

 

写真と共にでかでかと掲載された紙面。

えっと、この人を探して居るのかな?

しかし、もちろんそんな人は知らないので 知らないと返答する。

 

「チッ なんかオマエなら知ってそうな気がしたんだがな…」

 

と何だかよく分からない事を言う。

ふと、彼女の顔を改めて見てみると、

掲載されている少女の顔と瓜二つだった。

 

だが、しかし 彼女の身に付けている体操着はとなり町の中学生の制服を巻き付けていた。

もし、写真の人と同じ人なら年齢が合わない写真の人は今は高校一年生の筈だ。

それに新聞の彼女の雰囲気は物静かさで清楚そうな女性だが、目の前の彼女は 猛々しく気性が荒そうで今にも殴れそうな恐ろしい雰囲気がある。

とてもじゃないが同一人物だとは思えない。

 

「えっと、もう行って良い?、ですか? 」

 

「ア?何か用事でもあんのか?」

 

「いえ、別にないですけど…、えっと…手伝えとかですか?」

 

「イヤ?別にようが有るなら引き留めて 悪かったなって」

 

雰囲気に対してそんなに悪い人じゃないかもしれない…

とりあえずもう行って良いようなのでその場を後にする。

普通なら手伝ってあげようかと思うが不良っぽくて怖いので仕方がない。

でも、うん、見つけたらまた今度教えてあげよう。

 

 

 

気がつくと商店街エリアまで来ていた。

お金が無い俺には無縁の場所だが新作のオモチャは見ているだけで幸せになれるので問題ない。

むしろ買った方が邪道な気さえする

 

そんな事を思いながらオモチャ屋まで向かっていると。

 

━━━━「━━━そう、じゃあやっぱり見つからなかったのね…」━━

━━━━「はい、残念な事に数日待ってみましたが…」━━━━

 

と聞き覚えのある声がカフェテリアのオープンテラスから聞こえてきた。

 

 

「あれ? イリヤの母さんだ 珍しい…」

 

「え? えーと イリヤの友達かしら?」

 

「あ、ああ いや 俺は士貴の友達の友人です よろしくお願いします 前に授業参観で見たので…」

 

「まぁ!そうなの!? 士貴にも友達が出来たのね! 」

 

良かったー と嬉しそうにするイリヤのお母さん。

普通に酷い事を言うが士貴は去年の夏休み明けまでまともに学校に来ていなかったのでそう思われてもその通りだった。

 

「…そう言えば、その人何かあったんですか?励ましてたけど」

 

「この人はわたしの友達の舞弥さん 切嗣…士貴のお父さんの元仕事仲間なの」

 

「いえ、マダッ…」

 

ジロリ

と厳しい目で睨むイリヤのお母さん。

マダ 何とかの呼び方が嫌なのだろう。

 

「いえ、アイリ 私を友と呼んで下さるのは嬉しいのですが…」

 

友達とは違がくないだろうか…。

舞弥は声にこそ出さなかったが、初対面の自分でも気付ける感情がそこにはあった。

 

「いいえ 違ってなんか無いわ、こうやって一緒にケーキを食べてお話してるんですもの十分お友達よ それに舞弥さん いえ、舞弥がこんなにケーキ好きだなんて驚きだわ ケーキ好きなのね」

 

そう、他人の俺でも照れくさくなる事を当然の事のように語るイリヤのお母さんに舞弥は照れる様子ないが、一つため息をして口を開く。

 

「…貴女がそこまで言うのであれば友と言うことにしましょうアイリ、

しかし こんなに と言うのは心外です、まだ七皿程度しか食べてはおりません折角のバイキングなのですからアイリももっと取ってきたらどうですか?

現状でオススメは抹茶黒ゴマロールケーキです」

 

そう無表情で言う彼女は少し満足気であった。

 

…ケーキガチ勢かな?

 

と、少し時間が進み。

折角だからとイリヤのお母さんにバイキングに連れ込まれ一緒にケーキを食べさせてもらっていた。

そんな中イリヤのお母さんが何かを思い出した声を上げた。

 

「ああ そうだ! 舞弥 ユウト君にも聞いてみましょうもしかしたら何か知ってるかもしれないわ!!」

 

「そうですね、情報は多いに越した事はないです 、この写真の青年に心当たりはありませんか?」

 

と舞弥が茶封筒から写真を取り出す。

写って居たのは黒い癖っけの髪に光が無い黒い目に年齢は十代中盤から後半程度の少年と特に特徴の無い人だった。強いて特徴を言えば、目の前の舞弥さんの面影が確かに感じられる位だろうか?

 

「多分シグマって名乗っていると思うのだけど心当たりない?」

 

「うーん、無いな~ 町ですれ違ったかもだけど何か違う気もするし…」

 

折角ケーキをご馳走になっているのだし力になりたいのは山々だけど分からないのは仕方ない。

今日は全く人を探している人に良く出会う、そう言うのは士貴に言って欲しい。

あいつなら顔写真があれば簡単にその人に会いに行けるのに。

まぁ、イリヤのお母さんは士貴のお母さんでもある訳だしそんな事知ってるだろうし言っても仕方ないよな…。

うん、言うのはいいや!

 

とそんな会話がありながらも、更に時間は進みイリヤのお母さんたちと別れる。

 

さてと、どこかに行こうと思っていたけれどすっかり忘れてしまった自分に気がついた。

ケーキが旨かったのが悪い。

 

「まぁ、いいや 士貴の秘密基地にでも行こうと…」

全て罪をケーキに擦り付けて次の予定を立てる、最初からそうすれば良かったと思うがケーキが食べられたので結果オーライだ。

 

 

 

 


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