FGO×ダンまちのクロスオーバー短編集   作:何でもない

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ようやく完結が目の前に見えてきた13話です。
情けないことにスランプに陥ってしまい、投稿が遅くなりました。


ご感想ありがとうございます。頂いたものは全てコメントさせていただいております。このような遅筆でつまらない本作ですが、これからもよろしくお願い申し上げます。


自分の決意を背負って生きるのは間違っているだろうか

 《side:ベル》

 僕は今、オラリオを囲む城廓の上にいる。時々見張りの人が巡回しに来る以外に人が訪れることがないこの場所を僕はよく鍛練場所にしていた。本当ならダンジョンに行ければいいんだけど、今でも規制が続いているし、勝手に行ってはヘスティア様やエイナさんや皆に迷惑をかけるかもしれないからやらないことにしている。

 こうやって鍛練をしていると地上へ戻ってきたあの時のことを今でも思い出す。アリアドネの糸を頼りに、襲い掛かってくるモンスターを不死殺しの鎌(ハルペー)で撃退してダンジョンをかけ上がった。そして彼女の"島"の境目の階段(後で聞いた話だけど29階と30階を結ぶ階段らしい)でフィンさんたちと再会できた。やっぱりゴルゴーンは彼らを殺すつもりはなかったようだ。

 そのあとは皆さんに付き従って無事にダンジョンを脱出した。地上へ帰ってきた僕を待っていたのはいろんな人の目線だった。そして目の前にヘスティア様がいた。

 

 

 

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 「ヘスティア……様………」

 

 僕は言葉が出なかった。英雄を志してこの街に来たのはいいものの、僕を拾い上げてくれる神様はどこにもいなかった。そんな途方に暮れるなかで僕を救ってくださったのはヘスティア様だった。

 ヘスティア様は本当に僕のことを本当に大切にしてくれた。あの悪夢の世界でも忘れることはなかった。

 

 「ヘ、ヘスティア様……僕は………」

 

 一緒にいられた期間は僅かだった。間違いなく、僕がダンジョンで生き延びてきた期間の方が長いだろう。でも、時間の長さに意味なんかなかった。寧ろ、時の移ろいが思いを強くしていったと断言できる。そのヘスティア様が目の前にいる。幻でもなく夢でもなく、確かに居た。

 ──言葉がまとまらない。もう一回巡り会うためにあの"島"を生きてきたというのに。伝えようとしたいことはたくさん有るのに。

 

 「ベ……ベル君……う、ううう………!!」

 「ヘ……ヘスティア様?」

 

 ヘスティア様の見開いた目から涙が溢れてくる。そして、

 

 「ベル君……!! 君は大馬鹿者だ! 勝手にダンジョンの深くまで一人で行っちゃって、僕に心配かけて、それで……それで……!! ………っひぐ、うわあぁぁぁぁん!!」

 

 ヘスティア様は僕に飛び付き泣き出した。人目を憚らず、押さえ込んでいたものを全て吐き出すように泣きじゃくった。僕はこのとき改めて確信した。ヘスティア様は僕のことを信じて待ってくれていたのだと。僕が【ヘスティア・ファミリア】の眷族(家族)として戻ってくることを待ってくれていたのだと。

 そんな神様の姿を見ているとあれこれ考えてこんがらがっていたものがほどけていくようだった。僕は自然に神様を抱き締めていた。

 

 「……はい、ベル・クラネル、ただいま戻りました……! 一人にさせてしまって申し訳ございませんでした……!」

 

 僕は生きてヘスティア様に帰ってきたことを報告する。いつの間にか僕の目からも涙がこぼれていた。

 

 

 

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 「……ってもう帰らないと!」

 

 思いの外、物思いに耽っていたようでまだ暗いはずだったのに気がついたら太陽が昇っていた。早く帰らないと皆に心配されちゃうから急がないと!

 僕は城壁から勢いよく飛び降りて、皆が待つ本拠地(ホーム)へと駆け出した。

 

 

 

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《side:yourself》

 

 【恐ろしき者(ゴルゴーン)の再誕】と呼ばれる未曾有の災害から早9ヵ月が経とうとしていた。一時期は暗黒期に迫る程の治安の悪化が叫ばれていたオラリオもファミリアの有志連合による摘発と冒険者同士の同盟システムの確立によって、平穏を取り戻しつつあった。

 ただし、それは現状に適応したというだけであって、嘗ての平和を取り戻したわけではなかった。ゴルゴーンによるダンジョンの侵食は留まることを知らず、いずれは地上にまで到達するのではないかとの不安は市民を中心に燻っていた。

 さて、迷宮都市オラリオはバベルを中心に8方向に伸びるメインストリートを境に区画が分けられているのだが、その北西と西のメインストリートに挟まれた区画には忘れ去られたように教会が建てられていた。

 神々が下界に降りてきてからというもの、こういった信仰の場は廃れていった。当然だ。信仰するべき神々が自分達の目の前にいるのだ。こんな場所で態々祈りを捧げる必要はない。

 しかし、この教会はそのような朽ちた様子はなかった。寧ろ屋根も壁もまるで最近修復されたように綺麗だった。また、内部も床は綺麗に張られていて、様相もまた様変わりしていた。例を挙げるなら礼拝堂は幾つかの仕切りが置かれ部屋分けされていた。

 そして、厨房のようになっている一室に一柱の神が居た。女神ヘスティア──【ヘスティア・ファミリア】の主神である。彼女は甲斐甲斐しく料理を作っていた。その容姿から(豊かな双丘を除く)から子供扱いされがちなヘスティアであるが、彼女は自身の名の由来である竈の神だけではなく家庭生活の守護神としての権能も有る。家事等はこれでもお手のものだ。

 

 「さて、そろそろ皆来る頃かな?」

 

 彼女は作った料理を皿に盛りつけ、テーブルに並べていると本拠地(ホーム)の玄関の扉が開く音が彼女の耳にも届いた。ヘスティアは作業を中断して帰ってきた()()を出迎えに行く。

 「ヘスティア様、ただいま帰りました。」

 「ただいま戻りました。申し訳ございません、ヘスティア様。朝餉の用意を押しつける形になってしまいまして。」

 「リリルカ君にサンジョウノ君もお帰り。【タケミカヅチ・ファミリア】との合同練習お疲れ様。まあ、こんなところで立ち話することもないだろうし、ともかく上がったらどうだい。」

 

 「おはようございます、ヘスティア様! ……ってリリ助か。ベルはまだ帰ってきてないのか?」

 「ベル様でしたら朝の鍛練からそろそろ帰ってくる頃合いです。それと私はリリ助じゃなくてリリルカです。せめてリリと呼んでください。」

 「おっ、ヴェルフ君も朝からお疲れさま。」

 

 彼女が玄関に出てきたとき、そこには二人の少女が居た。一人はリリルカと呼ばれた栗毛の癖毛の小人(パルゥム)、もう一人サンジョウノと呼ばれた翡翠の目をした狐人(ルナール)だった。そして、もう一人、玄関の横の扉絵からヴェルフと呼ばれた着流しを纏った赤髪の青年が姿を現した。

 ヘスティアは三人を家に上げ、自身もまた朝食の準備に戻る。部屋に上がった三人も席につき、あれこれと話を行っている。

 

 「そういえばサンジョウノ、薙刀の調子はどうだったか?こう、振りづらいとか構えていて疲れるとか無いか?」

 「いいえ、そんなことはございませんでした。寧ろ体の一部に馴染む程でした。あっ、タケミカヅチ様も『是非とも俺のファミリアにも欲しい逸品だ!』とお言葉を賜りました。」

 「おお、武神に太鼓判を押してもらえるとは箔が着くってもんだ!」

 「ところでヴェルフ様、リリの改良型鎖帷子の進捗はどうですか?」

 「8割方、ってところだな。後は間接部の干渉の調整が必要だから後で試着してもらっていいか?」

 

 そうやって彼らがああだこうだと言葉を交わしていると玄関の扉が開く音が彼らのもとに聞こえてきた。ちょうど朝食の準備が終えたヘスティアはその足で玄関まで駆けていく。

 

 「おはようございます、ヘスティア様。」

 「おはよう、ベル君。」

 

 ヘスティアはいつものようにベル・クラネルを出迎える。彼と彼女のあのときから変わらない毎日の一ページだ。

 

 

 

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 《side:ベル》

 

 「おい、あれがベル・クラネルか。……あの血みたいな眼、気味悪いったらありゃしねえな。」

 「おい、顔を向けるんじゃねえよ。石にされちまうぜ。」

 「うひゃ~、怖い怖い。」

 

 「ったく、もう三ヶ月も経つってのに下らねぇ噂に飽きねえ奴らだ。。ベルは元からこんな眼だってのに。」

 「人の噂も75日、なのではなかったのでしょうか? いえ、私が私が誤解を……」

 「無駄ですよ、サンジョウノ様。寧ろ馬鹿みたいに態とらしくしてるんですよ。あの手の輩は多分3年後も同じ感じに面白がってやってますよ。どうせ噂も真実もどっちでもいいんですよ。」

 「……行こう、皆。言葉で駄目な以上、結果で証明しよう。」

 

 食事を終えた僕らは支度を済ませ、ギルドへと向かっていた。街中を歩けば周りからは好奇や懐疑の目に無責任なひそひそ話の数々。これが僕らに向けられる日常風景だ。

 地上へ帰還した僕を待っていたのは歓喜の声ばかりではなかった。いや、寧ろ弾劾の声の方が大きかった。━━冒険者歴僅か半月の小僧が生き永らえていられるはずがない。そいつはゴルゴーンの手先に違いない。━━ってどれくらい聞いたのか数えられないくらいだ。

 そんな中でヘスティア様は頑としてその言葉に立ち向かい僕を護ってくれた。下手をすればオラリオでの居場所を失いかねないはずなのに、たった半月程度しか傍に居なかった僕を何の躊躇いも無く、だ。そして、ロキ様やフレイヤ様も僕を擁護して下さったらしく、一応はお咎め無しとなった。

 

 『精々守りたいはずの人間どもに後ろから刺されないようにするのだな。重みもなにもない俗言に盲目して、勝手に疑心を拗らせ、恩義を石に変えて投げつけてくるのは人も神も化け物も然程変わらんからな。』

 

 僕の頭の中にゴルゴーンのあの言葉がこだまする。彼女の言葉の真実が重かった。何処からともなく出てきた責任の無い言葉に人々が責任もなくそれを膨らませて僕にだけでなく関係の無い皆にすら押し付ける。

 でも、そこから逃げる訳には行かない。ヘスティア様は初めて会ったときと変わらず僕を信じて守ってくれている。ヴェルフもリリもサンジョウノも文句も言わずに僕とこうやって寄り添って歩いてくれる。なら、僕に出来ることは一つだけだ。誰の目にも見える形で結果を示す。それまでは僕のこの手で守り抜く。それだけだ。

 

 「おっと、ベル君。これからダンジョンかい? お疲れ様。」

 「お久しぶりです。ヘルメス様。いつの間にオラリオに戻られていたのですか?」

 「ああ、本当ならもっと旅していたかったんだけど、流石にアスフィが気の毒だと思ってね。」

 

 そう語るヘルメス様の隣にはアスフィさんが付き従っている。……アスフィさん、これ見よがしに嫌な顔をしてる。当のヘルメス様は分かっていて気にも留めていらっしゃらないけど。

 

 「………。」

 「おいおい、そこの君。何もそんなに睨むんだ? え~っと、リリルカ・アーデだっけ?」

 「ベル様の単なる御付きでしかないリリの名をご存じとは光栄の至りです、ヘルメス様。」

 「はははっ、ベル君に付き従うような子が単なる御付きな訳無いだろ?なあ、【白兎の眷族(ベルズ・サーヴァント)】? ……で俺、君に恨まれるようなことした覚えないんだけど、どうしたの?」

 「いえいえ、お気に召さらず。リリは部外者を警戒してしまう悪い癖が抜けないだけですので。」

 「部外者ね~。これでもオラリオ外でのベル君の支持者を増やしてるんだぜ。俺のお得意様の()()()()()()()()()()なんか目を見開いて俺の話を聞くんだぜ? まあ、また後で話はゆっくりとしようか。じゃあ、健闘を祈るよ。」

 

 ヘルメス様は陽気に笑いながらリリの追及を受け流して去っていった。アスフィさんは申し訳なさそうにお辞儀をしてヘルメス様の後を追っていった。

 ……ヘルメス様は僕の処遇を決める際に拒絶も許容もなさらなかったそうだ。僕にはヘルメス様が何を考え、何をしようとしているのか分からない。少なくとも真相を見つけ出すことは僕には出来ないだろう。それに、追及に費やす時間が無いのも事実だ。

 

 「皆、気持ちを切り替えていこう。僕たちは僕たちのやることをやろう。」

 「「「((はい))(おお)!」」」

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 「ベル君お待たせ。探検計画書は確認させてもらったわ。はい、これが人数分の許可証よ。」

 「ありがとうございます、エイナさん。」

 

 ギルドでいつものようにエイナさんから許可証を受けとる。ゴルゴーンと闇派閥(イヴィルス)との繋がりは否定されたけど、寧ろダンジョンに取り込むという異質性が明らかになってから逆にダンジョン進入への制限は厳しくなった。基本的に冒険者はギルドにダンジョンに向かう目的や人数、到達予定階層を計画書として提出して許可を得なければならなくなった。

 

 「……ねぇ、ベル君? 休んでもいいんじゃないかしら?」

 「はい?」

 「だってベル君、【ヘスティア・ファミリア】の皆がダンジョンに行けない日も他のファミリアに混ざって潜ってるじゃない。それにダンジョンに潜れないときはオラリオの城壁の上で訓練ばっかりしてるって話が入ってくるくらいなのよ。」

 「お気遣いありがとうございます。でも、僕は強くならないと駄目なんです。」

 「……ベル君が決めたことに私があれこれ口出しするのは間違ってるのは分かってるの。でも、言わせて欲しい。今からでも【ロキ・ファミリア】の庇護下に入るべきだと思うの。ベル君の頼みなら……」

 「ごめんなさい、エイナさん。」

 

 僕は強引にエイナさんの言葉を遮った。その方が正しいことなのは僕にだって分かっていたからだ。

 ロキ様やフィンさんからその誘いはあった。あの当時は僕に対する嫌疑は酷かった。その中でヘスティア様を守るのであれば誘いに応じた方が良かったに違いない。

 でも、断った。僕は自分の力でヘスティア様を守りたかった。そしてゴルゴーンに答えを認めさせるためにも、ヘスティア様も皆も傷つけさせないためにも。僕の結果を歪められないためにも。だからこそ、強い何かに頼るのを止めた。【ロキ・ファミリア】の名を借りずに【ベル・クラネル】という象徴()を示すためにも。

 力が何かを解決はしてくれない。でも、力が無ければ僕に解決させてくれるチャンスを与えてくれないのだ。

 

 「ベル君………。私はね、君が生き急いでいるようにしか見えないわ……」

 「……僕があのとき、エイナさんの忠告を破って5階層へ行ってしまったのが全ての間違いでした。でも、この間違いは僕の手で終止符を打ちたいんです。でも、僕を待ってくれないんです。僕は英雄じゃないから、英雄じゃないから他の誰かが危機を救おうとしてしまう。それじゃあ僕自身が許せないんです。……すいません、皆を待たせているのでこれで失礼します。」

 

 涙が頬を伝うエイナさんの姿が見ていられなくなった僕は無理矢理話を打ち切って許可証を受け取って個室を後にした。

 ……エイナさんをまた泣かせてしまった。エイナさんはすごく優しくて、僕のために今でも時々感極まって涙を流してくれる。その優しさが苦しかった。優しさを分かっていて踏み躙る自分に息が詰まりそうだった。

 

 ──お爺ちゃん、女を泣かせるような奴は英雄以前に男として生きている価値がない最低野郎だ、だっけ? 今の僕かそんな最低野郎でごめんね。でも、生きている価値は無くなっても僕にはやりたいことがあるんだ。だからもう少しだけ、迎えに来るのは待って欲しいんだ。

 

 




話が進まない……。書きたいこと多いくせにがうまくまとめられず、だらだらと文だけが伸びていく。説明調な文章が多いのは自覚しているんですがなかなか解消できない。私に誰かヒントをください。
というか、短編集の書き方じゃないですよね、これ。形式を連載に変更すべきか悩んでます。


ヘスティアって逸話的に家事とかてきぱき出来そうなのにぐうたらなイメージがありますよね。

キャラの台詞回しが酷いですが、どう直してもしっくり来ないのでこんな有り様ですがご了承ください。

(リリルカの一人称ってリリでしたよね……?)

サンジョウノなのか春野なのか分からないので不自然になってる箇所が有りますが、知ってる方がいらっしゃいましたら教えていただければと思います。

今更すぎますが話の展開の高速化の為に当初の予定より少しだけ描写を削りました。もし、不服がある場合には追記修正して対応できることも有りますのでのでご一報ください。

次回はまたしても2週間程お時間をください。もしスランプを再発したりして投稿できないようでしたら、いつものように後書きで生存報告を兼ねた進捗状況を追記致します



(11/25 追記)
申し訳ありません。私用により製作が遅れ、投稿できませんでした。進捗率としては60~70%辺りです。もうしばらくお待ちください。

(6/30 追記)
申し訳ありません。スランプを再発して完成させられませんでした。次回投稿は未定とさせていただきます。上記の日付を更新して生存報告とさせていただきます。ご了承ください。

(7/7 追記)
申し訳ございませんが、活動報告の項にも記述したように作品の更新を一時的に凍結させていただきます。身勝手ではありますがご了承ください。

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