FGO×ダンまちのクロスオーバー短編集   作:何でもない

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お待たせしました、第2話です。

あらかじめ言っておきます。悲しいくらい話が進展してません。



(2018/7/17 19:00追記)
アイズはベートに対してさん付けで敬語で話すとのことなので修正中。文が乱れている場合がありますが、ご了承ください。

(2018/7/17 22:25追記)
上記修正を完了しました。もし気になる表現がございましたらお気軽にどうぞ。


【剣姫】と【凶狼】がアヴェンジャーに挑むのは間違っているだろうか

 「メドゥーサ、だと?貴様、その名を知っているのか?」

 

 「は、はい。お爺ちゃんが教えてくれた英雄譚の中にありました。あっ、お爺ちゃんというのは………。」

 

 「貴様の家族関係など聞く気は無い。その英雄譚の中身を話せ。」

 

「えっ、えーっとですね………。」

 

 

 ベルの口から飛び出したその言葉にゴルゴーンは興味を示した。自分の名前をこの世界の人間が知っていたということは、この世界にもギリシャ神話の伝説が存在していることを意味していたからだ。彼女自身、現在の状況がまるで掴めない上に人々の前に姿を現すことが出来ない中での思わぬ助けだった。

 一方のベルはというと混乱こそしているが、妙に落ち着いていた。好奇心に負けて5階層に降りてきたら本来いるはずのないミノタウロスに追いかけられて、追いつかれて殺されそうになったらもっと強いナニかが登場してミノタウロスを一蹴して、そのナニかに問い詰められているというノンストップな流れにむしろ冷静になれたのかもしれない。

 

 

 「………で、英雄ペルセウスは死後アテナ様によって天に上り、星座に召し上げられた…………。僕が知るのは以上です。」

 

「そうか………。」

 (ふむ………。多少の差異はあるが、間違いなく私の知る物語だ。つまりは私の知る地球と同様の文化が存在すると見ていいだろう。そして少なくとも神話と称されるからにはそれが発生してから少なくとも数千年は経過しているとみるべきか。)

 

 「あっ、あの。も、もしかしてお気に召しませんでしたか?もしくは僕が話した内容に間違いが………。」

 

 「何を言っているんだ?気に入らぬならこのウシと同じ場所に送っているわ。そもそも貴様、私をゴルゴーンと知っていながら呑気が過ぎることをほざいているのか?」

 

 「あっ………!そ、そうだった!どどどうすればいいでしょうか?!」

 

 「()に聞いてどうする………。」

 

 

 こんな調子の人間(ベル)にゴルゴーンはというと、完全に呆れ返っていた。ペルセウスの英雄譚でも有名な逸話といっても過言ではないゴルゴーンのことは、彼の伝説を語りきったほど(ゴルゴーン自身、それを暗唱できることに僅かながら感心した)の知識があれば理解できないはずがない。それなのに恐れは有れど会話を試みようとしているその精神性に困惑していた。ただ、ベルにとっては自身では手も足も出なかったミノタウロスを瞬殺した相手に抵抗できるはずもなく、その脅威を目の当たりにして自暴自棄にならずにいるのは称賛に値するといえるだろう。

 同時に彼女は人間に対してこのような感情を抱くことを不思議に感じた。復讐者(アヴェンジャー)たる自分にとって人間など相容れるはずもなく、顔を会わせればその結末は殺すか殺されるかしかない筈なのにだ。

 この奇妙な感覚がどこから来るものか。それを頭から引っ張り出そうとしたとき、

 

 

 「………!喜べ、小僧。助けが来たようだぞ?」

 

 「えっ?」

 

 

 背後からの気配を察知したゴルゴーンは思考を中断して後ろを振り向き、ベルも体を傾けるようにして彼女の背後を見る。

 そこには二人の人物がいた。一人は金髪金眼のどことなく儚げな少女。もう一人は見た目からして気性が荒そうな銀髪で頭部の獣耳の男。二人ともその表情は険しく既に臨戦態勢をとっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ダンジョン上層階を無人の荒野を突き進むが如く駆ける一人の人物がいた。

 見惚れんばかりの金髪金眼にしなやかな肢体、そして急所に直撃しなければそれでいいと言わんばかりの軽装に細身の剣。一見すればまるで人形のように美しいが、その表情は確かに歴戦の戦士の風格を漂わせていた。彼女の名はアイズ・ヴァレンシュタイン。Lv.5にして【剣姫】という二つ名を頂くオラリオ屈指の冒険者だ。

 彼女はこのオラリオにおいて最高峰と称される【ロキ・ファミリア】の団員及び幹部級の一人であり、ダンジョン深層の攻略のために他の団員たちと共に遠征を行っていた。その帰りにミノタウロスの大群と遭遇したが、これを期にと下級団員たちの鍛練のためにそれらを狩猟を行ったのだ。既にLv.5に到達しているアイズは彼らのサポートにあたっていたのだが、団員たちの破竹の勢いに怖じ気づいたのか逃亡を始め、あろうことかその一部が上層階へと向かってしまったのだ。

 逃げ出したミノタウロスが新米冒険者と鉢合わせ、万が一があった場合にはむざむざ取り逃がした自分たちのファミリアの沽券に関わる。それを防ぐためにも機動力に優れる彼女以下数名の団員たちが逃げるミノタウロスの追撃を行っていていたのである。

 ミノタウロスを鎧袖一触とばかりに打ち倒しつつ、残りの逃亡を続けるミノタウロスを追跡していくのだが、逃げ出した数が多かったのか倒しきれないどころか更に上へと逃げていく。そうしてとうとう彼女追跡していた最後の一体が5階層に逃げ込んだ。ミノタウロスを追うように彼女も5階層へと向かった。

 しかし、5階層でミノタウロスを追跡している最中、

 

 

 「………!!」

 

 彼女の足が止まった。彼女は感じ取ったのだ、今までに感じたことのない空気の重さを。

 彼女は身構え、冒険者としての感覚を頼りにその元凶を探る。そこに、

 

 

 「………おい、アイズ。こりゃどういうことだ?」

 

 「ベートさん…。よく分かりません。でも、嫌な予感がします。」

 

 

 後ろから聞こえてきた声に彼女は目だけを動かして確認する。やって来たのは頭部から狼のような耳がある狼人(ウェアウルフ)。銀髪でナイフのような鋭い目、顔にある青い雷のような刺青が目を引く。彼の名はベート・ローガ。アイズと同じく【ロキ・ファミリア】所属のLv.5、【凶狼(ヴァナルガンド)】の二つ名を頂く一流冒険者である。

 彼もまた、上層階へと逃げたミノタウロスを追撃していた。

 

 

 「嫌な予感がする、か。ちっ、認めたくはねぇが………」

 

 「ベートさん、他のミノタウロスは?」

 

 「はっ、あんなザコに俺が手間取るわけねぇだろ。」

 

 「………私の方のがまだ一匹、倒せてないんです。私があちらに行きますので、ミノタウロスをお願いします。」

 

 「んなもんほっとけ。あの程度のザコに構ってる場合じゃねえ。アイツ(ミノタウロス)に殺されるような弱っちい奴なら遅かれ早かれ死ぬだけだ。」

 

 「ですが………!?」

 

 「くっ………!?」

 

 

 二人に襲いかかったのは今までに味わったことがない"重圧"だった。それは単なる覇気だけではない。生命体への遺恨、害心、憎悪、殺意………━━━様々な負の感情が練り込まれたものだったその強さは多くの死戦を越えてきた彼らを怯ませる程に鮮明だった。

 

 

 「………行きましょう、ベートさん。多分、放置しておいたら危険では。」

 

 「………ああ、他の連中を待ってる余裕は無さそうか。」

 

 

 二人は息を整え、重々しき空気が流れ出る源流へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 流れ出る悪気を辿るように道を進んでいくアイズとベートであったが、ベートの狼人由来の優れた耳がそれを捉えた。

 

 

 「ん?これは、話し声か?」

 

 「話し声?誰かと誰かが、話してるってことですか?」

 

 「ああ。内容は分からねえが会話をしてやがる。戦ってる感じはしねぇ。」

 

 「戦わずに会話をしてる?モンスターじゃない?じゃあ、人間が原因ってことですか?」

 

 「だとするなら闇派閥(イヴィルス)の残党どもか?なら何でこんな冒険者が多い上層階をウロウロしてんだ?それに隠れるどころかこんな殺気を駄々漏れにしてるなんて、見つけてみろって言ってるようなもんだろ。」

 

 「じゃあ………喋るモンスターですか?」

 

 「あの都市伝説のか?くだらねえ。んなもん所詮酒場の噂話に決まって………見えたぞ。」

 

「人………いや、違う?」

 

 

 二人は目の前に謎の人影を見つけ、足を止めて様子を伺う。

 

 

 「………!喜べ、小僧。助けが来たようだぞ?」

 

 「えっ?」

 

 

 その言葉の後に背を向けていた人影がこちらに振り返り、その女性の容姿を顕にする。同時に、体を斜めに傾けるようにその人影の背後から少年が体を覗かせる。そして、その人影の足元には切り裂かれたミノタウロスだったものが転がっている。

 

 

 「…答えろ、てめえはなにもんだ?」

 

 「ほう、近頃の犬っころは一丁前に口をきくのか。ただ、野良犬らしく礼儀を知らんのは頂けんな。」

 

 「ほざきやがって………!!」

 

 

 野良犬扱いされてベートは猛る。Lv.5の威圧となれば中層クラスのモンスターでも尻尾を巻いて逃げ出すほどのものであり、ベルもそれを真に受けて震え上がる。もっともゴルゴーンにとっては然したるものでもなく平然と受け流す。

 一方のアイズは自身が取り逃がしたミノタウロスを気にかけていたので、ゴルゴーンの足下のミノタウロスを指差して問いかける。

 

 

 「落ち着いてください、ベートさん。ねえ、貴方がそのミノタウロスを倒したの?」

 

 「ああ、この雑魚か?やはりミノタウロスだったか。まあ、これを彼奴(アステリオス)と同等に扱うのは少々失礼かもしれんがな。」

 

 「どういうこと?ミノタウロスの友達がいるの?」

 

 「ミノタウロス()は心当たりがないな。ミノタウロスと友達になりたいなら他を当たるがいい。」

 

 「ちっ、ムカつく奴だ…!おい、そこのガキ!!」

 

 「はっ、はい!?」

 

 「はい、じゃねえ。お前はそこで何してやがる!そいつの仲間か!」

 

 「えっ?!そ、それはですね、我慢できなくて降りてきちゃってミノタウロスが走ってきて逃げ切れなくて追い詰められたと思ったらもっと追い詰められてペルセウスの話して…………」

 

 「……駄目、ベートさん。あの子、錯乱してる。多分アレの気にあてられておかしくなった。」

 

 

 アイズは彼が正気ではないと判断して、ベートを諌める。ベートもベルから情報を聞き出すのを諦め、歴戦の冒険者らしく速やかにベルから目の前のゴルゴーンに注意を向け直す。もっとも、ベルはベートの気迫とアイズの美しさに圧倒されていただけなのだが。

 アイズは再びゴルゴーンに視線を戻し、話を続ける。

 

 

 「ねえ、あなたはこのダンジョンのモンスターなの?」

 

 「ふん、私がこのようなカビ臭い穴ぐらに住むわけ無いだろ。」

 

 「じゃあ、その体は何かのスキル?」

 

 「スキルかどうかだと?ふむ、私の前に立つ度量に免じて教えてやろう。(あた)らずといえども遠からずだ。」

 

 「惑わされるな、アイズ。体があんな風になるスキルを持つ冒険者なんて聞いたことがねぇ。」

 

 「じゃあ、やっぱり闇派閥(イヴィルス)?」

 

 「んなことはどうでもいい。どちらにせよ、お前は俺たちの味方じゃねえ、そうだろ?」

 

 「その通りだ。そもそも私は人への憎悪によって成り立つものだ。貴様らと相容れなどしない。ならば、やることは一つに決まっているな?」

 

 

 その言葉とともにゴルゴーンは覇気を2人に向かって放つ。アイズとベートは負けじと気を引き締める。それに巻き込まれる形になったベルはその場の気がまるで嵐のように荒れ狂うのを感じた。それはまるで英雄譚に伝わる英雄と怪物の戦いだった。

 

 

 「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 「それを寄越せ、アイズ。」

 

 

 

 アイズは詠唱を行うと彼女の周囲に風が纏われた。 これは彼女の持つ付与魔法(エンチャント)である【エアリアル】。武器に纏わせれば万物を断つ刃に、体に纏わせれば万物を弾く鎧となる高い汎用性を持つ。

 そして、ベートは彼女の風を自身のブーツに纏わせる。【フロスヴィルト】と呼ばれる彼のブーツは魔力を帯びることによってその特性を纏わせることができる。ベートはアイズの【エアリアル】を受け取ることによって風の力を纏わせたのだ。

 

 

 「ほう、面白き術を使うではないか、小娘よ。そして犬っころにしては大層な履き物じゃないか。お前の飼い主は相当に裕福と見える。」

 

 「舐めたこと言いやがって……!アイズ!出し惜しみは無しだ!一気に叩くぞ!」

 

 「分かりました……!」

 

 

 その言葉を合図に二人は同時に飛び出した。先程から散々罵倒を受けているベートは怒り心頭に発してはいるものの、そこは第一級冒険者である。ゴルゴーンの力量の大きさ、その得体の知れなさを見落としてはおらずアイズと同時に攻めかかる。二人と彼女の距離はその瞬発力の前に一瞬にして縮まりそれぞれが自身の全力を叩き込む………はずだった。

 

 

 

 

 

 「はっ、貴様ら程度の強さなど見飽きているわ。」

 

 

 

 

 

 ゴルゴーンの眼に力が込められた。すると二人は文字通り石になり、体が動かなくなった。不幸にも既に地を蹴り飛び出していた後だったためにその体はまるで投石機で放り出されたように空中を飛び、彼女は飛んできた二人を難なく片手でそれぞれの首根っこを鷲づかむ。

 

 

 「ふん、貴様らがどれだけ強かろうと所詮は矮小な人間の枠の中でのレベルでしかないというのに。」

 

 

 ゴルゴーンは冷めた目でそう言い放った。

 

 

 




せめてゴルゴーン編だけは一区切りつけたい………。

(アイズってベートを呼ぶとき呼び捨てだったっけ…………。)


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