とりあえず凡人なりに頑張ればG級には上がれます。というかむしろ、なってどうすんのとかやってけなさそうとか思ってたんですけど、先輩がかわいいので大丈夫そうです。何でもできちゃう。具体的にはルーツとか裸一貫で倒せるくらい強くなれちゃう。愛してるの響きなんかあると世界救えちゃう気がしちゃう。長くなりそうだから纏めると先輩結婚して。


 7/3 日刊短編ランキング10位、週間短編44位、ありがとうございます。
7/6 6位、だと…!?
どうやら推薦いただいてたようで、色々得心いくとともに喜びにうち震えてます。みんなだいすき!!


 ──────続きます!!!

 ──続かないかも…

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 ワールド買ってません。ダブルクロス楽しい。たとえフレンド0人でふらっとハンターにすら巡り会えなくても楽しいもんはたのしいもんね。ほんとだもんね。

 ──欲を言うならパーティ組む仲間が欲しかったです。もっと言うなら頼りになる先輩がいいです。かわいかったら尚いいです。そんな話。


この度G級ハンターと相成りました。つきましては先輩結婚してください。

 新大陸が発見されて四十年、腕利きのハンターを集めた調査団第五期団の投入を契機に、古龍渡りの謎は解明された。けれどもその独自の生態系には未だ解明されていない部分が多く、調査自体は続行されていた。 

 

 それから顕在化してきたのが、熔山龍ゾラ・マグダラオスが寿命を迎え、その内包していたエネルギーが解き放たれたことで、大陸各地の環境が大きく変化しているということ。その結果として、以前より強く大きなモンスターたち──ギルドでは「G級」と呼ばれる──が闊歩するようになったということ。

 

 現地にもハンターはいるものの、調査団の大部分は編纂者や技術者、研究者などといった非戦闘員であり、当のハンターたちでさえ、G級相当のモンスターを相手に苦戦を強いられていた。

 

 そこで、各地のギルドから急遽選りすぐりの精鋭を集め、調査団第六期団として新大陸へ派遣することが決まった。ドンドルマ、タンジア、果てはメゼポルタからも名うてのハンターが召集された。当然ながら、我らが龍歴院にも声はかかり、所属する二人のG級ハンターが新天地へと旅立っていた。

 

          ◇

 

 という流れとは関係なく、本日は孤島からお送りしています。所属は龍歴院、本クエストからG級ハンターと相成りましたセラと申します。今回は先輩のモリさんに同伴してリオレウスの狩猟に来ておりまth…

 

「ブレス来るよー!」

「んぇっ」

 

 あっぶね、こんがり肉になるとこだった。

 

 間一髪で火球ブレスを回避し、声の主を振り向く。と、彼女はちょうどレウスの脳天にジャンプ攻撃をぶちかまし、バランスを崩したその背に飛び乗ったところ。

 

「だいじょーぶー?」

 

 ゆるい声音に似合わず、時間差で放った猟虫からエキスを回収しつつ、空いた手でレウスの背中を滅多刺し。相変わらず容赦ないなー。というかあんま心配してくれてる感じじゃないなー。や、まぁ、ええけど。

 

「降りまーす!」

「いつでもどうぞー」

 

 言うが早いかレウスが倒れた。まぁ閃光玉と弾薬の調合、ついでに流れ弾でパワーリロードも済んでます。ばっちこーい。

 

 ポジ取り完璧。モンス正面、貫通弾が刺さる位置。なので尻尾は任せますね先輩。つーことで火を噴け夜行弩オラァ。

 

 貫通Lev1の3連速射を撃ち尽くし、フィーバータイム終了…かと思いきや、レウスが起きた瞬間に尻尾がちぎれ飛んだ。さっきからタイミング最高すぎませんかね先輩。好きです。

 

 切断後は転倒からの威嚇行動が常套。剣士だと距離空いちゃって地味にアレだけど、ガンナーだと気にせず撃ち続けられるから楽でいい。全弾装填から貫通Lev2へ、5弾目を撃ち込んだところで先輩が距離を詰めて踏み込み斬り。3色エキスの多段コンボからトドメのジャンプ2連斬りまで派生したところで、漸くメインターゲット達成の通知が来た。たぶん0分針だと思う。やったぜ。

 

         ◇

 

「おつかれセラくん、生きてるー?」

「この通り。途中危なかったんでアレですけど」

 

 先輩もお疲れさまです、と労いを返す。と、えへへとあどけない笑みを見せてくれる。こうしてると、というか狩りの最中でも、この人はふわふわして緊張感というものがない。だというのに狩りの実力はギルドでも歴代トップと謳われて疑いない。

 

 つまりアレです。ギャップ萌えとかいうアレ。

 

 ──先輩くそかわいい。結婚しよ。

 

「あとねぇセラくん」

「はいな」

「天鱗みっつ出たの」

 

 ──いやマジですか。分けて。

 

           ◇

 

「そんじゃ、G級昇進と初陣の成功を祝ってー」

「「かんぱーい!!」」

 

 半日かけて孤島から帰還し、俺と先輩はささやかな打ち上げを執り行っていた。いつもの集会酒場ではあるけど、お食事券使ってるのでちょっとだけ豪勢だ。

 

「先輩、そんなグイグイいって大丈夫ですか?お酒得意じゃないでしょうに」

「いいのー!今日はおいわいだもーん!」

「話し方とか二割増しでふわふわしてますけど」

「だいじょーぶ!」

「何を根拠に」

「今日はおいわいだもーーん!!」

「絶対聞いてないですよね。怒り状態のケチャワチャかなんかですか先輩」

 

 ふぅ。なんかアレだな、俺の祝賀会だのに、これじゃちょっと感じ悪いな。やめやめ。

 

「…ま、折角だ、飲みましょか。程々にですけど」

 

 一応念願のG級だし、憧れの先輩とパーティ組んでるわけだし、俺だって嬉しいのは間違いないんだ。なんかちょっと色々追い付かないだけで。

 

「あ、ミルシィちゃん!ふわふわゼンマイオムレツと竜の合挽きハンバーグと屋台の究極まかない飯お願いしまーす!!」

「わぉ!いっぱい食べるね!」

 

 …あっ気にしてねぇなこれ。

 

「相棒はなに食べるの?」

「……じゃあ、夜鳥の土瓶蒸しで」

 

 少し胃に優しいものが食べたい。先輩の食べっぷり、見てるだけでお腹いっぱいになるから。

 

          ◇

 

 しかしまぁ、ね。

 

「いきなりG級とか実感わかないもんですねぇ」

「そう?よく動けてたし妥当だと思うよ?」

 

 先輩はそう言ってくれるし、実際立ち回りに問題はなかったと思うんだけど。むしろアレです、

 

「いえね、俺の昇進ってあの二人の抜けた穴埋めの意味合いが強いでしょ?」

「そうかも」

「やーっぱり!務まりませんよそんな大役」

 

 あの二人、とは当然、こないだ新大陸へと旅立った偉大な先輩方のことだったりする。この二人は他地方にも名と顔の知れた凄腕中の凄腕で、老山龍の侵攻を止めたとか、骸龍を三度退けたとか、闇蟷螂をマラソンしてたとか、嘘か本当かわからないような噂をあちこちから耳にするくらいだ。まぁ全部本当なんだけど。

 

 そして目の前でモガモ貝のパエリア──まだ食うのか──をはふはふしているこの先輩も然り。というか何を隠そう、前述のバケモン二人とパーティを組み、黒龍やら煌黒龍やらとドンパチやって世界救ってたのがこの先輩だったりする。かわいい顔して一番バケモンしてたりするから恐ろしい。

 

 半端ないって。普通できひんやん。

 

 というわけでイマイチ実感涌きませんやん。つい先日までソロ(ぼっち)の上位ハンターとしてくすぶってた俺が、そうホイホイG級の英雄と肩並べるなんぞ恐れ多くって仕方がない。実を言えば、まかり間違って一度並べちゃっただけに、余計にそのすごさを知っちゃっているのだ。

 

 あれは先輩がまだG級に上がる前、俺が上位上がりたての頃だったか、4人で一度だけ狩りに行ったことがあった。いやまぁ、先輩と2人でならその前にもう何回かだけあったけども。ともあれ、その時は俺が無理だと言うのも聞かず、銀レウスの狩猟に連れていかれたんだったっけ。死ぬ死ぬ嫌だとさんざ騒いでおいて、結局0乙0分針で片付いてしまっただけに、余計に凹んだのを覚えている。結局俺に出来たのは、死なない程度に張り付いてタゲ取りつつ、もっぱら閃光や粉塵でサポートするくらい。武器の切れ味もあって、火力面ではほとんど貢献できなかった。今思うだに苦い思い出だ。

 

 つまるとこ、なんだか喜びきれないのもだいたいそこに起因してたりする。ああなれる未来が全く浮かばない。凡人代表として物申したい。

 

「わたしはだいじょーぶだと思うけどなぁ」

 

 そんなケツの穴の小さいことばかり言う俺をさておき、先輩は至って軽い調子で言ってのける。や、だいじょばないから悩んでるわけですやん?

 

「あのね」

「はい」

「セラくんはさ」

「はいはい」

「びびりで器用貧乏で決め手に欠くじゃない?」

「はいはい……はい!?」

 

 えっなに藪から棒に、酔うとサドになるの?ノーモーションで言葉のブレスぶちこむのやめてください先輩、粉塵まだですか。えっ粉塵ないの、うそでしょ、

 

「先輩、俺泣いちゃいそうなんですけど──」

「でもね」

「すいません黙ります」

「それってぜんぜん悪いことじゃないの」

「へ?」

 

 変な声でた。自分でもすごく間抜けだと思った。

 

「だって、裏を返せば慎重で臨機応変で引き際を弁えてるってことだもん。それって、ハンターには一番大事なことだもん」

 

 だからね、と、先輩は言葉を切って、ベルナスの吟醸酒粕漬けを食べる手を止めた。つまり話してる間も休みなく食べてた。器用かわいい。

 

「セラくんはもっと自信をもっていいの!そんなに心配しなくても、セラくんはもう立派なG級ハンターなの、わたしもいっぱい頼りにするの!」

 

 先輩は力いっぱい言い切って、それから頬いっぱいのベルナスをごきゅんと飲み込んだ。俺はお腹いっぱいだったので、ユキヤマツタケの最後の一欠けを先輩にあげた。先輩はめちゃめちゃ嬉しそうに食べてくれた。

 

           ◇

 

 ふぃ、ごっつぁんでした。お食事券って最高。といっても、あのあとデザートに落花生クリームのワッフルを頼んで二人で食べただけだから特別よく食べたわけでもないんだけど。あと先輩はその前にもう二皿くらい平らげてた。お食事券って最高。

 

 俺たちの住処はギルドから割り当てられたハンター用の二等マイハウスなので、比較的街に近いところにある。二人ともG級ハンターだからもっと良いとこ借りられるらしいんだけど、めんどくさいのと住み慣れてるのとでそのままにしている。断じて、同じ理由で先輩が隣に住んでいるからではない。断じてだ。

 

 というわけで帰り道も一緒である。クエストの疲労とそれなりに入ったアルコールが、頭と足取りをふにゃふにゃにしやがる。正直そこら辺で寝てしまいたいんだけど、先輩も一緒だからそうもいかないのが大変むつかしいところだ。

 

 とまぁスタン喰らったクック先生みたいな足取りながらも、どうにかこうにか懐かしの我が家まで辿り着いた。偉いぞ俺。ふぁ、ねむい。いかん寝るな、ッ─

 

「─っ、と、眠くない。それじゃ先輩、今日はありがとうございました。安心して頼ってもらえるよう、頑張りますね」

 

 ハンター仕込みの鋼のメンタル─もとい、鋼の右足で意識を無理矢理引っ張りあげる。ハプルなら2、3匹釣れたわ。というかキリンくらい蹴り殺せたわ。いってぇ。

 

「うん、こちらこそありがと。わたしも頑張らないと、すぐ追い付かれちゃいそうなの」

 

 そうして先輩は何故か自宅と逆方向──つまり俺の目の前──にとてとて歩いてきて、そこで立ち止まった。それから5秒ほど、俺の心臓も止まった。

 

「でも、でもね!まだわたしのほうが先輩だからね!どんどん頼ってくれていいんだからね!」

 

            ◇

 

 ─本当に唐突だが、先輩と俺の身長について触れておきたいと思う。先輩は156㎝と、ハンターとしてはというか、一般的に見ても小さい部類に入る。かわいい。

 

 対して俺は181㎝と、まぁ屈強なゴリラ揃いのハンターの中では大きいほうじゃない、ないにしろ、まぁ人並みからすりゃそこそこの身長を誇るわけです。

 

 まぁつまり何が言いたいかって、先輩に頭よしよし、ないしポンポンされた日にゃどうなるかって話ですよ。ただでさえ嬉しいしかわいいしかわいいし嬉しいしかわいいしかわいいのに、あまつさえ背伸びまでしちゃってるんです。その瞬間俺が心臓に受けたダメージ量を察してください。指標を出すなら力の解放が5回発動するくらいかな。つまり即死です。余裕で根性ライン(オーバーキル)です本当にありがとうございました!

 

 そこで膝から崩れ落ちなかった自分を誉めたい。もっというと脊髄反射で抱き締めてプロポーズしなかった自分を誉めたい。ハンター仕込みの鋼のメンタルを全力で誉め殺してやりたい。

 

 尊い。先輩尊い。結婚しよ。

 

           ◇

 

「そりゃまぁ頼りますよ、俺まだヒヨッコですし」

「えへへ、よかった」

 

 そりゃ今は頼ります。でも、これからは。

 

 先輩を全力で追いかけます。まだ手も届かないくらい先輩は先にいるけど、いつか後ろに立って支えられるように、横に立って肩貸せるように、前に立って守れるように。いつになるかはわからないけど、必ず。できたら近いうちに。

 

 

 

 ──これは、あるハンターの物語。憧れた先輩のため強くなると誓った、いち凡人の物語であry…

 

 先輩かわいいよ先輩。結婚しよ。

 

 




 続────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────くかも。


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