prrrrrrr...prrrrrrr...
修を迎えに中学校まて行っている途中で修から電話がかかってきた。着信音が昔とかいうのはほっといてほしい。
「もしもし」
『あっ、桐ヶ谷先輩』
「おう、どうした?」
『今日うちの学校で門が発生したんです』
「何?」
俺は小走りになっていた足を止めた。
「とりあえずお前が電話して来てるって事は無事って事だな」
『はい。僕もトリガーを使って応戦したのですが、それでも倒せなくて、結局空閑の力を借りました』
「OK。良くやった。今そっちに向かっているから詳しい事はその時教えてくれ」
『え?桐ヶ谷先輩も監視役ですか?』
「も?監視役?」
謎の言葉に思わず?マークを浮かべた。修には本部から指令がいっていないから俺が連れてくる役になったのであって、しかもその役は俺一人だった筈だ。第1監視役なんて大層なもんじゃない。
『いや、桐ヶ谷先輩も木虎と同じように監視役になっているのかと思いまして』
「なるほどね・・・そこに門の処理をしに来たのが嵐山隊で、C級のお前がトリガーを使うのは規定違反だとか言ってそれでそんな奴は逃げ出すかもしれないとかで監視に来たんだな」
『はい。完全にその通りです』
「やっぱりか」
つくづく想像通りで助かる奴だ全く。
「もう着くから電話切るぞ」
『はい。お手数かけて申し訳ありませんでした』
「いやいいよ。ちゃんと連絡くれてサンキュな」
と言って電話を切った。全力で走って中学校まで向かうと、門の所に人の大群ができていた。恐らく木虎に群がっているのだろうと分かっていたが、あの中に突っ込んでいくのはかなりの度胸が必要だった。俺は全身全霊の度胸とコミュ力を振り絞って「ちょっと失礼」と手刀を切りつつ突撃して行った。人の波を掻き分けてようやく中心まで到達すると、そこにはケータイやカメラを構えられて写真を撮っている群衆に向けて嫌々ながらもしっかりポーズをとっている木虎がいた。
「・・・何やってんだお前」
「きっ、桐ヶ谷先輩⁉︎こんなところで一体何を」
「修を迎えにきたんだよ・・・元々会議に連れて行く用事があったからな」
「そ、そうですか。でも桐ヶ谷先輩と三雲君は名前で呼ぶような仲ですよね?だとしたら私情を挟んで逃がしたりすることもあるかもしれないので私も同行します」
「ねえよ・・・もう勝手にしやがれ。修!行くぞ!」
既に俺たちより先に木虎と合流していた修の方をみると、汗をかいて呆然とこっちを見ていた修と、こっちの様子をニコニコと見つめていた遊真達がいた。とりあえず凛花は先に玉狛に行かせて、遊真と修をを引き連れて俺達は本部への道を歩いた。
「三雲君、あなたトリオン兵を倒してヒーロー扱いされているからって調子に乗らないことね」
「お前相変わらず口調キツイよな。もうちょっと丸くなれよ。とりまると話す時くらい」
「桐ヶ谷先輩は黙ってて下さい」
oh...it'sシンラーツー・・・
「お前、ほんと修に対抗心燃やしてるな」
「なっ、バカ言わないで!何でA級の私がこんなC級に対抗心なんか燃やさなきゃならないのよ!というか何であなたが付いてきてるのよ!」
「俺は元から修と一緒にいたよ?付いてきたのはお前だろ。悪いけどお前と修じゃ全然勝負になんないよ」
「何ですって⁉︎」
「はいはーい喧嘩しなーい仲良くしようなー」
バチバチと火花を散らす二人の間に俺が割って入る。すると修が俺に尋ねてきた。
「あの・・・今日は何で僕たちの所に門が発生したんですか?」
「そうそう。警戒区域にしか門は発生しないようボーダーがしてるんじゃないのか?」
「その辺は良く知らん。木虎ならなんか知ってるだろ」
「知っていますが部外者がいるので教えられません」
「俺は部外者じゃない被害者だ」
「なんでお前らは口を開けば喧嘩すんだよ・・・」
俺は大きくため息をついてみせる。それを見た木虎がゴホンと咳払いをしてから少々皮肉そうに言った。
「まあ今回はしょうがないので教えてあげます。まだ詳しくは分からないけどボーダーの誘導装置の不具合か何かで、イレギュラーな門が発生しているみたいなの。今日は貴方達の学校の他に7件も門が発生していたのよ」
「イレギュラーな門⁉︎」
「俺らが処理したやつの他に7件もあったのかよ・・・そうだ。俺からも一個聞いておきたいんだけど、修達のとこのを含めた7件のイレギュラー門から出現したトリオン兵の種類と数を教えてくれるか?」
「・・・まあ桐ヶ谷先輩の頼みならいいでしょう。まず三雲君達の所に出たのがモールモッド2体、三門モールにモールモッド3体、引鉄山にバンダー1体、三門公園にバムスター1体、三門寺にバムスター2体、三門タワーにモールモッド2体、そして三門市高速道路にモールモッド一体です」
「三門市三門って付く名前の施設多いな」
ということは俺たちの所みたいにSAOmobが出現したところはなかったのか。規模も小さいし。だが何だ・・・?このまるで俺たちを狙って門が発生したような・・・気のせいだな。うん。
「なら早く対処しないと!」
と焦って修が言った。
「落ち着け修。これは技術者側の仕事だ。俺たちが同行できる問題じゃない」
するとその時、甲子園でなるようなウーーーーーーーという音が鳴り響いた。いやこれは警報だけども。
『緊急警報!緊急警報!市街地に門が発生しました!市民の皆様は速やかに避難して下さい!繰り返します・・・』
その警報と共に門がどんどん形成されて行く。そこから大型のトリオン兵が空を優雅に飛んでいった。あれは・・・
「何⁉︎あのトリオン兵は⁉︎」
「木虎お前知らないのか?イルガーだよイルガー。まあお前がB級に上がってくる前にしか出てこなかったから仕方ないか」
「イルガー?ああ、嵐山さんに聞いたことがあります。一時期イルガーを見るとその日1日運がいいとかなんとか。全くあんな噂を信じる人も広める人も理解できません。お陰でピュアな嵐山さんは騙されていましたし」
理解できないと言われて最初に噂を流した張本人の俺はショックを受けた。てか嵐山そんな騙されてたのか・・・
という無駄なことをしているとイルガーが体から何かを落としていった。それが地面に着弾すると爆発を引き起こした。
「アレ?イルガーにあんな機能あったっけな。前は自爆するだけだったのに」
「なに呑気にコメントしてるんですか⁉︎止めに行かないと!」
「分かったよ。お前は先に行っといてくれ。俺もすぐにグラホで追いつく」
「僕も行きます!」
と修がまた無茶をしだしそうになるので、肩をポンと叩いた。
「ダメだ。お前はまだC級だろ?お前がやろうとしている事は間違ってない。でもお前のトリガーにはベイルアウトも備わっていないんだ。入ってるのもレイガスト一本だけだろ。お前は遊真と一緒に逃げろ」
「でも!」
「でもじゃない。遊真。修の事よろしく頼むぞ」
「了解。キリト先輩。イルガーは自爆モードになるとすっごい硬くなるから気をつけてね。まあ凛花の父さんと戦って勝ったキリト先輩なら大丈夫だと思うけど」
「ああ。任してろ」
と言って俺はグラスホッパーを起動して飛び上がった。上まで着くと既に木虎が攻撃を開始している。
「おお、流石嵐山隊をA級昇格に導いたエース様だな」
するとイルガーの体から柱の様なものが出てくる。自爆モード変形の合図だ。
「まずいな・・・アレは木虎じゃ削りきれないぞ」
と言いつつイルガーの背中に着地する。
「桐ヶ谷先輩!不味いです、コイツ硬すぎます!」
「分かってる。お前はイルガーから降りてろ。俺がなんとかする」
「先輩一人じゃ無理です!」
「お前がいたって変わらない。むしろいない方がいい。お前は民間人のサポートに行け」
「・・・分かりました」
渋々了承して木虎は町に降りていった。
「さて、やるか」
俺はまず一度普通にレイガストでイルガーを斬ってみた。それだと傷一つつかなかったので、今度はスラントを使って斬ってみた。今度はしっかり切れ込みを入れることができたので、スラスター使用で勢いをつけまくればなんとかなることがわかった。
「問題はどうやって勢いをつけるかだよな・・・久しぶりにアレを使うか」
俺はイルガーから飛び降りて、グラスホッパーで距離を取った。充分な距離を稼いだ所で今度はまたイルガーの方に飛び、剣を一本上段に構えた。
「スラスターON!」
剣が光り出し、爆発的な推進力が生まれる。俺はそれに身を預けて、体を縮めて回転した。
「風車ああああああああ!!!!」
ヘリのプロペラの様な爆音を鳴り響かせてイルガーに迫っていく。そしてそのままイルガーを横からスパアアアアンと斬った。爆発に巻き込まれるといけないので、スラスターを解除し、レイガストを出したままの重力を最大限に受ける状態でグラスホッパーで一気に下に降りた。
イルガーは無事に空中で爆散した。俺も無事着地に成功したので、木虎を迎えにいこうとすると、怒鳴る様な声が聞こえた。
「何が助かっただ!俺の店は壊されちまったんだぞ!」
「俺の家もだ!」
「ボーダーは何をやっているんだ!」
声のする方に近づいていくと、そこにはさっき怒鳴り散らした3人の人と、結局トリガーを使っていた修、そしてその様子を見ている木虎がいた。として木虎がその人達の方へ行って説明をした。
「近界民による新手の攻撃です。詳しくは近々会見を開くの思われますので、損害補償などのことは後日そこで発表します。今はとにかく被害に遭われた方は避難所までお願いします。非常時ですので、ご協力を」
「おお〜流石は広報部隊。俺たちみたいな脳筋とは違うな」
どこかからそれはお前だけだという声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。
「ありがとう。木虎」
「・・・別にお礼を言われることなんてしてないわよ。それよりあなた、また規律違反を犯してどういうつもりなの?」
「うんうん、木虎の言う通りだ。俺は逃げろと行ったはずなんだがな」
「「うわぁ!」」
俺が会話に入ると、二人は大げさに声を上げて飛び退いた。
「桐ヶ谷先輩!脅かさないで下さい!」
「いや別に脅かしたつもりねえよ・・・。ま、何はともあれ修。お前はまだC級なんだ。あまり無茶はするな。 自分の命を軽く思う奴ほど他人の命を守るどころか戦場で命を失うんだぜ」
「はい、スイマセン・・・」
「まあ、お前のお陰で救われた命だってあるんだ。本部からはお咎めが少なくなる様俺が言っといてやるよ」
「おお、流石キリト先輩は話が分かるな。どっかのルール厳守主義とは大違いだ」
「何ですって!」
「だから喧嘩はやめろって言ってるだろ。どんだけお前ら仲悪いんだよ・・・」
と言ってまた大きなため息を吐いた。今日だけで周りの幸せが逃げまくってカラッカラになった気がする。
「ほら、修は先に本部に行ってろ。木虎は俺と一緒に逃げ遅れた避難住民の保護だ。さっさと終わらすぞ」
「「了解」」
俺たちは避難してない人を聞いた後、町を走り回って、逃げ遅れた住民を探し回った。
俺はボーダー本部の入り口の認証キーにトリガーをかざした。
『トリガー認証。本部への直通通路を開きます』
「ふむ、トリガーが入り口の鍵になっている訳だな」
「ああ。そうだ。悪いけどここからは遊真は来れない。先に帰っててくれ。俺も後でそっちに行くから」
「了解。ご飯一人分多く作ってくれる様頼んどくよ」
「おう。サンキュー」
と言って俺と修は手を振りながら遊真と別れて本部に入った。さて、これから会議か・・・めんどくさいな・・・
と思いつつ今日起こったことを振り返って、あまりのハードスケジュールにまたため息を吐くのだった。
木虎はキリトに惚れている設定にしようと思ったけど、やっぱりとりまるの方がイケメンだしいいかなって。