稀代の暗殺者は、大いなる凡人を目指す   作:てるる@結構亀更新

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へんてこ転生&憑依モノでーす。
シリアスっぽくても全力でブレイクしていく方向性で行く予定。
お粗末様ですが、読んでいただければ幸いです。


転生と生存ルートの模索

最後の景色は、真っ黒なアスファルトと真っ赤な自分の血。

下半身を見下ろすと、ぐちゃぐちゃになった脚と、内臓の飛び出た腹。

何人かの甲高い悲鳴が聞こえて。それで。

 

眠るように、意識が途絶えた。

 

 

 

 

「………ちゃん、……トちゃん」

 

途切れ途切れに女性の声が聞こえる。

なんだろう、急に飛び込んできたトラックに轢かれて、意識が朦朧としてきて、それから………

あのあと病院に搬送されたのかな。あんな重傷でも治るものなんだ。

 

そんなことを考えながら瞼を開くと、眩しい光が目を刺す。

そのまま手を動かしてみる。

あれ?思うように動かない。もしかして麻痺とか残っちゃってるのかな。結構な大怪我だった気がするし。というかなんで生きてるんだろう。あの時もう、死を覚悟したのに。

 

そう思って何気なく自分の手を見やると。

 

赤ん坊の手だった。

 

プニプニとした感触に、どう考えても成人女性とは思えないほどの小ささ。よくよく見ると腕自体も短いし、筋肉なんてかけらもない。

え?なにこれ?手術の後遺症とか?治るよね?

赤ちゃんのような小さな手を見つめながら、もう一度手を動かす。うん、多少ぎこちないけど間違い無く動いてる。どう考えても私の手だ。

そう、これが私の手だ。ということはそれはつまり。

 

あー、と声を出そうと声帯を震わせてみる。

 

「あぇ、わ」

 

意味不明のハイトーンで幼い声。どうにか単語を作り出そうとしても、思うように声帯が動かない。これじゃあ、本当に泣くぐらいしかできないかも。

すわっていない首をどうにか動かして、下半身を見る。最後に見たときは、骨は見えてるわ腸ははみ出してるわ、散々な感じだったけど。

今は…………傷一つない代わりに、手と同じく幼児化。

試しに足をバタバタと動かしてみる。あー、やっぱり。こっちも同じくぎこちないけど、私の思ったとおりに動く。

 

嘘、でしょ。

私が生きてたあの時代に、体を幼児化させて回復させる医療なんて存在してなかった。

こんな不思議事態を巻き起こせるような魔法や超能力だってなかった。

なのに、なんで?

 

私は死んだ。

死んだのに、なんで今こんな風に思考できてるの?

なんで体を動かせるの?

 

わけがわからなかった。理解なんてできるはずもなかった。

 

だって私という存在は消えたはずだ。じゃあ今こうやって思考している私は誰なのか。

生まれ変わり?転生?どっちにしてもロクなものじゃない。

20年間慣れ親しんできたカラダが、急に見知らぬ他人のものになって。でも情報なんて何もなくて。そんな状態で、能天気にはしゃげるような楽観的な性格を私はしていない。

 

どうしたらいいの?

泣き叫んで、喚いて、もう一回寝たら、全部解決する?

 

そんなわけない。この状況がなんであれ、そんな楽な話であるはずがない。

オッケー、一回落ち着こう。深呼吸、深呼吸。

確かに私が本物の赤ちゃんであれば、泣き叫ぶことしかできないだろう。でも、私は違う。

見た目はどうであれ、思考能力を持った大人だ。冷静になれば、きっと活路は見えてくる。

 

考えないと。今まず私がしなきゃいけないことは何?どうしたらこのパニックを治められる?

………情報。どんな些細なものでもいい。情報が、欲しい。

 

情報を得るためにはどうしたらいい?

何かの医療の一環でこういうことになったなら、全然問題ない。言葉だって通じる。

 

でも、もしも、ここが。

もしも、私の知りもしない国だったら。全く違う言語を主とする地域だったら。

今まで持っている常識が一切通用しないような、世界だったら。

 

おそらく今考えられる最悪は、それだ。そうしたらその状況を打破するためにしなきゃいけないことは………

 

今の私は生まれて生後一週間も経っていない赤ん坊だ。でも、もしこの世界が私の予想もつかない法則で動いているなら、それすらも危ぶまれる。そもそも、この世界には私と同じように思考能力のある生命体が存在してるのか?

 

まあそれは考えすぎか。

今私が寝ているベット。どう考えても、知的生物がいないと作れない文化レベルでしょ。ていうか、電気も通ってるし家も丈夫。

文化レベルは、前の世界と対して変わらなそう。

けど、どう考えても前いた世界とは違う。

なぜって、そもそも文字が違うから。

 

部屋のいたるところにある文字、でも日本語じゃない文字。字形からして表音文字だろうけど、地球にこんな文字が存在していた覚えはない。あ、でもちょこちょこ漢字も存在してるみたい。こっちなら読める、けど、どうして?

うーん、やっぱり一番考えやすいのは、この場所が謎の表音文字をメインとして使っている場所なんだけど、こことは別に漢字を使っている文化も存在している。そんな感じだろう。なんで漢字と完全一致しているかは謎だけど。

まあどっちにしたって、ある程度の文化が存在していることには変わりがない。

 

まあつまり、ここが例え見知らぬ異世界だったとしても、いきなり生死の狭間をいくようなことはないだろうってこと。自立歩行もままならない赤ん坊が生きてるっていうことは、この世界でも前と同じような倫理観は存在してるっていうことだし。

でも安心はできない。

とりあえずまずは、ここの文化レベルに適応していく必要がある。

さしあたりは言語の取得か。赤ちゃんは言語の取得速度早いっていうけど、多分思考年齢が関係してるだろうから、そう上手く行かなそう。

願わくは、そんなわけわかんない転生とかしてないで、元の世界でなんかされたみたいな展開であってほしいけど。

 

と、そこまで思考がまとまると、カツカツと靴音が聞こえる。

その音に一瞬、ピクリと肩を竦ませる。

人、かな。誰だろう。……医者とか、もしくは転生後の両親とか。そんな感じだろうか。

もしくはいきなり敵、っていうか殺されかけるとか。なくもない話ではない。だってこの状況がどういうものか私は全く把握できてないし。

予想外の事態なんて、いくらでも起こりうる。

 

そんなことを想像して震えている手を、意識的に止める。

覚悟を決めろ、私。

ここで、私の今後がだいぶ決まってくる。

 

もし今近寄ってきている人が日本人医師で、こんな幼児化したのは医療によるものです。すぐに戻せます。とか言ってくれたらなんの問題もない。でもまあ、そんなことはありえないわけで。

でも転生とかもっとありえないし。どっちにしてもありえないことが起きちゃうわけだ。

 

靴音が扉の前で止まる。そして、ガチャンと扉を開く音。

なにここ?どう考えても普通の家じゃないじゃん。なんで扉開くのにそんな仰々しい金属音がするの。どっかの病院の集中治療室だったって言われる方がしっくりくるよ。

 

そんなことを考えながら気を紛らわせてるけど、でも体はびっくりするほど硬直している。手も足も思うように動かせない

 

部屋の中を靴音が横切る。あれ?もしかしてこれ、複数人?

近づくと、かすかに音がしなくもないようなあるような。そんな感じのが一人、かな。あとはヒールっぽいの履いてるのが一人。

 

靴音がベットの前で止まる。

ゴクリと喉を思わず鳴らしそうになって、慌てて止める。できる限り不自然な動作は避けないと。

目は、閉じない。空いててもそこまで不自然じゃないだろうし、今はできる限り多くの情報がほしい。視覚も聴覚も嗅覚も、何一つとして無駄にはできない。

 

何秒が何時間にも感じられるような、気の遠くなるほどの長い時間が流れて。

最初にベットを覗き込んできたのは、摩訶不思議なゴーグルをかけた女性と思しき人物だった。

 

「あら、目が覚めてたのね。カルトちゃん。」

 

カルトちゃん?私の名前?

その一言で、ここが病院で、治療を受けていたという線は消滅する。そして、もう一つの説が濃厚さを増していく。

 

「ほう、なかなか聡明そうな子じゃ。………才能もある。」

「ええ、幼い頃からこれだけのオーラを潜在的とは言え持っているなんて。」

 

オーラ?才能ってなんのこと?

わけがわからない言動と。それからなぜか妙に存在感のあるおじいさんの登場で、すでに脳のキャパがいっぱいになる。少なくともわたしの周囲には、赤ん坊に向かってオーラなんて訳のわからないことを言う人はいなかったと思う。

まあこの言動から考えられる最も有力な説は、私はこの家に生まれた子供だってことだろう。

記憶を持って偶然生まれ変わってしまった突然変異例。みたいな。

 

 

そして、きっと多分ここは考えたくもないけれど。

 

私が元いた世界とは違う、世界線に存在する場所だ。

 

そしてどうやら私は、その世界に記憶を持ったまま、生まれ直してしまったらしい。

 

 

そう結論をまとめると、自分でも訳がわからなくて混乱する。

だって現在の状況を鑑みるとそうなる。というか、死んだと思ったらいきなり赤ちゃんになってたなんて、普通に解釈したら生まれ変わり以外の何物でもない。そんな解釈したくないけど。

でも、そう考えると謎が一つ。どうして私はこの言語がわかるのか?

 

可能性としては、この文字と言葉が奇跡的に日本語と一致しているという場合。

または、生まれ変わる際に、私の言語に関する記憶を、ここのものと入れ替えているという場合も想定できる。

可能性としては後者の方が高いけど、それでもわけわかんない説だ。まあでも、転生とかそんなことしちゃってるんだから、今更って感じはするけど。

 

まあ、言語については取得する手間が減ったってだけで。そこまで大きな問題があるわけじゃないし、むしろありがたい。

これで情報収集への一歩が踏み出せる。

 

まず知らなきゃいけないことは一つ。

 

私の立場と、求められてる立ち振る舞い。

 

 

ベットを覗き込んでいる女性、おそらく母親をじっと見つめる。

服装からして、かなり裕福ではあるけど、かなり………風変わり。ゴーグルをつけている理由も謎だし。

隣のおじいさんもかなりおかしい。首から下げている大きなプレートには、「生涯現役」の文字。

どういう家庭なんだろう?というか父親ポジションの人はいないの?

 

「うぁ、りゃあ」

 

お父さんはどこ、なんて単純な文章でさえ、うまく発音できない。思考できてるのに意思疎通ができないってかなりのストレス。

そう思って顔を膨らませると、おじいさんが一瞬不思議そうな顔をする。

 

「キキョウ、この子はいつからの予定だ。」

「単独で歩行可能になり次第の予定です。」

「……そうか、ならば今すぐ準備しろ。」

 

二人のよくわからない会話を理解しようと全力で考えていると、急に体が空中へと浮き上がる。いや、その表現は正しくない。正確には、おじいさんに持ち上げられている、だ。

なんだこれは。あれか、高い高い的なやつか?じゃあおとなしくしてるが正解かな。うん、きっとそうであってほしいな。

そう思って、宙高く投げられることを覚悟すると、なぜか床へと降ろされる。

 

え?どゆこと?

 

「立てるなら立ってみろ。」

 

そう言われて、手が離される。

立て、ってこと?この世界だとこの年齢の子は普通立てるもんなの?うそ、そんなハイスペックじゃないんだけど。

でも、まあ、やるしかない。

 

赤ちゃんが立てないのには二つの理由がある。

単純に歩行に必要な筋肉量が足りていないというのが一つ。

もう一つは、立ち方を知らないから。立つための重心の取り方、バランス、それを学習するのに時間がかかる。

前者は私にも当てはまるし、どうすることもできない。でも後者ならば。重心やバランスの取り方なんて、余裕のはず。

 

よし、ゆっくり行こう。

地面に四つん這いになっていた状態から、恐る恐る手を離して上体を起こす。

うわ、足がプルプルする。どんだけ筋肉ないんだか。まあしかたないか。赤ちゃんだし。

そうこうしながら、どうにか立つことに成功した時には、すでに足は限界だった。

 

おじいさんの方をみると、こくりと頷かれる。それは、オーケーということですかい?

まあどっちにしてももう限界だし。立っている状態から、四つん這い、いわゆるはいはいの姿勢になる。

 

「キキョウ、見たか。」

「ええ、この子はもうすでに………言語を理解することができる。それにさっき立ち上がった時も。」

「足りない筋肉分をオーラで覆って補充していた。………精孔はまだ空いておらんが、最低限のオーラは十分にまとえておる。」

「ということは、やはりこの子は………」

「ああ、おそらく今精孔を開けても、生き延びられる。それほどの才能がある。」

 

疲れた足をブラブラとしていると、二人の会話が耳に飛び込んでくる。

まずいまずいまずいまずい。

そっか、当たり前じゃん。赤ちゃんは言葉わかんないんだよ。いきなり立てとか言われても意味わかんないに決まってるじゃん。

しかも立つの普通じゃなかった!思いっきりカマかけられてた!

 

ど、どうしよう。もしかしてこの世界では記憶持ったまま生まれるとか結構メジャーなの?いや、んなわけないか。

じゃあ、なんでこの人たちは、というかあのおじいさんは私が言語を理解できるかもなんて思ったんだろう。なんか私したっけ。

しかもそのカマかけにやすやすと引っかかる私っていうね。バカすぎて笑えてくる。

 

いや、だから笑ってる場合じゃないって。ちゃんと考えないと。

とりあえずこの二人には、私が普通の子じゃないのはバレてしまった。

あー、でもその割にはあんまり驚いてないような。特におじいさんの方は。

 

もしかしてこのままうまくいけば、せいぜい天才児ぐらいの評価で丸く収まるんじゃないだろうか。いや、そこまで丸くないけど。

でも、これ以上ボロを出したらもう完全アウトだ。気をつけよう。

普通の、なんにも知らない、ただの赤ちゃんを演じきるんだ。

 

そう決意を固めて、ぎゅっと拳を握る。と、おじいちゃんの目がさらに見開かれる。

え、なに?今のもアウト?

 

「キキョウ、少しカルトと二人だけにしてくれんか?」

「え、ええ、いいですわ。」

 

キキョウさん?おそらく母親である女の人は、おじいさんの言葉に不思議そうにしながら。でも、それでも従って部屋を出て行った。

このおじいさんが絶対権力者っていう解釈で合ってるかな?

ということは、このおじいさんさえどうにかできれば、騙し切って平穏な人生を生きていけるかも。

 

そう考えると同時に、また大げさな金属音。おそらく扉が閉められたんだろう。

つまりこの部屋にいるのは、私とおじいさんだけ。

 

「カルト、お前は何者だ。」

 

ぼそりとつぶやかれたおじいさんのその問いに、ギクリと体をこわばらせる。

まずいまずい。本当にどうしよう。

 

バレてる。私にすでに思考能力があることが。

 

そんな怯えている様子に気づいたのか、おじいさんは軽く苦笑すると、こちらを見つめてくる。

 

「大丈夫じゃ。急にお主を魔獣だらけの森に追い出したりはせん。むしろ大歓迎じゃ。だがのう、もしお主が現時点である程度の自我を持っているなら、問題が一つだけあるんじゃよ。

………お主、人は殺せるか?」

 

一瞬何を言われたのかわからなかった。

人を、殺す?どういうこと?

何を私は問われてるの?意味がわからない。

 

「ああ、順番が前後してしまったようじゃが。ここは、お前が生まれた家は、ゾルディック家。家族全員で暗殺家業を営んでおる。まあもちろん、ほぼ全員が賞金首じゃな。この家に生まれたからには、お主ももちろん暗殺に携わっていくじゃろう。だがまあ、もし人殺しを否とする倫理観があるのであれば、それを否定することはせん。だがのう、……………そんな役にも立たんものに食わせる金はないんじゃよ。まあここまで言えばわかるじゃろう?」

 

そう言っておじいさんは人の良さそうな笑みで微笑んだ。

その表情を見て、私は凍りつく。だって、言ってることの残酷さとは正反対の表情だから。

役に立たんものに食わせる金はない。それはつまり、もし私がノーと言ったら容赦なく殺しにくるということ。

つまりこの状況で、私が生き残るルートは一つだけ。

 

生き延びる代わりに、人殺しをすることを約束する。

 

もちろんその約束を無視しようものなら、瞬時に殺されるだろう

 

殺す。暗殺一家。

なんてところに生まれ直してるんだ、私は。バカじゃないの。

もう一度手をグーパーと動かしてみる。うん、やっぱり。

こんな私が暗殺なんてできるはずがない。だけど、私は生き延びたい。

 

「安心せい。お主が家業につかなければならないのは、キルアが………お前の兄が無事当主になるまでじゃ。それ以降は好きなように生きるが良い。せいぜい長くて20年じゃ。」

 

20年、それだけの時を投げうてば、平穏な人生を生きられる。

その魅惑的な言葉に心が揺れる。

というかそのキルアって子が早いところ当主になってくれれば万事解決なわけだ。

 

こくり、と首を縦にふる。

それを見ておじいさんはニヤリと笑った。

 

「カルト、期待しておるぞ。お主は………相応の使い手になる才能がある。キルアに引けをとらぬ、もしくは上回れるほどの才がな。」

 

そう言い残すと、おじいさんもまた部屋を出て行く。

 

ぐわっと、全身から力が抜ける。

はー、怖かった。死ぬかと思った。てか、若干死にかけてた。

 

でもまあ、生き延びることに成功はした。多大な対価を支払いはしたけど。

暗殺、人殺し。なんだかまだ理解できてない。

だけど、そんな職業が存在しているこの世界は、多分前の世界とは全く違う。

それはかなり怖くて、それでいて魅力的。

 

とりあえずは、生き残る方法を考えよう。ていうか、おじいさんの気が変わらない程度にちゃんと仕事?する、くらいしかないけど。

殺しがそんなにスパンとできるかわかんないけど、でも、致命的なまでの抵抗はない。

 

どうにか生き延びて生き延びて生き延びて、約束クリアしたら、好きなこと好きなだけしてやる!

 

 

 

 




ゼノさんは絶対、こういうの一瞬で見抜いちゃうタイプ。

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