洗礼の水に沈められる
彼を川から上げたのは鳩であった
祝福すると鳩は言った
そして洗礼前の自分は橋へ置いてきた

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橋のたもと

少女は少年を橋から落とした

俺はお姉ちゃんに救われた事を忘れない

男が僕を殴り続けていた なぜ殴られているのかわからない

満足したのか男が隣の部屋へ歩いてゆくと

俺は気を失った 気が付くとお姉ちゃんがいた

服に血がついている あの男はお姉ちゃんにまで手を出したのか

「もう大丈夫だよ」 お姉ちゃんのその言葉が聞こえると

僕はねむってしまった それから男とは二度と会うことはなかった

あんな奴は帰ってこなくてよかったんだ

お姉ちゃんは俺に多く食べ物を分けてくれた

お姉ちゃんは食べないの? そう聞くと

私は少食だからって答えるだけだった

 

祭りに行くために街へ行くため家から道を歩き橋を渡っているとき

コートの男が対岸から歩いてきた 攻撃的な口調でこう言った

「成長期だから大食いだったのか? 駆除させてもらう」

何を言っているのか俺は理解できなかった

「今日はやめましょうよ せっかくのお祭りなんですよ」

「ふざけるな お前は自分がどれだけ殺してきたか憶えていないのか」

「生きるためです 仕方がないじゃないですか」

「ああ 仕方がない だからこれも仕方がないんだ」

そう言って男はアタッシュケースを前に出す

「そうですか ゆう さよならね」

お姉ちゃん?

「この子は人間よ」

「なに!?」

「何のために生かしていたかというとね」

いったい何を言っているの・・・

次の瞬間 俺は空中にいた 橋から投げられたんだ 川へ落下する

「救わないと死ぬわよ」

コートの男は一瞬迷った 前日は雨で川は増水している

人間なら死ぬが グールだったという罠かもしれない

それにもしこいつを見逃せばこれからも喰べ続けるだろう

だがそれでも 男の子をとった

男も橋から飛び降り川へ落下する

流れ溺れる男の子に近づいてゆき落ち着かせながら

岸へと寄っていった

浅瀬にたどり着き 寄り添って陸へ歩いていった

「お姉ちゃんはグールなの?」

男は躊躇しながらも答えた

「そうだ」

「あの女は今月だけでも10人を殺した」

「・・・」

「確かな証拠もある 間違いない」

この少年は彼女を家族だと思っていたのだろうか

そんな親しい人が自分を明確に裏切ったことに

どれだけのショックを受けただろうか

なんといえばいいかわからなかった

まだ浅瀬にいる少年の肩に手を掛ける

「もし裏切られたと感じるなら 僕たちに手を貸してくないか」

「けれど 君がまたお姉さんと会いたいなら 僕たちとは無関係じゃないかもしれない」

それに対して俺は答えると

「そうか どちらにしても 君を祝福するよ」

そうして俺はハトになった

 

それからは勉強と訓練の日々だった

記憶は今でもあいまいだが

自分自身の戸籍や家族構成などの情報から

どうやら家族は全員殺されたらしい

 

 

 

 

 

 



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