(没作品集) 異世界転生譚-1st. World Trigger   作:無狼

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第1話「転生、交錯のその先は?」 ⦅PSR/OC/vol.02⦆

 

時は遡り。

建悟が清水を庇う形で喰われた所まで戻る。

 

 

 

建悟が口に目がある不気味な白い像に喰われてしまい、清水は足がすくんで動けなくなっていた。ただでさえ押し潰されそうな恐怖からこれまで一人で逃げてきたのに、身近な人の存在がこうも呆気なく消えてしまったからだ。後ろには4体の白い像がドシンドシンと歩み寄ってきている。

 

<もはや救いは無い。>

 

清水は自覚してしまった。

 

きっといつもの運で助かると思っていた清水はもはやそうならない事を自覚してしまう。本能的に絶望に駆られる。迫りくる惨状から逃げたくても足が動かず、自殺を考えるも近くに良さそうな物もなく…気がついた時には、目の前にアノ目が迫っていた。

 

動かなきゃ。でも足が動かない。ヤバい。

でもどうやって。食われる。殺される。

あぁ、死んじゃうの?こんな所で…死ぬ?

 

死ぬ。死ぬ。死ぬ。しぬ。シヌ。やだ。やだ、やだ…

……最期に死ぬイメージを想像してしまい、白い像の吐息を受けた清水は極限のストレスから気絶してしまう。

 

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[清水が気絶する数十分前]

残党のトリオン兵狩りをしていたうら若き迅(15歳)は不意に、不自然な多くの未来を知覚した。

思わぬ不快な現象に冷や汗が垂れ、続く鈍く鋭い痛みに両手で頭を抑える。

 

この世界が紅く染まるビジョン。

自分が惨敗したビジョン。

忍田さんが負けたビジョン。

城戸さんが身を挺して死ぬビジョン。

 

多くの未来視の中で…どの未来も、短髪の男がバムスターに喰われてから、様々な場所で様々な惨たらしい光景に必ず現れる、赤い鎖と巨大な二つの剣と暗く紅い装いの白髪で隻眼の黒眼紅瞳の男。

 

そして"誰かの視点"とは思いがたくハッキリとし過ぎている未来視。この未来視は近くにいる誰かを認識して初めて発揮するものであり、知らない人物の顔はボケて見えないはずであった。

しかも限定的で断続したもので"未来の確定"が普通わからないものなのに…確信させられる何か強いものを感じさせられているようだ。

 

誰もおらず一人だけなのに見えたこの未来には続きがあるようだ。ノイズ音で頭が割れそうだ…

次に見えてきた未来は…

 

やはり同じだ、誰かの視点じゃなくて俯瞰しているかのような…空にいる鳥のような気分だ。自分と同じ背の高さぐらいの視点から…

 

4体のバムスターに追われる青年と少女に…食われた青年?逃げろと言っているのか…

迅「!?」

突然未来が赤く染まり、意味深なまま終えた。キーンと耳鳴りが残っている…

 

迅「…嫌な未来だなぁ。」

 

もう未来が見えなくなったにもかかわらず、"必ず行かなきゃいけない"と誰かがずっと言っている気がする。

 

赤いノイズがまだ残っていて、他の方角を向くと濃くなるようで…誘われている気がする。明らかに「自分のサイドエヘェクト」じゃないけれども…何か不吉な気がしてならない。今すぐにでも向かわないと、いけない気が。

 

個別に渡されている小さな無線機のボタンを押す。鬼塚さんが用意してくれた無線局のおかげでこの三門市全てをカバー出来るようになっていて、携帯無線機を使えば掛けたい人の無線機に繋げられるようになっている。

 

迅は3つ上の鬼塚に教えられた通りの周波数を設定したボタンを押して、忍田の無線機に掛けた。

 

迅「【あー、忍田さん】」

無線機特有のザーザー音が鳴る。ピーっという音が入り、忍田が掛けてきたようだ。クリアではないが…充分聞き取れそうだ。

 

忍田「【どうした、迅】」

 

迅「【危険な未来が見えて、…】」

 

忍田「【未来?何が見えたんだ】」

 

迅「【……】」

 

迅は戸惑う。これは伝えていい未来なのか。

 

だがどの未来も…忍田さんが、城戸さんが、林藤さんが全員殺される未来だった。なら…伝えたい方が、いい。

 

言葉を慎重に。最上さん。俺に勇気を。

 

迅「【忍田さんが殺される、城戸さんも、林道さんも、鬼塚さんも小神林さんも皆んな、負けて殺される未来です】」

 

 

忍田「【なに?……(息を呑む驚き)】」

 

迅「【…忍田さん、出来る限り皆んなを俺の所まで呼んでください。あそこは…東三門の辺りで】」

 

忍田「【? あぁ、分かった。私もすぐに向かう】」

 

迅「【お願いします】」

 

迅の無線が終わり、忍田は刀型トリガーの柄を確かめる。心の準備は出来た、後は…

忍田「【鬼塚、今から私が言う事を全員に流してくれ】」

 

 

……ここは東三門の区域。

もはや建物と言える建物は全壊しており、平らな焦土と化したこの辺りに残るのは、確かにそこで生きていた人たちの幽かな痕跡だけである。

 

まだ無事な区域があり、そこへ行けば人気の無い住宅街やビルがポツンと残っていたが……

 

建悟が喰われ、清水に魔の手が迫る時。

清水を食らおうと口を開けた前方のバムスターの目「トリオン感知型カメラ」が横真っ二つに切り目が入り、遅れて明るい緑色トリオンが鮮血のように噴き出す。

 

迅は到着してすぐに風刃を抜刀し、風の尾を飛ばして少女が喰われる前に撃破に成功した。

ほぼ時を同じくして一番近かった後方のバムスターの目が頭ごと縦に一刀両断され、二番目に遠いバムスターの左脚を切断して機動力を失わせた。

 

忍田「待たせたな、迅!」

迅「いいタイミングです!後は2体だけです!」

忍田「承知した!」

続く忍田の三太刀が入ろうとしたところで、"不意に"赤錆びた鎖が右こめかみを横切った。

 

すぐに回避運動を取って距離を取った忍田は、その急に現れた鎖を見た。が、その先にあったものは…

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[PROFILE:SECRET RECORDS/Volume.2] ⦅ORDER/CLEARANCE⦆

[前の世界とこの世界]

 

[H21.M10.D01]

それで、なんでこんな記録を残したかって?

それはだな…実は俺はこの世界とは別の世界に生きていた住人なんだよ。

 

疑ってるな?無理もない、それが正しい反応だ。

だが前に言った通り、俺は"40年近く生きている"。

例えばあみだくじで席を決めたとしよう。

 

予めAっていう席、Bっていう席、Cまでの3つを紙に書いたとする。

これらの組み合わせは6通り。確か大学の数学で習った事だが…そのままA、B、Cの順になる場合。

あるいは一個だけずれる場合。

全てがずれる場合の3グループが出来て、

それを矢印にして図としての解答にしたとする。

あみだくじってのはそれらの組み合わせだ。

 

だが、その組み合わせが3つあれば?

 

0+?=3を満たす逆元は3だが、必ず解答は一個だ。

もし1+2+3=6だったならば?

答えは1つにならない。3+3か4+2か5+1かだ。

 

そう、この世界も似ている。

君たちは1+2=3の演算しか知らないはずだ。

俺はそう、1+2+3=6の世界の住人なんだ。

 

話が大きくずれたな、戻そう。

「覚えている限り」では40年近く俺は生きている。

普通は知らないはずの知識や技能の大元の、

俺がかつて別の人間として生きていた頃の記憶。

前世の記憶がその証拠だ。

 

俺は今とは違う人間だったし、しかもこの世界によく似た場所で生きていた記憶まである。確かに覚えていてごっちゃになっているんだが、前世の俺にとっては漫画の出来事だったはずだ。

 

しかも、確かに覚えている内容とあからさまに違う。

同じ世界のはずなのにな。…疑っても残念だが、俺は至って正常だ。

 

あのクソ神が勝手にやってくれたんだろう、俺とは違う存在の俺の記憶から分かった事だが、この世界は違う俺とクソ神が造りあげた箱庭だったらしい。現実と変わらないがな。あの犬っころを除けば。

 

…この世界も終わるらしい。今まで繰り返したり転生してきた"俺"やその世界も消えちまったらしいからな。

 

今は違う俺、【奴】って呼ぶか。

 

奴は俺に何かをやり遂げて欲しいらしい。

何か事あるたびに知らない事を教えてくれるからな。

あぁ、よくある多重人格者みたいなアレじゃなくて、勝手に押し付けてくるイメージが浮き上がってくるタイプな。

 

奴とは話が出来ないんだ。なぜか。

それに奴は急に現れてくる。その間の記憶は俺には一切無い。

 

あの犬っころ、「ティンダロスの猟犬」と言ったか。

奴とどういう関係だったのか分からんが、クソ神と同じ仲間だってことは確からしいな。

 

そう、俺とクソ神と犬っころは"別の世界の存在だったんだ"。

…奴は"この世界にいた"らしいんだがな。

 

俺が死ぬ前の"この世界"では普通だったはずなんだが…

あの時以来、おかしいみたいだな。

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