(没作品集) 異世界転生譚-1st. World Trigger   作:無狼

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第2話-未だ目覚めぬ天使、顕現せし悪魔

バムスターに食われ、心臓を抉られてトリオン器官を抜き取られた建悟の死体は、同じく用済みの死体の所に体内アームで適当に放り投げられる。

 

途中骨が折れ、無造作に積まれた冷たくなった死体の中で初期の硬直が始まる中…人知れずxnijのバクソースが入力された。

 

バムスターの体内で多くの死体が折り重なる死体の中から、建悟の折れ曲がった身体が独りでに立ち上がり…

頭を摘まれたように浮きあがり、グキリゴキリと骨音を鳴らしながら胸元の穴から"暗めの蒼い結晶"が輝き現れ、不可視のトリオン器官の欠片と融合する。

 

周囲の死体から血液と肉片が一欠片ずつ一部位ずつ、建悟の骸に空いた穴と失った細胞片と血を埋めていき、身体の内外を覆っていく。

光の無い体内で怪しく双眸が輝き、腰まで垂れる白銀の髪の毛が局部を隠し……片翼の堕天使を彷彿とさせる、その一糸纏わぬ生身の感触を確かめ……五体満足となれた事を確認した。

「[ふむ。悪くない]」

「[流石は我だった体。さて、出るか]」

 

既にトリオン器官を失った用済みの人形たちから、血を拝借した。血を使い、当時好んで着ていたレッドワインのドレスシャツ・トラウザーパンツを形成し…黒眼帯で、淡い燐光を放つ瞳の右眼窩を覆う。

 

そして…

身を屈め、全方角に仕込み刃の血鎖を解き放つ。

 

「[ここは……我が居た世界か]」

バムスターの体をいとも容易く切り裂き、充満させた血の奔流を利用して無の骸殻を噴き飛ばし、家屋にまで血をぶちまける形で強引にこじ開けた。

ようやく外の空気を味わえ、周囲を気にせずにドゴンと鉄骨な落ちたような音を響かせて外殻をどかし、血にどっぷり濡れた体とその異質な絵面を気にせず周りを見ていく。

 

「[やはり。我が生きていた頃の世界か]」

このワールドトリガーの世界はどうやら、建悟だった頃の我が初めて訪れた時のオリジナルデータのようだ。

「[…? おかしい、どういうことだ]」

なにやら状況は違うようだが…なるほど。

流石は我が神、もう気がついていたか。

我の干渉は既に行えなくなっていたか、

管理者権限も行えず情報閲覧も行えない…ふむ。

 

xnijはもう一度やり直しも繰り返しも出来なくなってしまったが、やる事は変わらないと意思を固めた所で、横目でバムスターを3体見つけた。

足元に"あの世界で最初に辻斬りした女"が返り血を浴びて気を失っているようだが……

 

さほど離れていない近くに一人の男と…少年か。あの二人は確か迅悠一と忍田真史か。東三門のこの状況から…第一次近世民侵攻の二日目か。

 

 

忍田「!……」

横目で鎖を捉えながら、飛ばしてきたその先を見た。

 

黄昏をイメージさせる暗く鮮やかな赤色のシャツとズボンに…黒いネクタイとインナーが引き締まった胸筋を控えめに強調している、右眼に黒い眼帯を身につけた、ネイバーのような装いをした長髪の白髪の男がそこにいた。

左目が黒く怪しい赤目を宿しているばかりか、足元が浮いてる上に…悍ましい赤色をした鎖のような……?

いや、これは鎖なのか?…これはなんだ?

 

歴戦の強者ですら見た事の無い"その容貌"に困惑を覚えた。…戦場において止まるという事は、「死」を意味するが…

 

 

迅「…!!! 忍田さん気をつけて!」

迅は遅れて気がついてしまった。

あの男だと。つい未来を過信して…青年がいるかどうかを確かめていなかった。失敗した、未来も今見えてこないし、これは……

 

忍田「……」

何も言わず、白髪の男に体を向け、自然体のまま抜刀できる態勢を取る。

 

建悟?「[……]」

一瞬で消える。音も無く…

 

忍田「?…」

身構え、周囲と上空を警戒する。

…だが待ってもこない。

迅「! 何を……?」

忍田よりも遠く離れていた迅は、忍田の背後…

 

二体のバムスターが何の前触れも無く目が割れ、頭部の半分が消え去った。片膝をついていたバムスターは…半身がそれぞれ数軒の家を巻き込みながら残像がコンマ1秒見えるほど、刹那の間で1秒経っただけで数百メートル先まで吹き飛ばされていった。

遅れて二体のバムスターの頸部からトリオンを噴き出しながら…ドシンドシン!と倒れた。

白髪の男は倒れ伏した2体の中央にいつの間にか立ち尽くしていて…

 

建悟?「[(こんなものか。脆い、弱いな)]」

xnijはあまりの弱さに少しがっかりしていた。

もともと存在を逸脱している彼だが、能力を抑えられたその状態ですら、早歩きで迫り小指で小突く程度の力加減で殴打しただけだったが……

1秒にも満たず、それなりの硬さを誇るバムスターを何の努力もせずに呼吸する程度でアッサリと、一瞬で倒せてしまったのだ。

 

まだ何も、"剣"も"時間操作"も"瞬間移動"も出していないのに。ただ歩いただけで、叩くように触れただけなのに。

 

建悟?「[これではつまらん、今の我ですら過ぎたる存在か…]」

xnijは失念して肩を落としてしまう。溜息を何度も。

この異常な光景に加え予想外な反応に、二人は思わず拍子抜けするどころか、思わず呆気にとられ驚いたまま口が開いたまま塞がらなかった。

 

迅「え、ええー…何この展開…」

忍田「何をしているのだろうか…? …迅。」

迅「あ、はい。」

忍田「説明してくれ。」

迅「そうなりますよねー…」

「俺にもよく分からないです。」

「ただ、勝手に違う未来になったみたいです」

「俺のサイドエフェクトがそう言ってます。」

忍田「未来が勝手に…?」

「いや、それよりも様子がおかしい」

 

腰元まで垂れた白銀の男の周りが不意に、ノイズが走ったような…赤の輪郭に黒い"ギザギザして断裂した空間"が走るようになった。

空間が切断され、可視上では光景が千切れて見えるそれは、ビリビリした見た目に反してパキリと鳴る。パキパキと冷凍した物が折れた時に鳴る音が聞こえ、バムスターの身体の一部が溶け出していった。

 

建悟?「[(ふむ、吸収してこの程度ということは…これでもだいぶ落ちぶれたか。)]」

 

xnijは吸収した過剰トリオンを自身の本体であるブラックトリガーに込めていき…最大に達した所で、もう手元から離れて大丈夫だと考えたのか、建悟の人格の中へと戻り黒トリガーへと戻っていった。

 

迅「…忍田さん!」

迅は背を向けている白髪の男の両手首から鮮血が流れ出し、異常だと分かっててもフラフラとしはじめ、よろけて落ちそうになった状態を見て声を掛けた。

 

忍田「あぁ!念のため気をつけろ。」

忍田は警戒したまま、ついに落ちる所でその男を捕まえようとする。

 

…既に弱っていたのか、呆気なく手首を抑えて捕まえることが出来た白髪の男を見て忍田は再び驚いた。

 

ぼとぼとと剥がれ落ちるように忍田の手元から血肉が落ちていき、血生臭い香りと共に…刈り上げで茶系黒髪の刈り上げの青少年?に、

白Tシャツの左胸にぽっかりと空いた穴の周りに…こぼれ落ちて今着いた鮮血とは違う、乾燥した血糊がシャツと左胸全体にこびり付いていた。

まるで肉人形の中に人が収められていたかのような様相に、トリオンを一切感じさせない攻撃に…忍田は異常だと感じた。

 

忍田「…トリオンでなければ通用しないはずだが…どういうことだ?」

迅「……」

 

迅は忍田を見た。この青年が後に忍田と共に笑顔でスーツ姿で何かをやっている未来が。他にも何か見えたが、何故かこの男と白髪の男が同一人物には見えなかった。

 

迅は再び謎の男に目を向けた。しかし、"何も見えなかった。"

 

迅「…こんなことってあるんですね。」

「未来が見えないなんて。」

 

忍田と迅は二人の男女を回収した。

忍田は謎の男の危険性から迅に任せられず、後に合流した林藤や城戸ら旧メンバーに託すまで背負っていくのだった。

 

迅は未来を知る。

あの惨劇の未来が無くなり、これから先が明るくなっていくと。

迅は近い予兆を知る。

この男がだんだんと顔が暗くなっていく事に。

迅は予知した。

"白髪の男とこの男が対峙する場面を"。

 

迅のみが知る。それは未来。

同時に"物語のプロット"であると。

迅は特別に感受性も心も強かった。

俺が見ている未来は本当に、

"俺 が 見 た 未 来 な の か ?"

と。仔羊は偽りの夢を知る。

 

電気羊はアンドロイドの夢を見るか?

正夢は現なり。逆夢は幽かなり。

夢が醒めるその日まで。

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(ちなみに迅は少女だと思っていた清水を背負っていった。)

 

15歳だった当時の迅は清水より背が高く、150cmの清水は童顔で中学生に見間違えてもおかしくない容姿だったが……女の子らしいミストの控えめな優しい香りに、見た目以上に柔らかくて隠しきれていない胸から謂わゆるロリ巨乳を想像せざるを得ないが……

 

ふんわりとしたコットンレースのワンピースとフレアスカート越しに伝わるマシュマロのような柔肌と、何よりも程よい反発と女子の甘く和らいでしまうほど柔らかい「おしり」に、迅は目覚めてしまった。

 

女子のおしりを触るようになったはじまりがいつからか。密かに噂されているその秘密は、現ボーダーにおいて実は誰も知らない。

旧メンバーの女子のみぞ知る秘密だ。


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