(没作品集) 異世界転生譚-1st. World Trigger   作:無狼

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RE第7話「ジョン・タイター Vol.3」

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夢の中で繰り返される、あの日の悲劇。

門「ゲート」が初めて三門市で開いた、

あの忌まわしき漆黒の電状門。

 

あの日、無力に、無残にかき回された、

数々の「無様な、非力な」自分の姿。

幾つも積まれ築かれた、死屍累々の山。

 

その頂点に立つは、今の自分。

有象無象を含めた、全ての死が、

全て、今の自分に集束されている。

 

死は「記憶の忘却」をもたらした。

それは、心の生存本能。一体、どれだけ、

この死の山を潜れば・・・記憶が辿れるか。

 

氷山の一角に聳えるように、今の自分には、

死の全ての記憶を思い出すのが怖い、恐ろしい。

潜在的恐怖が、顕在的恐怖が、現実的恐怖が襲う。

 

全て、痛みが、傷みが、悼みが、いたみが、

全て襲いかかってきそうで、思い出しそうで、

拒む。

 

 

・・・まだ、今の私では、この死の記憶を辿れそうにない。

だって、あの日の記憶を見た自分はXXX、XXXX、XXXXX。

それでXXXXXX、俺はXXXXXXX、XXXXXXXXXXXXXXXXXXX。

 

 

――――――――――

 

「・・・・・・はっ!?」

俺は寝てしまったようだ。

確か、まだ昼のはず・・・夕方か?

 

 

「・・・・・・(3日、・・・ダメだ、思い出せない)」

 

 

知っている人なら「知っている」、

部屋のトリオンモニター表示用のコンソールを起動させ、

トリガーで行う物を「ハッキング」して、表示させた。

 

 

「・・・・・・、ダメか。今はいつだ・・・?」

 

[2013年 12月 3日 火曜日]

 

 

思い出した「自分の名前」とキーワードを頼りに、

自身のアカウントや名前、言葉を検索に掛けても、

結果は何一つも、何も引っかからなかった。

 

 

めぼしい情報は手に入れたが、"前の世界"と大差無い。

ただ、自分の他にも消えたはずの「誰か」がいたが、

言葉にできない。・・・調べようもなく、諦めた。

 

 

「・・・本目建悟は"死んだ"、か。」

 

 

この世界に認識されなくなったのか、

存在していない事になったのだろうか、

いずれにしても、この名前は「死んだ」。

 

知っている「前の世界」とは違う流れ。

・・・徐々に思い出すも、分からないことが分からない。

・・・・・・新たに、名乗ろう。

 

 

「【空】(うろ)、と。」

 

 

 

ヴゥゥゥゥゥウウウ!

 

 

不意にけたたましく鳴り響く、

「例の」近界民が発生する警報音。

聞き慣れたものの、ネイバーか・・・・・・

 

[ゲート発生、ゲート発生]

[座標誘導、誤差1.15]

[地点、界境防衛機関周辺、直ちに向かってください]

 

 

 

 

「・・・はぁ。まぁ・・・、行ってみるか。」

頭の中で「時よ切り裂け、空間を繋げ」と脳波で念じる。

 

すると、いつも通り「違える鋭時空の門」が開いた。

地点、ボーダー本部の上側、南側方面。

頭の中でイメージして、くぐるだけ。

「鈍角の、連続する丸い時間」に生きるこの世界には、

「鋭角の、1か0に明滅する姿」に、見えただろう。

 

 

こんこんとノックする音と同時に、音も無く消える。

 

月見「えっと、入るわよ?」

  「大丈夫かしら、ずっと寝て・・・あれ。」

  「・・・まさか。報告しなければ・・・」

 

 

 

 

2013年、12月の3日。

おそらく17から20時頃の日没直後かその辺り。

眼下に広がるは、また「門(ゲート)」。

 

メートル距離にして200から300辺り。

数にして2つ、現在地点は「南側方面」、

背後が北方面、左手が東、右手が西だ。

 

 

前方、1時の方向と11時の方向に確認。

・・・私は、「紅き悪魔の姿になる。」

・・・体のコンディションも良好。

体内の血も、トリオン生体血液も異常なく。

 

 

一つ、試してみよう。自分の能力はどれぐらい、

柔軟性があるか・・・調べねば。ビジョンを思い起こす。

「過去視」から一つの武器デザインを探り出す。

・・・「弓型の血液武器」を見つけた。

 

 

「我が目は真実なり、我が目は虚構なり」

「そは、映すものはなんなりや?」

「出でよ、紅月。池月を血で染めよ!」

「Summon;蝕血"Archer"」

 

 

人の筋肉細胞で構成された弓に、

常に滴り落ちる血糸の弓弦。

白き金属・・・否、骨に肉片が付き、うねり蠢く。

矢先は・・・白く、白銀のように輝き、鋭い。

 

 

・・・ゲートから、3,4体のバムスター。

もう片方から、6体のモールモッド。

私のやることは変わらない。排除。

 

 

「任務続行、排除。」

「世界が変わっても・・・やることは、同じだ。」

 

 

キリキリと引き絞られていき、

血糸が熱を帯びて凝固する。

絞れば絞るほど強くなるはずの張力は、

100cmほどの骨矢の右手に一切強度を及ぼさない。

 

 

弓自体は形を変えず、番えている血弦だけが引き絞られる。

腕の長さの限界まで引き絞った弦は・・・その勢いだけで、

この世界のノーマルトリガーの相手の首や腕を刎ねるだろう。

 

 

「・・・!」

 

ゲートが閉まるか、消えたかのどちらか一瞬。

直線に並んだモールモッドを2体「穿った」。

頭を穿たれたトリオン兵は一撃で崩れ落ち、

背後にいた敵は致命傷を免れたようだ。

 

・・・3,4体の背後のモールモッドは、

動けなくなった亡骸と仲間を踏み台にしようと登りだす。

 

 

「・・・・・・」

 

 

空がにやり、と笑みを浮かべると・・・

動けないモールモッドの腹部辺りから、

「赤黒い"ミミズ"が四方八方に飛び散る。」

 

ビチャッと嫌な飛沫音を立てながら、高速で、

空を覆い尽くすほど蠢く数で飛んでいき、

大気に触れてピシュゥゥゥと蒸発していった。

 

 

・・・・・・そこに残っていたのは、

ただ・・・クレーターと、発火したのか煙をプスプスと、

白い煙と小さな炎を立てている半壊した家屋だけだった・・・。

 

 

「・・・」(再び、左手から蠢く骨矢を作り出す)

迅「後は任せてよ。・・・その姿、あまり使わない方がいいよ。」

 

 

後ろから迅の声が聞こえた。・・・フンッ、と振るう音。

風切りと共に、風刃で残る4体のモールモッドを次々と仕留めた。

 

 

空「・・・・・・手間が省けた。"向こうは片付いたか?"」

迅「うん?あぁ、お得意のサイコメトリかな?」

空「・・・いや。」

 

(チチチチ)

迅「・・・はいはい、もしもし?・・・こっちは終わりました。」

 「・・・ほう。この実力派エリートをお呼びとは。」

 「分かりました。またのちほど。」

 

空「・・・・・・」

迅「・・・、『前の世界』の記憶かな。」

 

空「ああ。記憶通りなら、"空閉"と"三雲"がやってくる。」

 「迅はその会議に"召喚される"、・・・未来は違うか?」

 

迅「・・・その通りだね。記憶を取り戻したのかな。」

 

空「ああ、少しだけな。・・・全てじゃない。」

 

迅「そうか、・・・会議室に来るか?」

 「面々と顔合わせした方がいいと思うが」

 

空「・・・いや、"私の事は見えない"はずだ。」

 「不確定要素は無いに超した方がいい、そうだろう?」

 

迅「・・・はは! 君、面白い事を言うね!」

 「ああ、確かにこの"未来"は大切なんだ。」

 「申し訳ない。君のことは良くしたいとは思っているんだけど・・・」

 

空「・・・いいさ。あと、空(うろ)と呼んでくれ。」

 「そう名乗る事に決めた。」

 

迅「ウロか。分かった、・・・!、そうだな。」

 「空さん、君の未来が少しだけど見えた、」

 

 

迅はごくり、とつばを飲みこんで、間をおいてから、

 

 

迅「空さん。君はこれから・・・」

 「"ノーマルトリガー"を使った方が、君の為になる。」

 

 

空「・・・このまま従わなかったら?」

 

 

迅「・・・・・・。空さん、紛糾されて、絶望する未来・・・かな、はは・・・」

 

こういう時の迅の反応は知っている。

不確定な未来。不都合な未来。言えない未来。

「言うことができない未来の内容」の反応。

 

迅は必ず、「戸惑い」を見せる。

だが察せられないように、オブラートに、

内容を曖昧にして「未来」という言葉を使う。

 

・・・つまり、迅ですら言うのを躊躇う内容、ということか。

 

 

空「・・・・・・。」

 

迅「と、とにかく、使わない方がいいよ。」

 

空「・・・分かった。"本来の"隊員のトリガーでだな。」

 「懐かしいな・・・色々、馴染むといいんだが・・・」

 

 

迅は意志を確認してようやくホッとしたのか、

だんだん落ち着いた口調に戻ってきた。

ちょうどその頃、向こうで起きていた別の戦闘や、

「イルガー」が撃破されたのは、また別のお話である。

 

 

自分はトリオン体のまま飛び降り、トリオンを解いてから、

生身で「本部の入り口前」まで歩いて向かった。

迅は足早にトリオン戦闘体で向かい、先に行った。

 

 

・・・こっぴどく怒られるだろうが、

「被害が出る」よりはマシだ。

それに、ネイバーを撃破した記録もこれで残せた。

「敵では無い証明」も果たせたし、まぁ・・・力も示せただろう。

 

 

このまま本部の扉をくぐり、"分かっていたかのように"

受付の受付嬢に挨拶して、廊下をてくてくと歩いていく。

「割り当てられた生活居住区」の部屋まで、戻ることにした。


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