(没作品集) 異世界転生譚-1st. World Trigger   作:無狼

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(ワートリとは直接的な関わりがないものの、
建悟こと空(うろ)の能力の後付けや覚醒など、

今後はX.5話を割かせていただきます。)


RE第10.5話「不安定な存在の証明方法」

 

・・・私はどこにいるのだろうか?

 

 

とても狭く、

 

冷たい床の上で横になっており、

 

灰色の天井が見えている。

 

 

・・・天井に備え付けられた照明の、

白色ライトで明るさが満たされ、

それ以外は何も無く、無殺風景だ。

 

 

起き上がろうと身体を動かすが、何か動きづらい。

「・・・なんだ、これは?」

 

 

鎖・・・いや、枷だ。

 

 

しかも手足の枷に留まらず、その接続先には、

四方に金属棒のついた装置のようなものがある。

一応、自由に動けはするが、

だるい感じの重みでどうも気になる。

 

 

気がつくと、部屋の奥で何かが開く音がした。

・・・クリップボードを持った、艶やかで長い茶髪の、

だがどこか疲れた顔をした白衣の妙齢の女。

 

黒いスーツ"と思われる"、黒い警棒と「装甲服」の、

精悍で長身な青髪の男が入ってきた。

 

 

入って先に口を開いたのは、逞しい男の方だ。

「おはよう。お目覚めはどうかな、02-H111-M。」

 

「・・・最悪な気分だ。」

後ろに控えている白衣の女は・・・何か書き記しているようだ。

 

ここは恐らく、"何かの研究施設"なのだろうか、

そうすると・・・安易にサイドエフェクトが使えなさそうだ。

 

 

「・・・ここはどこだ?」

 

 

男「ここはセラエノ研究所だ、02-H111-M。」

 

「セラエノ?」

「・・・それに、その呼び方は癪に障る。やめてくれ。」

 

男「・・・、おっと、申し訳ない。」

 「だが、今はそう言わせてもらう。」

 

「・・・(モルモット扱いか、クソ。)」

 

その後ろで沈黙を保っていた白衣の女が、

なにやらぶつぶつと言いら出した。

女「知的交信を確認、・・・情緒的反応、指数20、」

 「アドレナリンの上昇数値確認・・・」

 

「・・・何の観測実験だ?」

 

男「さてね、後で教えよう。では話に戻ろうか。」

 

 

「・・・。(過去を視ようにも、"使えない?")」

 

 

男「02-H111-M。」

 「君は様々な能力を持っている事を知っている。」

 「空間操作、物体の転移、物質の構成能力、」

 「驚くべき強度を誇る身体強化能力。」

 「そして、時間事象への優位性抵抗。」

 「君はなぜ、それらの力を持った?」

 

 

「・・・知らない。」

 

 

女「心拍計数増加、具象システムの確認。」

 

男「・・・。そうか、では02-H111-M。」

 「君はなぜ、この場所に現れた?」

 

 

「・・・いや、分からない。」

「どういう意味なんだ?」

 

男「そのままの意味だ。02-H111-M。」

 

「・・・、よく憶えていない。」

「私は捕まったのではないのか?」

 

 

男「いや、違うな。」

 「02-H111-M、君は突然、この施設に現れたんだ。」

 

「・・・よく憶えていないな。」

 

男「見たところ、――――(ノイズ音)区の住民ではなく、」

 「かといってサーバー類似生体情報上に一致せず、」

 「存在しない血統類似性特徴の遺伝子を持っている。」

 「君はいったい何者だ?どこから来たのだろうか?」

 

 

何かが噛みあわない。

そう思ったが、・・・敵の心理作戦だろうか。

とりあえず、過去が見れないとなると、現況が未知数だ。

 

 

「・・・私か。」

「お前達"ネイバー(近界民)"の言葉を借りれば、」

「ミデン(玄海)の者だ。」

 

男「ミデンの者? ネイバーとは・・・?」

 

「・・・? トリオンのことは知っているだろう?」

 

男「トリオンとは一体?」

 

「・・・トリオンを知らないのか?」

 

 

女「・・・D1092、作業の続行を願います。」

D-1092と呼ばれた男は了承したそぶりを見せ、

白衣の女性は再び、沈黙と共に記録に勤しむようだ。

 

 

男「了解。・・・ああ、一体どんなものだろうか。」

 

 

「・・・簡単に言えば、生体エネルギーだ。」

「意志を力にするようなもの、といえば分かるだろうか。」

 

 

D-1092「なるほど。・・・意志を力に換えるのか。」

 

 

「そうだ。・・・なぜ、それを聞く?」

 

 

D-1092「ああ、初めて聞いたからだね。」

   「ネイバー、とは?」

 

 

「・・・トリオンの技術が発達した文明に生きる、その人類のことだ。」

 

 

D-1092「ふむ、ではミデンの者とは?」

 

 

「・・・あー、地球のことっていえば通じるか?」

「ネイバーの連中は別の次元、」

「いわば、別の世界からやってきた住民だ。」

 

 

D-1092「なるほどなるほど、地球のことと・・・」

   「では、今が――――年か知っていますか?」

 

 

「ん、よく聞こえなかった。もう一度言ってくれ。」

 

 

D-1092「――――年か、知っておりますか?」

 

 

「・・・ノイズでよく聞こえないんだが。」

 

 

D-1092「うん?・・・えー、――――ですよ。」

 

 

「・・・聞こえん。とりあえず、」

「確か覚えてる限りで、西暦の2013年か2014年のはずだ。」

「平成25か26年だ。まだiPhone5の頃の時代じゃないか?」

 

 

D-1092「・・・西暦?」

 

女「データサーバーから情報アクセスの実行が完了しました。」

 「どうやら、第三次産業革命の時代に存在した、」

 「旧プロトコル"WWW"規格方式の情報システムを利用する、」

 「旧方式の電波送信を行う、携帯情報通信端末装置のもようです。」

 「確かに、AD 2012から製造されていた点から鑑みるに、」

 「その時代に02-H111-Mが、生きていた可能性が高いかと。」

 

D-1092「なるほど。今から――――年前と。

   「第―次世界大戦の頃か。」

 

女「しかし、"トリオン"なる単語は検索エンジンから検出されませんでした。」

 「同じく"ミデン"も、"ネイバー"も、"トリオン"も。」

 

D-1092「分かった。Q-0902。」

 

Q-0902と呼ばれた白衣の女は再び、観測の姿勢に戻るようだ。

 

 

 

 

「・・・・・・さっきから、何の話を?」

 

 

D-1092「おっと、こちらの話だ。すまない。」

   「恐らく、可逆的時間遡行のワームホールに巻き込まれたのでしょうね。」

 

 

「・・・不可逆的、じゃなくてか?」

 

 

D-1092「ええ。我々の時代では、時間は空間に過ぎないのですよ。」

   「もっとも、時間遡行への抵抗性を持つ君は、異常なのですが。」

 

 

「・・・それはどういう意味なんだ?」

 

 

D-1092「そのままの意味ですよ、02-H111-M。」

   「つまり・・・異常な存在、ということです。」

   「恐らく、世界認識による歴史改竄が働かないが故に、」

   「我々の認識フィルター及び定義論理性の認知が正常に働かないのも、」

   「貴方の持つ可逆的時間遡行への抵抗性を持つがゆえ、なのでしょう。」

 

 

「・・・・・・意味はよく分からないが、」

「ここがよく分からない場所だというのがよく分かった。」

 

 

D-1092「その認識で構いません。」

   「君が理解しようがしまいが、我々には関係ないのですから。」

 

「・・・・・・(どういう意味だ、おい。)」

 

Q-0902「・・・感情的論理数値の大きな上昇、ここまでとしましょう。」

 

D-1092「分かりました。」

 

 

自分の沸き立つ疑問や不満を一切知らぬ、

存ぜぬと言わんばかりの物言い。

・・・一体どういう場所なのだろうか、ここは。

 

 

D-1092「では、02-H111-M。またお会いしましょう。」

 

 

「・・・・・・ああ。」

 

 

二人が立ち去り、それから虚しく時間が経つ。

・・・眩しくて眠れそうも無い明るさだが、

なんとなく眠気を感じる。

 

 

・・・座ったまま、その心地よい眠気に身を委ねてみることにした。


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