(没作品集) 異世界転生譚-1st. World Trigger   作:無狼

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RE第13.5話 「復讐」

 

 

「・・・・・・ん、ここは。」

 

 

白昼夢だろうか。

 

曖昧な時間の世界、

遠ざかる追憶の世界、

夢まほろばの幽玄なる間。

 

 

天より降り注ぐ7つの天之川。

 

中央に集まりしは、荘厳なる神殿。

 

世界の煌めきを蓄えた白銀の清湖。

 

叡智と、勇気と、器を体現せし無数の刀剣。

 

 

 

 

世界の数だけ、英雄、賢王、勇者たちの存在がある。

剣、刀、矛、槍、鏃、斧・・・・・・全て、「主人公たちのシンボル」。

 

 

 

本目建悟としての空は、「何も無い」。

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

虚ろなる表情から浮かぶは、「虚空」の色。

 

 

足下には、まっぷたつに折れた、碧き翡翠の輝剣。

そして、木端と化し血が爆ぜた、月桂樹の双大剣。

 

 

意味を知らないものの、空は直感する。

 

 

 

 

「・・・・・・ああ、私は。」

「死んでいて、生きている。」

「なら、私の手で、掴むしかない。」

 

 

かつて、"幻想に希望を抱き"、

 

 

"写実と幻想の表現者"であり、

"電子計算機の制御手"であり、

"剣と魔法の狂戦士"にして、

"白兵戦の紅き死神"である、彼は、

 

"不全輪廻の壊世界"のアクセス権限を利用して、

 

 

「正義の世界では存在できない、【狂気】を我が物とした」

 

 

 

「うごぁ、ごっ、が、がばっ」

 

 

不健全にして人の身には過ぎたる、異形の血。

 

 

 

 

何度死んだ彼とて、彼は人間に過ぎない。

 

 

 

 

何度も蝕み、蝕み、蝕み、

何度も壊し、壊し、壊し、

何度も悶え、悶え、悶え、

 

 

人間たらしめる、「人の心」を破砕する。

 

 

 

彼の心には、既に闇と諸悪がはびこっていた。

一度ならず、永久の人生を繰り返したのならば、

なおさら、「諦め」が生ずる。

 

 

『そして、彼は人間を捨て、【猟犬】となる。』

 

 

 

 

「GYiaaaAAAAAA!!! guURaaaaAAUHHHH!!! %$#"!&'」

 

 

 

 

復讐の女神、メガエラは微笑む。

もはや人を辞め、全ての記憶を手放した猟犬が逝き着く、その結末を。

 

矛盾に矛盾を重ねた、表裏一体の人格が崩壊し、乖離し、消滅した、

無限大のアナログが、1と0のデジタルに落とし込まれた、何者でもない。

哀れでありながら、神に復讐を誓った人の子の身勝手さと暴虐さを。

 

 

 

狂える千の貌を抱きし、偉大なる白痴の魔王の使者はほくそ笑む。

クトゥルフ神話の「混沌」を具現化する外なる神は、

 

自らの手で創り上げた世界<巨人の箱庭>を見下ろす。

全てが神の掌中にあり、物語の筋書きも、顛末も全てが望むまま。

それでも神は、「神への叛逆」を秘めたる人類の可能性に憧れを抱く。

 

 

自らも「デウス・エクス・マキナ」の一舞台に組み込み、

道化師のように面白おかしく演じ、脚色をつけ、破滅の演目題を記す。

 

 

 

 

狂える神々らの世界に存在する一つの種族、「ティンダロスの猟犬」。

<地球>に遍く存在する丸い時間とは反転した、鋭角の時間に棲む者ども。

 

 

完全体である球体に亀裂が生じたように、

 

 

空の体を徐々に蝕み、狂気に侵され、人の心を壊してゆく。

 

 

完全に亀裂が全てに及んだとき。すなわち、死を意味する。

 

 

不安定となった存在は、安定しようと科学反応を起こし、力が生まれる。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

・・・「人であること」を辞めた空は、その身を委ねる。

人の形でありながら、「人外」の身を宿したそれは、

酷く不快でありながら、実によく馴染んでいる。

 

 

「・・・・・・」

 

 

軽く腕を振るえば空間を薙ぎ、歩けば時を超える。

 

 

ところどころで時空間の狭間が観え、

 

 

ここ以外の世界中から、生命の鼓動と精神の囁きが訊こえてくる。

 

 

豊満に膨らんだ精神を喰らえ喰らえと、我が身が震えてくる。

 

 

今なら分かる。<捕食者の気持ち>が実に、よく解る。

 

 

 

 

「・・・復讐してやらねえと、気が済まねぇ。」

「久しく忘れていた・・・騙されたんだったな」

「あの道化やろうの済ました顔を壊してやりてえ。」

 

 

 

 

7つの天より降り注ぐ天之川の一つ、

自身がいた<ワールドトリガー>の世界へと、戻ることにした。


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