(没作品集) 異世界転生譚-1st. World Trigger   作:無狼

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前回、過激と書かせていただきましたが、
今回はあっという間に終わりとなります。

ワートリでは強者感ある主人公でも、
劣悪な条件下で負けることもあって当然と見做しています。


…そして仕事めぇ!急いで切り上げてしまうため、
少し強引な終わり方と思います、申し訳ありません!


RE第15.5話「γ-死」

 

 

 

 

小太刀だ。イメージした通りの肥後拵。

ボロボロに崩れてしまいそうな左手の中に、

まっすぐな大脇差(刃渡り45cm、全長70cm)がある。

 

「…うん?」

 

 

確かにイメージした大脇差の通りだが…

…右腰の鞘は打刀拵えなのに、反りが少ない小太刀の刀身だ。

…居合はしないから、あまり影響はないが…

 

それよりも、刀身が「紅い」。

サメの牙のような刃紋で禍々しくも、美しい。

 

 

「……」

 

 

思念とはいえ、舌を断ち切られた猟犬どもの顔は苦痛だ。

人間というより猿の角張った顔だが、酷く歪み不細工だな。

 

 

「へっ。…運がいいのか、悪いのか。」

 

 

少し痛みが引いてきた。

同じボロボロな右手で、黒漆の鞘を逆手に構える。

 

 

 

 

 

抜刀しただけで分かる。

圧倒的に不利な環境でも脅威足り得る、思念の刃。

それだけ「奴ら」に近づきつつある証拠でもあるが…

 

 

 

 

「どれだけ耐えきれるかな…」

 

 

とはいえ、まだ10体。舌を断ち切っただけであり、

いくらでも再生する上、今の相手との相性が悪い。

どれだけ防ぎつつ、脱出を図るかだが…

 

 

奴らは時間を与えてはくれない。

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

今度は左右に広がり、逃げ場を無くす形で囲まれる。

奴らはバカじゃない。非常に頭が良い。

今ですら「遊び」や「嗜好」にしか過ぎないのだ。

 

 

奴らは飢えない。感情をエサにするが、絶対必要じゃない。

 

 

だからこそ、よりタチが悪い。

逃げ場を与えつつも逃げ込めない裏露地に追い込み、

最後に絶望した所で弄び、喰らうつもりだろう。

(俺もその嗜好がだんだん分かりつつある)

 

 

「……」

 

 

左右に広がったまま、奴らは動かない。

こちらも抜刀したまま、動けない。

 

 

…奴らから痺れを切らし、「また舌で」飛ばしてくる。

斬るほど弱らせられるが、それは俺にも言えてしまう。

 

一つ打開できるとすれば…

「黒トリガー」が身体にあるはずだ。やってみるか。

 

 

 

 

「…?……??……」

 

…だが、いつものトリオン換装が出来ない。

 

 

戸惑いながらも、正面にいる一体がこちらに歩み寄り、

再生させた舌をまた飛ばしてきたので、切り伏せる。

 

 

…思念の鋭舌は宙を舞い落ちるが、消えて形が無くなる。

 

 

 

 

…このまま、沈黙の刹那が過ぎていく。

 

 

この場にいる"9体"全てが、舌を飛ばしてきたので、

再び身構ーーー

 

 

 

後ろから「抑揚のある発音」が聞こえた途端、…!?

 

 

 

 

視線が、体が、動かない。

クソッ、束縛の詠唱か!しまっ

 

 

足下に、

左右に、

背後に、

頭上に、

 

別々のところから舌が精神の身体を突き破り、

もう、目の前に、食いつく猟犬のアギトが、目のま

 

 

 

 

…!?……!! ー!!!

 

 

ーーーーーーーーーー、

ーーーーー、

ーーー、

ーー、

ー。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「・・・、・・・。……」

 

 

瞠目、激しい動悸、焦燥、不安、絶望、恐怖、死、死

 

 

「・・・。」

 

 

ここは…白い天井?

確かに見たことのある、カーテンに…

 

 

 

 

 

 

 

 

橋下「…あら、お目覚めですね。」

 

「・・・。」

 

橋下「空さん?」

 

「・・・・・」

 

橋下「?」

胸ポケットのミニライトで左目を照らしてくる。

 

まぶしい。

 

生きてる、のか?

 

夢、だったのか?

 

 

橋下「う、空さん? (焦りのあるトーン)」

 

「・・・・・・。」

 

橋下「もしもし、空さん?分かりますか?」

 

 

…生きてる…

 

 

 

橋下「・・・あ、はい?」

 

 

…生きてるんだな、ここは元の世界だよな…?

 

 

橋下「空さん?大丈夫ですか?」

 

 

「…ぁ……てる…」

 

 

橋下「…はい、何でしょうか?」

 

 

「…生き…てる、んだよな…?」

 

 

橋下「はい、そうd…わっふ」

 

 

 

 

唐突に悲しくなった。怖くなった。信じられなかった。

 

 

長く艶やかな黒髪で、茶系のひとみが綺麗な女性の、

彼女の柔肌に抱きつき、不安から抱き寄せてしまう。

 

 

 

 

橋下が倒れる形で抱きつかれ、かなり驚きながら、

黒縁のメガネがカランと落ちていく。

 

…様子を見ながらも、微笑みを浮かべて頭を撫で下ろす。

 

 

橋下「…大丈夫、ちゃんと生きてますから。」

  「ね、大丈夫。…よしよし。」

 

 

橋下も満更ではない笑みのまま、抱きつかれたまま、

焦燥した表情でしがみつく空の頭を撫でていく。

 

 

橋下「(…相当強い力。怖かったのかな)」

  「…無事です、大丈夫ですから。」

 

 

20代特有の豊満な胸元に顔を埋められるのはいいが、

ずっとこのままだと痺れて痛くなっちゃうなぁ、

と苦い笑みを少し浮かべたが、気が済むまで待つ事にした。

 

 

 

 

 

橋下「(…う〜、ちょ、ちょっと流石に限界…)(汗)」

 

「・・・(すっ)」

 

 

ようやく離してくれた。

かなり太腿が痺れてベットにもたれかかりながら、

橋下は空の目元を手で拭ってあげる。

 

 

橋下「…(こてり)(に〜)」

 

 

笑みを浮かべて患者の顔を見つめる。

いつも通りの仕事顔だが、心から快復を願って。

 

 

「……」

 

 

橋下「…落ち着きましたか?」

 

 

「…はい。」

 

 

橋下「…良かった。」

 

 

「……」

 

 

橋下「私でよければお話、聴きましょうか。」

 

 

にこっと笑顔を見せて、心配させないように。

 

 

「…夢…と思いたい、です、酷いもの、…で」

 

 

橋下「うんうん。…大丈夫。」

  「ちゃんと貴方はここにいますよ。」

 

 

「…悪夢…やっと、帰れた、やっとだ…」

 

 

橋下「…そっか、うん。…大丈夫、うん。」

 

 

「……」

 

 

 

 

橋下「…?」

 

 

「あら、安心したのね…」

 

 

「…色々迷惑かけてばかりね、もう…。」

 

 

「…ゆっくりお休みなさい。」

 

 

 

 

 

「……まだ数十分しか経っていない、体力が落ちているにしては…」

 

 

「あら、先生。……ええ、容態は安定しています。」

 

 

「…はい。一度意識を取り戻したのですが…」

 

 

「…はい、かなり状態が悪化していると思われます。」

「さきほど、かなり怯えていまして…はい、そうです」

 

 

「…分かりました、明日から非番ですので…ええ、問題ありません。」

 

 

「…分かりました。……からですね、お伝えします。」

「……はい、分かりました。先生もお疲れさまです。」

 

 

 

 

「……はぁ。…早く元気になってくださいね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

途切れ途切れながらも、夢まほろばに聞こえた気がする。

途中から記憶が曖昧だったが、そんな言葉を聞いてから、

俺は確かに、そこ意識を手放した気がした。


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