Fate/Apocrypha Lost   作:紫 カナメ
<< 前の話 次の話 >>

13 / 32
第四節 迷子の小鳥と心優しい魔術師

コポッ…ゴポゴポッ……

 

 

っ…くるしい…いきが、できない…

 

 

ゴオオォォォ…

 

 

ながされる…まっくらなきおくのうみのそこに…

 

 

『__助けて…』

 

『痛いよぉ…』『頼む誰か…!』『嫌だ…嫌だぁ!』『苦しい…』『死にたくない…死にたくない…』

『なんでこんなことに…』『せめてこの子だけは…!』『おっ(かあ)…痛いよ、苦しいよぉ…』『怖い…』『誰か、助けて…』

 

きこえる…たくさんのひとがくるしんでいるこえが…

 

もういやだ…ききたくない…!

 

 

 

『■■兄さん』

 

 

 

 

「!?」

 

ラーヴォルバ城塞のとある一室。長い黒髪の少年は目を覚まし、見覚えの無い天井が目に入った。

 

「ここ、は…?」

 

少年はまだ舌足らずな子供の様な口調でぽそりと呟き、ゆっくりと体を起こした。

 

真っ白な壁に床には赤紫色の絨毯(じゅうたん)が敷いてあった。部屋はそこそこ広く、机や椅子などの家具が置いてあり、少年はふかふかのベッドの上に居た。

 

服装も最初に着ていたぶかぶかのワイシャツではなくサイズもピッタリな白い男物のワイシャツに、ストリングタイ(紐ネクタイ)、紺色の長ズボンに変わっていた。

 

ガチャッ

 

「目が覚めた様ですね」

 

と、扉を開けて部屋に入ってきたのはアニムフィス・ノーラム・ラーヴォルバとガーディナ・オルグド・ラーヴォルバだった。

 

少年はふたりが入ってきた瞬間、怯えて「ひっ…」と声を出した。

 

「怖がらなくても大丈夫ですよ。私はアニムフィス・ノーラム・ラーヴォルバ。庭園で倒れていたあなたをここまで運んだんです」

 

「おれ、を…?」

 

「はい。ここは安全ですから、どうか安心してください」

 

「……アニムフィス。この少年のことは他の奴らには黙っておくが、出入り口の前に見張り役のホムンクルスを二体つけるからな。あと、この別館に訪れる者はあまり居ないが、くれぐれもこの少年を城塞の外の確実に安全な場所(・・・・・・・・)に送るまでは別館の外には出すな。良いな?」

 

「はい、ガーディナ叔父様。協力してくれてありがとうございます。」

 

「いや、可愛い姪っ子のためなら私はなんでも協力しよう。こう見えて私は人を欺く演技が上手いからね」

 

と、言ってガーディナは部屋から出て行った。

 

「具合はどうですか?お腹とか空いてませんか?」

 

「あ…いや、だいじょうぶ…です…」

 

「そうですか…早速ですが、あなたは何故あんな所に?」

 

「……おれにも、わからない。ただ、さむくてくらいばしょにずっといて…こわくて、くるしくて…しにたくないっておもってひっしににげだしたんだ。しぬのがこわくてこわくて、にげるのにひっしになってきづいたら、

あのていえんのなかでたおれていた…」

 

「……そうですか。」

 

と、アニムフィスは少年を優しく抱き締め、頭を優しく撫でた。

 

「…え?」

 

「とても怖かったのね、大丈夫。あなたは私が守りますから…」

 

「…あり、がとう……」

 

アニムフィスは少年からゆっくりと手を離し、微笑んだ。

 

「そうだ。お名前はなんというんですか?」

 

「なまえ?…おれの、なまえは………………ごめん、おれになまえはないんだ」

 

「そうですか…じゃあ、代わりに私がつけます!」

 

「え?…い、いいの?」

 

「はい!ええと…『月夜(つくよ)』なんてどうでしょう?」

 

「つくよ…?」

 

「はい。前日、書物庫で日本の神話の本を読んだんです。その中で月詠(つくよみ)という神様が一番印象的であなたの髪の色、綺麗な黒で外見などが私が想像していた月詠に似ているので…」

 

「つくよ…つくよ……月夜…いいなまえだ。ありがとう」

 

「ふふ、どういたしまして。しばらくの間、よろしくお願いしますね。月夜くん」

 

「あぁ、よろしくたのむ。アニムフィス…ながいからアニムってよんでもいいか?」

 

「えぇ、良いわよ」

 

アニムフィスと謎の少年、月夜…ふたりの出会いによって第二次聖杯大戦の運命が大きく変わるとは、

まだ誰も知らない____。

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。