Fate/Apocrypha Lost   作:紫 カナメ
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血飛沫(ちしぶき)注意。
真名バレあり。


第六節 狂気に汚染された湖の騎士

 

同時刻_白いワンピースの上に桜色のコートを羽織り、ピンクのパンプスを履いた少女、ルーラーはトランクを持って乗っていたバスを降りた。バスを降りて近くの街にあるタクシーに乗り、カーディフに向かう予定だった。

 

着物の姿だと目立ってしまうため、現界した街で服を買い、ただの旅人として振る舞っていた。

 

「………ん?」

 

と、ルーラーは遠くの方から計り知れないほどの殺意を感じた。

 

「…この邪気、この殺気…妖術で汚染された英霊か」

 

ルーラーが後ろに振り向いてみると、そこには真っ黒な影を纏った漆黒の鎧姿の騎士が立っていた。

 

「Arrrrrr…」

 

「狂化の術がかかっている。…貴様、狂戦士(バーサーカー)か」

 

と、ルーラーが問い掛けた瞬間、漆黒の騎士からギギギギ…と音が鳴り、雄叫びを上げた。

 

「Arrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrっ!!!!」

 

バーサーカーは赤い脈の様なものが浮き上がっている黒いチェーンソーをエンジンをかけて持ってルーラーに襲い掛かって来た。

 

ルーラーはそれを避けて着物姿に戻り、一旦距離を取った。

 

「……貴様、(わらわ)調停者(ルーラー)であることを承知で襲っているのか?」

 

「Arrrrrr…Uooooooooooo!!」

 

「…言語を話すことが出来ぬのか、」

 

また、バーサーカーがルーラーに襲い掛かろうとしたその瞬間__

 

「セイバー!」

 

と、何処からともなく少年の声が聞こえた。直後、バーサーカーは何かに弾き飛ばされ、かなり離れた所に落下した。

 

ルーラーの前には、赤と黒の鎧を纏い、赤紫色のマントをたなびかせ、黒い龍の角の様な髪飾りを付けたオレンジと黄緑のオッドアイの金髪の騎士が居た。

 

(あかがね)のセイバー』_

 

「危ないところでしたね、ルーラー」

 

と、声をかけてきたのは金髪で緑色の瞳の少年、銅のセイバーのマスター。レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイだった。

 

「さて、あれが(くろがね)の陣営が召喚した黒化英霊ですか…禍々しい魔術がかかっていますね」

 

「…あれはこの地に伝わる伝説の騎士王に仕えていた騎士の英霊、湖の騎士。というらしい」

 

「ルーラー特有のスキル、『真名看破(しんめいかんぱ)』ですか。湖の騎士…となるとあれは円卓(えんたく)騎士(きし)のひとりですか、湖の騎士…ランスロットですか」

 

「……サー・ランスロット」

 

と、銅のセイバーはぼそっと呟いた。

 

「バーサーカー!何をしているのだ!?さっさとルーラーを殺さんかぁっ!!」

 

「「!」」

 

バーサーカーの後ろから怒鳴り声が聞こえた。そこに目を向けてみると、神父服を着た中年男性が居た。

 

「あれは、鉄のバーサーカーのマスターでしょうか?」

 

「殺れ!バーサーカーっ!!銅のセイバーを殺し、ルーラーの首を取れ!!」

 

「A…arr…!」

 

鉄のバーサーカーのマスター、ロディニオ・ダヴス・クリスティアはバーサーカーに命令をするが、バーサーカーはギギギギッと震えているだけで一歩も動かなかった。まるで目の前に立っている銅のセイバーに怯えている様に…

 

「チッ…仕方あるまい!令呪(れいじゅ)を持って命ずる、バーサーカー!恐れず銅のセイバーを殺せ!!更に令呪を持って命ずる、セイバーを倒したらすぐにルーラーの首を取れ!」

 

と、ロディニオが言うと、彼の右手の甲にあった令呪が二画消えた。

すると、バーサーカーが唸り声を上げ、真っ黒に染まった剣を取り出した。

 

「…無毀なる湖光(アロンダイト)か、」

 

「Arrrrrr…!」

 

「言語の話し方を忘れ、ただ唸り、ただ殺すことしか出来なくなった貴様に___円卓の騎士を名乗る資格はない!」

 

「「!!!??」」

 

その時、その場の空気は一瞬で凍り付いた。セイバーの空気が変わり、重すぎる殺気がその場にいた者達の背筋をぞぞっと震わせた。

 

「貴様に宝具を使う必要は無い。ましてや、首を落とす必要も無い。その忌々しい鎧ごと斬り裂いてやる」

 

「Pe、lli…no…re…!…a…Arrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

バーサーカー、ランスロットは無毀なる湖光(アロンダイト)を持って銅のセイバーに向かって走り出した。

 

「そうだ!殺せ、バーサーカーっ!セイバーを倒し、ルーラーの首を取れ!!聖杯が欲しいのなら騎士道などくだならいものを捨て、思う存分に暴れ、破壊するがよい!!」

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!」

 

「…ここまで愚かだとはな、ランスロット卿。_残念だ。悪いが、カーディフの白亜の城塞にいるあの子(・・・)にお前のその無様な姿を見せたくはないのでね」

 

アロンダイトがセイバーに突き刺され様とした時、一瞬だけその光景がスローモーションの様に流れた。

セイバーはアロンダイトを避け、腰に差していた剣の柄を握り締めた。

 

ブシュウウゥゥゥゥゥッ!!

 

その時、一瞬何が起きたかレオナルド以外誰もわからなかった。ただ、わかっていることは、バーサーカーがセイバーによって胴体を斬り裂かれ、傷口から鮮血が噴水の様に吹き出ているということだ。

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!?」

 

「……せめて、安らかに眠れ。ランスロット卿」

 

バーサーカーは地面に倒れ、足から少しずつ消滅していった。

 

「ば…馬鹿な…わ、私のサーヴァントが…!?有り得ぬ…有り得ぬ!」

 

「ですが、これが現実です。鉄のバーサーカーは消滅、鉄の陣営のサーヴァントは残り6騎になりました。」

 

と、レオナルドが言った直後、数台の黒い車が走ってきて、止まると中から魔術協会の関係者が降りてきた。

 

「ロディニオ・ダヴス・クリスティア。貴方を捕虜として捕らえます。後でじっくり話を聞かせてもらいますから」

 

ロディニオは関係者に車に乗せられ、魔術協会に連れていかれた。

 

ルーラーはチラリと銅のセイバーの方を見た。セイバーの顔と鎧、剣にはバーサーカーの血がべっとりと付いており、恐ろしい姿をしていた。

 

(……さっき言っていたあの子(・・・)とは一体…)

 








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