彼岸の花を、あなたに   作:メーア

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彼岸の花を、あなたに

僕は、いつ死んだろうか。

 

何気ない日常の中で、ふとそう思うことがある。

 

大きなミスをした時、取り返しのつかない愚行をしてしまった時、耐えきれないことがあった時。

様々な時に人は、「死にたい」と独り言を言う。

その死にたいは、本当の死を迎えたいわけじゃなく。

その後悔から、慚愧から、屈辱から、悲しみから逃れたいだけ。

たったそれだけで死ぬような人はいない。

ちょっと口にして見たかっただけ。言うなれば「耳に残った歌を口ずさむ」ようなものだ。

そこに大それた意味はない。

 

でも、思いつめてしまう人は、それだけで死んでしまうんだろうか。

 

例えば、取らなければいけなかったテストで、ひどい点を取ってしまった。

例えば、成功させなければいけない手術を失敗させてしまった。

例えば、離してはいけない手を、離してしまった。

 

そんな、時が経てば何れ消えるような出来事で、命を無駄にする。

 

ようは、「諦め」たんだ。

 

そんな人の墓には、決まって赤い、名も知らぬ花が添えられている。

線香花火をひっくり返したような鮮烈な赤をした花が、添えられている。

 

なんの意味があるのか。

何のための添えたのか。

誰が添えたのか。

 

誰もわからない、誰も知らない、誰も覚えていない、その花は、時が経つにつれ、ゆっくりと、ゆっくりと萎んでいく。

 

最後には、ぽとりと、墜ちた火花のように散っていく。

 

まるで、生きるのを諦めたように、鮮やかな赤を、燻んだ白に塗り替えて。

 

その花を見るたびに。

どこか、物悲しくなる。

胸が痺れたように苦しくなるんだ。

何故かは自分にもわからない。

ただただ、悲しくて、胸が痛いんだ。

胸にポッカリと、穴が空いているはずなのに。

 

その花が、その穴を埋めてくれるような、そんな気すらしている。

 

でも、僕はその花の名前を知らない。

 

赤くて、紅くて、赫いその花の名前。

 

教えてくれるような人はいない。

 

 

僕のお墓の周りに、なにかを諦めたように散っているその花の名前。

 

僕が、初めて感情をいだいた、その花の名前。

 

彼岸の川の向こうに咲いた、あの赤い花。

 

近づけば、わかるのだろうか。

 

触れれば、知れるのだろうか。

 

胸に抱けば、聞けるのだろうか。

 

でも、僕はまだ、この川を渡れない。

 

深い闇のような川に、僕はまだ、踏み入ることができない。

 

まだ、僕は。

 

 

 

僕は、この花のおかげで………。

 

「深い思いやり」を、ありがとう。

 

名も知らぬ誰か。

 

「また会う日を楽しみに」

 

きっと、また会えるから。

 

いつか。

 

 

だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕を

 

わすれない

 

 

でね





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