三十路ニートエリーチカの居酒屋飲み歩き日記   作:おうかわりん
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鹿角理亞ルート 28

 起床した時に目の前にエロゲーヒロインがいて欲しい。

 コレは以前までのツン期な理亞ちゃんが残した名言である。

 夢から覚めた後に現実に立ち返り、夢からずっと覚めなければ良いのにと願うことは人間誰しもある。

 ニート時代に私がそれを亜里沙に口にすれば、おまえを永眠させてやろうかと殴りかかってくることは確実――今となっては笑えないギャグになりつつあるけど。

 理亞ちゃんは自身のことをキモオタとか、腐っていたとかネガティブな方面に呼称することもあるけれど、根本的な部分では今もそれほど変わらない。オタク気質であるというのではなく、好きなものに対して一生懸命ということ。

 ただ、何から何まで全視界にエロゲーヒロインが映るようポスターを貼り付け、基本的に起床して目の前にあるのがパソコンの画面という生活は健康に悪いので控えて頂きたい、今はパソコンの画面ではなく、思い出に残った人たちの顔や立ち絵(エロゲーらしい表現)があるというけれど、夜にはちゃんとベッドで寝ていて欲しい、基本的に睡眠のタイミングが寝落ちというのはやはり心配なのである。

 ――心配されるのはおまえのほうだろというツッコミは甘んじて受ける。

 

 そんな鹿角理亞ちゃんと同じように、

 パソコンに向かいプログラミングされた機械みたいに作業するヒナプロジェクトスタッフの方を眺め、目が死んでいるとか、どこを見ているのか分からない、もしかしたら死んでいるのではないか――

 そんな空虚な妄想をしてしまう、仮に理亞ちゃんのお菓子を食べさせようものなら元気になってしまうかもしれない、アンデッドには毒属性の魔法を使うと回復する。

 アンティークの時計みたいに同じ動作しかしないスタッフの皆様をみて、ヒナの正体は土のスカルミリョーネなのではないかと疑いを持ったけど、口にした瞬間バックアタックを食らって私が死にそうだからやめた。

 

「はーい! スタッフの皆さん差し入れでーす!」

 

 私や理亞ちゃんがドン引きして何も口にしないのを承知しつつ、種田さんが私の肩を持ち、押し出すようにしながら言葉を発した。

 差し入れを持ってきた私ではあるけれど、彼女の反応や言葉尻から察するに絢瀬絵里が差し入れみたいな扱いであるし、以外に力が強い彼女が私が逃亡しないように押さえつけているので、あ、これは彼女が何かしら私にさせるつもりなんだなって分かってしまった。

 スタッフの皆々様は種田さんがまためんどくせえ仕事持ってきやがったと言いたげな顔をしながらこちらに目を向け、ディスプレイに映る桜井綾乃(だと思われる)と私自身を見比べ、なんどもなんどもパソコンと私を見比べ、そして叫んだ。

 

「リアル桜井綾乃ちゃんだーーーーーー!!!!」

 

 テンションは跳ね上がったものの、基本的にスタッフの皆様は目が死んでいらっしゃるので、死んだ人間がキョンシーとなって襲いかかってくるという場面を想像した。ゾンビでもキョンシーでもキョンキョンでも何でもいいけれど、理亞ちゃんのお菓子を持ってくるべきだった、もしくはモンスターボールとか投げつけてゲットしておくべきだった。

 

 ――いえ、コレは胸に何も仕込んでません、本物です!

 ――おさわり不可! 不可! ダメです! ステイ! ステイ!

 ――誰か竿もってこい! 桜井綾乃陵辱シーンの幕開けだ!

 

 スタッフの皆様の暴動は私自身が調理室に逃げ込むまで続き、同じく這々の体で逃げ出してきた理亞ちゃんと一緒に私はガクガクと震えた。

 私に抱きつくように体を寄せる彼女が、ピャァァ! とか、ピギャァァl! みたいな声を上げ、私はゾンビに襲いかかられる想像をした、理亞ちゃんのロリ声は相変わらずゾンビのうめき声にしか聞こえない。

 なお、私や理亞ちゃんが襲われている間に種田さんはヒナに電話を掛け、締切に間に合いそうです! 皆のテンションがすばらしいことになっています! と言っていたので、ヒナに私たちは担がれたんだなって察した。

 これで全国のエロゲープレイヤーが発売日にゲームができるのならば、安い犠牲なのかもしれない……。



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