三十路ニートエリーチカの居酒屋飲み歩き日記   作:おうかわりん
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鹿角理亞ルート 29

 調理室に逃げ込んだ私たちに「足りなぁい」「足りなぁい」と言いながらテレビから這い出る貞子みたいな(運動不足の結果)感じで私たちににじり寄り「寄越せぇ!」「寄越せぇ!」と口々に呪詛の言葉を吐きながら迫ってきた。寿命が尽きる前に陵辱されて殺されるパターンだなって覚悟したけれど、彼女たちは恐ろしい嗅覚で私たちが持ってきた差し入れに気が付き肉に飢えたゾンビみたいになってしまっただけで、私たちを殺しに来たわけではない(たぶん)

 私の差し入れは彼女たちの精神面であるとか、人としての矜持であるとかを回復し、さて仕事すっか仕事みたいな感じでぞろぞろと帰って行った。その様子を星飛雄馬のお姉ちゃんみたいに見ていた種田さんは、ヒナプロジェクトのために一肌脱いでください! とこちらに向かって懇願し、何をさせるのかと思いきや、スタッフ分の食事を用意してくださいということで、食材等は種田さんを中心としたスタッフの皆様が20分くらいで用意してくれた。

 その時にすでにこちら側に断る権利はないと察したかしこい(懐かしい響き)私は、理亞ちゃんにはイラストやスマホのエロゲーの脱衣麻雀で真姫が担当しているキャラの攻略を命じた。

 完成されたイラストであるとか、私の作った料理を眺めた社員(スタッフと違い人権がある)の皆様は、社長が連れてくるんだから変人(クリエイターとして優れているの意)で当たり前だったみたいな反応を示し、スタッフの皆様に料理を作るわりにはずいぶん量が多いなと疑問に思いつつ、まあ、大食いの人でもいるんだろうみたいな感じでどんどん料理を提供していった――なお、スタッフだけではなく、ヒナプロジェクトにやってきたお客様にまで昼食が提供され、今日は質のいいシェフがいると説明されたらしい、私はシェフじゃない。

 

「ああ、素晴らしいなあ……二次元素晴らしい……

 なんで私は二次元の住人じゃないんだろう、二次元のキャラだったらヒロインとエッチなこともできるのになあ……」

 

 ツンデレのツンに偏っていた頃の発言に戻ってはいるものの、外見はきれいな方であるのでギャップが半端ない。

 ”鹿角半端ないって!”とネタにする発言をしようかと思ったけど、ネットで流行る流行語って鮮度が落ちやすいからネタにする時には気をつけないからやめようと思った、誰に対する配慮なのか。

 リアルではもう二度と麻雀はしないと心に決めている私も、コンピューター相手なら勝てば相手が脱ぎ、負けても自分が脱ぐわけではない、最初の頃はちょっと試しでとやり始めたら、あ、いい感じで勝てるかも、もう少ししたら全部脱がせる! というところで相手がイカサマかってくらいに強化され「卑怯な! チートめ! チートめ!」と熱くなってしまい、絵里先輩ステイ! と口の中に理亞ちゃん作成のお菓子を放り込まれ、だんまりをせずに居られなかった。

 予想外に毒物を口に放り込まれると、さすがの絢瀬絵里も少し毒属性攻撃が通る。

 

「桜井綾乃ちゃんと脱衣麻雀で勝負してみる?」

 

 と、二次元キャラクターっぽいポーズを取りながらスマホの画面に集中している理亞ちゃんに声を掛ける。

 最初のほうが意味がわからなかったみたいで、焦点の合ってない視線をこちらに向けたものの、首を傾げながら飲み込むように言葉の意味を反芻し、やがて意図に気がついたのか、

 

「ああ! いえ! 脱衣麻雀は二次元オンリーと決めていますから!」

 

 反論が意味の取りづらいものであったけれども、アラサーのBBAを脱がせる趣味はねえ! くらいに受け取っておく、ぜんぜん違うけど。

 ツバサなんかもそうなんだけども、口にした言葉にまったく違う意図を含ませることが多々あり、言葉を一度聞いたくらいでは意味の取れないコトを言ったりすることもある。

 花陽に一度、絢瀬絵里は上から指示して使おうとすると反発するし、指示を通して使ったとしてもそこまで使える人じゃないとしか受け取れない発言をしたことがあるけど。どういう状況で言われた台詞であったのかとか、なぜそんな言葉を吐いたのかを考えると、花陽の優しさがよく分かる。ただもう少し丁寧な言葉で言えなかったのかという問いは残るんだけれども。

 ついでに言えば真姫が怒ったのも意図に気が付きつつ、泥かぶるような発言をした花陽を許せなかったものであるから。

 真姫は否定すると思うけど、私なんぞよりも花陽のほうが大事にしている、恐らく彼女に何かあれば真姫は感情を出して取り乱してしまうだろうし、冷静にはなれないと思うし。

 

「そうかなあ……意外とまだイケそうじゃない?」

 

 流し目を向けつつ露出している部分を艶かしく見せつけてみると、理亞ちゃんはこちらをじっと見ながら、つばをゴクリと飲み込んだ。

 その美味しそうなものを見るような目は少々気になるけれども、私自身に需要がないのは確定的に明らか。

 以前、芸能人なんかを特集していたりする週刊誌に水着を見たいスクールアイドルは? というランキングでμ'sでは花陽と真姫とことりが上位にランクイン。私なんかは笑いながらニコには負けないよねえと言いつつ、同じく見ていたツバサもニコさんには負けないわと言っていた。そこで会話を終わらせておけば平和にニコをディスって終わったトークなのに、私とツバサはどちらが上位にランクインしたのかで喧嘩になった。

 人気絶頂時に水着の写真集出して死ぬほど売れなかったツバサには勝てるだろうとふんだ私にも多少問題があるけど、水着になった所であなたの需要の無さは変わらないと宣言したツバサにも問題があると思う。

 結局、アンケート調査の結果を編集部に直接来訪して問い合わせ、他の人にはバラさないでくださいね? と言われて見せてもらったアンケート結果を見て、私たちは肩を組んで退室した。

 需要がない者同士喧嘩をする必要性もないと気がついた瞬間だった。

 

「こう……水着になってさ……脱衣麻雀とかで」

「水着になって、私が声を当てたなら、

 いくら需要のない絵里ちゃんでも人気投票一位いけるかな?」

 

 久方ぶりに司令の声を聴く。

 なぜここにとか、なぜ私が作った料理を食べているのかとか、

 いろいろツッコミたい衝動にかられてしまったけれど、理亞ちゃんは絢瀬絵里が自分よりも年下の女の子にディスられたと思って一気に表情が険しくなる。

 いかんせんロリロリしい外見と声の司令がよもや還暦前の人には見えないから仕方ない―― 



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