アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

105 / 199
鹿角理亞ルート 24

 皆に気を使われて行われたイベントでさえ、

 気合を入れて励んだコトでぶっ倒れるという結果を招き、

 妹の亜里沙の逆鱗に触れたので、

 今度こんなコトしたらベッドに縛り付けて放置するぞ!

 と悲壮な決意を込めた表情と涙まじりの声で宣言された。

 琴線に触れた多くの同士の同意を得、

 私自身の人権が軽く蔑ろにされそうだと察した私は、

 助けを求める目を方々に向けたものの、

 むしろお前の自業自得ではないか――

 冷たく扱われた私は、元堕天使な善子ちゃんにどうしよう? 

 とアドバイスを求め――

 だったら一度”絵里さんがいない状況下”を作ればいいのでは?

 と、えらく感銘を受けるお言葉を得た。

 彼女がどういう意図を持ってその発言をしたのか――

 それは私の判断することではないとして、

 絢瀬絵里の行動は極めて早かった。

 事前準備に取り組み、荷物の整理や

 外出時に生活する用の基盤を入手することに成功した。

 アクティブな趣味を持つ海未に、

 登山用の道具は! 山で遭難したときのための準備は!

 と、やたら好感度を上げそうな選択肢を選び、

 海未を通して亜里沙にその情報が行っているとは露にも思わず、

 家出を敢行する前日はやたらハイテンションで一日を終える。

 ロシアで寒山にも登ったことがある私はと言えば、

 東京の自然溢れる場所でなどなんてことはない、

 それが一日、一週間であろうとも強く生きていける――

 鉄腕ダッシュとかの番組でリーダーが専門家の先生と探索しそうな、

 手で掬って飲めば美味しい! とコメントできそうな流水であるとか、

 見れば思わず悲鳴を上げそうな両生類、鳴き声がうるさい鳥類、

 タヌキを中心とした獰猛な動物類――

 自然あふれる場所には基本的に人間はお呼びではない。

 それに気がついたのは――戻るには道のりが真っ暗で下手すると

 命を落とす危険すらある状況に陥ってから。

 うわぁ、やばぁい! ついでに暗闇もこわぁい! 

 と、年甲斐もなく悲鳴を上げそうになった瞬間に肩を力強く掴まれた。

 襲いかかる前に肩に手をかけるなんて紳士的な熊もいるもんだな、

 などと、アホなことを考えながら振り返ると、

 熊なんかよりもよっぽど怖い、憤怒の表情(金剛力士像クラス)を携えた妹がいた。

 園田海未(ことりの代打)星空凛と私がヘマした時に容赦ないメンツを取り揃え、

 これで希がいれば、リリホワ結成だな――

 そんな事を考えつつ、帰り道を罵倒と共に進み、

 エリチカの初めての家出めでたく完結――どっとはらい。

 

 

 私が多少なりとも反発を示したのが良かったのか、

 エトワールにて監禁されるイベントは回避できた。

 人権が最下級であるのは元からであるので仕方ないにしても、

 アクティブな何かをさせると無茶をするから、インドア系でなにかいい仕事はないか――

 となった時、ヒナが天啓を閃いたと言わんばかりに、

 ”では、無理のない範囲でシナリオでも書かせましょうか?”

 あらゆる面々が向いているとか、それは良いと言わずに、

 面白そうだからやらせてみよう――

 私がやりたいとか、面白そうね! とポジティブな反応をして、

 シナリオを書くという方面になるならばコメントはしないんだけども、

 羞恥心にまみれた感じを見たい――(理亞ちゃん)

 エロい演技指導したい――(西木野真姫)

 私はともかく周囲はやたら盛り上がり、

 盛り上がりに盛り上がった結果、いい出したヒナも冗談でしたとはいえず、私もやらないわけには行かず。

 結論から言えば自身をモデルにした桜井綾乃ちゃんの和姦(ヒナの配慮)シーンを描き、

 思ったよりもイけるじゃん! とヒナプロジェクトの皆様の推挙もあり、

 いちライターとしてスタッフに名を連ねることとなったのは――

 良かったんだか悪かったんだか。

 なお、西木野真姫主導の絢瀬絵里エロゲー声優化計画は、

 思ったよりも体力を使うという理由で却下される。

 お嬢様はたいそう不満そうだったけども、

 今度デートに誘うから、という言葉で矛を収めて貰った。

 

 

 

 様々な事前準備で日にちが経つのが早く、

 まさに光陰矢の如し。

 そしてもうすぐよっちゃんの送別会。

 彼女のリクエストに応えるという名目のもと、

 食べたいものはないかと問い合わせてみたら、

 エトワールの住人(ツバサ中心)があれやこれやと騒ぎ立て、

 よっちゃんが! 好きなものを作るの!

 と、私が宣言したものの、自分の発言権など風に吹かれて舞う木の葉レベルなので言うだけ無駄だった。  

 希望は叶えられることはなかったものの、なんとか

 サンドイッチとゆでたまごが良いと控えめにもお願いされたので、

 わかった、神と戦争しても良いものを作る! 待ってて!

 と言い張り、エヴァちゃんが死ぬほど苦笑いしていた。

 

「ヒナ、中盤のシーンチェック終わり」

「わかったわ、手際が良くなったわね」

「褒められて嬉しいと言うべきか……」

 

 最高気温が真夏日を記録することも珍しくなくなった7月。

 来月のコミケに真姫と一緒に参加する計画も立てられる中。

 人の群れ、熱意、熱気――そして大衆の体臭。

 様々な群衆が己の愛を資金に込め、

 気がつけば万札が数枚――下手すると数十枚飛ぶことも珍しくない。

 そんな大規模な祭典に参加し、私は無事でいられるのか。

 火属性に弱いダイヤモンドプリンセスとしては、

 日がなクーラーの利いた部屋で一日中過ごしたいところ。

 名目上アイドルが泊まって鍛錬する施設であるので、

 ニートみたいに一日中パソコンの前でテキスト作業をしていると、

 お呼びじゃねえ! みたいな扱いを受けることもしばしば。

 私が口出しするアドバイスは、ツバサと理亞ちゃんとエヴァちゃんにしか効果がない。 

 朱音ちゃんには効果があるんだけども、

 口出しするとドシスコンお姉さまに蹴り飛ばされるので自重している。

 

「イラストの仕上げ作業終わりました」

 

 私ばかりがエロゲーの仕事をしているので、

 仕事上のパートナーである理亞ちゃんも

 いつの間にかスタッフの一員となっていた。

 名目上は逃げたグラフィッカーの彩色等の仕事と原画が手が回らない分のイラスト作業。

 私なんぞよりもよほど役に立っていて、

 立場がない私はシナリオだけではなくデバッグやスケジュール管理をやりたい!

 やらせてください! とヒナにお願いし、

 熱意に負けた彼女は私をマネージャーみたいに扱っている。

 

「そういえば、あなた達は自社スタッフに会ったことなかったわね」

 

 あくまでも私たちは外注スタッフ扱いであるし、 

 理亞は知名度もそれなりにあるアイドルでもあるから、

 エロゲー会社に顔を出すと言うとちょっとだけ体面上よくない。

 とはいえ、これまで仕事をふんだんにしておいて、

 メインヒロインのモデルであるとか――

 ヒナから異常な性愛を向けられているとか――

 多くの興味を持たれているのは事実であり、

 一度くらいは会っておいたほうが良いかもなー? 

 とは思っている。

 伸ばし伸ばしになっている理亞ちゃんとのデートであるとか、

 天王寺璃奈ちゃんとのフラグイベントも回収せねばなるまい。

 ここ最近感じている、自分自身の体調の悪さ。

 そして周囲から見た私の動きの悪さ。

 最後になにかいい思い出を作りたい――

 そんな意図を持って私と接する人も増えてきた。

 

「基本的に人格は破綻していないから、取っては食われないから

 ――そうね、差し入れでも持っていきましょうか」

「まるでエロゲーのスタッフが人格破綻者みたいな物言いは気になるけど、料理ならするわ!」 

 

 長くテキスト作業をしていると肩もこる。

 昼時に近い時間になればお腹も減るし、

 最近泊まり込みの仕事が続いているというスタッフの皆様へ。

 ――それを指示した社長とデートに行っちゃった私とすれば、

 多少印象を改めてもらうポイントは作らないといけない。

 料理や家事は得意分野であるし、

 日頃から口うるさい(味にもうるさい)ツバサとかの舌を満足させている自負も手伝い、

 あんまり大したもの食べてなさそう(偏見)な皆様を号泣させる料理を作ってみたい。

 

「でも大丈夫ですかね? 絵里先輩――」

 

 気合を入れてメニューを考えていると、

 理亞ちゃんが心配げに私の腕を引きながら顔を見上げてくる。

 何かを逡巡するように目を閉じ、

 不安げに左右を見回したのち、意を決したように息をひとつ吐き。

 

「行くのならば、私も行きます」

「理亞ちゃん、あなたの差し入れは要らないから」

「――ダメですか?」

「死人は出したくないの」

 

 元からエロゲーブランドには一度見学に行きたい――

 あと、私が無茶しないように監視をしておかなければならない――

 ついでにお菓子を私以外の人間に食べさせたい(主目的)

 様々な思惑が重なったものの、一番の目的は果たせず――

 それでもなお、デートイベントをこなすということは達成できたようで、

 上機嫌な彼女である一緒にヒナプロジェクトへと赴くことになった。


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。