アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

106 / 199
鹿角理亞ルート 25

 過去に地図の読めない女云々、

 そんなパワーワードを用いた書籍があった記憶がある。

 男性脳と女性脳の違いを例にしたものであって、

 別にどちらかが優れていて、どちらが劣っているというものではなく、

 片方を貶めるものではなかった気がする。

 なぜそんな言葉を思い浮かべたかと言うと、

 ヒナプロジェクトまでの道のりが分からなかったので、

 冗談半分でヒナに会社までの地図描いてよとお願いしたら、

 絵里よりも優れた画力でわかりやすい地図を書くと息巻いてくれた。

 私に好意的な面々はよく、

 絢瀬絵里よりも優れている部分がいっぱいあると胸を張り、

 ツバサみたいに本当に優れている部分ばっかりの人間もいるけど、

 だいたい失敗フラグと化す。

 私の隣で絵里先輩よりも劣る画力とはいったい……

 と、真剣な面持ちで悩み始めた理亞ちゃんには申し訳ないけれど。

 仮に彼女よりもお菓子作りの腕が劣っている人間がいるとしたら、

 とんでもない事実かもしれない。

 出来上がった代物は記念として後世まで語り継がなければならないし、

 食べ物を粗末にしてはいけませんという教訓になるかもしれない。

 なぜか絢瀬絵里よりも美味しいお菓子を作り上げることができると

 理亞ちゃんは自信満々ではあるんだけれども、

 過去に始祖の悪魔(笑)でいらした彼女に凛の料理を提供してみたら、

 ごへっと体液を吐き、殺す気か! と胸ぐらを掴みあげられたことがある。

 仕方なく凛の名誉のために私自身が食べて処理をしたけど、

 そんな様子を見て悪魔さんの敬意が向上したけど、

 おそらくそれは美味しいものを食べ過ぎなんだと思う、

 鹿角理亞のお菓子、星空凛の料理、優木せつ菜の手料理は世界三大劇物に指定してもいいレベル、どれにも慣れている私は色々と強い。

 

「ヒナ……ええと、これは秋葉原周辺の地図なのよね?」

「見れば分かるでしょう? もしかして脳機能が老化したの?」

 

 観ても分からないから問いかけている。

 秋葉原と文字で書かれているためかろうじて内容を把握できるけど、

 それ以外は象形文字と宇宙文字の羅列。

 簡素に描かれているように見えるが、子ども向け冊子のお宝の地図みたいに、

 解読をするのは至難の業である。

 あまりの不出来な地図を、

 ”どや、上手いこと描いたもんやろ?

 もっと褒め称えてくれてもええんやで!”

 みたいな顔で褒めてもらおうと先ほどから私にグイグイと押しつけている。

 

「これは……あまりにも……」

 

 真実を告げようとした理亞ちゃんの口を慌てて抑え、

 私は過去のループにおいて桜内梨子ちゃんから習った

 女性をその気にさせお金を落としてくれるトーク術を用い、

 不出来な地図を書いたヒナを褒め称えた。

 とんでもない出来の産物を真実をごまかしつつおべっかを使ったことが

 理亞ちゃんの機嫌を損ねたものであるらしく。

 

「絵里先輩は本当に、

 女性と見ればすぐに誰彼構わず媚を売る、

 スーパービッチだったのですね」

 

 同性相手にもビッチとするかどうかは分からないけれど、

 その点に疑問をいだいても、指摘しても仕方がない。

 元から彼女とのデートイベントに赴くためにこうしてヒナの会社に行くのだから、

 彼女の機嫌は改めてもらわなければ。 

 ただ、梨子ちゃんお手製のトーク術では表情は、

 今のように唇をつーんと尖らせてのスネたモノのまま。

 

「理亞ちゃんって本当にきれいになったわよね!

 押し倒したいくらい! スタイルもいいし!」

 

 彼女にはこういう選択肢が一番であろう――

 という、セクハラを交えたエロゲー主人公のセリフみたいな 

 相手におべっかを送る表現で理亞ちゃんを褒め称えてみる。

 隣で聞いているヒナは、ええ……? みたいな顔をしながら、

 選択肢を間違えた主人公を見るような目をしたけど、

 

「私はそんなすぐに押し倒されて足を開くようなビッチではありません」

「それほどの魅力があるってこと!」

「抗いがたい衝動が沸き起こる感じですか?」

「ええ、歩く18禁美少女! 誰しもが見つめる18禁CGみたいな感じ!」

「まったく、そんな言葉で私は騙されませんから」

 

 などと言いつつ、

 好感度を上げることに成功したものであるのか、

 私の左腕に抱きつくようにしながら上目遣いで見上げてくる。

 とりあえず自分が褒めれば好感度が上がる――

 その内容は問わない――

 どちらがビッチと表現されるべきなのかは判断に任せるけど、

 一途な清純派ヒロインであると言われれば頷けなくもない。

 清純派AV女優くらい意味不明な単語かもしれないけど、

 なんとなく言いたいことは分かる気もする。

 

「残念美人と表現すれば良いのかしら……?」

 

 手土産とする料理を作りながら、

 ヒナが会社に電話を掛け、残念美人が二人行くからよろしく、

 なんて言っていたけど、私を含めないで頂きたい。

 そこはとりあえず反論したいところではある。


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。