アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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(※) 高坂穂乃果との飲み会編 02

 

 元μ'sの絢瀬絵里。

 元A-RISEの綺羅ツバサ。

 元Aqoursの黒澤ルビィ。

 元SaintSnowの鹿角聖良。

 以上4名のダンスを、ハニワプロのアイドルやアイドル候補生は真剣に見入っていた。

 アンリアルとしてバリバリに踊ってるルビィさんや、セイントムーンの聖良さんに比べれば、

 ブランクがあるツバサや私のダンスはアレだったかもしれないけど。

 

「それにしてもツバサ、締切はだいじょうぶなの?」

「もちろん、私は案外抜け目ないのよ」

 

 ハニワプロを後にした私とツバサはビルが乱立する場所を抜けて、昔の東京が残る場所にいた。

 無邪気に遊ぶ子どもたちに目を向けて、微笑ましそうに見ていたツバサだったけど。

 

「あんじゅが子どもを産んだら、私はすっかりおばさんね」

「やーめーてー、まだ、まだ私は20代ですもの、そう呼ばれるまでには時間が――」

「ふふ、でもエリー、今日は楽しかったわ、やっぱりアイドルって良いわね」

「そう、それは良かった」

 

 正直な話、ツバサはずっとアイドルをやりたかったという話を聞いてずっと気になっていた。

 誘ったら来てくれるんじゃないかと――

 別にアウェーで居心地が悪かったから呼んだわけじゃない。

 でも最近ちょっと思い始めたんだけど、

 

「私って実はニートではないのではないか」

「何を言っているのエリー」

 

 陽も傾いてきたので食事でも採ろうか、なんて二人で言い合っているとLINEが来た。

 

「あら、穂乃果からね」

「穂乃果さんから? そういえば穂乃果さん、居酒屋で働いているんだって?」

「ええ、未来の店長候補」

「さすがねえ、エリーとは大違い」

 

 先ほどからディスられてばっかりな気がする。

 

「そこは、私とは大違いとか言うところじゃない?」

「私は働いているもの、個人事業主だもの」 

 

 何も言い返せない雰囲気を悟ったので、穂乃果とのLINEに集中する。

 

ほのっち:絵里ちゃん、今日は開いてる?

エリー:いまツバサといるわ

ほのっち:暇で暇でしょうがないんだよぉ! 一緒に飲もう!

 

 まだ営業停止処分中なのか……心のなかで同情しつつ

 

「穂乃果が飲みたいって」

「いいわね! 穂乃果さんのいるところに綺羅ツバサありよ!」

「よく分からないけど、テンションがあがってるのはわかったわ」

 

 

エリー:ツバサの許可も降りたわ、どこに行けばいい?

ほのっち:てんやか日高屋かサイゼがあるところなら大丈夫

 

「ツバサ、天ぷらがいい? 中華がいい? イタリアンがいい?」

「そこは和食、中華、洋食じゃないの? んー、揚げ物の気分かしら」

「了解把握」

 

 

エリー:てんやにしましょう。

ほのっち:じゃあ、私の最寄りまで来てくれると助かるなー、あそこにはなんでもあるから。

エリー:穂乃果は最寄りまで来てほしいだけなんじゃないの?

ほのっち:リ`・ヮ・)

 

 何その顔文字は……誰? 

 

「ええと、穂乃果の地元までは確か30分くらいで行けたわね」

「みんな結構近場に住んでるのねえ」

「なんやかんやで、東京に住んでるものね」

 

エリー:電車の時間次第だけど、1時間以内には着くわ

ほのっち:オッケー! トイレ行ってからすぐ出る!

エリー:慌てないで良いから、てんやは逃げないから

 

「相変わらずね、穂乃果は。働いている時は多少擦れたんじゃないかと思ったけど」

「人間、性根はそうそう変わらないわ、余程のことがない限りは」

「……確かにそうねえ」

 

 変わったように見えた亜里沙でさえ、海未と話している時は昔のままだったし。

 昔のまますぎてエリーチカ大変悲しいけど。

 

「そういえばエリー」

「なあに?」

「歳を取ると筋肉痛は遅れて出るそうよ」

「いったー、もう筋肉痛! 久方ぶりのダンスで、全身筋肉痛だわー!」

「それは恐らくどこか痛めているから病院に行きましょう」

 

 

 穂乃果が住んでいる場所の最寄りの駅までたどり着く。

 ツバサとバカ話をしていたらあっという間だった。

 まさか周りの人も、あの元A-RISEでトップアイドルの綺羅ツバサが悪代官というゲームにハマった挙句

 時代劇に出てみたいと駄々をこね、マネージャーから家庭用ゲーム禁止令を出された話とかするとは思うまい。

 

 私は綺羅ツバサ! 趣味はインスタグラム!

 とかのほうがよっぽど彼女のイメージに合ってる。いや、私はインスタグラム知らないけど。

 実際ツバサは写真好きではあるけど、写された瞬間には変顔をするようにしているとか誰も信じてくれないはずだ。

 特に、さっきツバサが来た瞬間に余裕の表情が崩れて一気に泣き顔になってしまった聖良さんとか。

 妹の理亞さんに(彼女はたまたまオフだった)電話でなまらすげー! とか叫んでたけどね、ギャップ萌えってやつかしら。

 

「さてと、穂乃果は……」

「まだ来てないのかしらね?」

「高校時代のマゲは相変わらずだから、結構目立つと思うんだけど」

 

 二人してキョロキョロと周りを見ながら歩き回る、

 LINEも私の最後のメッセージに既読が付いたままで、新着はない。

 よもやどこかで事故にでもあってはいないかと心配になり始めた時、

 こちらに向かって走ってくる人影が見えた。

 

「おーい! おーい!」

 

 穂乃果だ。

 マゲをぴょこぴょこと揺らしながら走ってきた彼女は、両手に袋を抱えていた。

 

「何持ってるの、穂乃果」

「ウコンのチカラだよ! 飲むからね!」

「だからって両手にあふれるほど買う必要は……」

「いや、別に全部がウコンじゃないよ、私の買い物もあったんだよ」

「穂乃果さん私服は無印良品で買うのね」

 

 では飲んだ帰りに行けばよかったのでは? と思ったけど、まあ時間をつぶす意図もあったのかもしれない。

 それにしたって買いすぎだと思うけど。

 

 

 連れてきた場所を見てツバサが唖然とした。

 

「ここは……ごはんを食べるところじゃなくて?」

 

 おずおずと切り出す彼女は小動物みたいで可愛らしい。

 まあ確かに、今日はてんやで飲みますとか言ったらツバサだって反対したかもしれない。

 有無を言わさずに連れてきた私えらい。

 

「ほら、私居酒屋チェーンの従業員じゃない? だから、大衆居酒屋だと気まずくて……」

「ああ、なるほど。だからエリーは揚げ物だって……揚げ物やじゃなくて天丼屋よ……」

「でもね、ちゃんと酒飲み向けのメニューはあるんだよ、ここは甘いお酒も出してくれるしね」

 

 最近……かどうかはわからないけど、ラーメンとか天丼とかパスタを一品食べて帰る客より

 多少長居をされてもお酒をいっぱい頼むお客のほうが上客みたいな扱いらしい。

 候補としては日高屋とサイゼだったことを告げると、

 ツバサは新しいことを知ってネタになったと言わんばかりの表情をする。

 ――あれ? ツバサの書いているネタって確かゲームでは?

 

 店の中に入ると、意外とと言っては変かもしれないけど女性店員が多かった。

 3人だと告げ、テーブル席に案内される。

 

「はーい、私穂乃果さんの隣! エリーはハブ!」

「お酒飲む前からテンション高いわね……」

 

 この中で一番お酒が弱い穂乃果がお手洗いが近い通路側に、私たちが奥の席で正対した。

 大衆向け居酒屋みたいにメニューがたくさんあるわけじゃない、お酒の種類なんてせいぜい7種類。

 安いというわけでもないけど、本当に比べるわけでもないんだけど、こっちのほうが美味しい感がする。

 

 

「そうね……じゃあ、この一品料理の天ぷら全部」

「テーブルに乗り切らないわよ、我慢しなさい」

「穂乃果さんはお魚がいい? お野菜がいい?」

「好きなものは先に食べたいから、お魚!」

「よーし、店の穴子全部もってこい!」

「だからテーブルに乗り切らないって」

 

 私たちが結局頼んだのは、生ビールと天ぷら盛り合わせのセット。

 穂乃果はビールではなく、最近飲めるようになったというレモンサワーだ。

 (注意 なお現実のてんやにはレモンサワーはありません、あしからず)

 乾杯をして一口飲んでからしばらく、揚げたての天ぷらが出された。

 

「「「いただきまーす!」」」

 

 えびといかとレンコンとインゲンの盛り合わせなので、とりあえずインゲンから口に運ぶ。

 ロシアでは……というか、幼少時にはインゲンなんて食べたことなかったし、高校時代も特別食べたいとは思わなかったけど

 今ではこの青い感じがお酒に合ってちょうどいい。

 

「エリー渋いわね、インゲンから食べるなんて」

「そうだよ、普通魚介からでしょ」

「そ、そうかしら……」

 

 青いものとか野菜とかから食べるタイプのエリーチカ撃沈。

 

「暖かくてサクサクで美味しいわねえ」

「ほんとうだねえ……」

 

 ツバほのの二人は同じものを食べてて、超仲良しと言った雰囲気を醸し出していた。


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