アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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園田海未ルート 番外編 03

 国語の授業を受けていた時にふいに昔のことを思い出しました。

 とは言っても、何も幼少期のことを思い出し、 

 スイスの景色を懐かしく思考したわけではなく、

 世界創造の瞬間に立ち会うというなかなかレアリティの高い――

 そんな体験をしたことが記憶として蘇ったのです。

 数えるのがバカバカしく思えるほどの複数回目の高校三年生である自分に気づき、

 もはや幼なじみクラスに顔なじみになっている現国の先生の授業を、

 あ! ここ過去のループで体験したところだ! 

 と、進○ゼミで読みが当たった主人公みたいな感想を抱き、

 絵里ちゃんも記憶が戻ったらすごく苦笑しながら日々を過ごしているんだろうなあ――

 そんなふうに思うのです。

 

 過去には憧れ、恋愛のライバルのように思った絵里ちゃん。

 ライバルと思っていたのは私だけであり、実際には10くらい年が離れているから、

 彼女からすれば大きな(胸の話ではありません)子どもみたいな扱いだったはずです。

 自覚はないようですが雪菜の野郎も憧れと同時に恋愛感情を抱いている節があったので、

 交流の間は常にヤキモキをしましたが、

 仮に二人の仲が進展するような事態になれば、

 もっと早々に世界創造はなされたはずです。

 みんながラスボスと称して、確かにラスボスっぽく振る舞っていた津島善子ちゃんですが、

 シリアスに振る舞う中、私の胸に注目して思わずたじろぎ、

 その瞬間に現世とえいえんの世界(って呼ばれてた退場後の世界)を繋いで、

 絵里ちゃんやツバサさんと言った面々が還ってきたのですが、

 どんなμ'sの方々の説得にも耳を貸さなかった善子ちゃんが、

 私の言葉には「え、あ、はい」みたいな反応を示し、

 みんなからは渾身の説得だったと褒められるのですが、

 真実を知っている自分からすると心中は複雑でしかありません。

 その後に口を開いた雪菜の発言には善子ちゃんを感情をあらわにし、

 おまえ私ができなかったことをなぁ! と叫んで

 その結果Aqoursの三年生組の暗示が解けたんですが、

 できなかったこと=絵里ちゃんの胸を揉むコミュニケーションであり、

 雪菜が言った正論ではないということを私は知っています。

 ツバサさんであるとか絵里ちゃんであるとかあんじゅさんが退場して、

 完全にふさぎ込んでいた雪菜を早々に復帰させ、

 私と一緒に説得にあたってればあんな苦労をしなかったのではないか。

 そんなふうな思いを抱えてしまうのです。

 

 何度めかの高校三年生ということで、

 過去にエンドレスエイトという修行僧が見るアニメのシーンがあったコトを思いだします。

 修行僧ではなく視聴者なのでは? と私は疑問に思い、

 暇をしていた雪菜の胸ぐらをつかみあげ、 

 おめーの家に夜に行くから予定を開けておけや!

 と半強制的に徹夜アニメマラソン兼お泊まり会を実行させたのです。

 いちおうあんな外見をしているとは言え、生物学上は男性であるので、

 身体をずいぶんと身綺麗にしたものです。

 あまりに長くお風呂に浸かっているせいで、沈んでいるのではないかと

 母にもものすごく心配され、理由を白状して止められるのを危惧した私は、

 スクールアイドルで懇親会を! と嘘を吐いてしまいました。

 そういえば、あのループでは家族揃って日本に来訪していて、

 すごく幸せだった記憶があるんですが――まあ、それは置いておきましょう。

 

 かなり緊張しながらおぼっちゃんな雪菜の家に来訪し、

 ヤケにきれいな女の人がいるものだから、どなたか伺ったら

 家に仕えるお手伝いさんという答えが返ってきて、

 以前虹ヶ咲の面々で押しかけた時には居なかったとさらに問いかけると、

 自分と二人きりで過ごすのは嫌かなと思ってとの答え。

 気を使われたのは嬉しいし(基本的に優木せつ菜時には同性なので気を使われない)

 多少なりとも私といることを意識し(気合い入れた下着を見られる可能性があると思った)

 お手伝いさんも私にお邪魔はしませんので、と耳打ちし、

 あ、これはもう、絵里ちゃんやツバサさんとかが体験したことのないことを

 先んじてやってしまうチャンスなんだなって思った。

 私の仲の良い面々で唯一の非処女枠な凛ちゃんや花陽ちゃんには

 別にそんな特別なものじゃないよみたいに言われ、

 経験のない組のツバサさんや絵里ちゃんには相談なんてできるわけもなく。

 不安はあったものの、文字通り胸を張って雪菜の部屋に赴き、

 アニメマラソンの最中に優木せつ菜(笑)さんは寝落ちしました。

 たしかに同じ場面が何度も続き暇はしていたのは事実ですが、

 すぐにベッドの上に寝転がれるようそこに腰掛けていた私をスルーし、

 ごめんなさい眠いですと言って眠りこけたのはなんなの?

 もう一回言うけどなんなの? もしかして女装しているから女性に興味無いの?

 朝になってお手伝いさんに顔を見せるのが恥ずかしくて、

 その表情を見た彼女もすべてを察してくれて、

 お互いに気まずいだんまりのままで屋敷を後にしたけど――

 後日、雪菜の野郎がよりにもよってしずくちゃんにその時のエピソードをバラし、

 そんなでかい胸をしていても女と意識されないなんて哀れですね!

 とさんざっぱらネタにされ悔しい思いをした。

 

 ――なお、優木せつ菜のネタバレから察すると、

 後日、上原歩夢ちゃん、中須かすみちゃん、桜坂しずくちゃんといった、

 雪菜に好感度高めの面々が次々と来訪し、

 私と同じように撃沈して行ったみたい。

 この経験から自分たちには何が足りないのか追い求める会が結成され、

 金髪ポニーテールになればすぐにイケるのでは? 

 と、ツテを頼り金髪ポニーテールになってみたら、

 優木せつ菜は何かを察し、絵里ちゃんに助けを求めた。

 当時何を考えたのかバーテンダーをしていた彼女は常連だったツバサさんや

 同僚だった桜内梨子さんを連れ立って来訪し、

 もうこの際だから女の子同士でイケば? と何の解決にもならない宣言をし、

 絵里ちゃんいわく冗談だったらしいけど、真に受けたのが1名。

 梨子さん指導の元で女の子なら誰でも落とせるトーク術を身に着け、

 絶大な支持を得たけど何かがあったのかその世界はなかったことになっていた。

 今度、もし機会があればなんでそうなったのか聞きたい。

 絵里ちゃんはよくわからないと言っていたし、ツバサさんも首を傾げていたので、

 誰かしらがなにかやらかしたのではあろうけど、

 いいかげんループする条件を決めてほしいものである、今後もずっとループを重ねるのならば。

 

 

 目覚めたり、目覚めていなかったり、

 記憶の覚醒が中途半端な中で、私は屋上で空を見上げていました。

 友人である果林ちゃんであるとか、スクールアイドル同好会で同じグループのメンバーだった

 近江彼方ちゃんは記憶の覚醒がまだのようであったので、

 こんなケッタイな体験に巻き込むわけにはいかず、

 ちょっと一人になりたいなーと言って教室を抜け出しました。

 果林ちゃんは目に見えないように隠れていてあげるからとか、

 彼方ちゃんはじゃあスイスのことを思い出してセンチになってるんだって言えば良いよ~

 ――彼方ちゃんが実際にどれほど過去のことを思い出していないかは分かりませんが、

 この学園にいる多くの留学生が故郷を思った時にそうするように、

 一番高い場所から空を見上げていると、目に触れる自然ばかりがいつものままで、

 世界に生きる人間ばかりがワタワタとしているようにも見える。

 もし仮に神様がいるとしたら、ワタワタしている人間なんて取るに足らない存在で、

 私達自身もそんな神様の意思など関係なく生きていけばいい、

 そんなふうに思えてきます。

 

「……誰?」

「うひぃ!?」

 

 屋上と校内を繋ぐドアは施錠こそされていないものの、

 結構重かったりするので、開閉すると音が耳に届きます。

 慎ましやかに音を立てないようにしたようですが、

 とても残念なことに最後に気を抜いたのかバタンと大きな音がしました。

 別に屋上は私一人が使う場所ではありませんが、

 いい感じに思考もまとまり、前を向いてみようと思った瞬間であったので、

 多少なりとも声に険が含まれてしまったのも仕方ない。

 とはいいつつ、そんな八つ当たりのような感情を向けてしまったことは不覚です。

 

「ごめんなさい、ちょっと考え事を」

「おお! わだすこそ、申し訳ないっペぇ!」

 

 東北弁――と、彼女は言っていた記憶があるけれど、

 実際にどこまで日本の田舎の言葉が混じっているのかは分からない。

 宮下愛ちゃん――。

 東北の山の中で生活をしていた彼女(神様の巫女をしていたらしい)が、

 東京に行きたい! とクマみたいなナリをした神様にお願いをし、

 どうせすぐに田舎に帰ってくるだろうという大人たちの意に反し、

 友人が一人も出来ない、勉強もロクについて来れないという状況下でも、

 一人暮らしをしながら頑張っていたところを綺羅ツバサさんに見初められた。

 絵里ちゃんや、雪菜、あと、私が彼女をエヴァリーナと白々しく呼ぶのはなんなので、

 キューちゃんと呼ぶけども、彼女たちが出演したライブがキッカケで

 「わだすも絵里ちゃんみたいなスクールアイドルになるべ!」

 と、一念発起――同じくスクールアイドルを始めることになる果林ちゃんや、

 いつの間にかスクールアイドルをやっていた彼方ちゃんと一緒に鍛錬に取り組んだ。

 絢瀬絵里ちゃんを髪を金色に染めたギャルと勘違いし、

 長かった髪をバッサリと切り、黒く美しかった髪の毛を金色に染め、

 さらには絵里ちゃんみたいなオヤジギャグを連呼するよく分からないキャラになり、

 最高学年が二年生だけども、過去に一度だけフルメンバーが揃ったことのある

 虹ヶ咲スクールアイドル同好会が再結成されることとなった。

 再結成して初めて開いたライブの直後に世界創造されるとかいう、

 よく分からない経験をすることになったけど、

 同好会の結成がフラグにならないことを祈りたい。 

 

「わだすは日の目を見てはいけなかったんだ! こんな! こんな!

 おっぱいオバケみたいな人がいる東京なんて!」

「落ち着いて愛ちゃん、だいじょうぶ、あなたの根性は誰しもが認めることになるわ

 ちなみに昨日の夕食は?」

「公園で捕まえてきた虫の煮付けとたんぽぽを茹でたのとご飯だ」

 

 うぐっ、と言葉が詰まるのをどれほど隠せたかわからない。

 愛ちゃんの野生料理が平気だったのが絵里ちゃんや海未さん。

 雪菜作成の劇物でさえ食べてのけるツバサさんでさえ、

 ザザムシ、ハチノコ、イナゴの三点セットの豪華料理を見て、

 絵里ちゃんにしがみついて震えていた。

 まったくしょうがないわねぇとか言いながら絵里ちゃんが全部食べてたけど、

 その二日後には絵里ちゃんは善子ちゃんの力で退場することになる。

 直後に愛ちゃんはギャル化してなんとしても絵里ちゃんにこの姿を見せる!

 と涙ぐましい努力を重ねた。

 絵里ちゃんは同好会メンバーを見て愛ちゃんいないじゃないと寂しそうに言っていたから、

 もし仮に愛ちゃんが記憶を取り戻す機会があったら、

 あの時のギャグをかっ飛ばしまくっていたギャルは愛ちゃんですよと伝えてあげたい。

 

「東京の人はもっとハイカラのものを食べてるって聞いただ……おっぱいさんもそうなんじゃろ?」

「エマ、エマ・ヴェルデ、なんか私のことを胸でしか認識してない人多くない?」

「はっ! エマ先輩! 申し訳ないだ! わだすみたいなド貧乳が失礼しました!」

「落ち着いて愛ちゃん、はい深呼吸、吸って……吐いて……」

「はぁー……すぅー……」

 

 吸ってと言うと吐いて、吐いてと言うと吸うんだけども、

 私の日本語が下手なわけじゃないよね?

 あと、愛ちゃんが貧乳って言うと同好会の一年生組とか、

 上原歩夢ちゃんがキレるので改めて貰いたい。

 雪菜がおっぱい好きなのを隠さなくなったことで、

 私に対する風当たりがずいぶんと強くなったのを思い出す。

 ちっちゃくてもいいです! とフォロー(なってない)をしたけれど、

 璃奈ちゃんだけは性格が相容れなかったのか、

 あなたのは板ですと嫌悪感を隠さずにいた。

 璃奈ちゃんは私に対しても、なんでそんなに胸が大きいの? ホルスタインなの?

 岐阜で歩夢(月島さんの方)ちゃんに飼って貰えばいいじゃんと言ったけど、

 私はあなたの悪口を言った覚えはないんだけど……。

 

「あ、そうだ、愛ちゃん」

「なんだべ?」

「セツナって名前の響きの……子、知らない?」

 

 セツナと言う響きの男子と言おうとしてためらう。

 仮に上手いこと隠し通していればいいんだけども、

 私が優木せつ菜のネタバレをしてしまうのはいただけない。

 自分が認識していないだけで学園で独自に活動をしているのかもしれないし、

 もしかしたらUTXで華々しく活躍している可能性もある。

 

「セツナ……セツナ……ああ!」

「いるの!?」

 

 思わず喜んでしまい一つ咳払い。

 飛び上がるように喜んでしまうのは私の悪癖。

 璃奈ちゃんやしずくちゃんにじっとしてろよ! と感情を込めて言われることしばしば

 ――私が悪いの?

 

「わだすのクラスにとっても可愛い子がいるっペ」

「へ、へえ……」

 

 相変わらず女装しているんだなと思いながら、

 さらに情報を提供してもらってみる。

 しかしながら通常時には綺羅雪菜として活動し優木せつ菜の正体は秘密であった。

 ということは通常時から女装をしているの?

 ――優木せつ菜始まったな。

 ……いや、終わった? 終わったと称するのが自然じゃない? 

 

「竜宮雪菜ちゃんっていうとっても可愛い女の子がいるだ

 学園の中でもトップクラスに可愛いのにスクールアイドルをやらないなんてもったいねえだぁ」

「……え? その子、着替えとかも女の子と一緒なの?」

「あはは、エマ先輩は不思議な事言うだ、女の子同士なら

 気兼ねなく着替えするっペ、女装した男じゃあるめぇしなー」

「……あは……あはは……」

 

 どうしよう。

 これは姉であるツバサさんにつぶさに知らせるべきか、

 それとも絵里ちゃんに一度情報を預かって貰い判断を仰ぐか。

 こいつ犯罪者ですと晒し上げても構わないかもしれないけれど、

 もしかしたら微粒子レベルで情状酌量の余地がある可能性がある。

 私は絶えず乾いた笑いを浮かべながら、

 その竜宮雪菜という人間が女の子であるという情報を愛ちゃんから入手し、

 できるだけ速やかに存在を抹消しなければならないと義憤に駆られた。

 

 ――さっきまでの悩みは全部吹っ飛んだ。

 

 

 私が二年生のクラスに来て早々、何食わぬ顔をして女子の集団にいて、

 吾は女の子ですがなにか、みたいな表情でにこやかに微笑んでいる罪人を見て、

 エマは激怒した。

 必ずあの超弩級の変態を駆逐しないとと決意した。

 エマはスイスのスクールアイドルである、エマには変態の気持ちはわからぬ――

 と、ちょっと前に習った太宰治風な表現をしてみたけれど、

 エマに太宰は分からぬ――

 

「周囲の影響を考えて、いきなり下半身を露出させるのは控えましょう

 さすがに(見たことはないけど)成人男性クラスのそれを見せるわけには――」

 

 かといって、優木せつ菜の擬態は並大抵のものではない。

 付き合いがあればすぐに気づくけど、

 絵里ちゃんみたいによほどのことがない限り気づかない場合だってある。

 てめぇ男だろ! と胸ぐらを突き上げても、

 証拠はあるんですか! と反論されれば窮地に立つのは私だ。

 それに――

 

「あの様子だと性別を隠している様子には……」

「とても良い判断だと思います、

 胸に全て栄養が行ってしまった――

 というわけではないようなので安心です」

 

 いつから私のことを見ていたのか、

 なぜかどこかから巨乳死すべしみたいな視線がするかと思ったら、

 案の定、桜坂しずくちゃんが私を監視していたみたい。

 虹ヶ咲の1年生組は何かと私の胸を目の敵にするけれど、

 果林ちゃんであるとか、彼方ちゃんには特別意識を向けないので、

 私自身はむやみやたらに大きいのだと思う、そう思わないとやってられない。

 

「警戒したほうが良いですよ、

 今の竜宮雪菜には親衛隊がついています」

 

 憎々しげに優木せつ菜(芸名)の胸元に視線を向け、

 桜坂しずくちゃんは私の肩を掴んで人目に触れない方へと導く。

 まるで私にヤキを入れるぞみたいな感じではあるんだけども、

 残念ながら胸はちぎろうとすると大きくなるらしい、絵里ちゃんが言ってた。

 

「竜宮雪菜――であるそうです。

 ツバサ様の弟である事実はどうやら雲散霧消したようですね」

「本当に女の子なの?」

「戸籍を調べましたが。徹頭徹尾女性でした。

 まあ、一度スカートを引きずり下ろして確かめましたが、

 ありませんでしたしね、おちん○ん」

 

 変態に敵意を向けた結果、他の人の敵意を招いてしまったのか、

 しずくちゃんは周囲の女生徒を舌打ちしながら見やる。

 とても深窓の令嬢だとか、鎌倉で一番のお嬢様には見えない。

 変態的な発言はキャラ作りだと何度も説明されたところで、

 まるで説得力がない、同じキャラ作りの真姫さんはしっかりやればできる人だし。

 なお、演劇に関しては真面目一徹、真姫さんをマネて下ネタに偏ったのも、

 もとは真姫さんに憧れたのが変な方向に行ってしまったゆえ。

 何かと名言が多い彼女だけど、

 誰しもがそのとおりだよ! と納得したのが、

 優木せつ菜がかつて歌った、とある曲で”なりたい自分を我慢しなくていい”

 みたいに歌い、それを聞いたしずくちゃんが、おまえは我慢しろよ! と言った件。

 基本的に雪菜と言う人間に甘いツバサさんや絵里ちゃんまで、

 言われてもしゃあねえみたいな顔をしていたし。

 

「その……はっきり、男性器の名前を言うのは……」

「丁寧に言っているから良いんです」

「言い逃れが出来ないほどソレしか想像できない発言は……」

「いざとなれば金で解決するから良いのです」

 

 しずくちゃんは本当に人生が楽しそう。

 堅苦しい生き方しかできなかった幼少時代から

 恐ろしい変貌を遂げてしまった彼女ではあるけれど、

 親御さんは思いのほか喜んでいるものであるらしい、悦んでるんじゃないよね?

 ビシバシと言葉のムチで殴られている優しそうなご両親を想像し、

 エマは震えた――

 

「……もしかして、しずくちゃんが

 周りの人から性犯罪者みたいな目で見られているのは」

「行動がたまたま失敗したまでです、

 優木せつ菜のタマタマを露出させようとしたのは事実ですが」

「そして私がなにか不思議なものを見る視線で見られているのは――」

「それはその巨乳がヒト目を引いているだけです、嫌味ですか」

 

 これ以上しずくちゃんと一緒にいると、

 私の評判が変態な女の子と一緒にいる胸の大きな人になってしまう。

 それではとても残念なことに果林ちゃんであるとか、

 彼方ちゃんに悪評が沸いてしまう、私個人なら耐えられそう――

 いや、原因が私自身にないから許せない側面はあるんだけども、

 なにか口を滑らせてしずくちゃんがこちらに敵意を向けても困る――

 今はまだ潜伏の時。

 

 しかしながら放課後、

 雪菜のクラスメートがなにかに気がついて高らかに悲鳴をあげ、

 それが体育の授業であったことから私はすぐさま行動に移すべきではないかと察した。

 

「……彼女の親友と言っているエヴァリーナちゃんが

 殴り込みに来て雪菜が殺されたりしないよね?」

 

 絵里ちゃんの言うことはごくたまにスルーするエヴァちゃんであっても、

 上原歩夢ちゃんに関しては徹頭徹尾付き従う愛情の向けっぷり。

 触らぬ神に祟りなしと言うし、

 歩夢ちゃんを介抱したというのが竜宮雪菜という人間であったことに

 恐怖を感じつつ私はとある人にメールを送った。

 

「ラブライブで会いましょう……か、

 ていうことは、そのうちみんなの記憶が戻るってことかな?

 面倒なことにならないと良いけど」

 

 私という人間が思いのほか苦労性であることにため息を吐きつつ、

 屋上で身体を動かすための準備を始めた。

 一人でやらないと一年生メンバーが嫌味かっ! ってツッコんでくるから――


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