アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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鹿角理亞ルート 番外編 および没ネタ 南ことりちゃんのマケミちゃん製作日誌

 ツバサさんがこの世界から消失してからしばらく、

 アイドルと言えばAqoursであり、アイドルを指す人物、グループ、存在そのものが

 Aqoursになりつつある現状には聖良ちゃん、理亞ちゃん姉妹ともども苦笑いをせざるを得ません。

 それでもなお私たちが活動を続けていられるのは”神様”の思い違いでもあるのか、

 それとも単に”比較対象”が無ければアイドルそのものが体を成さないと気づいているのか、

 南ことりちゃん製作の衣装を見ながら、鹿角姉妹がもっと輝けるシチュエーションを空想していました。

 

「凛ちゃん、私思ったよりもできる子みたい

 絵里ちゃん、それでも私に絵里ちゃんみたいな役回りは難しいよ」

 

 ツバサさんに思わぬ形で託されてしまった綺羅雪菜クンを立ち治せる行為は、

 天王寺璃奈ちゃんや上原歩夢ちゃんやエマ・ヴェルデちゃんに任せる他ありません。

 本来ならば、彼方ちゃんあたりに任せておきたいではあるんですが、

 私は妹に全部任せておくのでの一点張りでいつも寝たふりをしている、そうだね、

 遥ちゃんがいないから、”お姉ちゃん”としては虹ヶ咲にいる自分自身にはちょっと自信なくしちゃうよね。

 

「……でも、ラーメン大好きキャラが私に引き継がれたのはちょっと辛い

 ラーメンが大好きな小泉さんって言うと、なんか違う人みたい――」

「かよちゃん」

 

 振り返ると南ことりちゃんが立っていました。

 ”私にできることは自分の作った衣装を身に着けてアイドルを輝かせることだけ”

 と言って、デザイナーやパタンナーとしての業務をこなしていて、

 滅多に表舞台に出てこないことりちゃんが鹿角姉妹がイベントを行う会場へ顔を見せました。

 なにか問題が起こってしまったことは、痛々しいとも表現しても良い表情や、

 青いとしてもいい顔色から察しました。

 そしてなにより、私にはことりちゃんのとる仕草であるとか、態度に既視感があります。

 

「――だいじょうぶ、私は覚えてる、ことりちゃん」

「ほんとに? 誰かが代わりになってない?」

「なってない――ことりちゃんの預金額まで含まれると、

 そろそろ私が億万長者になってしまいそう――」

「ああ、その言い方、絵里ちゃんみたいだね

 なんで忘れてたんだろ、あんな体のいいサンドバッグ」

 

 サンドバッグという言葉が絵里ちゃんを表すにおいて一番適切な単語であることは、

 ヒナちゃんや理亞ちゃんの発言からも察せられます。

 アンチや信者も含めて、扱いがサンドバッグみたいだな――

 体よく殴るにはもってこいの人だな――

 かつて隆盛を極めたこともあるラブライブ!の二次創作でも作者の体よく扱われていたから――

 コト、”誰かが見栄を張る時に絢瀬絵里っていうのは使いやすいんでしょ”

 ツバサさんが善子ちゃんに言ったことがあります。

 その現場には絵里ちゃん自身もいたと聞きますが、どんな感想を抱いたのか、

 いつものようにしょうがないなあみたいな顔をしたのかもしれません。

 そしてその言葉の意図、どうやら善子ちゃんは気づかなかったようです――

 

「ごめんね、凛ちゃんがいなくなってしまったことに気がつかなかった」

「逆に尋ねていい?」

「なあに?」

「穂乃果ちゃんじゃなくていいの?」

 

 μ'sの二年生組の絆を考えれば、周囲の面々が忘れてしまっても南ことりちゃんのことを

 海未ちゃんや穂乃果ちゃんがことりちゃんを忘れるはずがありません。

 仮に忘れようものならば、”今”のことりちゃんなら殴ってでも思い出させるはずですが、

 それをしても意味がありません、思い出させることよりも、覚えていることのほうが

 彼女にとって重要事項なのでしょう。

 絵里ちゃんに対して辛辣であるのは、記憶に対して責任を持たない点が許せない側面があることは

 たぶん、ことりちゃん自身も気づいていないとは思いますが。

 

「私のことは忘れて欲しい」

「無理だよ、ことりちゃんが遺したものが多すぎるから」

「それでもだよ、三人の中では穂乃果ちゃん、海未ちゃん――そして”最期”に私が

 二人は本当にって言って死んでいくのが夢だったのに

 理不尽だね、わがままだよ”神様”はほんとうに」

「あえて言葉をつけるのならば、パラドックスかな、”私たち”らしい」

 

 急用ができたので後のことは任せました。

 そんなふうに理亞ちゃんにメールを送り、あとで聖良ちゃんにいくらでも罵倒されるから

 なんて付け加えたら、”姉さまは罵倒される方が好きです”

 という了承のメールが届いた。

 

 受け入れがたい結論のほうが人にとって正しくて、タメになって、

 それでもなお受け入れがたいゆえに、正しさを認めるのが難しいではあるのは、

 過去の自分がそうであったように、そして何より善子ちゃんが頑なであるように、 

 どうしようもない現実がそうさせるのでしょう。

 

 人はいつでも正しい選択肢を選びたい、

 それでもなお選べないでいるのは現実が地獄のようであるから。

 自身の正しさに胸を張りたい体の良い言い訳です。

 

 

 世界から存在が消えつつあると言っても、

 ことりちゃんが今まで作り上げた自身の制作物がなくなるわけではないし、

 住居スペースや預金やそのほか、消された人が生活した痕跡までは消えないようです。

 過去に穂乃果ちゃんが自分は一人っ子だった? と聞き回っていた時も、

 恥ずかしながら妹がいたという事実を私が把握するまでは

 絵里ちゃんが退場するまで待たねばならなかったし、 

 何かのきっかけで世界から消しさられた人たちの痕跡が残るようになったのは

 いったいどういうことなのでしょうか?

 

 ただそれを私が認めるのは、消し去られた人たちが私にとって重要ではなかったと

 なおのことそうせねばならないことであり、雪穂ちゃんやあんじゅさんがいなくなったとしても、

 私は凛ちゃんがそうなってしまった時ほどに慟哭もしなければ、気付きもしなかったことを、

 卑しい心に問いかけなければなりません。

 大切だ、大好きだと言っていた人たちがいなくなった瞬間にその存在を忘れてしまうことが、

 はたして本当に本心からの大切だ、大好きだであったのかどうか。

 絵里ちゃんは心の底から大切に思っていたことを半強制的に消されて、

 本当に幸せでいられたのか、私は疑問でなりません。

 希ちゃんがしたことが間違っているとはいいません、私も力になれなかったのは同じ、

 なんで無神経でいられたのだろうと自分自身を攻め立てる他、

 私を慰める手段はないのです、それはおそらく、ことりちゃんや凛ちゃんにとっても同じ。

 

「私が使っていた場所までは消されなかったのは、幸運だったね」

「この場所もこれから誰かが使っていた場所になるのかな」

「……あの桜小路のアマだけにはそうなって欲しくない」

 

 凛ちゃんが世界から消失したあと、ちょっとした興味本位で凛ちゃんの住んでいた場所がどうなっているのか観に行ったことがあります。

 ラーメンが大好きとか、凛ちゃんのパーソナルデータの大半は私のプロフィールとして引き継がれたのですが、さすがに住居スペースまでそうなってしまうと世界の設定に齟齬でも出るのか、かつて彼女が住んでいた場所は国木田花丸ちゃんの住居になっていました。

 過去には再会時に人目を憚らず大泣きし、近くにいたルビィちゃんが思わず困ってしまうほどに凛ちゃんに会いたい思いを抱えていたらしく、慣れない仕事にてんやわんやになっても、いくらやめるように忠告されても凛ちゃんに会うまではと諦めることなく。

 善子ちゃんはその思いを理解していたのか、していなかったのか。

 もうほとんど自我が残っていないハズのAqoursの花丸ちゃんが私の顔を見た時、かくっと膝から崩れ落ちて、再会した時と同じように手で顔を覆って泣き出してしまい、

 私はふと気がつくと二度と凛ちゃんが住んでいた場所にはいけなくなっていました。

 その後どうなったものであるのか、私には分かりません。

 でも、花丸ちゃんの衣装の片隅に二人の猫が――私や凛ちゃんがかつて助けた五人の猫、その中で私たちが助けきることが出来なかった二人の猫をかたどったアクセサリーが付いていました。

 そして目立つ場所にあるはずのそのアクセサリーのことを誰一人話題にしていないのを見て、まだ期は熟していないのだと思いました。

 善子ちゃんの望んだ世界が仮にもう既に破綻していたとするならば、

 誰かがあのアクセサリーの意図に気がつくはず、Aqoursがいったい誰を模して作られた存在で、

 誰を目指して、誰を理想とし、誰に憧れを持って結成されたのか。

 

「私に残せるもの、かよちゃんはマケミちゃんって知ってる?」

「あれはヒナちゃんが創作で作り出したっていう」

「事実なの、だいたいの要素が創作だけど、あれといくつかのエピソードは事実」

「……ごめん、コメントに困る」

「だよね、私もそう思う――あれを作る」

 

 遠い未来にμ'sがいるならばそれに合わせた衣装を作る、

 なんていうのかと思いきや。

 ちなみにマケミちゃんとは、常勝(恋では不戦敗ばかり)な園田海未ちゃんが

 負けて膝をついた姿をイメージして作られたお人形。

 そういえばあのエピソードを見た時、絵里ちゃんが苦笑いし、

 ツバサさんがすぐさま話題を変更したことから、二人はあのエピソードが事実であることを知っていたんだ。

 ヒナちゃん経由で知っていたのか、それとも何かしらの理由で知っていたのか。

 二人がいない以上、その事実を問い合わせることはできないけれど――

 おそらく問い合わせないほうが良いんだろうし、私もスルーしたほうが良いんだと思う。

 

「もっと、μ'sの人形とか」

「μ'sの痕跡はたぶん遺してはおけない、

 善子ちゃんの立場に私がいるならそうする」

「善子ちゃんが止めてほしいと願ってるなら」

「止めて欲しいんだよ、もうすでに善子ちゃんは

 だからこそ、もうすでに倫理的に許されないことまでやってしまっている

 絵里ちゃんはしょうがない、ツバサちゃんも、

 でも雪穂ちゃんはそうだった? 歩夢ちゃんは? 朝日ちゃんも?

 これからね、おそらく、希ちゃんも、海未ちゃんも、にこちゃんも、真姫ちゃんも

 まず間違いなく消される、この世界に存在は出来ない」

「私は……」

「ごめんねかよちゃん、あなただけを残すことになる

 ほんとうにごめんなさい、たぶん、穂乃果ちゃんは

 私や海未ちゃんが逝ってしまったら、立ち上がれない――」

「荷が重いよ」

「ごめんね……情けない先輩でごめん

 情けない友達でごめんね……情けない仲間でごめん、

 本当は這ってでも津島善子を殴らなきゃいけない、でも――

 私にはそんな資格はないんだよ、彼女をそうさせてしまったのは私たちだから」

「……私にも、なにか」

「私が逝く時、遺してく――私が逝ったら、見て欲しい」

 

 それからことりちゃんは私の存在など忘れてしまったように、

 マケミちゃん制作に取り組みました。

 この場にいても良い、そう言われたような気がしましたが、

 仕事をしていることりちゃんの邪魔をするのは憚られましたし、

 なにより――もう、涙を流しながらそれでも懸命に人形を作り続けるのを観て、

 私は静かにアトリエを後にすることにしました。

 

 

 絵里ちゃんが草案を作り、凛ちゃんが私に言葉を遺し、

 なわとびの完成まではまだ道のり半ばで、とても披露できる形にはありません。

 海未ちゃんがかつてに言っていました、頭の中にあるものを形にするのは難しい、

 何度も何度も鍛錬を重ねて、ようやく頭の中を少しだけ表現できるのだと。

 だから恥ずかしいではありますが、思いついた単語をノートに書き出します。

 ポケットサイズの小さなモノ、もう三冊目――

 

「……あ」

「不審者かと思い警察に通報とも考えましたが、

 我が主の仰られる通り、このアトリエの”元来”の持ち主の関係者ですね?」

「まだことりちゃんは中にいます、元来などという言葉は使わないでください」

「失礼しました――

 ですが、今日という日付以降この場所は」

「分かっています、ですがその心配は杞憂です

 私は明日からこの場所には来られません、そうなると思います」

「……主人が寂しがります」

「顔を合わせれば喧嘩ばかり、イメージの違いで口論し、

 取っ組み合いの殴り合いではあなたが前面に立ったって」

「主に反発できるのは、南ことり様とユルシュール様だけです、

 そして遠慮をしないのはことり様だけです」

「世界的なデザイナーの方相手でもそうできるのは、

 積極的にサンドバッグになってくれる人がいるからです」

「その方に一度お会いしてみたかった、

 おそらく境遇が痛いほど理解できてしまいそうです」

 

 彼女――と表現しても良いものか。

 仮に彼女であると言えば、優木せつ菜(芸名)さんも女の子とせねばならないし、

 名前を出すこともしないほうが良い、なんとなく私はそう思う。

 

「これは主から、餞別だそうです」

「月をかたどったアクセサリー?」

「はい、どこか遠くに”逝って”も私のことを忘れるんじゃないとのことです」

「……苦しいですよ、忘れないことは」

「忘れることよりも苦しくないでしょう、

 何もかも忘れて幸せになるよりは、

 何もかも覚えていて不幸な方が良いのだと、私は思います」

 

 痛い所を突かれてしまった気がして、ちょっとばかり苛立ちを覚えてしまった私は

 彼に罪はないにせよ、ちょっとした嫌がらせを思いつき、

 

「虹ヶ咲学園に優木せつ菜さんという子がいます」

「……?」

「この人は、綺羅ツバサさんが目に入れても痛くない、そんな子です」

「そうなのですか?」

「ちなみに、優木せつ菜というのは芸名で、

 本名は綺羅雪菜というのだそうです」

「なにが……」

「優木あんじゅさんに憧れて、優木せつ菜を名乗り、憧れの女性はあんじゅさん

 ――というツバサさんの弟です」

「……いつから」

「最初からですよ、大蔵さん」

 

 

 性格の悪い嫌がらせをしてしまい、

 ちょっと気が晴れた私ではあるし、ことりちゃんの好きなチーズケーキも入手しました。

 差し入れを食べられる状況にはないと思いますが、

 このサイズのケーキを一人で食べるのは心苦しい。

 

「ことりちゃん」

「かよちゃん、できたよ

 最高にして、傑作、絵里ちゃんなりに言うならとてもハラショーなマケミちゃん」

「絵里ちゃんなりの表現をすると不思議とランクが下がるね?」

 

 絵里ちゃんをバカにするつもりはありませんが、

 海未ちゃんが負けた姿を妄想してマケミちゃんを作ったという事実を

 ことさら美談のようにしてしまうことを私は深い抵抗を覚えるのです。

 そこであえて絵里ちゃんの話題を出すことによって私の心情をバレないように、

 隠し通すことができるのです、ちなみにこの技術はμ'sなら誰でも出来ます。

 

「……これ、餞別だって」

「あのアマ……アレがここに来たってことは、

 ここがアイツの所有物になるってこと?」

「そうみたいだね、骨の髄まで使うって、鶏ガラしゃぶるって」

「くっそ、ルナらしい表現……」

 

 躊躇うように私の手に握られた月のアクセサリーを手に取り、

 それをしばらく観たのち、大事そうにポケットにしまう。

 ちなみにことりちゃんが名前を呼び捨てで呼ぶというのは高い好感度の表れで、

 μ'sだと絵里ちゃんくらいしか該当しません。

 嫌ってる人ならそもそも呼ばないか、ゴミとかクズっていいます、ことりちゃんは正直。

 

「……かよちゃんに遺すのはね、迷った」

「なんだろう? ごはんとかじゃないよね?」

「善子ちゃんが気が付かない、小泉花陽を表すもの

 ちょっと重いかも」

 

 そのアップリケを見た時、たしかに荷が重いと思いました。

 

「あなただけではなく、みんなの太陽になって」

「……”重い”よ」

「穂乃果ちゃんには、私は最期まで、最期まで笑ってたって、

 なんにも気づかなかったって」

「笑えていないよ……ことりちゃん」

「……いやだ」

 

 いやだ! 逝きたくない! もう戻ってこられないなんて嫌!

 ずっと! ずっと! みんなで一緒にいたかった!

 μ'sのみんなと! この世界で! ずっとずっと笑っていたかった!

 

 今のままで! 今のままで時が進まなかったら!

 幸せなままでいられたのなら!

 

 いやだぁ……明日なんて……明日なんて来なければいいのに……

 ずっと! ずっとμ'sのメンバーとしていたかったよぉ……

 

 最期なんていやだ!

 これで終わりなんて絶対に嫌だ!

 お別れなんて嫌だ!

 

「……ああ、そっか、そっかぁ……」

「ことりちゃん?」

「穂乃果ちゃんに伝えて欲しい、私の素直な気持ち」

「……」

「愛してます、あなたのことを、

 愛しています、深く深く。

 

 私は……穂乃果ちゃんの、お母さんに……なりたかったんだ……」

 

 

 服に太陽のアップリケを付けていると、

 制服を着た園児みたいにも見えます、なので申し訳ないけれど、

 大切な時以外はカバンにつけるようになりました。

 

「花陽」

「英玲奈さん? なんでここに、理亞ちゃん達なら中に」

「すまないな、ツバサにお前のことを託されたが踏ん切りが付かなかった

 私なんぞがツバサの代わりは荷が重いしな」

「英玲奈さんがツバサさんのようになる必要はないと思います」

「ああ、だから、私は私ができる方法で

 協力することにした、妹のように私を慕って欲しい」

 

 朱音ちゃんが英玲奈さんを心底慕っているかと言うと――

 なんていうと凹まれてしまいそうなので。

 

「わ、わー、おねえちゃーん!」

「ふふ、やはりいいな妹というものは、妹は素晴らしい、

 妹はリリンの残した文化の極み」

「えへへー、お、おねえちゃーん……おねえちゃーん」

「甘えて貰っても構わない、だが、まだ難しいようだな、

 頼りになる姉だと思っていたが、まだまだ姉道は険しく厳しい

 やはり全世界の妹に慕われる姉になるには精進が必要だ」

 

 英玲奈さんは変なこと言ってますが、

 ツバサさんがいないときの英玲奈さんは徹頭徹尾こんな人です。

 

「ひとつ、妹にいいことを教えてやろう」

「なあに、お姉ちゃん」

「津島善子は妹だ、だから私は、アイツの気持ちがすべて分かる」

「え?」

「絵里をなんとかしてこの世界の呼び戻そう、そのための策を練る

 花陽も手伝ってくれるか?」

「……で、も、絵里ちゃんは……戻ってきたら……」

「アイツは還ることを望んでいる

 たとえ、死ぬことになってもだ」

「……」

「なんでそうするか、それは妹が泣いているからだ

 絢瀬亜里沙が、今も泣いているからだ

 姉は妹が泣いていたら、死んでも構わないんだ」

「朱音ちゃんが泣いてても」

「私が死んだら朱音を泣き止ませられんだろう。

 まあ、絵里なら死んでもいいだろう? アイツもそう思っている」

「……その」

「難儀だよ、姉というのは、いつも妹のために死ぬ場所を探してる

 すまない花陽、私になにかあったら朱音を頼む」

「……でも」

「後生だ、頼む、朱音は私にとってすべてなんだ

 願いを聞いてくれたら、私は死ぬつもりだ、朱音のために」

 

 矛盾しているとは思う。

 でも、矛盾はしょうがない、それが生きるってことだから。

 目に入れても痛くない妹である朱音ちゃんや、

 目に入れても痛くない弟である雪菜クンを

 私ははたして支えられるのか疑問に思いつつ、私は太陽のアップリケを撫でました。

 

 ――私はみんなの太陽になれるよう、頑張る。


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