アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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(※) 亜里沙ルート 第一話 02

 A-RISE復活ライブまで3日。

 みんなの動きも完璧に思えるようになり、

 後は本番の会場で動きを確認するという段階になって問題が起きた。

 いや、問題が起きたと思ったのは私だけみたいで、

 何ていうかみんなが平然としているのが気になったのだけれど。

 

「広すぎない……?」

 

 そう、ステージがだだっ広いのである。

 アイドル30人くらいが踊って歌えそうな場所にぽつんと立ちながら

 何百人レベルで入れる観客席を見渡す。

 μ'sでは、割と狭い会場で踊ったりするケースが多かったから

 本当に圧倒されてしまいそうなくらいだ。

 

 本番では機材を置いたりなんだりするだろうから、

 一応これよりは狭くはなるのかもしれないけど、

 この場所にぽつんと5人立って歌って踊らされるかと思うと、

 私はちょっとだけ恐怖で震えてしまった。

 

「エリー」

「うん?」

「いついかなる時もね、センターっていうのは、リーダーっていうのは、

 平然としていなければならないのよ」

 

 ツバサは前を見ながら、さらに言葉を続ける。

 

「安心して、あなた達のパフォーマンスは保証するわ

 このライブは、絶対に成功する。

 ま、仮に成功しなかったとしたら、悪く言われるのはハニワプロだからいいのよ」

 

 

 外様のツバサさんとしたら、その悪評は結構困ったことになりかねない気がするけど。

 そういえば英玲奈は事務所が違うのに、ハニワプロ完全プロデュースを受けてるね?

 まあ、A-RISEは事務所の垣根を超えるほどのトップアイドルだから良いんでしょ(テキトー)

 

 その後、会場での本番を想定したリハーサルを行い、

 ここで、ちょっとみんなにドッキリしまーす! と南條さんが宣言し

 やれやれって感じで弛緩した空気が流れるかと思いきや、

 私以外のメンバーは真剣な表情で自分の立ち位置を確認していた。

 何も知らされていない私はと言えば、そのみんなというのは

 もしかして私のことではないのかと不安になったけど、

 誰を頼ることも出来ないので、ひたっすらウロチョロしていたら理亞さんにスネを蹴り飛ばされた。

 あまりの痛みに悶絶しているうちに、みんなの動きの確認も終わり、

 私はと言えば頭に特大のはてなマークを浮かべながら、

 ドライバーさんが運転するハニワプロのワゴンに乗り込んで、いずこかへと向かった。

 

 

 私の脳内で、以前も聞いた気がするカッポーンという音がした。

 ワゴンに揺られること数時間、

 μ'sのメンバーが集まっての飲み会というイベントが

 もうすでに遠い過去になってしまった感のある絢瀬絵里ではあるけれど。

 この場所は忘れようはずもない。

 

 東條希が花瓶の中に入りドッキリをしようとし、

 結果的に西木野真姫が呪いをかけられてのたうち回った、

 高海千歌ちゃんが働いている温泉旅館。

 

 

 以前も確か希が二日くらい貸し切りにしていたような?

 なんてことを考えつつ、まあ、芸能関係者が気軽に貸し切りにできる

 便利な旅館なのだと言う認識を深めた。

 

 ようこそアイドル御一行様という

 意味がよくわからない歓迎を受けた私たちは、

 中に入ると衝撃的な光景を見ることになった。

 

「な、なんで……?」

 

 スクールアイドルμ'sのフルメンバーが

 スクールアイドルAqoursのフルメンバーが

 スクールアイドルSaintSnowのフル……というか、鹿角聖良さんが

 その他諸々、様々な時代に活躍していたスクールアイドルのメンバーが勢揃いし、

 私たちを待ち受けていた。

 

 真っ直ぐな瞳を向けるみんなが、

 私たちを見つめていた。

 

 そして、私たちを押しのけるように前に立ったキグルミのプロデューサーが、

 南條さんに背中のチャックを外してもらい

 その中身を登場させると、

 私の周りから、

 スクールアイドルのみんなから

 とにかく大きな歓声がまき起こった。

 

「どうも、こんにちは 

 ハニワプロ所属

 このたびの企画のチーフプロデューサーを務めます

 絢瀬亜里沙と申します」

 

 昏倒するかと思った。

 驚きすぎて悲鳴をあげるところだった。

 でも、私は声もあげられず、

 何もすることも出来ず。

 

 愕然としているのを、

 力が抜けそうになるのを、

 ツバサと英玲奈に両脇を抱えられながら

 

 キャリアウーマン絢瀬亜里沙が

 

【A-RISE復活ライブにおける、Re Stars登場の運び、そして】

 

【アイドルを夢見る女の子たちに

 アイドルの力を見せつけるために

 かつてμ'sが巻き起こした奇跡

 SUNNY DAY SONGをみんなで歌うというイベントの詳細を説明するのを】

 

 貧血でも起こして倒れそうな勢いのまま、私は聞いていた。

 

 

 亜里沙が話しているのを訥々と聞いた後、

 彼女はこちらに目を向けずにどこかへと行ってしまったのを見たツバサが

 

「行きなさいエリー」

「何を言えば良いのか……わからないわ」

「別に、特別な話なんてしなくても良いと思うわ」

「その、私も状況を受け止められなくて」

「気まずいと思っているのは、彼女も同じよ、だから、安心しなさい」

 

 その言葉と同時に、右腕と左腕の支えが取られる。

 フラフラと二、三歩前に出て、そのまま旅館の屋上を見上げ

 本当は逃げ出したくて、 

 いつものパソコンの前に戻りたくて、

 ああ、そういえば愛しいパソコンはツバサの家だと思い出し、

 私は何かを振り切るように首を振り、

 すごいすごいと盛り上がってるRe Starsのメンバーに後はよろしくと告げてから駆け出した。


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