アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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亜里沙ルート 第一話 08

 キンキンキン!(剣戟の音ではありません)

 

 なんて鳴り響く耳を抑えながら、

 これからどんどんと衰えていく自分自身を想った。

 20代になったばかりの頃には、

 幼さも手伝ってか未来の自分に憧れる部分もあったけれど。

 夢潰えて、現実的に割となんにもできない自分を意識してから、

 理想と現実とのギャップにひたすら悶える時間もあった。

 高校時代の南ことりに対する印象は、

 あくまで気弱で、強く物を言えない控えめな子だという印象だった。

 人づてに海外に行ったという話を聞いたときにも、

 すぐに帰ってくるのではないかと心配になり、パリに行ったと聞けば

 様子を見に行かなければならないと使命感に駆られた。

 

 結論から言えば、

 すごくすごくないで言えば南ことりのほうが断然すごい。

 わりと何でもできてきた人生ではあったし、

 これからも自分の思い通りに描いた通りの人生を送るであろうという、

 現実逃避にも似た思い上がりを繰り返してばかりだったけど。

 ことりに対する、

 何事も夢見がちな印象というのが、

 よもや自分に当てはまろうとは、大学生の時の自分に教えてあげたい。

 どんなに願ったところで過去の自分へメッセージなど送ることはできないけれど。

 

 そうそう。

 姉にバニーガールの格好をさせた妹ではあるけれど。

 先ほどから、姉など眼中にないといった態度を取っている。

 それは、露出度のやたら高い私など目に入れたくないといった感じなのか、

 それとも、今更ながらにこんな格好をさせたことを後悔しているのか、

 できれば後者なら、少しは絢瀬絵里も報われるというものだ。

 今後こんなことはされないように、姉の威厳というものを少しは高めておきたい。

 ニートを長い間していた姉が、

 お金をフル使用されていた妹に対して権限を握るなど、

 そんなことが許されて良いものかと思わないでもないけれど。

 

 妹の次の方どうぞという掛け声とともに、

 ドアが開いて入ってきたのは、南ことり。

 私をひと目見た瞬間、

 義憤に駆られた倒幕藩士みたいな顔をして、

 キッ! という効果音が似合いそうな歌舞伎役者みたいな睨みで亜里沙を見、

「私の衣装は!?」

 と宣言した。

 なだめるのに数分掛かった。

 

 

 アラサーが二人してバニーガールの格好をするという、

 とんでもない状況下に置かれることは回避した妹だったけれど、

 気まずい事情でもあるのかこちらには全く視線を合わせず、明後日の方向を見ている。

 その姉である私はというと、

 何かしら口を開けば怒られるのではないかと警戒して、

 南ことりの一挙手一投足を見つめていた。

 その彼女は、先程までの鬼神の如き憤怒からは開放され、

 高校時代の通常時のような穏やかな表情を見せている。

 精神世界を語ることは私にはできないけれど、

 表情のように穏やかであることを祈るばかりだ。

 そんな誰ひとり口を開かない三すくみを経験したのち、

 一番最初にため息と一緒に言葉を発したのは、

「どうして絵里ちゃんは、そんな年甲斐も考えない不健全な格好をしているの?」

 高校時代のぴゅあぴゅあ(南ことりや小泉花陽を主に指す)っぷりは微塵にも見せず、

 人の痛いところや弱点を的確に突く毒舌っぷりに、

 私のガラスのハートは如実に傷ついた。

 女装して女学院に潜入するゲームで主人公がよく取るポーズをしたかったけど、

 そんなことをすれば、ことりに椅子ができたと言われて背中に体重を預けられかねない。

 心の中で泣いていることを微塵も見せず、絢瀬絵里は前を向くことに決めた。

「この衣装のデザインをしたのはことりさん……あ、いえ何でも」

 鋼鉄のキャリアウーマンかつ冷徹アイスレディープロデューサーを黙らせることりの眼力に、

 絢瀬姉妹はひたすら震え続けるのだった。

 

 

「ふう、おいしい」

 この場の統治者にして、

 誰よりも偉いお立場にあられる南ことり嬢をもてなす絢瀬姉妹。

 今だって本来なら目上の人であるはずの妹に、

 のどが渇いたから飲み物が欲しいと告げて持ってこさせたのは、

 地下にあるBARで一番お高いお飲み物。

 グビグビとことりの体内の中に消えていくそれは、

 一杯1500円はくだらない超高級ドリンクである。

 まるでサラミでもツマミにするみたいに食べているそれは、

 一粒500円はくだらない、高級チョコレートであり。

 絢瀬亜里沙の財布がいかばかり軽くなっているかを考えると、

 姉としては苦笑せざるを得ない。

 まあ、以前までは主に自分が軽くしたことを考えれば、

 この場で相手に口出ししようなどという判断はできるはずもなく。

「あ、絵里ちゃん、もうちょっと上」

 肩を揉みながらお客様コッティーますねえという渾身のギャグはスルーされ、

 ひたすらことりに奉仕を続けるのは絢瀬絵里。

 マッサージしている場所は多岐にわたり、ふくらはぎ、腰、太もも……。

 今は首筋のコリを必死になってほぐし続けている。

 こんな事になるなら、通信教育でマッサージの勉強をしておくべきだった。

 後悔するのは、いつも何かが終わった後で

 たいていやり直しが聞かない状況下に置かれている――。

 そんな魔窟に足を踏み入れたのは園田海未。

 飲み物やお菓子をなくなってはちょこまかと取りに行く妹や、

 ニッコニコ笑いながら、お客さんコッティーますねぇ!(二回目)

 という渾身のギャグを披露しながら冷たくスルーされている私を見ながら、

 遠い目をしつつ天井を見上げた。 

「ええと、園田海未です」

 トリッキーな場面で出くわしたせいか、

 何故か知り合いに(ちょっと前に会ったばかり)自己紹介をした。

 ことりは恥ずかしそうにうつむいていたけど、

 うつむきつつもさっきのチョコレートは食べているあたり、

 どれほど反省をしているのかはわからない。

 ただ、亜里沙は信頼できる人物がやってきたとばかりに

 表情が輝きまくっているが、

 彼女の財布は今も軽くなり続けていることを考えれば、

 姉としてはそろそろ暴走ブラックバードを止めるか否か決めなければならないかも。

 

 

「ことり、いろいろあったのは分かりますが八つ当たりはやめましょう」

 結局、ことりに対して忠告を入れたのは海未だった。

 女神様みたいな優しい表情を浮かべながらの進言だったので、

 この場のなんとも言えない空気を穏やかにするかと思いきや。

「絵里に対して愚痴りたいのは、私も同じですが」

 あっという間の爆弾投下。

 光陰矢の如しなどというけど、

 平穏はどこか遠くにふっとばされた。

 ちなみに光陰というのは、ベジータの声がする主人公の友人ではなく。

 月日という意味で――

「絵里、なぜ私の自宅に来ずにアイドルなどを……」

 現実逃避にあれやこれやを考え始めたけど、

 そんな逃避を一切許さず、こちらをきちんと見ろと言わんばかりに

 ニッコニコな笑顔をしながら私の肩を掴む。

 一方先程まで王様のように振る舞っていた南ことりと、

 その召使いであった絢瀬亜里沙は、

 怯える私から距離を取り、明日のDeNAの予告先発エスコバーという話をし始めた。

 いいなあ、私も相手の巨人の予告先発メルセデスって話で盛り上がりたい。

「せっかく両親に孫の姿を見せられるかと」

 素っ頓狂なことを言い始めた恋愛ポエマーに、

 どういう反応を返したものか分かりかねた私は、

「あ、海未結婚するの?」

 孫を見せられるというので、

 てっきり私がいない間に相手でもできたのかと思い、

 一抹の寂しさを感じつつ、明るい調子で問いかけてみると。

「ええ、嫁を貰おうかと。

 金髪でカタカナ系、μ'sでの外国語担当

 抜群のスタイルを誇り、生徒会長をこなし賢く、

 外見も特に秀でており、音ノ木坂学院の生徒誰もが憧れるような――」

「それはまるで絢瀬絵里みたいな人がいるのね?

 でも私は賢くないし、英語は得意じゃないから――

 外見が優れていると言っても」

「という冗談は置いておいて」

 一体どこから? 

 という問いかけは私だけが地獄を見そうだったのでやめた。

「ことり、亜里沙、そのような場所に居ずにお話をしましょう?

 ええ、気分的にはうさぎのローストでも食べたい気分なので」

 今の絢瀬絵里の格好を思い出して頂けると、

 私がどんな表情を浮かべて頂けるかおわかりになられるかと思う。

 あと、背中に冷や汗がどれほど流れ落ちているのかも。

 

 

「ご協力ありがとうございます。

 以前からのお話ではありましたが、

 姉をセンターに添えてのライブが実現する次第になりました」

 その姉に対する報告が基本的に逃亡できない状況下に置かれてから――

 ということに対して、いろいろ言葉責めしたい願望はあるけれど。

「ええ、これで私も肩の荷が降りた心持ちです。

 まあ、絵里一人に踊らせるのも心苦しく思ってはいましたけど……

 よもや自分も一緒に踊る羽目になろうとは」

 亜里沙曰く、

 私のニート脱出にあまり乗り気ではなかった海未。

 何故かと言うと彼女だけは私の両親と面識があり、

 あの二人の度を超した融通の利かなさを知っているので、

 それでいいなら働かずとも相手への復讐になるのではないか?

 なんてことも告げていたようである。

 なお、

 私のニート脱出に積極的な行動を見せていたのは、

 にこ、ことり、凛の3人だそうで。

「私の衣装のデザインがお蔵入りにならなくてよかった

 絵里ちゃんに似合うようにとびっきり可愛くしておいたから」

 ただ、にことか凛あたりが私に対して辛辣だったのは、

 元からの性格と意識の高さもあったんだろうけれど……。

 ことりが直接私に働くことを促したりしたことはなくて、

 どちらかといえば疎遠な方向に傾いていたから、

 自分のことを絶えず心配されていたことなど全く心象になくて。

「ただあの、

 絵里ちゃんが来なかった時のために

 銀髪の子が着ても良いように調整してくれっていうのは無茶ぶりが」

「二着作るよりは良いかと思いまして」

 Re Starsのメンバーで銀髪と言うと、

 他メンバーに比べて控えめで、

 はっきりと言ってしまえば影が薄いエヴァリーナちゃんのことだろうか?

 確かにダンスが得意で、

 本気さえ出せれば絢瀬絵里程度ならなんとかなりそう感は漂っているけれど。

「そういえば亜里沙、エヴァちゃんってフルネームなんて言うんだっけ?」

「ん? ああ、姉さんは彼女の本名は知らないんでしたっけ?

 あの子の本名はリリー・ルッソ。

 「エヴァリーナ・アヤルセイヴァン」は芸名です」

「……あの、私の勘違いでなければ良いんですが。

 名前に絢瀬絵里と入ってません?」

 海未のその言葉にも、ふぅんみたいな反応しかしなかった私に対し、

 亜里沙は痛い所を突かれたと言わんばかりに表情を曇らせた。

「彼女は、宇宙の起こりは絢瀬絵里だと信じています」

 苦々しい表情を浮かべたまま、妹がトチ狂ったことを言い出した。

 カテジナさんとお友達になりに来たみたいに、素っ頓狂なことを説明し始める。

「昔、この宇宙……つまり世界が出来る前。そこには絢瀬絵里がいました」

「すごいのね」

 そんな言葉しか出てこなかった。

 宇宙の起こりが絢瀬絵里だなんて、

 その当人の絢瀬絵里でさえ知らなかった。

 よもや自分がそんな大それた存在だとは……。

「友人のいなかった絢瀬絵里は、

 新たなる可能性を探るため、そして、暇つぶしに宇宙を作りました」

 コメントが出てこない一同。

 ここで茶化して、

 この世界の絢瀬絵里と一緒ね! と叫べればよかったんだけど……。

 残念ながらそんな気力は浮かばなかった。

「宇宙神絢瀬絵里は、やがて自分と出会い

 本当の愛を知ることだろう。

 そして世界は更新され、

 優しくない愛のない世界は生まれ変わるだろう

 ……とは、おそらく今は思ってないはずなんです。

 おそらく、きっと……たぶんですが……」

 いつもは強気な妹のあまりな弱々しい態度に対し、

 特にコメントをすることができない一同は、

 ひたすら時間が過ぎるのを待った、

 あまりにも痛々しい妄想に対して、それくらいしか供養の態度を示せなかったから。

 

 

「そういえば、次は穂乃果が来るのかしらね?」

 ようやくコメントの一つも出来るようになったので、

 まだ未登場のμ'sのセンター高坂穂乃果の話題を振ってみる。

 よもやこのライブで欠席することなどはないだろうし、

 以前の誰かの会話でちらっと名前を聞いたような気もするから。

 ただ、誰かから逃げてでもいるのか姿は見当たらなかったけど。

「絵里は確実に地雷を踏み抜いていきますね」

「マゾなんです」

「本当だねえ……」

 宇宙神傷つく。

 ただ、先ほどの凹んだときのポーズ→「orz」

 をやってみたかってけど、三人が三人私を椅子にしそうだからやめた。

「私にとって、高坂穂乃果という存在は――」

「宇宙神?」

 茶化すつもりで問いかけてみると、亜里沙とことりにスネを蹴っ飛ばされる。

 悶絶するレベルで痛い。

「こほん、今でこそはっきりと言いますけど。

 高坂穂乃果という存在は普通なんですよ、あくまで私にとってはですが。

 幼なじみであり、親友。

 そこには奇跡とか輝きという要素はなく――

 ただ、人よりもちょっと行動力があっただけの普通の人」

「穂乃果が普通か……そういう印象は持ったことなかったな」

「それは絵里が穂乃果を買いかぶり過ぎなのです」

 スネをさすりながら意見を言ってみるとバッサリ否定される。

 絢瀬絵里にとって高坂穂乃果というのは、

 こうして言葉にするのは恥ずかしいけれど……

 奇跡の象徴みたいな存在だった。

 宇宙神という存在はわからないけど、身近にいるすごい神様みたいな、

 そんな印象。

「絢瀬絵里は、わりとすごい人間ですから、

 自分と一緒にいるから相手がすごいんだろうくらいの印象は……

 まあ、おそらく高確率で思うんでしょう?」

「高確率ですごい人間がいるんだから仕方ないじゃない……」

 綺羅ツバサしかり、絢瀬亜里沙しかり。

 身の回りにいる面子は基本的に高レベルな人ばかりで、

 才能を極めて発揮していたり、夢を簡単に叶えたり。

 人気も知名度もニート(笑)の私では遠く及ばない。

「生憎ですが、

 私が今まで生きてきて、

 すごいと思ったのはあなたくらいです」

「買いかぶり過ぎじゃない?」

「いいえ。

 人気絶頂期にあった過去の矢澤にこも、

 アイドルとして頂点を極めた綺羅ツバサも、

 そしてなにより、あなたがすごいと思う高坂穂乃果も

 ……みんながみんな、あなたをすごいと称します」

「ええと……」

「こんな事を言って困らせるのは、

 私自身も把握していますが……。

 ニートであった。

 仕事をしていなかった。

 そんなことで自己評価を下げる必要は何一つないのです。

 別にそれは絢瀬絵里に限ったことではないですけれどね」

 潤んだ瞳で海未に告げられて、

 もう一言くらいそんな事ないよと言いたかったのを我慢。

「私は……そうだなあ……

 穂乃果ちゃんっていうのは、すごーく仲の良いお友達?

 親友だとか、幼なじみであるとか。

 もちろん関係を表現する言葉はたくさんあるんだけど……

 お友達っていうのが一番関係性を表しているかなって」

 海未が静かになったので言葉をことりが引き継いだ。

「とある時期からね穂乃果ちゃんは

 私も、海未ちゃんも頼ることはなくなったよ?

 それはね、大人になったとかそういうんじゃなくって……

 友情っていうのは相手に依存したり、相手に負荷をかけるんじゃなくて、

 相手に対等で誰か次第で態度が変わることのない尊いもの。

 あの子たちが出てきてラブライブを優勝したくらいから……」

「あの子たち?」

「ことりは彼女たちのグループ名を言うことも不愉快そうですけど」

 私も同じ気持ちですと言いつつも教えてくれたのは、

 「Aqours」という名前だった。

 

 

 二人が出ていくのを見送りながら、

 私はなんとなく天井を見上げた。

「亜里沙は知っていたの?」

「……Aqoursに対して良い心象をお持ちではない程度なら」

 彼女たちと普通に交流していた私としては

 (なにせ会いに行って熱烈な歓迎さえ受けているから)

 Aqoursに対するネガティブメッセージにたいして、はいそうですかと頷くことはできなかった。

「彼女たちに対して……

 いえ、Aqoursに対してネガティブな印象を持っていないのは、

 にこさん、希さん……そして、姉さんくらいです」

「どうして?」

「にこさんは大人ですから、希さんは博愛主義、姉さんは……まあ、底なしのバカですし」

 バカだという言葉を一つも否定できない。

「今回のライブにAqoursの方々を呼んだのは……

 私の出来る最大限の復讐です」

「物騒な話ね」

「希さんはあの子と穂乃果さんを仲直りさせようとしましたけど……

 私は子どもなので

 目には目を、歯には歯を……因果応報、報復は妥当とせり」

「彼女たちが何をしたの?

 千歌ちゃんは穂乃果に憧れてスクールアイドルを始めて、

 メンバーが集って物語が始まった。

 奇跡を願ったけれど、結果は夢敗れた。

 可哀想だとか同情する要素はあるけれど……」

「相手への好意というものが、

 ポジティブな感情を抱かせるばかりと

 本気でお考えですか?

 それは私たちの母を見て、

 旦那さんを深く愛していて素敵ねっていう

 私たちのことを一欠片も理解していない感想と同じです」

 妹の態度や、表情――そして言葉の切なさに。

 過去の亜里沙から問われたとある言葉を思い出した。

 

「相手のことが好き

 でも、好きな相手が一つも亜里沙を好きじゃなかったら?

 他人だったら良いけど、

 それがもし大切な家族だったら?

 自分のことなどどうでもいいのだと……

 言葉で、態度で示されてしまったら。

 絢瀬亜里沙は一体誰を信じれば良いのですか?」

 

 私はね、

 仮に母親とか父親から、

 一つも愛されていなかったとしても、

 無難にやり過ごせる技術は持ち合わせていたけど。

 妹は違う。

 甘えたがりの盛り、

 母親から投げかけられた

「あなたよりもパパが大事だから」

 という言葉。

 どれだけ傷つけられたことだろう?

 どれだけ悲しかったことだろう?

 ――そして私が、

 その事実を今の今まで忘れていたということが。

 何よりも許せなくて、歯がゆい。

 

「私と亜里沙は家族だから」

「……なんですか?」

「ううん、家族っていうモノより、強く、深く、繋がり合って……

 私は亜里沙を深く愛しているから」

「姉妹で同性……因果ですね」

「お姉ちゃんを信じなさい」

「絢瀬絵里のどこを信じれば良いのか……

 お金はない、就職口もない、今だってバニーガール……」

 それはあなたがさせたんでしょう?

「今から、Aqoursの皆さんが来られます。

 ヨハネちゃん以外ではありますが。

 もし……もしも、

 高海千歌という人が、

 穂乃果さんに憧れ、夢を持ち、理想とし、感動を覚え……

 相手を深く愛し信じることだけを是とする……いえ、

 一方的に相手を慕うことが相手に対する愛情などと、

 理解のないことを言うのならば。

 絢瀬絵里が出来る最大限の言葉で、

 それは違うと言ってあげてください」

「……出来るかしらね?」

「ああ、ちなみにですが。

 高海千歌、渡辺曜さん、桜内梨子さんの3人は

 このあとハニワプロからアイドルグループでデビューしますよ?」

「それ、私がどっちに進んでも死ぬやつじゃない?」

「……グループ名は「ア・リトルライト」」

「よく意味が取れないんだけれど?」

「リーダーが言うには直訳すると"穂乃果”な光だそうですよ?

 光がどこから来ているのかは――

 

 

 μ'sが最後に歌った

 本当に一部の人しか知らない

 僕たちはひとつの光を参考にしたとか」

「……そう」

 

 私は。

 絢瀬絵里はドアの先を睨みつけるようにする。

 自分自身がバニーガールで

 ひとっつも格好がつかないことは自覚しつつスルー。


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