アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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亜里沙ルート 第一話 12

 ダイヤさんと一緒に部屋まで戻ってくると、

 先程まで置かれていなかったテレビがあり、

 それには昔懐かしき、高校時代の絢瀬絵里の映像が写っていた。

 その映像を観覧するのは、A-RISEや絢瀬亜里沙と言った豪華メンバーで。

 

「と、このように高校時代に全盛期を迎えると、

 のちの人生が悲惨になる確率が非常に高いです」

 

 何も映像化されているのは絢瀬絵里単体ではなく、

 μ'sのフルメンバーで披露したSTART:DASH!!なんだけれども。

 制服姿の私を眺めていると、たしかに全盛期がその時代だったと

 したり顔で判断されても致し方ない雰囲気は漂っている。

 

 金髪ポニーテールが登場するたびに映像は一時停止され、

 やれこのポーズをした時はこんな事を考えている、

 いま一瞬だけだけど決まったみたいな顔をしたと、

 当人を抜きにしての絢瀬絵里批評会が開かれ、

 それを目撃した私はと言えばなんとも言えない気分になっている。

 

 ただ、隣で私の体を支えている(つもり)の黒髪ロングさんが、

 鼻息荒く胸のサイズの違いはどうのこうの言いながら、

 わしわしフルバースト(希の必殺技)をかましているんだけどそろそろ怒るべき?

 

「姉さん、戻ってきましたか」

「エリー、遅いわよ?」

 

 食事の最中に飛んでくる羽虫を眺めるような目付きをした妹と、

 スリーサイズサバ読み筆頭の元トップアイドルが、

 さして興味もなさそうに私に気がつく。

 

 そして英玲奈は先程からスマホを見て何をしているのかと思ったら、

 妹の朱音ちゃんの画像と私の映像を見比べて、

 やっぱり自分の妹のほうが数千倍可愛いと意味もなく惚気けている。

 そしてその三人を眺めながら、

 こんなに可愛いのにμ'sのメンバーって当時処女だったのよねぇ?

 なんて、未だに経験のない私に当てつけるようにいうのが優木あんじゅさん。

 以前のお酒の席で男性と初めて付き合ったのが、

 高校を卒業してからと言っていたのはどこの誰でしたか。

 

「亜里沙……あの、言いたいことが」

「衣装は変えられませんよ? 穂乃果さんのたっての希望で

 μ'sは皆同じ格好をされます」

 

 今更私に発言権がないのは分かりきっているけれど、

 微妙に今回ばかりは亜里沙も心苦しそうな態度を見せているので、

 強く希望すれば覆ると心で判断していても、できないのはうべなるかな。

 

「安心しなさいエリー、私たちもShocking Partyの時の衣装で踊るわ」

「絵里さん、私たちも君のこころは輝いてるかい?の衣装で踊ります」

 

 SUNNY DAY SONGのときのように統一した衣装で踊るのかと思いきや、

 ハニワプロの判断で各スクールアイドルが一番輝いていた時の衣装を身につけるよう。

 ただ、その判断に関わっているのが綺羅ツバサや絢瀬亜里沙といったメンバーなので、

 ここで胸ぐらの一つでも掴み上げれば(後日内浦の魚の餌にされるけど)

 どのような意図と魂胆で衣装を決められたのか聞くことは出来る。

 

「ところでダイちゃん、その胸やっぱり本物なの? シリコン入ってない?」

「いえ、私の触った感想でよければ、限りなく本物に近いかと」

「ダイエットをすると胸が縮む優木あんじゅはどのような感想を抱くか」

「Private Warsの時にパッド入れてたのを妹の前で白状させるわよ英玲奈」

 

 なんだか最近胸の話ばかりしているような気もするけれど、

 とにかくまあ、絢瀬絵里品評会も辞めさせ全員が全員向き直る。

 聞きたいことはある程度あるけれど、

 ひとまずなぜ私が祭り上げられたか程度は問いかけてみたい。

 にこにはごまかされたし。

 

「今回の件は、そうね。

 別にμ'sの面々なら誰でも良かったのよ?」

 

 と語るのは綺羅ツバサ。

 μ's以外の面々では、私にも亜里沙にも近く。

 したり顔で嘘をつく回数多し。

 私が馬鹿正直に相手を信じすぎるというのは、

 考慮しつつもスルーしますよ?

 誰でも良かった=絢瀬絵里なら良いだろうという判断ではないことを、

 私もなんとなく理解している。

 

「私たちが旧時代の人類みたいに、

 スクールアイドルの起こりの人間みたいに扱われるのは不本意だが、

 まあ、誰かしらに生き残ってもらって私が甘い汁を吸うのは、

 今までの頑張りに報いがあると思ったな?」

 

 なんだかA-RISEって100年くらい前のアイドルグループみたいな扱いされない?

 という、反応にも答えにも困るフリをされ、

 アイドル最前線で持て囃されている(誰かさんのせい)絢瀬絵里としては、

 苦笑にも似た表情で相手の反応を見ることしかできない。

 ツバサあたりが甘い汁を吸うために何とかしろと言えば、

 こちらとしても多少反論する是非もあろうものだけれど、

 英玲奈やあんじゅは、こちらがおもいっきり巻き込んでしまっている身だから、

 お歳暮の一つでも送らねばなるまいと思わなくもないよ?

 でも、妹の教育はしっかりして欲しい、色んな意味で。

 ブーメランなのは重々承知しているけれど。

 

「私は正直、もう、終わった人ではあるし。

 あとは私当人というより、子どものために何が出来るかって思ったら、

 まあ、お母さん頑張りますって感じかしらね?」

 

 お母さんになれそうなのが英玲奈くらいしかいない。

 かと思いきや。

 

「ダイヤちゃんも赤ちゃんとかほしくないの?」

「いえ、私にはまだ早いので」

「といっても今年26になるんでしょう?

 この未だに経験のない手遅れな人間ばっかり追いかけてると、

 女性としての本能を忘れてしまうわよ?」

「言われているわよエリー」

「何言ってるの、ツバサの話でしょう?」

「ふたりとも傷の舐め合いをするのは結構だが、

 くれぐれも酔った勢いとかで同姓での行為にひた走るなよ?」

 

 ツバサと私は顔を合わせてそれはないなって思った。

 あと、さり気なく先ほどまでセクハラをかましていたダイヤさんが、

 もうすでに式こそ挙げてないけれど旦那がいるという事実に打ちのめされる。

 家庭では出来る限り貞淑な妻を演じていると言っているけれど、

 もうすでに黒澤家を掌握している態度からして、夫を顎で使っていることは想像に難くない。

 

「では、Aqours、μ's、A-RISEの代表者が集まったということで、

 今回のイベントの内容、展開、そして展望を説明したいと思います」

 

 亜里沙に彼氏とかいないの? って聞こうとした瞬間、

 私にその口を開くなって目をして押さえつけてくる。

 私がμ'sの代表者扱いをされているのは……まあ、

 ダイヤさんがAqoursの代表者扱いと同じ感じなのでひとまず口を閉じる。

 

「表向きは、UTXの学生たちに向けての小さなライブです

 ただ、テレビカメラ、マスコミ……ネット放送はしませんが記者はいます。

 恥も失敗も成功も全部流すように言っていますので、

 くれぐれもやらかしたりしないよう重々に注意を願います」

 

 A-RISEのあとにRe Starsが出てくるのは

 ハニワプロのやらかしではないかと思ったけれど、

 ソコを突いてもシスコンお姉さんに、妹を無礼るなと言われてしまうので自重。

 ともかく関係者が多いようなので18禁要素はご法度。

 まあ、元から学生を相手にするんだからその要素はできうる限り排除しないと。

 

「ライブの開始はアンリアルの二人に前座として出て頂きます。

 お二人たっての希望で、ダイヤさんと姉さんにはトークの相手をしてください」

 

 ルビィちゃんがダイヤさんを希望するのは分かるけれど、

 なぜ、理亞さんが私を希望したのかはわからない。

 ただ、亜里沙が不適切な方面に話を引っ張らないよう、

 みたいに告げたのでもっと適切な相手がいるのではないかと疑問。

 聖良さんの前でなら彼女だって猫をかぶるだろうし。

 

「聖良が出たらただの姉妹コントになってしまいますから」

 

 ダイヤさんの言葉に、事情を知る面々は「あー」みたいな顔をしたけど。

 鹿角理亞のローキックや回し蹴りが絢瀬絵里に決まる可能性は、

 考慮に入れてくれないのかと気になった。

 

「一応、アンリアルの二人には会場を盛り上げるよう忠告していますが、

 できなければできないで構いません」

「まあ、あとに出てくるのが私たちだものね。

 多少の不手際くらいならカバーできるわ」

 

 だから、安心して蹴り飛ばされろみたいな顔をされても。

 いつも妹の不手際をカバーするのは姉の役目と、

 心の中でさめざめと泣き続きを聞く。

 

「A-RISEの皆様に出ていただいた後は、

 曲を披露するたびにゲストに出て頂きトークイベントです」

「朱音は出ないのか?」

「出ません。ご安心ください、彼女を下に見ているのではなく

 とっておきですから」

「秘密兵器ということか……」

 

 納得したみたいな顔をして英玲奈は満足げだけど、

 朱音ちゃんと一緒に出なければいけない私としては不安要素あるよ?

 だって後に出なければいけないのに、一番最初にトークするんだよ?

 秘密兵器というより、使い捨てに近い私の扱いを疑問に思えど答える人がいない。

 

「トークの内容は決まっていないの?」

「ある程度フリーです。ただゲストにはもう内容を渡してあるので、

 リハーサルの際に確認していただければ

 ――大丈夫と言えるメンバーを選んでいますから」

 

 不安げな表情を浮かべる妹に対し、

 今のUTXの学生が知っているゲストと言うと、

 にことか凛とかことりとか希……。

 確かに高校時代の実績からすれば、

 不安に思うのも致し方ない部分も多々ある気がするけれど。

 

 休憩時間に「ア・リトルライト」の面々が出てきて曲を披露。

 トークもあるみたいだけど内容如何によっては打ち切るつもりらしい。

 その後A-RISEがステージに立ち、観客参加型のイベント。

 舞台に立つのは、もうすでに選考で決めてある生徒らしく、

 それはヤラセなのではないかと思ったけど、大人の都合と言われ反論は我慢。

 

「A-RISE編ラストということで、ゲストに穂乃果さんに出て頂きます」

「あの穂乃果さんが、何から何までヤラセの台本を許容してくれたことを感謝するわ」

「ええ、申し訳ないのですが、フリーな部分は一切無しでお願いします」

 

 立ち合いで強く当たって後は流れで、

 みたいなことを言いながら、A-RISEの面々と亜里沙だけが理解してる会話が続く。

 なんとなく暇してしまったので、ダイヤさんに近づいてみると。

 

「私が希望したμ's珍プレー集の映像は流されないみたいです」

「……なにその絢瀬絵里で笑おうみたいな企画」

「八割が絢瀬絵里なのは事実ですが、園田海未の投げキッス特集で

 本人からやめて欲しいとクレームが入ったので」

 

 μ'sのPVでは何かと園田海未が投げキッスを繰り返している。

 当人の趣味ではなく、

 μ'sの面々で一番投げキッスが似合わなそうなメンバーに

 罰ゲーム的な感じでやらせたのが思いの外人気が出てしまった。

 私としては、じゃあ海未よろしくね?

 みたいに簡単に告げてしまったけれど、

 彼女へのダメージはいかんばかりだったか。

 候補としては真姫や花陽もいたんだけど、

 二人の投げキッスは微妙になんかガチっぽくてダメってことになった。

 花陽を止めたのは凛でその時のコメントが、

「なんだかかよちんの投げキッスを見てると発情しそう」

 だったんだけど、それがどこまで本気だったのかは絢瀬絵里は知らない。


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