アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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亜里沙ルート 第一話 13

 

 

「穂乃果さんのSUNNY DAY SONGはすごく良かったというコメントの次に、

 ツバサさんにはもうあんなことは出来ないわねと

 そのコメントで会場が暗転しますので」

「この後の、そんなことないっていうのは誰がいうの? エリー?」

「希望者はいたんですけどね……千歌さんとか。

 その節は苦労を掛けましたダイヤ」

「いえ、亜里沙に心が折れるまで罵られなかったことを彼女は感謝すべきです

 それよりも、雪穂にその言葉を言って貰うまでが苦労しました……」

 

 SUNNY DAY SONGを披露するにあたって、

 一番困ったのがシーンまでを繋げるナレーションだったそう。

 会場のナレーションを主に務めるのは希の事務所で働いているという元声優の楠川姫。

 あだ名は「くっすん」だけど、希だけは彼女を「お姫ちん」って呼ぶらしい。

 なんか、くっすんっていうと自分が呼ばれている感がするとか。

 それはともかく、μ'sとはほとんど関わりのない彼女がそんなことないと

 穂乃果やツバサに告げるのは変ということで、

 誰がセリフを吐くか選考は難航。

 仕方ないから亜里沙が言うみたいなことだったけど、

 その時に、じゃあ雪穂でいいじゃんと穂乃果が言って、選考するメンバー全員が納得した。

 ただ、このイベントでさえ

「私はもうスクールアイドルではないですし、μ'sのイベントにも関わらない」

 と言って不参加の雪穂ちゃんを説得するのは骨が折れたらしく、

 海未やことりや亜里沙といった友人、幼なじみの面々にも耳を貸さず、

 ダイヤや穂乃果やご両親といった高確率でお世話になっている面々の説得にも首を縦に振らなかった。 

 

 

 ただ、ここで笑い話として良いのか判断に迷うけれど。

 雪穂ちゃんを動かしたのは高海千歌さんだった。

「じゃあ、私が説得します!」

 と、呼ばれてもないのに穂むらにやってきた彼女が数分後、

 両頬を赤く染めて帰ってきて、一言言うくらいなら良いですとの返答をもらったそう。

 親友の亜里沙でさえ

「あの雪穂が暴力を振るうなんて」 

 と、戦慄したそうだけれど、とにかく結果オーライ。

 

「SUNNY DAY SONGの後は、Re Starsの皆さんに登場して頂きます」

「最高に盛り上がった後に出るの?」

「おそらく大半の反応はなんなんだこいつらではあるでしょうが、

 安心してください姉さん、朱音さんの歌には人を黙らせる効果があります」

「まさにそのとおりだな、安心しろ絢瀬絵里」

 

 自信満々の英玲奈に対し、

 いや、そういう反応は求めてなかったと言わんばかりの亜里沙。

 あんじゅが胸を張ったところでCカップとぼそっと言っても

 シスコンお姉さんの耳には入っていなかったようなので、

 この場面で英玲奈を静かにさせるのは無理と誰もが判断した。

 あと、微妙にツバサが引きつった顔をしているのは何故。

 

「期待の新人ってことで、私がいろいろ説明するって話は没になっちゃったのよね」

「あまりに白々しいということで、

 まあ、一部メンバーが新人とは呼べない年齢だったのも手伝って」

 

 私を見ながら亜里沙が言う。

 なお、アンリアルの二人とトークする際にも澤村絵里として出ろと言う無茶振りもあり、

 自分としてはいかにボロを出さないかに集中していた。

 出したところで、りゃーちゃんにぞんざいな扱いを受けるだけだから安心しなさい?

 とはツバサの談だけど、ぞんざい=飛び蹴りだから私としては……。

 

「かよちゃんとお話するの楽しみだったのにねえ?」

「私は彼女からの手紙を全部保存している」

「自分は素人ってことだけれど、元μ'sの触れ込みなら

 トークイベントに呼んでも良かったのに……」

 

 残念そうにA-RISEの面々が語るのは、

 お蔵入りになったイベントの数々。

 その筆頭が小泉花陽&星空凛両名とA-RISEとのトークシーン。

 「春色バレンタインズ」「幸せオーガストズ」と二人のコンビ名も考えられ、

 駆け出しのアイドルに送られてくる小泉花陽からの手紙(という名のファンレター)

 は、もらった人間が必ず出世すると評判もあり、

 その観察眼とアドバイスの有用性を説明してくれる――と企画された。

 が、花陽当人から、自分はステージの真ん中に立つ人間じゃないので、

 と断られ、凛に説得を頼んでみても花陽は首を縦に振らなかったそう。

 ただその代わりが、星空凛と矢澤にこと綺羅ツバサによる

 「アイドル戦国時代の生き残り方をテーマにしたトーク」

 なんだけど、メンバーがメンバーだけに殺伐としそう。

 

 他にも、とある人物の頭の上に乗ったリンゴを園田海未が射抜く企画は、

 海未当人は乗り気だったけれど、もし仮に人物を射抜いてしまうと、

 Re Starsのリーダーがいなくなってしまうのでボツ。

 小原鞠莉と黒澤ダイヤによる気に入らない人間の蹴り落とし方講座も

 ハニワプロの上層部が首を縦に振らなかったためにボツ。

 松浦果南による水の中で生き残る方法、渡辺曜による水と仲良くなる方法も

 本人たちだけが乗り気だったけどボツ。

 西木野真姫、桜内梨子両名の作曲スキルの磨き方とか、

 園田海未の作詞スキルの向上講座等、

 なんとかなりそうな企画のみが生き残ったそうだけど……本当にやるの?

 

「エリー」

 

 英玲奈とあんじゅが出ていった後でツバサに呼びかけられる。

 

「ごめんなさいね、A-RISEを終わらせるためにあなた達を利用してしまった」

「……まあ、私たちがA-RISEに対してどうのこうの言える立場じゃないし」

「でもま、やるからには全力でやるわ……Re Starsも蹴落とすくらいに」

 

 それは勘弁してくださいという亜里沙。

 蹴落とすも何も、人気になる保証が一切ないのだけれど。

 そういうよりも発芽しないように埋めるといったほうが正しいような。

 

「μ'sも終わり、A-RISEも終わり……えーっと、まあ、ついでにAqoursも終わる」

「千歌はその気はないですけれどね」

「そうしたら、スクールアイドルはどうなるのかしらね? 

 まあ、どのみち」

 

 いちばん最後まで生き残って見せて、

 終わった連中を指さして笑ってやるのが私だと

 綺羅ツバサは自信満々な表情で告げた。

 その姿を見送っていたらダイヤさんが

 

「でもちゃっかり生き残るのが千歌みたいな人ですけどね」

 

 それは経験則なのか、期待を込めた願望なのか。

 

「ダイヤ、姉さんのお尻を撫でるのはいいかげんにやめて」

「あらごめんなさい、手が勝手に! ああ!」

「ダイヤ、ついでとばかりに私の胸を揉むのはやめて」

「ああ、ごめんなさい、本能の赴くままに……静まりなさい私の右手!」

 

 黒澤ダイヤさんに旦那がいるという事実は知っていたけど、

 Aqoursの面々で唯一の非処女だということをのちに教えられ、

 私、絢瀬絵里はなんとも言えない気分になった。


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