アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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亜里沙ルート 第二話 01

 私、絢瀬絵里の後から知った話ではあるんだけれど。

 今回のライブイベントの名称というのは「太陽の日」というらしい。

 命名者は誰であるのか、親しい友人であるツバサに訊いてみても、

 ハニワプロが絢瀬絵里を晒し上げてイベントを起こそうと企画した当初から

 太陽の日という企画名で動いていたらしい。

 私の曖昧かつ不出来な記憶を辿ったところで、

 どうあがいても発案者は思い至らないので、

 機会があれば妹にでも訪ねてみようと思う。

 

 

 本番で使用するステージで最終リハーサルを行い、

 迂闊なことに定評がある私ですら、今回の件は成功を収めて

 無事終焉の時を迎えそうであるなどと予感を抱いた。

 私の感覚は妹も同様だったみたいで、何となくいつものクールさそのままに

 誰か失敗してくれたら面白いんですけどね? と、絢瀬絵里を眺めながら言い、

 その意図に気がついた綺羅ツバサが、そこの金髪が失敗したら

 どう恥ずかしい目に合わせようかしらね? 誰か提案がある人!

 なんてのたまい、多くのアイドルたちがどう羞恥を体感させようかを話し合い、

 微妙に気分が盛り下がったのは私だけであると祈りたい。

 ただ、その中でもノリノリだったのが某人気声優の赤髪のお嬢様で、

 なら是非にエロゲーに出演させましょう、私が声をやる! 

 と言ってシュプレヒコールが起こったけれど、

 もうすでにダイヤモンドプリンセスワークスというゲームがあるので、

 不用心なことを言わずにやり過ごすことに集中した。

 

 

 私がセンターを務めるグループRe Starsや、特別枠として登場するA-RISEには

 個室のような控室が用意された。

 私もスクールアイドルだったみんなと一緒に過ごしたかったけれど、絢瀬絵里のことを

 澤村さんと白々しく呼ぶのは面倒だというもっともらしい理由で交流すら少数だった。

 実家が米農家だという月島歩夢と小泉花陽との交流は

 ほわほわする雰囲気ではあったけれど、話している内容はいかに低コストで利益を得るか

 に終始しており、そばで聞いていた黒澤ルビィちゃんがダイヤちゃんに

 実家を米農家にするにはどうしたらいいかを相談し、米は食べるものだと説教をされたみたい。

 などという微笑ましいエピソードがある中、私は南ことりに今回の衣装は

 過去に着たことがある僕たちはひとつの光のときの衣装と同じね!

 という失言をかまし、どうして絵里ちゃんはそこまでファッションセンスがないの?

 と罵られ、今の私に合わせたアレンジを加えたオリジナルの衣装だということを、

 さんざっぱら説明をされたけど、その内容を実際のところは理解していない。

 

 

 現在私はRe Starsのメンバーが集う控室で、

 補聴器みたいと称されたイヤホンをつけ、ステージの状況や観客のボルテージ、

 加えて業界の裏話や絢瀬亜里沙の愚痴等、あらゆる言葉が耳に入って来ている。

 ここにいる面々に内容を伝えるのは私の権限に任せられているけれど、

 余計なことを言ってしまえば、グラビア撮影に直行させるという脅しを受け、

 しかも、多くのアイドルがその撮影の様子を見たいと熱望しているらしく、

 そろそろ私に対するネタ扱いというのも控えて欲しいものではある。

 ただ、そのあたりのネタ枠にぶち込んでみんなの精神の安定を目論んでいるのが、

 以前まで文筆業で食べていた綺羅ツバサなので、

 余計なことを言って墓穴を掘るよりかはそのままの流れに任せておきたい。

 

 

 ここでリーダーらしく、各メンバーの紹介などをしてみたい。

 自分がリーダーたる器だったというよりも、みんな面倒なので

 一番生贄に捧げても心が傷まないやつに押し付けたと言ったほうが正しいかも。

 Re Starsというグループ名が決まり、じゃあグループで集まってなにかをしよう!

 などという空気にはまったくならず、基本的にソロプレイが好きな面々が

 あぶれにあぶれて結果的に5人集まっただけであるから、

 絢瀬絵里が好きという共通点はあるけど、みんながみんな思い思いのことをしながら、

 緊張をごまかし時間を潰そうとしている。

 誰か一人くらいお互いに話しあって、じゃあリーダーの絵里さんお願いします。

 なんて言ってくれたら、緊張をほぐすために南ことりのお肩がコッティーという

 抜群のギャグをかっ飛ばすつもりでいた。

 

 

 さて、一人目のメンバーから紹介を始めよう。

 容姿が抜群に優れていて、むしろ人間離れしている。

 精巧な人形のごとく整った造形は、あらゆる人から銀髪の天使と呼称されるほど。

 背もスラリと高く、澄み渡るような空を思わせる瞳で真っ直ぐに見つめられると、

 何もしていないのに罪悪感を覚えて謝りたくなる。

 胸のサイズだけはコンプレックスがあるのか、公式プロフィールでは何センチか詐称しており、

 亜里沙にして、胸がもう少し大きければ座ってるだけで億は稼げたと言われるほど。

 ただ、彼女自身あらゆることに関心がなく、いつもたいていボーっとしている。

 勉強だけはやたらできるので、何かしらは考えているのかも知れないけど、

 時折スイッチが入ったかのように流暢な日本語で喋りだすケースがあり

 最初にそれを見たときには悪霊にでも取り憑かれたのではないかと疑った。

 Re Starsのメンバーである統堂朱音ちゃんとは同じ高校のようで、

 しかもクラスメートとのことだけれど、それほど交流はないらしい。

 どちらかといえば、朱音ちゃんのほうが一方的にエヴァちゃんを苦手にしているフシがあり、

 必要な時だけは一緒にいるけれど、仲のいい友達同士かというと微妙。

 メンバーの中ではダンスの能力に優れ、歌唱力やトークはかなり苦手な模様。

 ただ得意な踊りだけは自信があるのか、

 天才綺羅ツバサと比べてもなお自分は優れていると思っているみたいで、

 レッスン時に疲労で膝を落としそうになったツバサを挑発して、

 結果周りのメンバーの体重が減った。

 ただ、絢瀬絵里以外の人間には本当に興味が無いらしく、Re Starsの面々は

 かろうじて名前を暗記しているけれど、

 理亞さんの相方であるルビィちゃんの顔を覚えていなかったり、

 英玲奈やあんじゅの顔はうろ覚えであるみたい。

 でも、その絢瀬絵里の話ですら、絢瀬絵里や絢瀬亜里沙が知らない話をしだすので、

 どこか知らない時空に脳内をつなげて交流している疑惑すらある。

 協調性に欠ける部分があり、ダンスの最中や人間関係でも衝突することもあるので、

 私としてはもう少し協調性を身に着けて欲しいと願っている。

 今はイヤホンもせずに、天井の方を見上げながら友人と交流をしている(らしい)ので、

 時折笑みを浮かべながら反応をしている相手が透明人間であり、

 実在するであろうことを思うほかない。

 

 

 二人目は津島善子ちゃん。

 堕天使ヨハネとして私と面識がある可愛い女の子。

 Aqoursの中でも美少女として名高く、当時から容姿端麗なタイプとして、

 口を開かなければ可愛いとよくネタにされていた。

 年下の美少女はみんな自分の妹だと思っているダイヤちゃんが、

 ひときわ高確率で自身の妹扱いしているのが善子ちゃんで、

 そんな彼女を邪険に扱いつつも、まんざらでもないのか二人の仲はいい。

 そうそう、ダイヤちゃんが黒澤家を掌握したというのは、

 サファイアなる妹がいたという嘘か真かわからないエピソードのため。

 出会った当初に襲いかかられ、その時の印象を元にするならば、

 確かに並外れた美少女で、髪も長くスタイルも良かったけれど、

 Re Starsの面々では圧倒的にエヴァちゃんが美少女枠に入ってしまうので、

 メガネを掛けて髪の毛も切ってしまった彼女の立場は少しだけ微妙。

 ただ、裸眼になると視力が悪くて大変なことになってしまうので、

 ステージの上でもメガネはきちんと着用をしている。

 不幸属性持ちで、私の記憶の中でも9人いるのに8人分しか食事を用意されてなかったり、

 外に散歩に行くといった瞬間に大雨に降られたケースが有る。

 ただ、今ではまったくそんなことはないらしく、宝くじは買うたびに当たり

 恐ろしいので今は手を出していないとか。

 Aqoursのメンバーとしてラブライブの優勝も果たし、統合先の高校で生徒会長を勤め上げる、

 銀行員としてかなり優秀だった等、アピールポイントは枚挙にいとまがないけど、

 Re Starsの面々の中ではそんな善子ちゃんよりも

 優れている要素を持っている人間が複数いるために扱い的には少々不遇。

 また、バストサイズは結構サバ読みをしている模様。

 

 

 3人目は栗原朝日ちゃん。

 今回の件で交流を深めることとなり、過去の記憶も少々思い出しつつあるせいか、

 急激に仲良くなったヒナと一緒にいる機会が微妙に増えて、多くの面々から

 あいつは誰だ扱いをされている栗原陽向の妹。

 高校時代に急激に成長した姉を見て、自分も結構スラリと大きくなるんじゃないかと

 そんな淡い期待をしたのだそうだけれど、見事に裏切られてしまった小柄な女の子。

 エヴァちゃん、善子ちゃんと容姿が人並み飛び抜けてる面々のせいで、

 当人のいや、もう私は女の子扱いされなくてもいいですとのコメントも手伝い、

 容姿は平均レベルと誰もが思っているフシはあるけど、客観的に見ても可愛いと思う。

 極めて小柄な体躯だけれど、動きは案外ちょこまかしてない、むしろ大きい。

 時折どころか、結構確率高くチョンボをかますのがちょっと弱点。

 ハニワプロのアイドルの中ではダントツで常識人で、いつでも冷静、

 彼女が感情を乱して何かを言うときはなにかがあったと察する。

 アイドルも歌もダンスもトークもそれなりレベルでこなし、テレビとかに出しても

 一番放送事故を起こす確率が低そうな子。通称歩く平均点以上。

 ただ、勉強面においてだけはRe Starsでも下で歴史の知識を披露すると

 たびたび武将が女体化を前提に説明することがある、おそらく姉のせい。

 でも、ハニワプロのアイドルが知識を披露する機会があるのはツバサくらいで、

 他の面々はその他大勢の賑やかしレベル、エヴァちゃんだけは匹敵する成績だけど、

 彼女にトークさせるくらいなら賑やかしで充分、座っているだけでも注目されるし。

 あと、別枠で鹿角聖良さんという他に類を見ないレベルの成績の人もいるから、

 ツバサと二人で共演を果たせばいいと思う。

 姉さま大好き理亞さんでさえ、函館聖泉女子高等学院での成績を問われ、

 自分は平均点以下だったけど、それを基準で考えると地下に潜ってるレベル、

 だったそうで、偏差値は40が最高なんですよねって発言を聞いて耳を疑った。

 朝日ちゃんの話の途中で他の子の話題を出してしまったけれど、

 彼女は絢瀬絵里に対しても澤村絵里に対しても辛口傾向があり、

 その発言を聞いた星空凛でさえ、え、本当に絵里ちゃんのファンなの? とためらいがちにコメントした実績を残す。

 先輩の私にさえ遠慮のない凛が、苦労してるんだねみたいな目で見たのはもはや伝説。

 根は素直でとても良い子との評価をどこまで信用すればいいのかわからないけど、

 これを持っているのは内緒だと忠告してきたヒナに見せてもらった、

 朝日ちゃんの中学時代の日記はもはやデスノート。

 あれを見たら津島善子ちゃんの中二病など中二病(笑)レベル。

 今彼女は高校時代の絢瀬絵里を眺めながら、

 必死になってその動きを真似しようとしているけれど、

 アイドルとしての理想、希望、憧れと称する私に対してやたら辛辣なのは、

 好きが昂ぶってのことだと思いたい。

 

 歌以外には取り柄がないなどと、口さがない人に言われてしまっている統堂朱音ちゃん。

 自分自身でも自慢できるのは歌で、後は全てにおいて完璧――

 などという客観性のまるでない自己評価が玉に瑕。

 自信だけはやたら満ち溢れていて、本気を出せば大抵のことはなんとかなると思ってる。

 そんな彼女がなぜ絢瀬絵里にハマったのかは知らないけれど。

 歌唱力は神がかっているのに、他の能力がほぼ底辺な彼女は、

 最初の方はレッスンについてくるだけで精一杯だった。

 ついてくるだけで御の字ではあったんだけど、途中で倒れるのだけはプライドが許さなかったらしい。

 英玲奈の朱音ちゃんが倒れた時用に考えられた人工呼吸が披露されなくてよかった。

 日常生活に支障が出るレベルで疲弊していたけど、

 いつからか何食わぬ顔して生活をおくるようになりみんな驚愕。

 100メートル走を完走できない体力の持ち主はいつの間にか立派なスターになった(個人の感想です)

 Re Starsでは体力面精神面でも成長を果たし、

 英玲奈が贔屓目なしで見て、技術面でも大きく発展してみせた。

 ただそれを自覚させてしまえば、鼻をピノキオみたいに伸ばして胸を張った挙げ句

 あらゆるレッスンに手を抜き始めるかも知れないので誰ひとり彼女に真実は告げていない。

 

 容姿では貧乳揃いと陰口を叩かれるRe Starsの面々では唯一の80越え。

 高校時代の南ことりと同じプロフィールだけどひどく疑わしい。

 どちらかが多く詐称していたか、少なく詐称していたか。

 エヴァちゃんや善子ちゃんといった容姿が異次元クラスに整っている面々の前でも、

 文字通り胸を張って生きてきたそうで。

 ただ、そんな朱音ちゃんのプライドは私というイレギュラーの登場により、

 自分にバストさえあればスターになれるのに! という自己評価に変わったそう、強く生きてほしい。

 

 

 絢瀬絵里加入前の、あらゆるレッスンを受ける前のRe Starsの面々はといえば、

 プロのパフォーマンスを披露できるレベルではなかった。

 協調性の欠片もなく、5人揃って何かをやると言われても拒否しそうな勢いだった。

 仲間内で集まってバーベキューでもしよう! など言えば素っ気なく嫌だと言われそうだけど、

 打ち上げに参加するかと問われれば、なんとなくメンバーに加わってくれそうな感じはする。

 パフォーマンスのレベルも準備期間がそれほどでもなかったにも関わらず向上した。

 聖良さんや歩夢といった面々と比べても遜色ないほどで、

 なぜいままで本気を出してこなかったのかと亜里沙が嘆くレベル。

 

 

 ただそれは、あらゆるコーチの手腕ももちろんあるんだろうけど。

 A-RISEという良いお手本が存在したのも大きい。

 やっぱりA-RISEっていうのは素晴らしいアイドルユニットよねと、

 レッスン上がりに周りのアイドルがぶっ倒れている中で、

 やたらテンション高く跳ねていたツバサに言ってみたら、

 自覚がないっていうのは状況によりけりなのね、

 とのコメントと哀れそうな視線を受けるに至った。

 

 

 今の状態でも無難にいままでの評価を覆すパフォーマンスはできそう。

 ただ、現在のステージの状況は残念ながら伝えることは出来ない。

 Re Starsのリーダーとして何ができるかを考えてみて、

 みんなの緊張をほぐすためにちょっとギャグでも飛ばそう!

 と決意をした絢瀬絵里。

 今まで誰一人笑ってもらったことがない渾身のギャグの「南ことりのお肩がコッティー!」

 を叫ぶように披露。

 みんながスルーしたので、緊張して聞こえなかったのだと判断し、

 更に声を張り上げてお肩がコッティーを連呼したら、

 朝日ちゃんが鬼のような形相で「ちょっと静かにして頂けませんか?」

 と言うに至る。

 暗に黙らないと殺すぞと言わんばかりであったので、

 やっぱり誰にも笑われたことがないギャグという点がネックだったとエリチカ反省。


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