三十路ニートエリーチカの居酒屋飲み歩き日記   作:おうかわりん
<< 前の話 次の話 >>

62 / 107
亜里沙ルート 第三話 04

 などと過去回想に浸っていると、

 微睡んでいたのか、気がつけば目的地である西木野家に到着していた。

 私の実家もそれなりに大きいけれど、

 大病院を経営している方が住んでいるだけあって規模が違う。

 なお、園田家が増築されたのも園田海未さんの印税という噂があるけれど、

 私としてはお姉さんである園田碧さんの財産の都合である説を推したい。

 A-RISEの印税がUTXとかスタッフに行くのは仕方がないとしても、

 μ'sの印税が海未さんや真姫さんに行かないというのは何かしらの事情がある、

 スクールアイドルの闇というのは著しく深い。

 ちなみに私は以前、μ'sの高坂穂乃果さんを主人公にしたラブライブ! のアニメの同人誌で、

 自分が色々とやられ役で登場しているのを見て指さして笑っていたら、

 あ、それ書いたの私ですって言われたことがあるけど、ハニワプロは色々と業が深すぎて、

 綺羅ツバサとしてはなんて反応していいか分からなかったよ……。

 

 

 私をこの場所につれてきてくれた運転手の和木さん――

 本名は「西木野和姫」というらしいけれど、噂で聞いた女癖以外は聖職者という

 西木野総合病院の院長のスキャンダルではないことを祈る。

 とにかく無表情のまま屋敷を見上げながら、何を言う様子はないけれど、

 貧乏ゆすりと先ほどから聞こえる早く起きないかなと言わんばかりの舌打ちの数は、

 ちょっとばかり心に響くところがあるので、面白半分で狸寝入りをすると

 高らかに大きなクラクションの音が辺りに響き渡った。

 

「失敬、危ないことがありましたので」

 

 慌てて体を起こした私に、はよ目覚めんかいと言わんばかりの表情で、

 お嬢様に会いに行かせろという態度を和木さんは示している。

 そして、今の音を聞きつけお屋敷の出入り口のドアが開かれて、

 中から住人が次々と飛び出してくる。

 先頭を切って走ってくるのは、年を追うごとにロリ化していく絢瀬絵里が、

 抜群に可愛いとか美少女とか、天使だと呼称していた不思議ちゃん。

 最近、不慣れな日本語はキャラ作りだと判明したエヴァリーナさん。

 スタートダッシュでは譲ったものの抜群の身体能力を活かして

 悠々と前を走っていた二人を追い抜き、車から降りた私に迫る。

 

「絵里は! 絵里は目を覚ましましたか!」

 

 私たちと寝食を長く一緒にしていたにもかかわらず、

 A-RISEの面々を誰が誰だか分かっていない疑惑があったので、

 面白半分で私はA-RISEの誰でショークイズをしたけれど、

 三人までは絞り込めているという答えで時間切れ終了。

 その際に絵里の状態は名前を言わないと教えてあげないと

 言っておいたはずなんだけれど、意図的にごまかしているのか、本当に忘れたのか。

 

「さて問題です、私の名前はなんでしょう?」

 

 そんなふうに尋ねてみると、

 表情を表すことが珍しい彼女が嫌そうな顔をしながら、

 

「昨日もいいましたが、三人までは絞り込めているのです

 それはすなわち正解と言っても良いのではないでしょうか」

 

 などとすっとぼけたことを言うので、

 では明日は三択にするので、把握しているメンバーの名前を言ってみてと言ったら、

 西木野真姫、園田海未、統堂英玲奈という聞いたこともないグループが誕生してしまった。

 soldier gameを歌っていた面々がファンからクール組と言われたのは知っているけれど、

 絢瀬絵里をトレードして英玲奈を入れたらクール組は完成されるかも知れない。

 まあ、絵里はギャグがクール(寒い)だからある意味ではクール組なのかも知れないけど。

 なんていう面倒な問答をしている間に遅れを取っていた西木野真姫さん、

 統堂朱音さんの二名が追いついた。

 前日にとある18禁ゲームの収録があり欠席だった真姫さんは、

 文字通り寝食を惜しんで絵里の情報を聞きに来ている。

 声優としての仕事をキープしつつ、多数アイドルの楽曲の作曲や

 元Re Starsの面々の歌唱力指導までしている。

 なお、最初はRe Starsの面々の指導は私の予定だったけれど、

 抜群に教えるのが下手と言われてしまい現在に至る。

 おかしい、絢瀬絵里は私の指導について来られていたというのに。

 

 

 3人揃ったところで絵里の状態の披露ではあるんだけれど、

 仮に彼女が目を覚ましたら自分が冷静でいられるかわからないし、

 聞きに来た三人も多少疲れてテンションが落ち着いたのか、

 分かっているけれど、とりあえず言ってみたいな空気が流れている。

 私は咳払い一つをして、健やかな顔をして眠っていると告げておいた。

 なお、最初健やかを安らかだと誤訳してしまったエヴァリーナさんが

 お屋敷でトレーニングしていた善子さんや朝日さんに、

 絵里は安らかに眠っているそうです! と言い放ち二人が号泣したのは私の胸に秘めておく。

 ただ、時折呼吸がそのまま止まりそうになるとか、心臓が止まりそうになるというのは、

 時間が許す限り見舞いに来ている私と亜里沙さんしか知らない。

 

 お屋敷に戻る際にいつものぼーっとしていて何も考えてなさそうな表情で、

 

「西木野総合病院というのはヤブ医者の集まりではないでしょうか?」

 

 未だ目覚めることのない絵里の状態に対して、

 よほど腹に据えかねることがあるのか、エヴァリーナさんは

 隣に院長の娘がいる状況で暴言をかっ飛ばしてきた。

 苦笑しながらその言葉を聞きつつ、言われてしまった真姫さんは

 病院に努めている医師はレベルが高いわといったきり静かになる。

 最近微妙に空気が読めるようになってきた朱音さんは

 和木さんの脇腹をつついてなんとかしろと言わんばかりだし、

 つつかれている人はアンニュイなお嬢様も可愛いと表情を緩ませている、仕事して欲しい。

 なんとも言えない空気の中、

 お屋敷内の地下に作られた特設のトレーニングルームへ移動する。

 もともとは、娘が演技の道にダダハマりしたことを知った院長が、

 ならばトレーニングする場所が必要だろうと私財をはたいて作ったもので。

 設備が完成して屋敷に顔を見せてくることを彼は願ったそうだけれど、

 実際に娘が利用するまでには数年のときが必要になったのは、なんというべきか。

 ともあれ、日の目を見る機会があって本当に良かったと思う。

 なお、工事にはかなりのお金がかかったそうだけれど、この特設の地下室はふだん、

 無償で俳優志望者や歌手志望の苦学生やお金のない人に提供されていて、

 いつもにこやかに笑っている西木野愛奈さんが裏でどれほど罵詈雑言をかっ飛ばしたのか、

 綺羅ツバサは知る由もない――ということにしておいて欲しい。



※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。