アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

63 / 199
亜里沙ルート 第二話 05

 μ'sの終わりから数ヶ月。

 確か、10月頃の話だったと思う。

 私は大学生活を謳歌していた。

 ――大学生活と言うよりも、ネトゲやら友人付き合いやら、

 そちらの方に熱を向けていたような気もするけれど。

 

 開店休業中のサークル活動をスルーし、誰に話しかけられることもなく帰宅し、

 その頃にはもう真姫が家にオタク空間を作り上げていたので、

 変な害虫でも出ないように気を配りつつ整理整頓し(真姫は片付けが下手なのだ)

 亜里沙がバイトから帰ってくるのを見計らって、夕飯を作り始める。

 そういえば、真姫からこれが面白いから読んで欲しいと言われたラノベがあり、

 そろそろ感想の一つでも求められるかなと思い、手を止めて内容を思い出していると

 スマホからアニソンが流れ始めた(お嬢様はよく着信音の設定を変えます)

 マナーモードにしておくのを忘れた自分の迂闊さと、構内で流れなくてよかったという安堵と、

 悲喜入り混じった感情を覚えつつ。

 番号を見ると覚えがなかったので、スルーしようかと思ったけれど、

 虫の知らせか、それとも神がかり的な何かか、

 ふと、応対しようかなんて思って。

 

「絢瀬ですが、どちら様でしょう?」

「統堂です。見慣れない番号に出てくれたことを感謝します」

「……統堂?」

 

 A-RISEの面々だと、ツバサとは関わりがあって電話帳にデータが登録されていた。

 ただ、ツバサ以外の英玲奈やあんじゅとは疎遠だったし、

 会話した記憶があんまりなかった(結果、とんでもない勘違いだった)ので、

 統堂と言われて藤堂高虎しか思いつかなかった私は、

 

「歴史にハマりつつある西木野真姫に用でしたら代わりますが」

「……もしかして、私のことをまるで覚えてないのか?

 統堂英玲奈、おかしいな? 一ヶ月前に顔を合わせたはずなのだが」

 

 ここでようやく統堂=統堂英玲奈に思い至り、

 ネトゲのギルドの面々と顔を合わせた後、ツバサとカラオケのオールをして、

 思いの外金銭面での出費が激しく、困ったツバサが呼びつけた面々の中に英玲奈がいた。

 ただ、当時はあんじゅと英玲奈がどっちがどっちだかあんまり分かっていなかったので、

 

「ジョークジョーク、小粋なジョークよ、ロシアンジョーク」

「そうか、ならば問いかけよう。私は胸の大きい方か、それとも背の高い方か?」

「胸が大きくて背が高い方……」

「その気持ちは嬉しいが残念ながら不正解だ」

 

 栗原陽向から教えられた絢瀬絵里とは情報の乖離があるな、

 と、クールに否定をされたけれど。

 何をごまかすことも出来ず、苦笑いしながら謝罪した。

 

「えと、借金を返せという相談ならツバサに」

「用件だけですまないのだが、一番早い休日はいつだろうか?」

 

 となると、講義がない日でかつオンラインゲームのイベントがない日。

 基本的に、大学には教授の講義を受けるだけの模範的な大学生(遠い目)の私は、

 自主休講(笑)をすれば、いつでも暇人、いつでもオールフリー。

 

「明日でも構わないわ、暇だし」

「なるほど、暇同士波長が合うな、最寄りの駅はどこだ? そこまで迎えに行く」

「集合場所を決めてくれればそこまで行くわ、この前のお詫びも込めて、あ、それと今のも」

「助かる。小さい子がいるんだ……あ、私はまだ妊娠はしてないぞ?」

 

 まさかデキ婚? と口に出す前に先んじて忠告される。

 

 とある駅前を指定された私は、某検索エンジンで行き方を予習し、

 寝坊をしないように早く布団に入った。

 それがまさか、今に繋がるような出会いをするとは、

 絢瀬絵里は全く思わずにいい気なものである。

 

 翌日。

 英玲奈と出かけると告げたら、

 めいいっぱいおしゃれをしなければダメだと亜里沙に諭されたので、

 前日、これだと思う格好を用意しておいたら。

 

「お姉ちゃんのセンスは一昔前!」

 

 と、妹にダメ出しをされる。

 

 μ'sの中ではセンスの良いほうだと自覚はあったのに、

 いつの間に時代は進歩していたのかと嘆きながら、

 テレビに映る月島歩夢というアイドルを眺めていた。

 

「真姫さんや、ずいぶんと若いアイドルがテレビに出ておりますのぉ」

「エリー、あなた少し前まで高校生だったんだから、

 ファッションセンスを現役高校生に問われることに危機感持ったら?」

 

 ばっさり。

 ただ、真姫も私の格好には太鼓判を押していたので、

 自分のことを棚に上げた発言であるとは明記しておく。

 十数分後、どこかから亜里沙が持ってきた衣装に袖を通しながら、

 ちょっと大人っぽすぎやしないかと怪訝に思いつつ鏡の前に立つ。

 

「うん、エリー、少し前まで女子高生だったようには見えないわ」

「これからお姉ちゃんの衣服は私が管理します!」

 

 何はともあれ。

 センスの向上を意識した私ではあったけど、

 天気も良くていい気分になったら、秋の心地いい風と一緒にその事も忘れた。

 

 しかし後日。

 亜里沙に管理された衣服のおかげで、

 大学で声をかけられる確率が今までと比べ物にならないほど膨れ上がり、

 絢瀬絵里のファッションセンスは北京原人レベルで落ち着く。

 

 たしかにあの時の衣服の私がイメージの根源にあるのなら、

 澤村絵里=絢瀬絵里と結びつかないのも、分かるような……わからないような。

 

 最寄りの駅に向かい、交通系ICカードにチャージをしてなかったと思いいたり、

 自動券売機のところに向かうと、天使がいた。

 小学生くらいの女の子を見て、その子を天使と呼称するのは、

 はてはロリコンか、ペドか、それともりゅうおうか。

 ニートを卒業してアイドルになる事実に比べれば、

 幼女に性的指向を持つのは別に悪いことでもないようなそうであるような。

 

「あー、そこのお方、日本語はわかりますか?」

 

 自分が日本語を分からなそうな外見しているのを棚に上げ、

 無難に英語で話しかけてみる。

 ここで「タッカラプト ポッポルンガ プピリット パロ」とか言われれば、

 あ、ナメック語分からないんでと言えるんだけれど。

 

「あまり……」

 

 と、英語で返ってくる。

 どのような状況で、日本語がそれほどわからない銀髪の幼女が、

 自動券売機で困った顔をしているのか、見当もつかない。

 家出なのか、迷子なのか。

 それともどこかから誘拐されて逃げ出してきたのか。

 ただ、彼女の可愛さならたとえロリコンじゃなくても言い値で買いそう。

 そんな感想を絢瀬絵里は抱くのである。

 

「どうしたの? 迷子?」

「友達のお見舞いに行きたいんです」

「お見舞い? このあたりじゃなくて?」

「この住所の場所に行きたくて」

 

 と、指さされた場所は私が向かおうとしていた目的地。

 とある駅前からバスが走ってる総合病院。

 彼女の目的は理解したけれど、親御さんの許可を得ているかとか、

 お金を持ち合わせているのかとか、そんな疑念を持ったけれど。

 問題点は後から考えればいい、

 英玲奈は子連れ(語弊のある表現)だと言うし、仲良く出来るかも知れない。

 かたっぽが日本語があまり喋られないというのを迂闊にも忘れた絢瀬絵里の所業は、

 良かったのか悪かったのか。

 

「リリー、リリー・ルッソ、日本では名を名乗るものだと教えられました」

「どうもご丁寧に、私は絢瀬絵里と申します」

「絢瀬絵里……ええと、エリー?」

「呼びやすいように呼んでくれれば大丈夫よ、リリー」

 

 金髪が銀髪の天使を連れている。

 仮にこの子が大柄の成人男性とかに連れられていれば、ポリスメンに通報されかねなかった。

 ただ、この時の交流がTwitterに挙げられ、電車内の異文化交流として何万ツイートされたらしい。

 でも、私たちの許可がないから盗撮だと思うんです(良い子は真似してはいけません)

 

「では、エリーはアイドルをしていたのですか?」

「スクールアイドル……ええと、部活って分かる?」

「学校に上がると、皆がそのようなものに参加すると言ってます。

 仲間同士集まって活動をする?」

「そう、仲間ね、かけがえのない仲間。

 私の全盛期も、私の青春も、おそらくそこに置いてきてしまったのね」

 

 などとセンチメンタルに語ってしまったけれど、

 銀髪の天使ちゃんは私の顔を見上げながら、

 何言ってんだろうこの人みたいな感じの態度をとった、そりゃそうだ。

 

 某駅までたどり着くと、英玲奈が小さい子を連れていた。

 彼女の言からすると妹とのことだけど、似てない。

 連れ子とか、どこかから誘拐してきたと言われたほうが納得してしまう。

 

「絵里……その子は誰だ? もしかして、昨日産んだのか」

「恐ろしい成長具合だけど、同じ病院に行くという話だから」

 

 英玲奈が連れている子に、えらく不機嫌そうに見られる。

 金髪が人生の中で珍しいのかと思ったけれど、そうではないみたい。

 

「すまないな、朱音は私以外の人間に懐かないんだ」

「それは構わないけれど、妹さんの友人のお見舞いなのよね?」

 

 ただ、結論から言ってしまえば。

 統堂朱音ちゃんが人見知りをするタイプというのは本当だけど、

 英玲奈にしか懐かないというのは大嘘。

 

「絵里は英語が話せたんだな、私はさっぱりだ」

「そうなの? ツバサはバイリンガルっていうか、英語はペラペラだけど……会話してみる?」

 

 リリーちゃんを押し出してみる。

 英玲奈は困ったように口を開き、

 それでも妹の前にみっともない姿を見せたくなかったのか、

 

「ぐっもーにんぐ」

 

 Good morningというよりも、ひらがなでぐっもーにんぐと言ったそれは、

 リリーちゃんに一つも伝わらず、結果朱音ちゃんの姉に対する評価が下がるだけで終わる。

 その後なんとも言えない空気の中、とある大学病院までたどり着き。

 

「じゃあ、私はリリーちゃんを連れて、目的地まで行くから」

「そうだな、私はひとまず朱音を連れて病室まで行く、後で迎えに行くよ

 ロビーにいればいいか?」

「私も……一緒に行きます」

 

 キョトンとする一同。

 苦手意識があるのか、英玲奈は珍しく動揺し。

 朱音ちゃんは病室に早く行きたいみたいな顔をしている。

 ただ、二人して英語は分かってないようだから、

 あ、なんかまた面倒くさいこと言ったんだなみたいな意識なんだと思う。

 私が困った顔をしているであろうから。

 

「おそらく、目的地は一緒です」

「……そうなの?」

「サイオンジユキ、私の目的の人。

 アカネも、一緒」

 

 

 病院の高層階。

 エレベーターを使って移動する最中、

 なんとも言えない空気の中、

 リリーちゃんと朱音ちゃんが、それぞれ右の腕、左の腕に抱きつき、

 英玲奈がピンでこちらを恨めしそうな目で見ている。

 いつの間にかに幼女二人からの好感度が激高になってしまっている私だけど、

 人生のモテ期というものだろうか、そうだったら嫌だな。

 

「絵里、もしかして小さい女の子から好かれるオーラでも振りまいているのか?」

 

 どんなオーラなのかは分からないけれど、

 どうせだったら万人にそれなりにモテるオーラが欲しい。

 そんなものが存在すればの話ではあるが。

 

 病室までたどり着き、熱心に手を消毒し、

 幼女二人に押し出されるようにして中へと入る。

 私は全く知らなかったけれど、この中にいる女の子は

 数年前に一大ブームを引き起こした天才子役とのことで

 小学校に上がる頃に芸能界を引退、勉学に励んでいたそう。

 

 リリーちゃんは子役(仕事を受けたことがないらしい)としての同期生かつ友人で、

 朱音ちゃんは小学校での一番の友人。

 

 そして絢瀬絵里はそんな彼女たちのおまけ……かと思いきや、

 西園寺雪姫さんは私に会いたいと熱望したらしい、

 どうやらμ'sとして踊っていた私を見て、すごいって思ったとか。

 ただ英玲奈が、A-RISEは? というか私は?

 みたいな顔をしてこちらを見ているので、後でにしなさいと言っておいた。

 

 

「うわ……ほ、本当に連れてきてくれたんだ!」

 

 雪姫ちゃんは私の顔を見やると、

 輝くような笑顔を浮かべながら喜びの意を示した。

 自分のファンって言われても、と思っていたけれど、

 来るだけでここまで喜ばれるのなら、

 いくらでもファンと名乗る人の前に現れて構わない(ただし小学生以下に限る)

 

「そうよ! 私が連れてきたの!」

 

 胸を張る朱音ちゃんに、連絡したのは私だと抗議する英玲奈。

 みっともないのでA-RISEで一番背が高い人にはちょっと静かにしてもらい、

 エヴァちゃんともども、雪姫ちゃんの事情を聞いてみる。

 

「最初はただの風邪だと思ったんですけど、

 知らない間に入院することになって、

 私芸能界にいたから、人の表情とかに敏感で。

 あ、もしかしたら長くないんじゃないかなって思って――」

 

 重い。

 長い入院生活に飽きて、少しわがままを言った。

 くらいにしか思ってなかった私は、

 自分よりも年下の女の子が、

 もう、死んじゃうかなって覚悟を決めていることに、

 なんとも言えない心情になった。

 

 ただ、その辺の事情は把握していないけれど、

 何ヶ月も入院していて、日々体力が衰えていって、

 症状は良くならないどころか重くなり、

 面会に来てくれる人も減るどころか増えてきたと言うので、

 

「だから最近は、すごく体調が悪いことにして

 わがままもできるだけ言ってみることにしました。

 でも、ここ最近のわがままで一番叶って嬉しいです!」

 

 にっこり笑顔を浮かべる相手に、

 私自身上手くいっているかどうか分からないけれど笑みを浮かべる。

 自分ばかりが話していても何なので、

 古くからの友人のエヴァちゃんや、現在進行系の友人の朱音ちゃん、

 そしてそのおまけの英玲奈が会話に加わる。

 元気になったら何がしたいとか、

 そういう会話はできるだけされずに、今したいことを問いかけてみた。

 

「そうだなあ……ちょっと見てみたいものが……朱音はすっごい歌が上手なんですよ」

「そ、そんなことないわ!」

 

 否定しつつ、もっと褒めろと言わんばかりに表情をデレさせる朱音ちゃん。

 ただ、英玲奈が褒めようとしたところ聞き慣れているからと素っ気なくスルーされ、

 ちょっと聞いてみたいという私の願望もあり、

 朱音ちゃんに歌を歌ってもらったところ。

 

 上手。

 μ'sで上手と言われている真姫や、素直な声質の海未、

 そして無難に何でもできる(ドヤ顔)私なんぞよりもよっぽど。

 歌がうまいって言っても声量があるとか、音を取るのが上手だとか、

 クセがなかったり、逆にクセがあって味があったり、

 世間一般に上手であるとされるどのプロの歌手よりも上手。

 歌でバトルしたら、μ's9人……それどころかA-RISEを含めても勝てないかも知れない。

 表現力、歌唱力どれを取っても一級品、

 シスコンの英玲奈でさえ、真面目な話UTXでも朱音に敵うやつはいないと言う、

 私もそれはかなり信憑性が高いと思った。

 

「素晴らしいわ朱音ちゃん、私もスクールアイドルとしてたくさんの子を見てきたけど

 本当に飛び抜けて上手だと思うわ」

「え、英玲奈が言うと信頼度低いけど、あなたがいうならそうなのかもね」

「リリーは、ダンスが上手なんです。だから……もし、

 私が大人になれるのなら、二人のアイドルユニットっていうのを見てみたくて」

 

 雪姫ちゃんが目を伏せる。

 元気づけたかった。

 きっと病気なんてすぐに治って、

 元通りの生活を送れるようになるって言いたかった。

 

 無邪気気ままに励ましの言葉もかけてくれそうな、

 朱音ちゃんやリリーちゃんでさえ、

 次に会う時には意識がないかも知れないとか、

 こうして会話していたっていつ体調が急変するとか、

 心配になっているというのに、

 大人にわりと近い私や英玲奈が、

 心配ないとか言えるわけがなかった。

 

 この場にいたのが高坂穂乃果だったら、

 もしかしたら――

 

「見られるわ」

「絵里さん?」

「私の知り合いなら、そう言うと思う」

「……でも」

「それにね、どこでだって見られるわ、

 遠いところだったとしても

 朱音ちゃんの歌や、リリーちゃんのダンスなら

 届きそうな気がしない?」

「そうよ! 絵里先輩の言うとおりだわ! 

 ねえ、雪姫! あなたがどこに行ったって!

 どこにだって歌を届けてみせる!

 おいそこの銀髪!」

「?」

「二人でユニットを組んで、片っぽ歌って片っぽ踊るじゃ格好悪い!

 アイドルユニットにしよう! センターは絵里先輩で!」

「すごい! 絵里さん! 頑張って!」

「……うん、約束する」

 

 グループ名やかけ声も考えられ。

 面会時間を過ぎても過ぎても、

 看護師さんたちにしこたま叱られるまで私たちは一緒に、

 夢を、

 未来を、

 ずっとずっと途方もない理想を、

 笑顔を浮かべ話し続けた。

 

 

 絢瀬絵里という人間の来訪から一週間。

 西園寺雪姫さんは短い生涯を終えた。

 葬儀にはμ'sやA-RISEといった元スクールアイドルが故人たっての希望で集い、

 外国に行っていた南ことりには私が頼み込んで戻ってきてもらった。

 

 思えばことりに頭が上がらないのは、

 そのあたりの事情もあったのかも知れない。

 

 

「行かないと……」

「お目覚めですか?」

「和木さんじゃないですか……どうしたんですこんなところで」

「お嬢様がいるところには、この和木、

 何があろうと参上する次第です、たとえあの子のスカートの中でも」

 

 真姫のお世話役……というか西木野家のお手伝いさん。

 和木さん(フルネーム不明)が私の顔を見下ろしていた。

 何でも彼女に膝枕をされていたらしく、

 のちのち、どんな金銭が要求されるのかと思うと、

 恐ろしくて仕方がなかった。

 彼女は西木野真姫のこと以外はゴミかなんかだと思ってるフシがあるし。

 

「すみません和木さん、ステージはどちらですか?」

「ここがステージ脇です、声が聞こえてきませんか?」

「……これは」

 

 穂乃果の声。

 私が意識を失ってしばらく、

 千歌さんを中心としたはじまり。のライブや、

 SUNNY DAY SONGも披露されて。

 

 Re Starsの面々がデビュー曲を披露する直前、観客からブーイングが起こった。

 プログラム的にはこの場面で終了であるから、

 たしかに不満足もあればそういう態度を示されるのもわからない。

 多くの観客や、一部のスタッフや、一部の記者――とにかく、

 私たちに敵意を向けていた人全体が一体となって、

 憎悪を撒き散らすように、すべてをなかったコトにさせるように、

 悪意で私たちのことを叩き潰してしまおう、そんな意図を。

 

「聞いてください。

 私たちは今まで皆様のために準備をしてきました

 いたらない所があれば直します。

 やめろと言われれば仕方ありません。

 誰かのためにと言っても、誰かのためにならない時がある

 それは分かっています

 

 でも、

 でも、

 それが、あなた達のその態度が

 頑張った人間に対する答えだったとしたら!

 私は絶対にそれを許さない!」

 

 いの一番に飛び出していきそうなツバサや、海未、ことりといったメンバーは、

 その他の面々に取り押さえられてる。

 顔を伏して泣いている花陽とか、ルビィちゃんや、花丸ちゃんと言った子もいるけど、

 ステージの参加者のほとんどは穂乃果と同じように怒りを見せている。

 

 高まるブーイングに物怖じせず、

 今までの人生で見せたことがない、そんな恐ろしい表情で。

 穂乃果が、みんなが怒ってる。

 

 ――のが、ステージ脇にいる私に本当は見えるはずがないだけれど、

 なんだろう、なんだか、手に取るように分かってしまう。

 

「ごめんなさい和木さん、ちょっと支えててもらっていいですか」

「医者の娘としてアドバイスしますが

 本来なら、あなたは今すぐ病院に駆け込まないと死にます」

「……でも、行かないと」

「まあ、私は医者の娘ですが医者ではないので――

 別に絢瀬絵里が死のうと、私は知ったこっちゃありませんからね」

 

 などといいつつ、私に肩を貸してくれる和木さん。

 

 一歩一歩。

 弱々しく、フラフラで、情けない感じ。

 絢瀬絵里がステージに出てくると、みんなが、

 ほんとうに仲間が、私のことを見た。

 

 穂乃果のところまでなんとかたどり着くと。

 涙を流しながら怒る彼女のマイクを無理やり奪い取り、

 

 

 私の――

 

「朱音ちゃん、歌いましょう? 雪姫ちゃんのために」

「――!? え、り……せんぱい……?」

「リリーちゃん、踊りましょう? 雪姫ちゃんのために」

「遅いですエリー、私はいつだってあなたのために、

 あなたの居場所を守るため――雪姫に、届けるために」

 

 私の右に朱音ちゃん。

 左に、リリーちゃんことエヴァリーナちゃん。

 

「善子ちゃん、朝日ちゃん……フォローはお願いします」

「言いたいことはあるけど、この津島善子が協力するわ!」

「これが本当のヒーローなんですかね? まあ、力添えしましょう?」

 

 バックに善子ちゃん、朝日ちゃんを携えて。

 

「Re Starsァァァァァァ!!!」

「「「「「シューティングスター!!!!!!!」」」」」

 

 私の――

 最初にして最後のライブ。

 なんか格好いいじゃない? 

 

 なお、このライブの模様は――

 私自身の意識がないため、描写は控えさせて頂きます。

 ご了承ください。


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。