アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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亜里沙ルート 第三話 15

 お酒を酌み交わし急激に仲良くなった結果。

 問題提起をして、その解消のために努力をするという行為がひどくバカバカしいものに感じ。

 もういっその事海外に逃げよう、アメリカンドリームを追いかけてみよう――

 ノリと希望だけで会議した結果、前日に花嫁衣装に身を包み、

 婚約イベントに参加するという目的は果たされることはなかった。

 私は一体何のために南條さん……ではなくメグに拉致られて、見たくない決闘を目撃し、

 結果グダグダでイベントが終了することになったのか?

 それでもなお今回多くの人間を巻き込んで、自分の意のままに世界を改めようとし、

 一部の人達には深い悔恨の意を持たせたことには報いを与えなければならないのだけれど。

 ベルちゃんのように、話せば結構面白い人という可能性は未だに残されているかも知れないけれど――

 幸せいっぱいの亜里沙(ツバサは最近不幸属性を身につけた)や

 復讐に燃えていたメグ(復讐なんかしても自分が損するだけじゃね? と思い始めた)や、

 その他シリアスに頑張ってた人たちも――人生割と、真剣に生きなくてもどうにかなるや肩の力を抜こう。

 でも、亜里沙にはぜひプロデューサー職に戻って貰わないと困る――キャリアウーマンでなくなり、

 ツバサと結ばれてしまって家庭に入って幸福な人妻と化してしまったら――

 なお、今回の婚約イベントの延期はメグの「あにさまおねがぁい(はぁと)」で許されることとなったので、

 本音を言えば延期ではなく中止としたいところではあるけど、そこらへんの感情の機微は

 読み取ってはくれないようである――とても残念なことに。

 

 いっその事みんなで住もう! 貞操の危機を感じたというツバサにより、

 希望者を募ってシェアハウスのような形で一つの大きな家に同居することになってから数ヶ月。

 なんか大事なことを忘れている気がすると家ではメグが首をひねり、

 ベルちゃんがここあちゃんの乙女ゲーのシナリオにだだハマりし(新感覚だったらしい)

 Re Starsの面々も、そろそろ進学か就職活動始めようかな、アイドルで食べていけないし――

 そして私自身も虹ヶ咲学園の講師とか、少なくともコーチングスタッフとしてどこかで拾ってくれないかな?

 でも、せつ菜ちゃんに就職を斡旋してもらうのも、なんかもうアレだな? なんて。 

 過去には毎日のように会っていたμ'sやAqours――スクールアイドルのみんなも、

 そうそう、穂乃果はハリウッドで本当に映画出演のオファーが来たとかで、以前帰国した時に、 

 英会話の腕前が絢瀬絵里(笑)-あやせえりがかっこわらいになる-レベルになっていてしこたま驚いた。

 ディズ○ーランドで遊んでいたばかりじゃなかったんだよ、とは彼女の談だけど、

 なら、メールで送られてくる写真がテーマパークの風景ばかりじゃなくてさぁ……。

 南ことりは10代後半から20代前半をターゲットにしたブランドから、

 子どもを大事にしよう! という思いからキッズ向けに路線変更してなんと大当たり。

 私がつい、子どももいないのに気持ちがわかるの? と問いかけてしまい、

 人間には想像力というものがあってねとコンコンと説明されてしまったのは自分が迂闊だった。

 そりゃそうだ、異世界転生する物語を書いているなろう作家が本当に転生しているわけじゃない。

 海未はスクールアイドル――虹ヶ咲学園での作詞の活動を中心に、多くの高校に歌詞を提供している。

 当人いわく、身体を動かすよりも歌詞を書いている率が高いと笑いながら話してくれた。

 なお、高校生スクールアイドルの面々には無償で作品提供するけど、

 芸能事務所からの依頼は高利貸しもびっくりの金銭を要求することで有名、レートは1文字5000円。

 それでも元が取れるっていうんだからね、なんとも言えないよね……。

 凛は最近バラエティー出演方面に舵を取り始めた。

 扱いに関してはにこを彷彿とさせるので、にこりんぱなでデビューでもしたら?

 と、ネタで言ってみたらほんとうに3人でデビューしてしまい、ラジオのパーソナリティを3人で務めているけど、

 なんで衣装がジャージなの? もっといい衣装なかった? ことりは提供するって言ってくれたよ?(子ども向けです)

 花陽はラジオでのパーソナリティとしての職と一緒に海未と一緒に数々の高校を巡り、

 自身の体験談であったり、アドバイスであったり、スクールアイドルを好きになって貰おう活動を始めた。

 おかげで中高生の女の子からは女神みたいな扱いをされていて、μ'sは小泉花陽を中心としたグループだった

 なんて称されることもあるらしい。

 暇だからスタッフの一員として花陽についていったら、悲しいことに元μ'sと言っても信じて貰えなかった。

 ほら、ここにいるの私! と指をさして説明しても現実を見ろみたいな顔をされて終わった、解せない。

 真姫は18禁ゲームの出演を続けながら、コスプレイヤーとしてもよくスタッフブログとかに顔を出している、

 さらには作曲活動も始めて、海未とタッグを組んでスクールアイドルに曲を提供しているけれど、

 その審査は恐ろしく厳しく、曲を貰えば勝ったようなものと評判。

 なお、それを乗り越えることが出来たのは虹ヶ咲学園のスクールアイドルの面々だけど――

 まだメンバーが揃っていないという理由で来年のラブライブの優勝を目指すとか。

 にこはラジオ出演と同時に、姉妹揃っての大学進学を目指し受験勉強に奔走。

 ここあちゃんは仕事が忙しいと断念してしまったけど、ここあちゃんと一緒に有名大学に合格。

 この春から大学生と言ったけど、つい口が滑って高校生と言われても遜色ないわねって言ったら、

 自分の顔を鏡で見てみなさいと真剣に告げられたけど、なんでだろうか。

 そして希。

 シリアスに傾いて自分のキャラを見失ってた――と、反応に困る台詞と一緒に、

 しばらく食っちゃ寝してストレスを解消する! エリちも手伝って!

 という有無も言わさぬお願い(笑)をされてしまい、悪乗りしたツバサ(亜里沙から逃げたかった)と、

 電車に乗りたいというベルちゃん(基本移動はテレポート)と、仕事ばっかしてて観光する暇がなかったメグ、

 そして、彼女の荷物に紛れ込んでついてきた亜里沙(ツバサ逃亡失敗)と5人で日本一周した。

 だいたいどこでも食べて寝て酒を飲み、テンション高く風景を褒め称え、

 有名なスクールアイドルがいる聞けば会いに行き、元A-RISEというと盛り上がる彼女たちなのに、

 元μ'sというと本当かよみたいな顔をするんだけど、そんなに絢瀬絵里って影が薄いの?

 ――気がつけば4月。

 そろそろ働き口を探そうとツバサと笑っていると、

 亜里沙がそろそろ子どもの名前を考えましょうと、楽しかった空気(というかツバサの顔面)が凍り、

 メグがそういえばハニワプロが経営難で――とどうでも良いことのように語り、

 ベルちゃんが希と一緒にダイエットに励む中(悪魔も太るらしい)で、

 けたたましい大きな音と一緒にぶち破られたドアがバタンと床に倒れ――

 

「無駄な抵抗をするな! 抵抗すれば容赦なく殺す!」

 

 え、あ? ドッキリ? とキョトンとした表情で顔を見合わせた私たちは――

 自分の問題というのは時間が解決するけれど、

 他人の恨みは積年の恨みとなって解決されることがないと身をもって体験することになる。

 

 

 私たちを拘束するために用意された部隊は総勢30名。

 相手がどのような想定をして人数を集めたのかは不明だけれど、

 両手を上げて、囚えられた宇宙人みたいな顔(?)をしながら

 ズルズルと歩くのは総勢6名。

 大の男が揃いも揃って襲いかかるには対象がか弱すぎるのではあるまいか?

 なんて感じているのは私だけみたいで。

 古来から様々な災いを招いて来た悪魔(最近太った)や、

 現代に蘇った安倍晴明と評判のスピリチュアルガール(最近太った)とか、

 日常を戦闘モノに変貌させてしまう人外めいた(ひとり人外)人間は両方とも空を見上げながら。

 私(ウチ)って拘束される必要なかったんじゃない? みたいなことを呟いていたけど。

 その点に関しては自分は悪くないし、ワゴン車の乗り心地が思いのほか良くって

 もしかしてこれラブワゴンなんじゃね? って考えてたらユッキに

 絵里姉さん、命の危機です。もう少しシリアスな空気を出しましょう――と忠告された。

 さすがにもうお亡くなりになっている相手に命の心配をされてしまうと、危機感も覚えてしまうよね……。

 

 連れてこられたのは山奥のコテージのようなところ。

 木製の建物に、リア充がバーベキューでもやっていそうな庭、

 ちょっと日本にはそぐわない――ジェイソンとか、海外映画の殺人鬼が活躍しそうな。

 少なくとも私たちの見た目はか弱い乙女(という年齢でもない)なので、

 殺しあいでも始まってしまったら誰一人生存しそうもない、私は真っ先に死にそうな気がする。

 いかんせん金髪の致死率が高すぎる、カップルとかだとほぼ100%死ぬし。

 なお、先ほどからベルちゃんを無線親機、ユッキを無線子機にしてのテレパシーのやり取りをしていて、

 ツバサがビリーズブートキャンプを指導するビリー隊長のマネをするボビー・オロゴンのマネを披露し

 こちらとしては笑いを堪えるのが大変、声は似てないんだけどすごく特徴を捉えている――

 生きて帰ってこれたらぜひともお茶の間の前で披露して欲しい、きっと爆笑の渦が巻き起こる。

 緊張感のない我々に気がついているのかいないのか、テロ組織とかにも通じているという部隊は

 物々しい雰囲気のままに建物の中に入り、銃を突きつけながらこちらを睨みつけながら護送中。

 見た目的には死亡フラグが建っているのに、頭の中はビリー隊長でいっぱい。

 やがて辿り着いたコテージの深奥には、妹にすらその存在を忘れかけられていた(私も忘れてた)

 椎名伊織氏が不機嫌そうな面持ちで座っていた。

 部隊の隊長と思しき筋肉隆々でサングラスを掛けた日本人(おそらく)の男性は、

 ハスキーボイスで(ボビーオロゴンそっくり)作戦の終了を報告した。

 もうすでに拘束されている面々の半数が半分笑っていて、震え始めている――

 ややもすると恐怖で震えて泣き出しているようにも見えるけれど、

 ひとり真似をやり続けているツバサだけはすごくシリアスな表情で椎名伊織を睨みつけていた。

 まさかあいつも頭の中ではビリー隊長やってるとは思うまい、聞いている私だって疑わしい。

 

「なにか言いたいことはあるか、メグミ」

「どっ、どちらさっ、まっ、でしょうか……」

 

 せっかくビリー隊長に慣れ始めたのに、今度はもののけ姫の曲を歌う米良美一のマネをする美輪明宏とかいう

 どういう組み合わせだよ! っていうモノマネを披露し始めた東條希によって、ほぼフルメンバーが撃沈。

 呼吸困難になるレベルで笑っているメグもつい小ボケを披露してしまったけど、

 かの男性は恐怖で正常な判断ができなくなっていると勘違いした――正直助かった。

 俯瞰的に状況を確認すれば私たちに勝ち目はない、恐らく理亞さん大好きなゲームだったら、

 もう10クリックすると目も当てられないシーンがおっ始まることは確実。

 着ている服はビリビリに破けて、高らかに悲鳴をあげてから殺されるのだろう。

 いや、闇堕ちして他のμ'sの面々の前に現れるとかするのかな? ことりあたりに私は容赦なく殺されそうだけど。

 やめるのです穂乃果! あれはあなたの知っている絵里ではありません! と海未が言った瞬間に

 わかった! って言って、八つ裂き光輪とか発射するね、文字通り八つ裂きになる絢瀬絵里(笑)

 

「俺に逆らわずにいれば良かったものを――賢く生きなければ家畜のように処理されるだけだと、

 その生命を持って知ることになったのは、ある意味幸福だったかもしれんな」

 

 冷酷な発言を噛ましているけど、対象のメグは、え、そのマネどうやってやるんですか?

 と、熱心にツバサにモノマネのコツを聞き続けている、どうあがいても生きて帰られると思ってるらしい。

 ――いや、まあ、ここにいる面々の共通認識として命の危険はまったく感じてないんだけど。

 だけども、そんなことを露程にも知らない椎名伊織氏は、

 笑いを堪えていて前を向けない私たちを、恐怖のあまりに涙をこらえている(ツバサも俯いちゃった)とか、

 怯えている表情を見せたくない頑なな態度と認識している模様、そのまま勘違いしていて欲しい。

 

「だが……お前たちが助かる方法がある、聞きたくないか?」

 

 無線親機はもう職場放棄して家に帰りたいと言い始めたし、

 子機のユッキは健気にもテレパシーを広め続けている。

 ここでツバサがとっておきの「エリチカおうちかえる!」を披露し、笑ったユッキが

 私たち以外にもついついテレパシーを送り込んでしまい、廊下の方からグッ! という声が聞こえた。

 「黙れ小僧!」と言った絢瀬絵里のマネをする

 美輪明宏氏のマネをする東條希の破壊力は抜群だった模様、私もちょっと鼻水出そうになった、汚い。

 

「誰か一人の命を俺に捧げろ! そうすれば寛大な俺はお前らを許してやらんこともないぞ!」

 

 恐らく椎名氏は困ったように動揺する我々を見たかったものと思われる。

 が、そんな空気を露にも読まない(みんな読んでない)一人の行動によって、

 シーンはやっと動き出すことになる、そろそろものまねショーはやめてほしい、お腹痛い。

 あと、健気なユッキが必死になって手を上げているけど、あなたには捧げる命がない。

 

「ほう……お前は見ない顔だな――報告にも旅行の際に食べすぎて太ったとあるが

 惨めな女だ! 少しはあの絢瀬絵里を見習え! あいつはお前以上に食べても変化がないぞ!」

 

 ディスるのか尊敬しているのかどっちかにして欲しい。

 さすがに今の発言は破壊力が大きかったらしく、私たちに銃を突きつけていたシリアスな人たちが

 身体を揺らして笑いを堪えているのが見て取れた、リーダーの人だけ頑張ってるけど、

 恐らくもう人揺らぎしたらぶって行くね、確実にぐはっ、って何もしないのに倒れるね。

 ちなみに私の近くにいる綺羅ツバサも二人以上に食べていたけど

 触れて欲しいみたいな目で羨ましそうに私を見るのはやめて、笑っちゃうから。

 

「まあ、そんなみすぼらしい外見のまま死にゆくのは哀れだろう――

 そうだな、俺に逆らい続けた絢瀬亜里沙! お前が死ねば他の奴らは解放してやろう」

 

 だったら最初からそう言えよ、というメグの素のディスが各面々に広まり、

 テロ組織に精通(疑わしい)しているという人たちも、たちまち震え始めた、あなた達に罪はない(たぶん)

 しかしながら、空気の読めない(ある意味読んでる)伊織氏は、激情がこみ上げてきたと

 勇猛果敢な兵士を称賛するような目でシリアスな彼らを見ているけど、

 一部の人達は笑って銃口が椎名伊織氏に向いていて、発砲されれば彼に直撃するんだけどだいじょうぶ?

 

「なるほど……私が死ねば許して頂けるんですね?」

「だがその前に、跪け! 命乞いをしろ! 哀れに泣き叫べ! クク……

 当然ながらできるよなあ? 俺に同じことをさせたくらいだからな!」

 

 黒歴史の白状は絢瀬亜里沙というより、その行為を知らない(私も知らなかった)面々に大きなダメージを与えた。

 ベルちゃんが知らない(伊織氏自身に元から興味がない)のはともかくとして、

 メグ自身も知らなかったことらしく、嘘でしょ? みたいな顔をして私の妹を見てる。

 亜里沙や他のメンツに粛清された時でさえ、必ず帰ってくるとか言ってたくらいだし(迷惑にも本当に帰ってきた)

 プライドの塊みたいな人間を亜里沙が(当時の妹は高校生)跪かせて、命乞いさせて、

 哀れに泣き叫ばせたとか、何、ちょっと親近感抱いちゃうんだけどダメ? 

 私も何度かやったことあるから! あとこの発言をユッキはテレパシーで拡散しなくていいから!

 せっかく空気がシリアスになりかけたのに、ツバサと希がうわぁみたいな顔をして私を見てるから!

 

「分かりました――あの時のあなたのように、哀れに、情けなく、恥ずかしげもなく、

 顔面を泥のついた足で踏まれ、涙を流しながら、雨も降り、気温が低い中で、

 その場で放っておかれ、後日歩夢に助けられたあなたのように!!」

「そうだその通りだ! クク……同じことをさせると思うと、あの時のお前のように

 冷徹極まりない、虫けらを見るような目で見てやろう!」

「彼女にママと言って泣きついて、セクハラかました結果、罪が重くなったところまで再現しましょう――歩夢!」

 

 はーい、という声が、私たちがこの部屋に入るため使用したドアから、

 岐阜に帰って米作りに精を出していたはずの上原……じゃなかった、月島歩夢その人が

 フッツーに家にお邪魔するみたいに入ってきた。

 頭に特大のハテナマークを浮かべながら彼女を見やる面々(伊織氏以外)に、にこやかに手を振りながら

 

「いやいや、熱烈な歓迎ありがとうございます。

 お久しぶりです、椎名伊織さん。あの時に鼻水を胸元につけられた恨みまだ忘れてませんよ」

「何故貴様がここに!」

「安心してください、あなたに恨みを持つ人間は――今ここに勢揃いしていますから」

 

 ドタドタドタ! と、あらゆる罵声や入れろ入れろ痛い痛い! 様々な声が後ろから聞こえてくる。

 さっきまで私達に銃を構えていた人が揃って、交通整理を始めている。

 変装を解いた面々の中に津島さん(ダイヤちゃん配下)とか、

 スタッフとして紛れ込んでいた鞠莉ちゃん配下のマフィ○のヒトとか、

 よく考えてみればちょっと前に一緒に仕事してた人間が、揃いも揃ってこの場に集結した。

 

「哀れですね椎名伊織、生憎と私は人徳があるんです。

 こんなにもたくさんの方々が、私たち姉妹!  じゃなかった。

 ええ、ツバサさんと絢瀬亜里沙の結婚を祝福してくれました! ハラショー!」

 

 おおぉぉぉぉ!!! という声を上げてツバサが頭を抱えている。

 恐らくこのドッキリみたいな仕掛けのことは知っていた様子だけど、

 英玲奈やあんじゅには、復讐譚として物事は解決すると約束されていたらしい。

 裏切り者ォォォ!! と伊織氏よりも悲痛な声を上げた彼女が痛々しい。

 

「ククク……哀れなのは貴様の方だ! 絢瀬亜里沙! 今の俺に付いている人間がどれほどいるか……!

 日本で俺に逆らえる人間なぞ誰もいやしない!」

「なるほど、それなら世界のオハラだったら――ちょっとは逆らってもいいのかしら?」

 

 窓を突き破って突入した果南ちゃんにお姫様抱っこされて登場するという、

 何だその扱いみたいな感じで世界でも有名な企業の一つにまで成長した(鞠莉ちゃんの手柄)

 オハラグループのご令嬢(会長職みたいなものらしい)小原鞠莉ちゃんが登場。

 なお、窓の近くにいた椎名伊織氏は破片が直撃して痛そう。

 

「ずいぶん好き勝手に持ち上げられてチヤホヤされていたようですが、

 ベルがすでに自分の手元に無い時点で、暗示は解かれていたって気づかなかったんですか?」

「あいつがいなくなって半年は経つが変化は……」

「無いように見せかけていたんです、もうとっくのとうに私たちに対する悪評は解消されています」

 

 亜里沙の発言を聞いてもなお疑わしいという顔つきをする彼に対し、

 特大のため息をついた妹はとっておきとばかりに、彼に付き添い、悪事に加担してきた様々な――

 さり気なく私の父親もぐるぐる巻きにされてるんだけど、あの人は何したの? ついでに縛られてない?

 いや。まあ、ちょっと私の気持ちはすっとしたからいいんだけどさ。

 

「お、おお……ゆ、許してくれ……! 悪気はなかったんだ!」

「知っていますよ、そんなことは。悪事をはたらく際に悪いと思って加担する人なんて

 滅多にいやしません、同情すら覚えますよ」

「情をかけてくれ! 頼む! 俺は騙されていたんだ! あの、好色と欲望を司る悪魔に!

 操られていたんだ! 俺は正気に戻った! 二度とお前たちの前には現れないから!」

「お姉ちゃん、どうしますか?」

 

 妹がこちらを向いて問いかける。

 声を上げて泣いているツバサの肩をポンポンと優しく叩きながら、

 希と一緒に、亜里沙はいい子だから! 幸せになれるから! と励ましていたので、

 正直会話は聞いていなかったけど、ユッキが補足説明してくれた、いい子!

 

「ふうん、じゃ、許せばいいんじゃない?」

 

 え? みたいな目をして亜里沙以外の人たちが視線を向けた、

 ぐるぐる巻きにされて縛り付けられている悪人の方々でさえ、嘘だろみたいな顔をしている。

 妹だけはしょうがないなあみたいな顔をして――

 

「さすがだ! さすが絢瀬絵里は違う! どのような悪人でも見逃す!

 クハハハハ! これで俺は無罪放免ということだな!」

「そうですね――ですが、あいにく――

 

 姉に発言権はないので――」

 

 分かってたよド畜生!!!! どうせオチに使われるってことくらい!!!


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