三十路ニートエリーチカの居酒屋飲み歩き日記   作:おうかわりん
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今回から物語の完成を待たずに
細かく刻んで投稿することと相成りました。
毎日とは行かないですが、それに近く投稿するのを目指します


リメイク版 小泉花陽の飲み会編 3

 雪が降り始めた夜の空を見上げながら、

 絢瀬絵里と小泉花陽は目の前の豪奢な建物を観て呆然としていた。

 都会の一等地にこれほどの自然を用意しても良いのかと言わんばかりに

 周囲には緑や色とりどりの花々が溢れ、川もあるぞ、何なら湖でも用意するか?

 と言わんばかりに水源も豊富。

 ちょっとお値段が張る居酒屋を想像していた私たちは、

 政治家が会合でも開いていそうな料亭に案内され少々死を覚悟した。

 古くからそびえてますと言いだしかねない古風な建物は、

 東京ドーム何個分と表現されそうな土地に存在を構え、

 死ぬ前に死ぬほど良い思いをしろよと言われたほうがまだマシなのではないかと思うくらい、

 自分の身の丈に合わない場所に案内され震える。

 

「え、絵里ちゃん……」

「タクシーの運転手さんが住所を間違えたのよ」

「……そ、そうだよね!」

 

 聞いていた店名は間違えようもなく、

 住所も穴が空くほど見直してもなお現実が認識できない。

 二人して臓器を売られる未来を想像し、

 泡風呂行きを宣言されるんなら一回くらい経験しておけばよかった、 

 と私なんかは思ったりする。

 でも年齢的にはもうアウトな感じだから、やっぱり必要なのは臓器かしら?

 

「絢瀬絵里様と小泉花陽様ですね?」

 

 いつまでも建物の前でたむろしている私たちに痺れを切らしたのか、

 中で働いていると思しき従業員の方(和服)に声を掛けられる。

 極道の妻たちとか言う表現が似合いそうな、

 裏業界の精通してますと言わんばかりのオーラを携えた方に

 胸元に短刀を仕込んでいて、必要であればひと思いに殺ると言わんばかりの人を見、

 花陽は私を盾にし始めた。

 殺すならどうぞこいつからみたいな行動だけど、

 私みたいな脆弱な盾では花陽を守りきれ無さそう、ごめんなさい花陽、情けない先輩で。

 

「主人から誠心誠意もてなすよう言いつけられています

 どうぞ楽になさってください」

「え、ええ、ほら花陽」

「違うよ絵里ちゃん、楽にしてやるって意味だよ……」

「たとえそうでもそれを口にだすのは良くないと思うの」

 

 花陽の不謹慎過ぎる発言をスルーし、

 従業員の萩原さんは私たち二人を地獄――ああ違う、店内へと導く。

 殺されるならせめてその前に美味しいものでも食べようと意を決する私と、

 どうせならお昼を我慢しなければよかったと嘆く花陽。

 美味しいものが食べられると意気揚々とやって来たらしく、

 周囲にはあまりにニッコニコで仕事をしているために怪訝にすら思われたとか。

 ただその発言の一つ一つが遺言を残すようなものであったけど、

 花陽が死んでいるとしたら私も死んでるから、誰にも届かないから。

 

「お、おお……!」 

「すごい……!」

 

 案内された個室にはたくさんの料理が用意されていた。

 見るだけで食欲を誘われるような、新鮮さにあふれる魚介、肉、ごはん。

 特につややかな白米は花陽の興奮度を一気に向上させたらしく、

 食べもしていないのに品種から炊き方までの知識を披露し初め、

 鉄腕ダッシュを見ているような気分になった。

 たとえ自分たちがどこぞの道楽息子のカニバリズムなパーティの材料として扱われようとも、

 美味しいものがいただけるんならいい! と言わんばかりに料理の前に陣取り、

 お情け程度にこれが飲み会であることを思い出したので、乾杯をし、

 アルコールが入ったのも手伝ってまずは花陽の近況報告から聞くことにした。

 

「面接まで行かないの、海未ちゃんに字の書き方も教えて貰って、褒められたけど。

 あんまりアピールする内容がないから落とされちゃうのかな」

 

 字が下手なμ'sの面々は多く、

 その中のメンバーと比べればそれなりに書ける方ではあるけれど。

 海未を筆頭に、就活で必要だったと語る穂乃果、優等生な真姫も流麗な字を書き、

 凛やキャラ作り中のニコは象形文字と言わんばかり。

 希も手書きで作業したくないと言うし、ことりもんなもん必要ないからと豪胆。

 就職に縁がないものだからどう反応を返していいものか分からないけれど、

 小泉花陽という人間を履歴書だの自己アピール文だので判断するのは難しい。

 就職させる側ばかりが都合を押し通し、いざ就職したとなってからも会社人間になれとか、

 自分よりも上司の顔色を伺えというのはなんとも言えない気がする。

 かといって就職をしないようではお金がないので生活ができない。

 他者に迎合しなければ適当に評価されないということに対して、

 いろいろ言いたいことはあるけれど、無職が言えた義理ではないのでやめる。

 

「そういえば一度ツバサから聞いたんだけど」

「二人は仲いいよね、似た者同士なのかな?」

「両極端とも言えないし、似ているとも言えない気がするわ」

 

 なんとなく馬が合うし、馬が合うことにこれといった理由が見つからない。

 

「お手紙、結構送ってるんだって?」

「大したものじゃないの、私が思ったことを伝えられたらいいなって」

「A-RISEが売れたのは花陽のおかげだってさ」

 

 実力に見合わない低評価に何故という反応をしていたツバサも知っているし、

 ニコも過去には目が節穴過ぎると憤っていたことも知ってる。

 毎日テレビをつければどこかしらに矢澤にこがいるという状況下ですら、

 あえば彼女はA-RISEのことを心配していた。

 スクールアイドルの中の勝ち組としてμ'sが持ち上げられる一方、

 始祖であるA-RISEが苦汁をなめ続けたというのは、私もよく分からないところがある。

 彼女たちも努力を続けただろうし、花陽のアドバイスだけで道が開けたとも言えない、

 謙遜はするかも知れないけれど、私に文句や愚痴ばかり言っていたツバサを変えたのは、

 花陽の功績なんだと思う、酒が入ると罵倒されるケースが増えたけど。

 

「……ねえ、花陽」

「うん?」

「いや、話半分に聞いてほしいんだけど」

「絵里ちゃんのアドバイスは信憑性と説得力がないから」

 

 ぐさりと刺さることを言われる。

 確かに就職もしてない人間が、就活に励む花陽に対してアドバイスをしようなんて

 おこがましいにもほどがある。

 亜里沙にも当人ができることをアドバイスしてくださいと言われるけど、

 何故かツバサには高評価。

 「絵里のアドバイスは本当に最高よね!」と褒められること多数。

 ――褒められてるのかな? なんか不安になってきた。

 

「花陽は、他の人がよく見えてると思う、周囲の状況であるとか」

「……」

「でも、自分が見えてないと思う。

 私が思うにね、花陽はできる子よ、自分よりもよっぽど

 就職したって穂乃果みたいになれると思うし、凛よりも著名になれるかも」

「お酒が入って適当なこと言ってるでしょ」

「聞いて」

「……」

「花陽はμ'sの中でもいちばん優しいし、強いし、努力家

 親しみがあるし、愛嬌もある

 そういう部分って人からどうこう言われたところでなんともできない才能」

「いいよ絵里ちゃん」

「うん?」

「私は私を信じきれないんだよ、だからあまり私を褒めないで

 褒められると疑っちゃう、自信がなくなっちゃう

 絵里ちゃんが本当のことを言ってるんだろうなっていうのは分かるけど――

 

 そうだね、絵里ちゃんが就職して仕事をしたら聞いてあげる」

「……ほんとう? 長くかかるかも知れないわよ?」

「もしも未来、絵里ちゃんや、ことりちゃん、凛ちゃん、希ちゃんから想いを託されて

 私や穂乃果ちゃんしか居なくなってもμ'sは……あれ?」

 

 花陽が急停止。

 お酒が入っているからなにか不都合なことでも思い出したのかな?

 って、私なんかは思ったりもしたけれど。

 

「ごめん絵里ちゃん、私寝てた?」

「え、あ、どこから?」

「適当なことを言ってるでしょくらいから? ボーッとして、ごめんね、疲れてるのかな?」

 

 あれ、シリアスに語った部分聞いてもらえてなかった?

 しかしながら疲労しているのは事実なようなので、薄暗い話は置いておいて

 盛り上げることに執着した、多少店員さんや花陽共々には呆れられてしまう結果になったけど、

 真面目な会話をするよりかは賑やかしで充分――

 

 外に出ると周囲は豪雪地帯に迷い込んだみたいになってた。

 風雪吹き荒び、おそらく公共交通機関はいずれにしても停止しており、

 タクシーを呼ぼうにも繋がらないことが予測された。

 

「え、絵里ちゃん……ど、どうしよう」

「確か亜里沙はこうなったときのために迎えが来るって」

「天からのお迎えじゃないよね?」

「……(静かに首を振る)」

「なにか言ってぇぇぇぇ!?」

 

 悲鳴のような声を上げる花陽に私は首を振り続けるほかなく、

 そんな私たちに近づいてくる一つの影が新たなる事件を巻き起こすことなど、

 今の絢瀬絵里は知る由もないのでした。




虹ヶ咲スクールアイドル同好会の面々の歌で「あなた」とされているのは
優木せつ菜氏のことなんですが、とあるメンバーだけは鹿角理亞ちゃんを指しています。

あなたの理想のヒロインを歌う桜坂しずくさんは処女ビッチであり、
中須かすみさんのことを稀にチンカスと呼びますが、
かすみちんをひっくり返してチンカスといっているのであって、
深い意味はありません。

――ないんですよ?


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