アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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鹿角理亞ルート 15

 ここ最近起きるたびにベッドに戻りたくなる衝動が浮かぶ。

 身体の調子の悪さはいっこうに改善されず、おかしいなおかしいな、

 なんて考えつつもいつもの日課をこなす。

 それはウォーミングアップでありトレーニングでありストレッチであり、

 自身を引きずり込もうとせんばかりの堕落した要素は陽の光を見るたびに解消。

 日に日に起きる時間が早くなり、睡眠時間が減っていき、

 このまま寝てしまったら二度と目を覚まさないのではないかという感覚は、

 無理やり習慣づけしたかろうじて早朝と呼ばれる時間に起床することで解決。

 なんだか早い時間に起き出して絢瀬絵里がなんかやっている。

 というのはエトワールの住人の誰しもが分かっているようだけれども、

 老化現象、仕事がなくて暇だから身体を動かしている、むしろ寝ないほうが調子がいい、

 と良いのだか悪いのだかなんとも言えない反応に落ち着く。

 

(歌詞作りも微妙に進みつつあるわね)

(いまだ真姫お姉さんの反応は芳しくありませんけど、頑張っていきましょう)

(真姫は初心者に辛過ぎると思わない? 何を作ってもまだまだって)

 

 比較対象が園田海未の歌詞であることを差し引いても、

 真姫の反応というのは今までの私の対応とはうってかわり厳しいものになっている。

 ただ、歌詞に関して辛口でも何もかもが辛辣に変貌したのではなくて、

 なにかがあったのか、たびたびエトワールに来訪しては私の料理に舌鼓をうつ。

 最近急速に距離を近づけたというニコの愚痴ばかりを吐きながら、

 にこまきなるカップリングの是非について実演を交えながら語ってくるけど、

 私の中にいる子が小学校高学年くらいだっていうのと、

 エトワールの住人には未成年もいるっていう事実は少し認識して欲しい。

 いや、前者は無理だっていうのは分かるんだけどね?

 

「絵里、歌詞作りおつかれさま」

「……音もなく後ろに忍び寄るのはやめて」

「私が忍び寄ったんじゃなくて、あなたが気がつかなかったの」

 

 ツバサは面白いものを見つけたとばかりに微笑みながら、

 隠そうとするノート(理亞ちゃん作成)を引ったくり、ふむふむと読み耽る。

 元から執筆業に携わっていた(遠い過去のように思える)だけに言葉選びであるとか、

 表現が思いつかないときの上手なごまかし方は真姫が舌を巻くほど優秀。

 A-RISEが売れてない時期にツバサ当人が歌詞を作っていれば

 もう少し売れるのが早かったのでは? と私が思ってしまうくらいに、

 ここはこう、これはこうするといいというアドバイスも的確。

 ただ、そのアドバイスは真姫が人を頼るんじゃないの一言で切って捨てられてしまうけど。

 何もかも私が作るっていうのは無理があるんじゃないかと思うの。

 

「あんまり根を詰めると、死ぬのが早くなるわよ」

「なにそれ、経験上?」

「……え、あ、そ、そうね」

「どうしたのよ」

 

 ツッコミを入れてみるといつになくしどろもどろな反応。

 死ぬとか死なないとかいう話に対して私が切り返してくると、

 いつになく動揺したと言わんばかりに困った顔をする。

 ただ、動揺をさせるとその行為に恥ずかしい気持ちでもあるのか、

 ごまかすように喋り始めるのである。

 

「ここにも多くのμ'sのメンバーが顔を出すようになったわね」

「穂乃果の絵里ちゃんまだ生きてたのは衝撃だったけどね」

「いや、まあ、分からなくもないのよ?」

 

 にこや凛や花陽と言った付き合いが多かった面々だけではなく、

 穂乃果や真姫と言った私と距離を取るような態度を示していた子も

 エトワールに来訪すること多数。

 その中の面々に紛れてどう見ても園田海未なポニーテールもいるけど、

 川澄詩衣という偽名を使っているため誰もツッコまない。

 偽名っていうか、自身をモデルにしたキャラクターの名前であるから、

 園田海未の別個体ってことでいいのではないかと思いつつある。

 

「希さんは衝撃だったわね」

「……心臓に悪いわね」

「ええ、色々あってちっちゃくなったって、コナンくんじゃないんだから」

 

 さすがに小学校低学年とは言わないけれど、

 中学生かって言わんばかりにロリ化を果たした東條希。

 いろいろとありましての一言と一緒に説明をかっ飛ばし、

 なぜそうであったのか理由付けもさほど語らず、

 口調すら標準語基準になる。

 彼女自らが来訪しようとやって来たのではなく、

 朱音ちゃんが不審者を見つけたと意気揚々に宣言し、

 それを聞いた英玲奈にとっ捕まえられた。

 

「偽名がダイプリ由来なのは改めたほうが良いと思うの」

「あの二人は絵里に気づいて欲しいのよ」

「なんでかしらね、海未はともかく希を掘り下げると恐怖が」

 

 今までキャラ作りをしていたという点に対しては頷けるけれども、

 こう、控えめでおずおずとした態度で絵里ちゃんと呼ばれると微妙に庇護欲を誘われる。

 凛は「希ちゃんって可愛かったんだね」という周囲が困るコメントを残し、

 海未は「lily whiteの長女が三女になりましたね」と自身の正体が露見する発言をし、

 「人から聞いた話ですが!」とごまかしになってないごまかしをした。

 なお、BiBiの三女枠は満場一致で私で、長女がニコ。

 にこりんぱなだと三女がニコ、次女が凛、長女花陽。

 Printempsに対してはことりの希望もあって、誰が長姉であるかは語られず。

 

「あんまり机に張り付いてると、運動不足になっちゃうわよ」

「そんなに集中してた?」

「そろそろお昼だもの、皆がお腹空いたって騒ぐわよ?」

 

 朝食を作って部屋に引きこもり数時間。

 確かに延々と机に向かっていては身体にも反応が出る。

 一度大きく伸びをして立ち上がり、ふんすかふんすか息を吐き、

 友情をテーマにした歌詞のことは一度封印することになった。

 「友達にありがとうを」みたいな曲名にしたいなと思って仮のタイトルをつけているけど、

 微妙にしっくり来ない、サンキューフレンズとかのほうが良いのかしら?

 

 

 本日は珍しく来客数も少なく、

 何食わぬ顔をして真姫が私の作ったぶっかけそば(字面がエロい)を食べながら、

 さも今思い出したと言わんばかりに口を開いた。

 

「創作の際に必要なのは気分転換よ」

 

 自身の失敗体験から”創作”において必要なのは、

 メリハリであると主張。

 たしかに一つの作業にばかり集中をしていると、自然と視野も狭くなるし、

 凡ミスに気がつかないケースも多々ある。

 真姫の凡ミスはそれを聞いた私が「じゃあ、真姫とデートしましょう!」

 と発言することを信じて疑ってない点。

 そしてなにより、もうすでに出かける準備は出来てますか何か?

 みたいに小奇麗な格好をしている点。

 別に彼女と出かけることは気分転換になるし、楽しい。

 私の存在価値とかをボールペンの替芯レベルにしか思ってない面々も多いし、

 そういう人達に比べれば真姫はすごく私に気を使ってくれる。

 しかしながら、そういう言葉に甘えて本当にデートになど赴こうものなら、

 すでに私の背後に陣取り背中を蹴り飛ばす準備を欠かしていないメイドさんに

 何をされるかわからない、いや、蹴り飛ばすんだろうけど。

 そういえば昔蹴りたい背中って作品があったわね? 私の話かしら?

 

「それはとてもいい案ね、絵里、ちなみに私はオフよ」

「私はオフではないです」

 

 困る私を見て常に面白がっているツバサが話に乗っかり、

 トークを進めていくと以前までの理亞ちゃんが露出する傾向にある彼女は残念そうに

 ちゅるちゅるとそばをすすった。

 ツバサも案外私に気を使ってくれるけど、気を使うのが気が向いた時だけなので、

 あまり迂闊に頼ってなどもいられない。

 オフであれば満場一致100エリチカポイントを使って理亞ちゃんをデートに誘うけど、

 仕事がある彼女を引っ張り出せば私の人権が妹によって塵芥になっちゃう。

 そこから挽回するにはダイジョーブ博士の能力強化イベントに成功するくらい難しい、

 科学の発展のためには多少の犠牲はつきものデース。

 

「絵里、これはフラグイベントです」

 

 Ordinary Daysの面々もそれなりに忙しく過ごしている中、

 エヴァちゃんだけはちゃっかりこの場で暇ですか何かみたいな顔をしている。

 たまに私越しに雪姫ちゃんと会話をしているのが難点だけど、

 彼女と歩いていると他の人に気を使わなくて楽、視線が一点に隣で歩いている子に向くから。

 私の外見なんてホコリレベルで認識してくれない。

 

「ツバサさんを誘えば、好感度が1上昇します」

「デートイベントにしては上昇が抑えめね」

「どうせ絵里はフラグをへし折ってしまうので」

 

 「あー」みたいな顔をして周囲の面々がさも納得したと言わんばかり。

 中にいる雪姫ちゃんですら私を励ますことを忘れ「そうですねー」みたいな感じ。

 いつ私がフラグをへし折ったというのか、

 いや、未だに処女だっていうのはフラグをへし折り続けたからと言われれば、

 頷くことしか出来ないんだけどね?

 

「理亞を誘うと死亡フラグが立ちます」

「絵里先輩の覚悟を待ってます」

「ちなみに亜里沙は南條さんと岐阜です」

 

 「誘うこともできるよ?」といいつつ、

 「誘ったら死ぬよ?」と言わんばかりの反応。

 何故岐阜に行っているかと言うと、ミルクちゃんっていう著名なアイドルがいるかららしい。

 家畜系アイドルって本当にアイドルなの? 牛柄のビキニって真冬でもその恰好なの?

 あと公称スリーサイズを見た理亞ちゃんが怪訝そうな顔をしたのはどうして?

 

「真姫さんを誘うとこの場で死にます」

「絵里の覚悟を私は期待しているわ」

「私は血は見たくありません」

 

 真姫一人がエヴァちゃんの冗談だと思っているらしく、

 私の背後にいる人が「いま、殺しに行きます」と言わんばかりに準備体操を始めた。

 おそらく誘っても殺されるけど、誘わなかったら何故誘わなかったって怒られる。

 自分の命をベッドして真姫ルートに入るのはしばらく控えておきたい、

 できるのならこれからも控えたい。

 

「ちなみにエヴァちゃんを誘うとどうなるの?」

「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会ルートが開けます」

「虹ヶ咲?」

 

 聞いたこともない場所でありながら、

 どこかで聞いたことがあるような場所だと思ったので、

 その辺の事情に詳しそうなツバサに問いかけてみることにした。

 

「UTXをやたらライバル視しているトコね、最近芸能関係者でも

 そこ出身って子が増えたわ」

 

 芸能関係だけではなく、スポーツや芸術関連の才能を磨くことに力を入れ、

 たくさんの寄付金を募っていたりしている所らしい。

 ただスクールアイドルの実力としては、UTXはおろか、

 オトノキにすら勝ったことのない貧弱さ。

 現在の実力ではラブライブの東京予選ですら突破できないとか。

 お金だけはある金満高校の行く末にはまるで興味が無いけど、

 どこかに行くなら目的地があったほうがわかりやすくて面白い。

 

「誰も得しないハーレム系ラノベの主人公みたいな選択です」

 

 といいつつ、エヴァちゃんは嬉しそう。

 ごねる面々を今度誘うから! 絶対誘うから! 

 機会があれば後ほど! と言いつつなだめすかし。

 私は数年ぶりになるデート……あ、希と行ったのは一応デートになるのよね?

 だとすると十年……あ、いいや考えるのやめよう。

 

 なお、二人きりではあるみたいだけど、

 暇だというツバサと真姫はついてくることを決断したみたい。

 できればそういう話は当人に聞こえないところでしていただきたいです。


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