魔弾の姫の護衛によるヒーローじゃないアカデミア   作:癒しを求めるもの

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では!


入学試験~レキのターン~

朝日がカーテンにより遮られ、丁度いい明るさが室内を満たす。

 

芳村 諸羽はそんな室内でとある理由で目を覚ました。

一つは目覚まし時計。寝不足が絶えない故にこれがければ起きることが不可能。

そして二つ目なのだが、、、

 

 

「────すー、すー………」

 

 

隣で寝ている少女、璃々 レキが彼の手を自身の太股で挟んだことによりその感触で目覚めた。

 

 

「…………レキ、起きてるよね?」

「────すー、すー………おひへまひゅ(おきてます)ひゃきゃらふへははいへくはしゃい(だからつねらないでください)

 

 

レキという少女は生活リズムが安定してる。

何時もの時間に寝て、何時もの時間に起きる。故に諸羽が起きた時間にレキが寝ていることはないのだ。しかし、

 

 

「…………珍しいね。寝起きにくっついて来るなんて」

「今日は許してください。入試なんで」

「…………それを言うと僕もなんだが」

 

 

布団の中で諸羽の腕をレキは抱き枕のようにして抱きついてきた。

まだ肌寒い時期故に温かい人肌は心地いいものだった。

 

諸羽自身も嫌な気はしない。しかし、先程も言ったように今日は受験なのだ。雄英の。

 

諸羽とレキの学力、そしてレキの個性ならば受かることは確実とも言われている。しかし、レキの場合は運も必要だ。

と言ってもレキに焦りが見られないことからただのこじつけなのは確かだった。

 

 

「…………遅刻しないように早く準備するよ」

 

 

溜息をつき、布団から出ようとしたがレキはそれを許さない。

 

 

「……いや、でした?」

 

 

更にぎゅっと腕に掴む力が強くなる。

何事かと思った諸羽だったが、視線の先には上目遣いの自身が守るべき少女が無表情だが何かを必死に訴えていた。

 

 

「…………はぁ。夜、何処かに食べに行こう」

「ご飯大盛りより諸羽さんの方が欲しいです」

「…………大盛り確定なのね。いや、知ってたけど。後、妙な言い方しない」

 

 

そっと翡翠色の綺麗な髪に手を乗せる。

サラサラと流れる髪を優しく撫でると、頬には赤らませ、しかし目を細めながら見ていた。

 

 

「…………どうした?」

「いえ。諸羽さんはいつも通りですね。頭撫でて下さりありがとうございます。お腹すきました」

 

 

やっと解放された諸羽だったが、目を細めたレキに疑問を思うのであった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「…………人、多すぎ」

「殆どがヒーロー科志望ですね」

 

 

現在、雄英高校の目の前にやって来た諸羽とレキであったが、類も見ない人の多さに唖然としていた。いや、二人とも嫌そうにしていた。

 

 

「…………ホント、色々と含めてヒーロー科にしなくてよかった」

「私はあの中に入らないといけないのですか。正直、学力テストは問題ありませんが実技は運次第ですんで不安です」

 

 

人混みを苦手とする二人はさくさくと受付を終わらせる。

 

 

「…………それじゃ、頑張れよ」

「はい。諸羽さんも」

 

 

学科が違えば会場も違う。

他者から見れば余裕のある二人組に見られていたが、その結果は本当に余裕だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

諸羽と別れたレキは学力テストを終えた。

 

結論は問題なかった。

諸羽もレキも互いに成績優秀者であるため、このまま行けば諸羽は確実に合格する。

しかし、レキはどうだろうか。ヒーロー科のみ行われる実技を不安要素としていたがレキ自身、その個性と彼女の能力さえあれば受かるだろう。

 

それが不可能となる条件以外では。

 

 

「今日は俺のライブにようこそー!!!エディバディセイヘイ!!!」

「(シーーーーン………)」

 

 

多少の心配があったレキだが、それ以前に周りの静けさと反比例した司会の声に考えることをやめていた。

 

 

「こいつあシヴィーー!!!受験生のリスナー!!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!? YEAHH!!!」

「(シーーーーーーーーーン)」

 

 

更に静けさが広まる。

 

 

司会をする人物はプレゼント・マイク。

その名の通り現役のプロヒーローであり、ラジオなどもやっているとにかくテンションが高いヒーローである。

 

受験生との温度差に中学とは違うと改めて思ったレキ。

他の受験生と同じく、特に返す必要もなく、そして本人も気にせず話を進めていく。

 

試験のルールは機械で出来た三種類の仮想敵を相手にすること。

三種類の仮想敵にはそれぞれポイントが設けられ、それを行動不能にしポイントを稼ぐのが目的、そう説明されたレキだったが、ある違和感を覚えていた。

 

 

「(四種類、ですか)」

 

 

話を聞けば、もう一体の仮想敵は0ポイントのお邪魔ギミック。

明らかに理由があると思ったが矢先にレキはすぐにその意図にたどり着いた。

 

 

「(ここはヒーロー科なので人助けも必要なのでしょう。力以外で、諸羽さんが言う緑谷さんが本物のヒーローだという根拠、ですね)」

 

 

考察をしていると、レキには一つの感情、嫉妬というものを覚えた。

 

自分と出会った時より早く、諸羽は緑谷を認めた。

勿論、以前から面識はあったらしいがそれは関係ない。誰であろうと、諸羽と自分以外の誰かがいると不愉快に思える。

 

 

「(重い女、でしょうか……?)」

 

 

元々、諸羽は積極的に他人と関わろうとしない。

故に彼と関わる人間は極小数だから余計に嫉妬の心を増幅させる。

 

ヤンデレ、と諸羽がレキに説明したものとは違う、純粋な愛情を諸羽に向けているが故に不機嫌なレキは、

 

 

「はいスタート!!」

 

「────私は弾丸」

 

 

諸羽に構ってもらえない分、()()()()となった試験を挑み始めた。

 

殆どの受験生が動かないなか、日頃から周りを注意しているレキはいきなりのスタートに遅れずに個性を発動させる。

 

 

”銃弾”

どんなものでも銃弾として扱えるこの個性。ただ銃弾にすることができるだけの個性なため、射撃の能力が必要不可欠だが、

 

 

「他の方には申し訳ないですが、私が先を行かせてもらいます」

 

 

瞬間、受験生が集まっていた場所を中心として至る所で爆発音が聞こえた。

その音により更に状況判断が遅れて動かない受験生達。

 

 

「40、いえ、50点は倒せましたね」

 

 

目を閉じて、自分の攻撃により倒れた機械の数を分析したレキは場所を移すために移動する。

 

 

「どうしたァ?試験はとっくに始まってるぜ?」

 

 

やっと動いた受験生達を背中に、数十メートル先の仮想敵を見つけたレキは余裕を持って右手を銃の形にしてその方向に向ける。

 

 

「───私は一発の弾丸」

 

 

その呟きをトリガーに、風を纏った見えない弾丸が仮想敵の鉄板に風穴を空ける。

 

空気を銃弾として、的確に敵を撃ち抜くレキに敵はいなかった。

 

 

 

***

 

 

 

雄英の実技入試の様子がモニターに映る部屋では、その学校の教師陣たちが一人の少女に目を向けていた。

 

 

「コレで70。開始僅かで平均の合格点を越えましたね」

「強力な個性を生かしきる彼女の能力は評価すべきだ」

「百発百中の攻撃の連続………俺の立場が」

 

 

若干一名、沈んでいるカウボーイ風のコスチュームを着た教師がいたが、それ以外は全員が少女、レキを高く評価していた。

 

 

「これは確実に合格ね」

「…………はぁ」

「「「「ん?」」」」

 

 

レキの合格についての意見を誰かが述べたその瞬間、一人の男性教師が大きく溜息をついたがために、全員からの視線がやって来た。

 

 

「どうしたんですかね?相澤先生」

 

 

男性教師、相澤の溜息の原因を聞くべく、この学園の校長であるネズミなのかクマなのかわからない根津校長が尋ねた。

 

 

「いや、あいつを入れるなら警戒を厳重にしないといけないんで溜息が出たんですよ」

「それはどうしてだい?」

 

 

根津校長の二度目の質問に、相澤は即答する。

 

 

「あいつは()()()()の被害者です」

「!………”憑代事件”。そうだろ?相澤くん」

 

 

今年度から雄英の教師となるNo.1ヒーロー、オールマイトが正解を告げると同時に戦慄が走る。

その事件の名を聞いただけで慌てる程の事件。

 

そして、目の前の無表情な少女がその被害者だというのだ。

 

 

「俺は現場に呼ばれたんで詳細は詳しい方です。保護者を任されている奴から聞いたんですが、璃々レキは現在、()()()()()()()()()()()とのことです」

 

 

相澤の説明をもっと簡単にすると、『人に銃を向けられない』となる。

今回、レキが教師陣の目に止まるほどの活躍をしているのは相手が人でないから。

 

敵を相手するヒーローにとって、それは致命傷だった。

 

相澤という男を知っている教師たちは誰もが彼女を落とすのだろうか。そう考えている時だった。

 

 

「トラウマの克服法なんか知らないんだけどなぁ……」

「───ん?ちょっと待ってくれ。さっきの話の流れ的に彼女を合格させるのかい!?」

「当たり前じゃないですか。警戒しとかないとって言いましたよ」

 

 

そう言えば、と少し前の相澤の言葉を思い出す面々。

 

 

「まぁ、大概なことはアイツが何とかすると思いますが」

 

 

そう言った相澤の手には一人の受験生の書類があった。

一体、それが誰なのか聞こうとした時だった。

 

 

─────ドガーーーーーーーーンっ!!!

 

 

「うおぉ!!あの少年、デカブツをぶっ飛ばしやがったぜ!!」

 

 

一人の少年がゼロギミックを一撃で沈めたことに驚く面々。

その後も次々と結果を残す受験生に意識を向けた教師たちは一人を除いて、質問があったことを忘れた。

 

 

「(あの少年は…………)」

 

 

相澤の横にいたオールマイトは、相澤の持つサポート科の受験票を見て、それが以前に自身の個性を受け継いだ緑谷出久を助け、そして相澤がアイツという受験生の素性を思い出していた。

 

 

「(あの少年は────

 

 

 

 

ヒーローにより敵にされた元(ヴィラン)、通称『梟』)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(っくしゅん!)…………誰か噂でもしたのかな?」

 

 

数ヶ月後、その門を潜ることになる諸羽は一人で壁に背を預け、レキの受験が終わるのを待っていた。

 

 

 

一週間後、璃々レキの名で届いた合格通知には首席合格との伝えがやって来た。

そして芳村諸羽にはサポート科の合格通知と同じ封筒に最大限に警戒をするとの手紙が届いた。

 




主人公は元敵。
そして敵名は『梟』。

これは東京喰種のSSSレートの『梟』を、苗字と一緒に使わせてもらってます。
理由?見た目が赫者状態の『梟』そっくりになるからです。


そして高評価をつけて下さった

ギャラクシーさん、the fatさん、FBマークIIさん、Alan=Smitee さん

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