新・メリオダスになって異世界を渡る   作:エルナ

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 また1ヶ月以内に更新できたけど1ヶ月ごとに更新とかいつ終わるんだよこれ……

 さて、恐ろしいことに2周年記念まで残り1ヶ月となってしまいました……震える。
 去年の1周年記念では1月毎日更新をまあ、1週間くらい休みましたがしました。
 ですが今年は最近の更新ペースを見ていただければ分かる通りモチベが去年より酷いので毎日更新できるか不安なんですよねぇ……。
 というわけで1周年記念に何をするかのアンケートを取ります。
 最後に適当にポチッと押していただけると幸いです。

 それでは第29話をどうぞ!


第29話 弓もバカでした

 北へ向う道中で立ち寄った町での事。

 

 

「あ? 商業通行手形だと?」

 

 

 町へ入ろうとした時、検問所の様な場所で町の見張りらしき人物に領主からの通行税と商業税を請求されたのでリユート村発行の商業通行手形を見せたのだが……。

 

 

「そんなものは受け付けん! さっさと払え!」

 

 

「ですが」

 

 

 ラフタリアの交渉にも見張りは応じず、金の請求ばかり。

 尚文も前に出て交渉しようとしたのだけど、見張りは一歩も引かなかった。

 

 

「強情な奴だ!」

 

 

 一触即発な程、見張りは俺達に向けていきり立っていた。

 うーむ……ここまで強く出るには何か理由があるな。

 この世界で行商を始めて幾つか学んだ事がある。

 一つは脅迫、力による威圧を行うことで無理を通したり、弱みを握って高めに買わせる事。これは舐めた相手に効く手段。

 次に交渉、相手と話をしながらノリで下げたり上げたりを行うことで人間関係を循環させる。敵意の無い相手に効く。

 この二つが効かない相手となると、考えられる理由は……。

 

 

「ここの領主はとんでもない奴みたいだな」

 

 

 ふと、町の方を見ながら尚文が呟く。すると見張りの奴の表情が若干変化が生まれる。

 

 

「領主様の悪口を言うな! 不敬罪に処すぞ」

 

 

 なるほど。これは上が問題を抱えているパターンだ。この場合、脅迫も交渉も意味が無い。

 あっちは引くに引けないのだ。引いてしまえば自分が処罰されてしまう。

 それでも下げさせる方法といったら騒ぎを起こすか、その領主が出るまで問題を起こすしかない。

 けど……そこまでのリスクを払うメリットが俺達にはない。

 

 

「わかったよ。お前も苦労しているな」

 

 

 尚文が言われた金額を見張りに渡す。

 すると見張りの奴、肩透かしを食らったように呆けた。

 

 

「ああ……それなら良いんだ」

 

 

 そして見張りはポツリと尚文の耳元で何事かを呟く。

 恐らく謝罪か何かだろう。

 見る限りこの見張りは悪いやつには見えない。

 

 

 クズ王の管轄かな? この国も腐った領主というのがいるのだろう。

 荷車に満載した食料は売り上げに税がかかるので売らなかった。

 そして、宿を取る。近隣と比べて遥かに高い。

 この町……殆どの場所に税が掛かっているのか、日用品から食料、武器防具、細工品、挙句の果てに宿代まで、なにもかもが割高だ。

 住み辛いな。

 商業も衰退傾向にあって、市場も活気が無い。

 相当重い税金が掛けられているに違いない。

 

 

「何処の村であの食料を買ってくれるか、情報を集めてくる」

 

 

「分かりました」

 

 

「いってらー」

 

 

「はーい! ごしゅじんさまーおみやげ待ってるねー」

 

 

「あれだけ食料があってまだ欲しいのか!」

 

 

 フィーロの奴、ここの物価が高いというのに土産を要求するとは……。

 ニーナがフィーロを叱ってる。ホントこいつらなんなんだ……。

 宿の室内に俺達をおいて尚文は部屋を出ていった。

 

 

 しばらくして戻ってきた尚文によるとこの街に樹がいたらしい。

 なんでもここの領主は私腹を肥やすために国の方針以上に税を引き上げ、近隣の商人から賄賂を受け取り、用心棒を雇って異議を唱えるものには厳罰に処してるというありきたりな悪徳領主らしい。

 その情報を集めていた樹だったんだが尚文のブックシールドのように偽装できる弓に変えて、剣なんぞ持ってたらしい。

 そして、仲間の影に隠れていたらしい。

 な〜にがしたいんでしょうね。

 

 

 尚文は特に興味がないのか魔法書を読み解いていた。

 ちなみにフィーロへのお土産はなくフィーロは文句を言っていたが尚文はスルーしていた。

 物価が高いから仕方ないね。

 魔法を新たに1つ覚えたようだがまた補助回復系だったようだ。

 

 

 翌朝。

 国から雇われた冒険者がこの町を密かに視察し、領主は失脚したという話が町にもたらされた。

 何か町の往来のど真ん中で、美人の女の子と何やら世間話をしている樹達を見かけた。

 

 

「本当に、ありがとうございました」

 

 

「いえいえ、なんて事はありませんよ。これは秘密ですよ」

 

 

 こいつアホか。

 

 

 そういえば樹——弓の勇者が何かをしたという噂を耳にしなかったがこれが理由か。

 コイツ、自身を隠し、目立たないけど実は凄いんですよって思っているタイプだ。

 それを実感して喜ぶというのは、ちょっと趣味が悪い。

 

 

 自己顕示欲を満たす為だけに自分の正体を隠していやがる。

 でなければ、こんな目立つ所で立ち話なんて普通しないだろ。

 大方、あの女性も税の代わりに連れ去られそうになっていた、病気で床に伏せっている爺さんの娘とかそんな所だろう。

 

 

「馬鹿馬鹿しい」

 

 

 尚文がポツリと呟いた。

 気持ちは分かる。

 

 

「まあ、あの女達みたいに助かったヤツらがいるんだからいいんじゃね? 『やらない善よりやる偽善』って言葉もあるしね? 俺TUEEEEのためとはいえね?」

 

 

「アイツが馬鹿なことに変わりはないだろ」

 

 

 そう言って尚文は足早に街を出ようとする。

 

 

「ごもっとも」

 

 

 俺は苦笑して尚文の後を追いかけた。

 

 

 それから半日ほど進んだ隣国の国境付近の村での事。

 昨日売れなかった馬車の食料を売り出すと見る見る売れた。飢饉のあった地域に入ったらしい。

 ただ、何かこの村の住人じゃないっぽい奴が多い。

 服装とか、雰囲気がこの国と微妙に異なる。

 

 

「なあ。お前等……」

 

 

 隣国の圧政を引く悪い王が退治されたとか噂を聞く地域だったはずなのだが。

 その辺りの連中が行商に来ているのか?

 彼等は俺達の馬車を覗くと、鬼気迫る勢いで商談を持ち掛けてきた。

 何か金じゃなくて物々交換で買おうとしている。薬草は良いけど材木とか……木工品とか渡されてもな。

 尚文は馬車を降りて、そいつ等から事情を尋ねる。

 

 

「金の方が助かるんだが」

 

 

 藁の束とか紐とか炭とか渡されても、こっちは大量に在庫を抱えている分、処分に困る。

 大量の薬草は薬にすれば良いから買い取るが。

 

 

「すいません。何分、売るものが殆どなくて……」

 

 

 見ると、なんともやせ細っていて、今にも死にそうに見える。

 

 

「……どうせもらい物だ。少しだけ炊き出しをするから食っていけ」

 

 

 尚文はそう言って大きめの鍋を村の連中から借りる。

 ……やっぱりこいつ優しいな。

 

 

 尚文に優しい視線を送ると尚文に睨まれた。てへ。

 

 

 村の連中も飢えで苦しんでいたのもあって、快く協力してくれた。

 生モノ故に腐る危険がある。もらってまだ4日ほどだけど。

 まあ尚文は腐敗防止の技能を取得しているので、普通よりは腐りづらいが。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 みんな貪るように振舞った鍋を食べきる。

 その間に、どうしてこんな事になっているのかを尋ねた。

 なんでも圧政を敷く王は倒されたまではよかったのだという。

 税も軽くなり、人々の生活が少しだけ楽になった。

 けれど、それも直ぐに元に戻ってしまった。

 なんとレジスタンスだった連中が今度は税を引き上げたのだと言う。

 

 

「なんでだ? せっかく悪い王を倒したんだろ?」

 

 

「……その、国の運営となると金が必要になり、戦力の減少を抑える為に税の引き上げが起こりまして」

 

 

 なるほど、別に圧政を敷いていた悪い王、ではなく、国を守る為に軍事力を最低限確保しようとしていた訳か。

 民なくして国ではないというが、民を守れなくては国ではない、とも言えるのか……。

 そんな状況で王様の悪い噂だけを集めていたら、そりゃあ退治されるかもしれないな。

 哀れなもんだな。

 王とかって、悪い事だと分かっていてもやらなきゃいけない事もあるだろうし。

 ま、この国のクズ王は、最初から馬鹿で悪だけど。

 

 

「頭が変わっただけで生活が出来ません。ですからどうにか金になるものを持ってきて、こうして少しでも裕福なメルロマルク国に来ています」

 

 

「王様がかわいそうー! 本当はみんなのことを一番に考えてたのにねー。今おなかが空いてるのはだれのせいなんだろうねー?」

 

 

「黙れ鳥! 飼い主である俺の精神を疑われるだろうが!」

 

 

「はーい」

 

 

 人の傷口を抉る様に毒を吐いたフィーロを尚文が叱る。

 最近フィーロは妙な知恵を付けて来たのか、口が悪くなってきた。

 

 

「一体誰に似たんだ……」

 

 

 尚文がそうボソッと呟いたので思わずラフタリアと尚文に視線を送ってしまう。

 

 

「なんだ?」

 

 

「いえ、なんでもありません……」

 

 

「尚文……ペットは飼い主に似るという言葉をご存いて」

 

 

 喋ってる途中で尚文に頭を殴られた。いや痛くないんだけどね。

 

 

 まあ、フィーロはああ言っているが、あの樹がレジスタンスに加担したんだから根からの善人では無かったのかもな。

 ともあれ、こいつ等は密入国して闇米とかを買いに来ている感じか?

 そういえば食べ物の物価がこの辺りじゃ急上昇しているようだし。そのお陰で稼げてはいるけど。

 確か、樹が……将軍様がこの辺りの世直しをしているんだよな。

 アフターサービス位しておけよな……。

 

 

「おい、メリオダス。『助かったやつがいるんだからいいんじゃね』だったか? その場で正義感を満たしてるだけな気がするがな」

 

 

 そう言う尚文に俺は何も言い返せなかった。

 クソっ、樹の野郎!

 馬鹿だけど良い奴かもしれないと思って庇ってやった俺の思いを返せ!

 今度会ったら1発殴ってやる。

 

 

「このままじゃ何処かの国が弱っている私達の国に攻めてくるかもしれない……でも、飢饉で生活ができないんですよ」

 

 

「なるほどなぁ……」

 

 

 俺が固く決意している間も話は続いている。

 

 

 波の影響なのか、各地で飢饉が頻発しているのかもしれない。

 

 

「しょうがないな」

 

 

 尚文は改造したバイオプラントの種をそいつ等のリーダーらしい奴に一個渡す。

 

 

「これは?」

 

 

「植えたら直ぐに育つ、国の南方の地で問題を起こした植物の種を特殊な技術で改造した物だ。おそらく大丈夫だろうが管理には気をつけろよ。下手に扱うと危険な代物でもある」

 

 

「は、はぁ……」

 

 

「また近々、この辺りを通る。その時にでも礼を寄越せ」

 

 

 マジで聖人名乗ってもいいんじゃねこいつ。

 

 

 そう思ってまた尚文に視線を送ったら殴られた。解せぬ。

 

 

 4台あった荷車の2台が完全に売り切れたのでオマケで種を渡し、その場を後にした。

 次にこの近隣に来たとき、熱烈な歓迎をされるのは別の話か。

 尚文の正体も完全にばれていたし、その小さな隣国も飢饉から脱して住民は食べるに困らなくなったらしい。

 

 

 尚、ここで腐るほど大量に薬草を手に入れたので、東の地方で疫病が流行していると聞き、俺達はそっちに売りに行く事にした。

 

 

 東……か。

 

 




 原作とあんま変わらんなぁ……
 まぁ、次回は変わる……といいなぁ(願望

 そんなことはさておき、前書きで書いた通り下のアンケートにぜひご参加ください。
 他に案のある方は活動報告にてお願いします。

2周年記念何する?

  • 死ぬ気で1月毎日更新
  • 短編をいくつか
  • オリキャラコラボ
  • 新作(アホォ

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