ヤンデルモンスト〜書いたら出るを添えて〜   作:千銀

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ミロク出た



両手の花の裏の顔(ダルタニャン/レンブラント)

 

 

 

 

土砂降りの雨の中、傘もささずに突っ立っている女の子がいた。

 

 

「おい…大丈夫か?」

 

「………………。」

 

雨でくすんだ金髪に猫と思われる耳が、尻尾がついた彼女はどう見てもモンスターと呼ばれる存在だった。

 

 

「家……来るか?」

 

「………………。」

 

彼女は俺に抱きついて嗚咽を漏らした。

 

 

(ああ…この子も捨てられたのか……。)

 

 

 

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「マスターお帰りなさい…って!どうしたんですかその子⁉︎」

 

「あんまり聞いてやるな。それよりこの子を風呂に入れてやってくれ。」

 

「は…はい……。あの……」

 

「……以前のお前と同じだ。」

 

「………分かりました。」

 

俺を家で待っていたのはレンブラント。同じく捨てられたモンスターだった。

 

モンスターを捨てる理由は人によってある。使えないから捨てるもの、容姿が気に入らないから捨てるもの、モンスターにおおよそ人権と呼べるものはない。中には男だから、女だから捨てると言うものもいる。

 

 

「マスター…お風呂上がりました。」

 

「……傷は?」

 

「結構……。」

 

「そうか…。」

 

大方、使えないから捨てたと言うところだろう。それは彼女も、レンブラントも一緒だった。

 

即席で作ったスープをバスタオルでぐるぐる巻きにされた彼女の前に置いた。

 

 

「好きなだけいて良いよ。」

 

彼女は泣きながらスープを少しずつ飲み始めた。

 

 

 

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〜三年後〜

 

 

「〜〜〜♪」

 

今日で彼女を、ダルタニャンを拾って三年。彼女は俺の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしていた。

 

 

「うにゃ〜ん♪気持ちいいにゃ〜。」

 

頭を撫でてやると、彼女はとても喜ぶ。最初の数ヶ月は全くと言っていいほど反応が無かったが、少しずつ元気を取り戻した。

 

 

「あ〜!ずるいです!私も混ぜてください!」

 

レンブラントが背中にのしかかってくる。ダルタニャン得意げな顔をした。

 

 

「ふっふーん!猫の特権にゃ!」

 

「猫じゃないでしょー!」

 

二人は仲が良い。よく二人で出かけたりもしている。何より俺が仕事の間、家にはレンブラントしかいなかったから寂しい思いをさせずに済んだ。

 

 

「…?どうしたんですかマスター?」

 

「いや…昔のお前を思い出しててね。」

 

レンブラント。彼女も捨てられたのを俺が連れてきた。最初は食事を睡眠もとらずに部屋の隅でじっとしているだけだった。

 

そんな彼女が元気を取り戻し、自分で友達まで作れるようになったのがとても嬉しかった。

 

 

「そろそろ仕事か…。」

 

「行ってらっしゃい。マスター。」

 

「行ってらっしゃいにゃ〜。」

 

「行ってきます。」

 

(良かったなぁレンブラント。人が怖くて家から出たことがないお前があんなに俺以外と仲良くしてるなんて。)

 

俺は両親や祖父母に愛されながら育ってきた。だから愛されない辛さはよく分かる。少しでも多くの人を幸せにできたらどんなに嬉しいことか……

 

だから決めた。彼女達が愛されないのなら、せめて俺だけでも愛してやろうと。

 

仲良くゲームでもして遊んでいる彼女たちのことを考えると、自然と足取りが軽くなった。

 

 

 

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憎い

 

 

 

憎い

 

 

 

 

 

 

私はあの女が憎い。殺してしまいたいほど。

 

三年前、マスターが拾ってきたあの女。最初は私と同じなんだと本気で心配した。

 

でも、あの女は今でもずっとここにいて私とマスターの時間を奪っていく。

 

 

 

 

 

 

嫌だ……

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ嫌だ嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ‼︎

 

 

 

あの女さえいなければ私はマスターの愛を注がれ続けられていたのにあの女さえいなければ私はマスターともっと時間を共有できたのにあの女さえいなければ私はマスターの寂しさを受け入れられていたのにあの女さえいなければ私はマスターと愛し合えていたのに!

 

私のことだけを見て私のことだけを愛して私のことだけを頼って私のことだけを触れて私のことだけを話して私のことだけを気にして私のことだけを待っていて

 

ああマスター…一言でいいの。『仲良くしろ』なんて言わないで。たった一言あの女を『邪魔だ』と言ってくれたら……

 

 

 

 

 

私は……

 

 

 

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私を拾ってくれたご主人様

 

 

 

 

私に優しくしてくれたご主人様

 

 

 

 

私に愛を注いでくれたご主人様

 

 

 

 

好き

 

 

 

 

大好き

 

 

 

 

でも…ご主人様はいつも私と一緒にいてくれない。

 

レンブラントさんがいっつも邪魔をする。私はもっともっとご主人様の愛が欲しいのに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずるい……

 

ずるいずるいずるい!ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい‼︎

 

私はもっと愛されたいのにもっと頭を撫でて欲しいのにもっとご主人様に抱きしめられたいのにもっと二人きりになりたいのに!

 

いつも…いつもいつもいつもいつもいつもいつも!邪魔ばっかりされて捨てられたような気持ちになってるのに!

 

ご主人様……その笑顔を私以外に見せないでその声を私以外に聞かせないでその目で私以外を見ないでその手で私以外を触らないでその膝で私以外を眠らせないで私以外を考えないで

 

ああ…ご主人様。一言でいいから…『仲良くしろ』なんて言わないで。『私だけを愛してる』って言って…。そうすれば……

 

 

 

 

 

私は……

 

 

 

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(ケーキ屋……お土産に買って帰るか…。)

 

(そうだ。2人の名前を入れたクッキーをつけてもらおう。)

 

男は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー。」

 

「「お帰りなさい!(にゃ!)」」

 

「ダルタニャンが家に来て今日で三年目だからな。ケーキ買ってきたぞ。」

 

「やったにゃ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「さあ早く食べよう。これから3人“仲良く”頑張ろうな。」

 

「「はーい!」」

 

自分の言葉が彼女達を縛り続けていることを。

 

 

 

 

 

 






ミロクは進化前のへそがいいと思いました。(小並感)

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