東方霊霊宴   作:rusiferu
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#5 お出迎え

「魂魄妖夢というのは、あんたか?」

 

振り返ると、そこにどうみてもヤンキーとしか言いようがない一団がいた。

いや、一人だけは違うようだ。顎と口の髭が繋がった顔に眼鏡をかけてタバコを吹かし、着崩した黒いスーツに山高帽子という海外の映画に出てきそうな男がいる。たぶん、彼が一団のリーダーなのだろう。

男は胸ポケットからメモ用紙を取り出して読んだ。

 

「髪は銀髪。背中に二本の刀を背負い、一方の鞘には小さな花が咲いている・・・。

全て当てはまってるけど、どうかな?」

(知っている人ですか?)

私は妖夢にアイコンタクトを取った。

(知らない人。けど、あんまりか変わらない方がいい人であると、断言できます。)

妖夢が返す。

(了解。)

私は妖夢と目をそらしてその男に顔を向けた。

 

「あー、この人はその魂魄妖夢だっけ?そんな名前ではないよ。」

「嬢さん、君の目は節穴かい?このメモにある特徴と、君の隣にいる女の子の特徴は一致している。」

「それはこっちの台詞だ。そのメモには、もう一人女の子を連れているとは書いてないだろ?」

 

男は一瞬黙りこんだ。そして言った。

 

「連れがいるかはどうでもいい。だが俺は隣の子を連れて来てほしいと頼まれている。」

「それは誰に頼まれたんだ?彼女の知っている人物でないと、渡すわけにはいかない。」

「その事なら大丈夫だ。頼んだのはその子の主人だよ。」

 

男のこの台詞に、妖夢が驚いた顔をする。

そして、この会話に割り込んできた。

 

「迎えなら、要りません。私は主人の家への行き先ぐらい、分かります。それに、なんであなた達にお出迎えされなければいけないんですか?」

「それは知らん。俺が嬢ちゃんの主人に直々に指名されて、この仕事を引き受けたんだ。無事に送ってくれたら、報酬も約束されてる。」

「そういうことなら私から払いましょう。」

「そうはいかない。こっちにもメンツというものがある。それに、この仕事のために仲間を何十人も呼んでいる。」

 

それを合図に、建物の影や飯屋から、ゾロゾロと人が出てきて、取り囲む。

 

「随分と派手なお迎えだな。」

「こっちもタダで仕事してる訳じゃない。カネが約束されてるんだ。どんな手を使っても、達成させてみせる。」

 

私もこの男が真っ当な仕事についていれば、きっと高い地位につけたのだろうにと思った。

 

「だが、それが出来ないとなると、こっちは力でもって完遂せざるを得ない。」

 

男が続けた。なるほどな。そのための人数か。

 

「さて、どうするんだ。俺達と共に来るか、来ないのか。はっきりさせろ。」

 

まずい。こんな人の多いところでひと悶着起こしたくはない。どうするんだ、妖夢。

すると妖夢は私の顔をチラ見してから男に言った。どうやら考えていたことが顔に出ていたらしい。

 

「何度言っても同じです。いや、今の台詞で決めました。私は、あなたとは一緒に来ない。」

 

妖夢は、背中の大太刀を抜いた。

クソッ、アホなのかこいつは。なに考えていやがる。

 

「そうか。お前ら、行け。」

 

ああもう。あのヤンキーども棍棒振りかざしてこっちに来やがる。

妖夢の方を見ると大太刀を中段に構え一歩も引かないようだ。

こうなったら仕方ない。

 

「妖夢。」

「何ですか。」

「鞘。その太刀の鞘貸せ。」

 

少々言葉遣いが崩れたが仕方あるまい。

 

「何で?」

「いいから早く!」

 

私は右手だけ妖夢の方に廻した。

妖夢の方から鞘を渡される。

 

「よし。」

 

私は鞘の鐺を二回叩くと、上段に振り上げてヤンキー達に向かっていった。

 

 

彼らの持つ武器は木の棍棒であった。とても刀の鞘なぞでは太刀打ちできない武器である。しかし、先刻、私は妖夢に鞘を借りた。普通ならば、それは悪手である。が、私は鞘でも棍棒と互角以上に渡り合える術を知っている。どう使うのか?こう使う。

まず、一番先に出てきたスキンヘッドの男の攻撃をかわしてから、硬直した男の体に蹴りを入れる。次に、悶絶している相手の頭に横から蹴り飛ばす。倒れた男から武器をもらう。終わり。

一見、鞘は使ってないように見えるが。実際には使っている。

相手が武器を持っているなら普通は警戒する。が、自分が同じような武器を持っているなら、少し使い方のわかる人でもなければ、はしゃいで振り回したくなる。対棍棒の戦いで勝ちたいなら、ここに着眼するべきところがある。つまり、弱い武器で戦いたいのなら自分の持つ武器は一切使わず、あくまでも餌として使うべきであり、私はそれをやったわけである。

さて、敵は彼だけではない。スキンヘッドの男に釣られるように、楔方の陣形を作って向かってくる。

私は彼らが間合いに入るまで待つ。前世でもそうなのだがいつもこの時間は遅く感じる。呼吸を整え、棍棒の軌道をイメージする。それだけの時間がある。

棍棒は右手に、鞘は左手に持つ。そして両方の手を自分に近づけ、体を屈める。・・・来た。

私は彼らが間合いに入った瞬間に両の腕を素早く引き出し、それぞれの武器を彼らの体にぶつける。スピードがそれぞれに殺傷能力を与え、まず先頭にいた二人を沈める。

また二人。今度は完全に呼吸を一致して向かってくる。

私は鞘を投げて一人の顔に直撃させて崩れ落ちるのを見届けてから、もう一人の男に棍棒をしたから突き上げる。

最後に二人。感覚を開けて攻め入る。

男に直撃させた後地面に落ちた鞘を拾うと、一人の男の持つ棍棒を払って鞘で頭を叩き、もう一人の方が振った棍棒をしゃがんで避けつつ左脇腹に棍棒を叩き込む。

が、その時腕に痛みが走る。振り返ると髭の男が、ナイフを腕に刺そうとしていたようだ。幸い、軌道が何らかの理由で逸れて

かすり傷となる。

 

「てめぇ・・・。」

「あいにくこちらもボーっと突っ立てるわけにもいかんのでな。」

 

ナイフはそのまま傷口にあるので動くわけにもいかず、にらみ合いとなる。

その時、男の後ろから「やーっ!」と声がして空中から誰か降ってきた。

それは妖夢だった。両手で大太刀を持って背後から男を斬ろうとしていたのである。

男は半身逸れてかわすと私の腕ににナイフを突きつけた。

 

「気を付けるんだな、妖夢ちゃん。下手に動くとこの子の腕はバッサリだ。」

「なっ・・・!」

 

妖夢は顔を歪めた。

だがその顔はすぐに驚きの顔に変わる。

私は体を翻すと棍棒で男のナイフを弾いた。傷口は少し深くなったが、仕方あるまい。ナイフは手を離れ飛んで行く。

 

「貴様!」

「脅すのが下手なようだな。腕を斬られたって人は死なねーよ。」

 

男はナイフを拾うと私達に対峙する。

 

「大丈夫ですか⁉」

「かすり傷です。それよりもこれ、ありがとうございました。」

 

私は鞘を妖夢に返すと棍棒を男に向かって構える。

妖夢も鞘を貰うと何も言わずに太刀を構える。

成り行きで始まった喧嘩を終わらせるため、髭の男との決闘が始まろうとしていた。




To be continued・・・






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