夢のチカラ Episode Origin―Past goes hope―   作:水月渚

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終章 平穏な日々のために

「うぅ……学校……嫌だなぁ」

「文句言わないの! 基本は学生なんだから」

「つい昨日まで体感では1ヶ月向こうにいたんだよー?そこからやっと帰ってきて一気に時間戻らされて登校だよ? 私今までの総合計ではまっしーより1年くらい多く生きてるよ、絶対」

「うーん、それはあながち嘘じゃないかもね」

本来は中学3年の受験期真っ只中。ようやく人間界に戻って来ることが出来た美来は、学校への道を親友の真白と歩きながらぼやきまくっていた。

もし無断で1ヶ月もの時を遡れば慧(玲音)は今頃監獄の中だが、今回ばかりは公式で許可が下りたのだった。

「あーやばい、せっかくいままでに覚えた社会の単語とかスッカラカンになってそう。どうしてくれるんだ!」

「思い出すくらいなら案外すぐだったりして。それとも他のこと詰め込んじゃった感じ?」

「ある意味詰め込んだなー。記憶媒体7年分くらいとかとか」

「7年分……? こりゃまた凄そうな。今回の事件について聞いてもいいですかね?」

「いいけど肝心なとこ覚えてなかったり聞いた話だったりちょいグロだったりするよ」

「いつものことでしょ」

すっかりこの流れにも慣れてしまった真白はやれやれと首を振る。

「んーっとね、最初はクラスの男子達がニュースについて話してたとこから始まるんだけど――」

 

 

「神様ねぇ……。やっぱなんとなく魔法があるなら実在してそうって思ってたけどホントだったか」

「テオとかヒナの口ぶりから考えるとみんなかなり暇そうだったねー。でもリリさん死んじゃったってこと考えると荒れる時は荒れそう」

「まぁそれくらいなら普通の人でも有り得るからね。神様も感情あるなら納得いくよ」

内容の把握が早い真白。2人にとってはいつもの事である。

「お、話してればなんとやら。春岡だ。おはよ」

「おはー」

「おはー、じゃねぇよ全く……。ん、一木おはよっす」

「私は無視っ!?」

「別に無視はしてねーだろ。お前の処理でこっちはほぼ不眠不休なんだからな。少しは自覚しろ」

眠そうに大あくびをかます。

「なーにー? 美来さんのやらかしで異世界側はてんやわんや?」

「まぁこいつは寝てたから分かってないだろうけどな。

アニマーレからしてみれば国内の建物ほぼ全壊、食糧難、避難所の不足、各世界ごとの繋がりの崩壊等々。ざっくり言ってもこんな感じ。いくらどっかの誰かさんが戻したとしてもどうにもならんとこはならん」

「というかやらかしてないよ!? 私ぶっちゃけ解決した方だよね!?」

「自分で言うなそれ」

美来のことを半目で睨む慧に、真白は苦笑いで誤魔化す。

「とにかく放課後でいいからユイでもユヅカでも付き合ってやれよ。魔法は極力なしで」

「分かってるよぉ……」

「ま、まぁ春岡も無理しないでね」

「無理せざるを得ないけどな。そこそこに抑えるよう頑張るわ」

ようやく訪れた平和な日常。

それがまた、いつ破られるのか不明ではあるが。

「どうにかなるよー! ほら、2人とも遅れるぞー」

呑気に拳を突き上げる美来を見ていると何だかどうでも良くなってしまう慧なのであった。

 

 

 

 


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