黒き幻想たる少年、幻想郷に立つ   作:KuroSaki

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黒き少年の日常と妖怪たらしと呼ばれる所以4

 お昼時。お天道様頂上に来て、お腹がぐぅと鳴り始める時間帯。人里の警備はひとまず重次郎に任せ俺は食事処に来ていた。こころとルーミアも……ついでに言うと幽香も一緒である。さあいざ飯を食いに行かんとしたところで、丁度帰ろうとしている幽香を見つけたのだ。なんとなく三人だと区切りが悪いのでなんとなく誘ったら、なんとなく顔を紅潮させながら了承されてしまったのである。

 

 幽香ェ。マジで俺はお前への好感度上げた記憶ないぞ。一体全体何をしたら誘われて頬を赤く染めるなんてことになるんだよ。ていうかお前人間への友好度最悪なんだよね?それが気軽に人里に来て、しかも人間と食事を共にするってどうなのよ。幻想郷縁起追記しようぜ。実はそんなこともないって。

 

 それはさておき、つまり閑話休題。

 

 今日は洋食の気分だったので、最近人里で流行っているという洋食店に来た。

 

 俺とルーミアはハンバーグ。こころと幽香はパスタである。

 

 目の前では、ルーミアががつがつと肉を咀嚼していく中、幽香は上品にパスタを口に運ぶ。隣にいるこころはどことなーく不機嫌そうにしていた。

 

「こころいい加減機嫌直せって」

 

 幽香との邂逅時の会話が未だに引っかかっているらしい。(無表情だが)時節幽香を睨んだりして牽制している。そんな牽制も何のその、幽香は幽香で気にすることなく受け流している。これが強者の余裕か。俺もそれ欲しい。

 

「ありゃあ、誤解だって」 

 

 こころの頭をぽんぽんと叩く。ついでにぐりぐりと撫でておく。

 

「幽香はただの妄想癖のある痴女だっつーだけだから」

「ごほっごほっ!」

 

 俺の言葉を聞いた幽香が咳き込む。

 

「多分、夢と現実の区別がつかなくなってんだ。そっとしておいてやろうぜ、な?」

「そうなのか?」

「そー、もぐもぐ、なの、ごっくん、かー」

 

 こころと肉に夢中なはずのルーミアが俺の方を向く。幽香は咳を抑えようと水を飲んでいた。

 

「そうそう、多分妄想しているうちに現実とごっちゃになっちまったんだ。幻想郷の外でもそういう奴いたからさ、幽香もそうなんだろうぜ。そういう時は優しく諭してやるんだ。『良い病院紹介してあげようか?』って。……あとルーミアははしたないからちゃんと食べてから話しなさい」

「違うわよ!?私はそんな女じゃないわよ!」

「わかったのだー、ごっくん」

「お前の『わかったのだー』は聞き飽きた」

「そーなのかー」

「聞きなさい!」

 

 涙目で幽香が抗議する。先ほどまであった強者の余裕は何処へ行ったのやら。俺をからかって失敗した時のように頬を紅潮させていた。そんな幽香へこころは視線を移す。

 

「……私は別に妄想癖があるわけでもなければ痴女でもないの。そこの黒いのが虚言を吐いただけ」

「そうだったのか」

「そう、こんな男の言うことなんて信じるに値しないわ」

「うむ……」

 

 ぎりぃと、空間が歪みそうな目つきで幽香が俺のことを睨んでくる。というか、敵意……というか殺意マシマシである。てめえ外でたら覚えとけよと言う黒い意思がひしひしと伝わってくる。おお怖い怖い。

 

 そんなことは露知らず、こころは一度俺の方を見ると、再び幽香の方へ向き直し頭を下げる。

 

「すまなかった」

「……そう、わかればいいのよ。わかれば。あなたは賢い面霊気さんね」

「そうだ、私は賢いのだ」

 

 ふんすとこころは胸を張る。賢いと褒められて満更でもないらしい。そこで気が付いたように「あっ」と声を漏らすと、幽香に向けてこう言い放った。

 

「……ところで、良い病院紹介してあげようか?」

 

 瞬間、場の空気が凍結した。そして更に次の瞬間には一気に解凍し、俺の笑い声が響き渡った。

 

「くはっ、はははははははは!」

 

 やってくれたと言わんばかりにこころの頭を撫でまわす。当の本人はわかっているのかわかっていないのか全く分からない無表情。

 

「何にもわかってないじゃないこの面霊気!」

「ごちそうさまー」

「あっ、ルーミアはちゃんと口の周りについたソースを拭きなさい」

「わかったのだーおかーさん」

「お前はいい加減そのネタ引っ張るのやめなさい」

「はーい」

「ちょっと無視しないで!」

 

 だんっと、幽香がテーブルを叩く。大妖怪の力だとテーブルが粉砕しそうだが、そこはセーブしているようで音が響き渡るのみだった。

 

「いやいや、入り口で幽香がからかってきたことの仕返しだって」

「仕返しにしてもほどがあるでしょう!?」

「お前のせいでこちとら大変だったんだぜ、相方に嫁さんにもらえだの言われて面倒くさいったらありゃしねえ」

「よ、嫁さん……」

 

 そこで幽香は押し黙った。代わるようにこころが言う。

 

「ハクト、私は言われたとおりにできたぞ。もっと褒めろ」

「いやもうこれでもかというほど頭撫でてるじゃねえか。これ以上何を――」

「これ」

 

 こころはいつの間にか手に持っていたメニューの一か所を指し示す。そこにあるメニューは季節の果実をふんだんに乗せたパフェ。

 

「これが食べたい」

 

 勿論、こころにはそれを食べさせてやった。

 

 ルーミアと……涙目の幽香も便乗して食べたのは余談である。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 幽香をからかいこころを存分に褒めた後は、再び人里の入り口の警備の仕事だ。幽香はそそくさと帰ってしまったが、こころとルーミアは再び空を自由に飛び回り遊んでいる。重次郎はというと、俺とは違い簡単に昼飯を済ませすぐに戻ってきた。どうやら昼飯はそばだったらしい。

 

 そばかあ。いいな。明日の昼飯はそれにしよう。

 

 なんてどうでもいいことを考えていると、いつの間にかルーミアが目の前に降りてきていた。

 

「どうしたルーミア」

「んぅ、眠い……」

 

 どうやらおねむらしい。そういえば俺よりも寝たのは遅いはずだから、眠くて当然だろう。

 

「じゃあ家帰って寝ろ」

 

 と冷たい感じに伝えるが、こういう場合俺の言うことを聞いてくれたためしがない。今回も例にもれず、すぅっと宙を漂い俺の背後に回ったかと思うと、背中に張り付いた。

 

「おやすみー」

「おやすみじゃねえよ!家帰って寝ろって言ってんだろ!」

「すぅ……」

 

 もう寝やがった。寝ている少女を無理矢理叩き起こすのも気が引けた俺は、仕方なくそのままにしておく。

 

「やっぱ妖怪たらしだなあ黒崎は」

 

 と重次郎が言う。お前もその不名誉な渾名知ってんのか、そう問うと。

 

「そりゃあ有名だぜお前さん」

 

 と答えが返ってきた。全くもって要らない渾名を付けられて、なんとなく機嫌が悪い。手で髪をくしゃくしゃと掻く。

 

「片っ端から女の妖怪を手籠めにして、毎日よろしくやってるような糞野郎って噂だ」

「俺が想像してたより滅茶苦茶悪名高いじゃねえかなんだそれ!」

「で、実際のところ毎日よろしくやってんのかい?」

「やってねえよふざけんなぶち殺すぞこのクソ野郎が!ていうか誰だその噂流した糞野郎は!この俺直々にぶち殺してやる!」

「まあまあそう怒るなって。ちなみに噂流したのは俺だ」

「そこに直れやまずはてめえの腹ァ切り裂いて中身ぶちまけてやる!」

 

 どぅどぅと重次郎は両手を前に出して俺のことを宥めようとするが、その顔があまりにもにやけててすさまじくむかつく。

 

「はっはっは、冗談だよ冗談。そう怒るなって。あんまり騒ぐと背中で寝てる嬢ちゃん起きちまうぞ」

「チィ……」

 

 確かに重次郎の言う通り、あんまり大声を出すと背中で寝ているルーミアが起きてしまう。仕方なしに口を閉ざした俺は、しかしイラつきを隠すことなく、重次郎を睨みつける。

 

「ははっ、やっぱ黒崎をからかうのはおもしれえや」

「てめえ……あんまり調子に乗ってると流れ弾で死ぬことになるぞ」

「そりゃ勘弁」

 

 定期的に俺のことをからかってくるものの、何だかんだで重次郎は良い奴だ。ここに来たばかりの時も良くしてくれたし、こいつのおかげで顔も広まった。感謝している。しかし流石に毎回からかわれるのは癪なので、こいつにはいつか何らかの形で復讐してやろうと決意した。

 

 さて、そんな風に駄弁っていると、新たな来客があった。それは空から一目散に此方に飛んできて、俺たちの目の前に着地する。

 

「ここにいたのねハクト!」

「あぁん?なんだ、てんこか」

「てんこ言うな!」

 

 白と青を基調にしたワンピース、そして黒い帽子に桃をくっ付けた少女、青い長髪を優雅に揺らす天人比那名居天子が現れた。

 

「あ、人里はこちらですどうぞ」

 

 と俺は人里の中に入るように促すと。

 

「ふふん、今日は人里に用があるわけじゃないわ。ハクト、あなたに会いに来たのよ」

 

 と天子は言う。

 

「俺に?」

「そう、あんたによ。わざわざこの私が来てあげたんだから感謝しなさい」

 

 天子は腰に手を当てて、ふふんと胸を張る。

 

「あざーっす。人里の入り口はこちらでーす」

「いやあんたに用があるって言ってるでしょ!」

「俺仕事中、お前の用なんか知るか」

「なによその態度!せっかくこの私が会いに来てあげたって言うのに!」

「何でも何も頼んでねえのに会いに来たって言われても困るわ~」

「むかっつく態度ね!私を誰だと思っているの!?」

「えっ、異変の時ぼっこぼこにされてマゾに目覚めたてんこちゃんだろ?」

「目覚めてないわよ!あとてんこっていうなあああああああああ!」

「いいじゃんてんこって愛称。俺は可愛いと思うぜ」

「…………えっ、そう?」

「そうそう、天子って呼ぶより身近で親しみやすいと俺は思う」

「そ、そんなことまで考えてそう呼んでたのね!」

「……いやそこまでかんがえて――」

「いいわ!じゃああんたは特別に私のことてんこって呼ぶことを許可してあげる!」

「アッハイ」

 

 なんとこの天人ノリノリである。てんこ呼びの理由なんてからかう以外の意味はなかったのだが、適当に作った理由でなぜか受け入れられてしまった。

 

「それはともかくハクト!」

「んだよ。俺ァ、ルーミアの子守で忙しいんだよ。あんまり叫ぶんじゃねえよ起きたらまた我儘言われんの俺なんだぞ」

「あんたに勝負を挑むわ!」

「……はぁ?」

「それで、負けたら私の物になりなさい!」

「……はぁ!?」

 

 いきなり突き付けられて挑戦状とその条件に困惑する。そんな様子も露知らず、天子は勝手に話を進める。

 

「今から始めるわよ!準備は良いわね!?」

「良くねえよ!何で勝負すること前提に話進めてんだよ!頭ぱらっぱらーか!」

「もちろん勝負は弾幕ごっこ!勝負はスペカ3枚!」

「話聞けやこのマゾ娘!話聞くことすらできねえのか!」

「なによ!あんたの都合なんて聞いてやんないわよ!衣玖が『男は押しに弱いです』って言ってたから!」

「衣玖さんあんたなに吹き込んでんだよめんどくせえ!ていうか普段は言うこと聞かねえくせに何でそういう時だけ衣玖さんの言うこと聞くんだよこの不良娘!」

「ということで勝負よハクト!」

「聞けよこのあんぽんたん!」

 

 あまりにも俺の言うことを聞かない天子に俺のイライラゲージは鰻登り。先ほど重次郎にからかわれたのも合わせれば有頂天である。

 

 横目に重次郎を見ると、「まーた痴話げんかしてるよこいつ」みたいな目で俺を見てるのが解せぬが、俺は重次郎にこう言う。

 

「重次郎、人里の危機を脅かす輩が現れた」

「……おう?いいのか黒崎。あの嬢ちゃんお前に懸想してるぜ?」

「てめえこれ以上煽るなら本気で腹掻っ捌くぞ」

「すんません……で?そういうことでいいのかい?」

「そういうことだ。あの目の前にいる比那名居天子とかいう天人を血祭りにあげる『黒裂』の名に懸けて」

「了解ッ!」

 

 そういうと重次郎は駆け出し、人里の中に入っていく。

 

「てんこ。暫し待て。そしたらお前の言う通り……じゃあねえが、ともかく、戦ってやる」

「私の物になる覚悟ができたのねハクト」

「てめえの物になる覚悟はできてねえしそうなるつもりもねえが、てめえをぶっ潰す算段ならつけた」

「……ふぅん」

「だから、暫し待て」

「わかったわ」

 

 天子はおとなしく俺の言うことを聞き、待つ態勢に入った。俺は内心にやりと笑う。

 

 ――こっから先は俺の独壇場だ!

 

 




てんしまじてんし

ギャグわかんないので妥協した

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