電気のヒーローアカデミア   作:耳郎クラスタ
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まず初めに、たくさんのご意見ご感想いただきありがとうございます。
まさかここまでのことになるとは思っていなかったので、感想欄で対応しきれないということもあり、一応私の考えを述べさせていただきます。
もともと上鳴の個性は使いすぎると脳がショートする設定なので、限界以上に酷使すれば記憶に影響が出るだろうなと思っております。
現在の上鳴の状態としては、個性社会に関する恐怖は残っているが、原因がわからないという状態です。


8V 救え、救助訓練

 退院の翌日。

 俺は雄英高校の校内案内図の前にいた。

 

「1-Aってどこだよ……」

 

 退院明けに迷子とか絶対に記憶喪失がバレる。こんなことになるならあの耳郎って子と一緒に登校する約束くらいすればよかった。

 まあ、こういうことを想定して時間には余裕を持って登校してるし、案外体が覚えてたりするから大丈夫だろう……と、思っていた時期が俺にもありました。

 

「マジでどこだ、ここ」

 

 いけると思ったらまさかの迷子である。ああ、自分の直感ほど信じちゃいけないんだな。

 

「上鳴君! もう大丈夫なの!?」

 

 このまま教室にたどり着けないかもしれない、と途方に暮れていたら、何かぱっとしない見た目の男子生徒に話しかけられた。

 

「お、おう。この通りよ! 心配かけたな!」

 

 反応からして知り合いだろうから、それっぽく振舞う。すると、俺の言葉に安心したように彼は笑顔を浮かべた。

 

「元気になって良かったよ……それより、どこ行くの? 教室はこっちだけど」

「あー、何かボーッと歩いてたから教室通り過ぎちまった」

「えっ、本当に大丈夫!? まさか、個性の反動による後遺症とか……」

 

 凄いなこいつ。ほとんど正解だ。これだけ鋭いということは元々頭がいいか、よっぽど俺と仲が良かったということだな。

 

「は、はははー……心配し過ぎだって」

 

 とにかく、こいつだけには記憶喪失がバレないように細心の注意を払って行動しよう。

 

「それにしても、マスコミの数が凄かったね」

「だなー。やっぱ雄英が敵に襲撃されたとなりゃ格好のネタだもんな」

 

 正直、かなり早めに来たせいでマスコミが殺到している様子は見受けられなかったが、適当に話を合わせておく。

 

「あの脳無って敵、とんでもない強さだった」

「ああ、対オールマイトとして連れてこられたみたいだったからな。つか、個性複数持ちとかチートもいいとこだよな」

 

 耳郎から話を聞いた脳無という敵。俺が凄まじい電撃で倒したらしいが、俺が記憶喪失になるくらいの電圧で放った一撃でも完全な戦闘不能にはできなかったのだ。これをチートと呼ばずしてなんと呼ぶのか。

 

「でも、その脳無を一時的にでも戦闘不能にした上鳴君は凄いよ」

「その反動で入院してりゃ世話ないって。あの後、敵が残ってるのに俺が倒れたせいで耳郎達には迷惑かけたみたいだし」

 

 倒れ伏す俺を耳郎と緑谷という生徒が守り、八百万という女子生徒が俺を避難させてくれたらしい。どんな強敵を倒したとしてもそこで終わりじゃないのだ。自分に対してこんなことを言うのもなんがだ、記憶を失う前の俺は浅はかだったという他ない。

 

「だから、もうこんな無茶はしねぇ」

 

 少なくとも助ける側が助けられる側に回ることのないようにしなければならない。状況が許してくれるのならば、だけどな。

 

「上鳴君……うん、僕も気をつけるよ」

 

 俺の決意を聞いて思うところがあったのか、彼も決意をしたかのように頷いた。

 そうこうしているうちにA組の教室に辿り着いた。

 今までのラインの履歴を振り返り、俺がみんなにどういう感じで接していたかは予習済みだ。ここは元気良くいくぞ!

 

「うぃーっす! みんな待たせたな! 上鳴電気、完全復活だぜ!」

「上鳴だ!」

「上鳴が帰ってきたぁぁぁ!」

「もう体は大丈夫なのかい!?」

「もう平気なの上鳴ちゃん?」

「おめぇ、相澤先生を助けるために飛び出したんだってな! 男らしいぜ!」

 

 教室に入った途端、クラスメイト達が一斉に駆け寄ってくる。このクラス、勢い凄いな。

 

「おいおい、俺は聖徳太子じゃねぇっての。順番に来てくれって」

「脳に後遺症が残るかもと聞いておりましたけど……」

 

 俺の言葉にポニーテールの女子生徒が律義に手を上げて質問をしてくる。

 

「あー……それなんだけど」

 

 一番聞きづらいけど、みんなが気になっていることを代表して聞いてきた感じか。もちろん、答えは決まっている。

 

「実は大分アホになっちまったみたいでさぁ……入学してから勉強した授業の内容忘れちまった」

「いや、それはあんたが聞いてなかっただけでしょ」

 

 俺が用意していた言い訳に対して、耳郎が呆れたようにツッコミを入れてくる。

 

「えっ、何でバレたんだ!」

「いやいや、あんた普段からノートに落書きばっかしてんじゃん……」

 

 確かに今までのノートを見返したら落書きだらけだった。耳郎が知ってるってことは席が近いのか。ていうか、自分の席がわからないから先生が入ってくるギリギリまで座れないな。

 

「……何かいつもの上鳴って感じだね」

 

 良かった。ちゃんと俺は自分を演じられているようだ。これならクラスのみんなにバレることはないだろう。

 

「むむっ、もうこんな時間か。みんな! 上鳴君の体調は気になるが、朝のホームルームが始まる。席につけ!」

 

 委員長気質な眼鏡の男子生徒の掛け声と共にみんなが席に着く。俺はみんなが席に着いてから余った席に座った。やっぱり耳郎の隣の席だったようだ。

 クラスのみんなが席に着くのとほぼ同時に担任である相澤先生が教室に入ってきた。

 

「おはよう」

「相澤先生復帰早ぇぇぇ!」

「プロ過ぎる!」

 

 包帯ぐるぐる巻き状態で出勤してきた相澤先生にみんな驚きの声をあげる。

 

「先生、無事だったのですね!」

「無事言うんかなぁアレ……」

「あんなことがあったばかりだが、時間は有限だ。今日から通常のカリキュラム通りヒーロー基礎学を行う」

 

 通常のカリキュラム通りというより、四日間遅れていた分を取り返すためにという感じだろうな。

 

「今回は前回できなかったUSJでのレスキュー訓練を行う。全員、ホームルームが終わり次第着替えてバスに乗り込むように」

 

 ホームルームが終わると、みんな更衣室でコスチュームに着替えて順番にバスへと乗り込む。

 

「上鳴」

 

 みんなに続いてバスに乗り込もうとしていたら、相澤先生に呼び止められた。

 

「すまん……本来守る立場であるお前に助けられ、危険に晒してしまった」

「先生、そこはありがとうって言ってくださいよ……俺だってあんな無茶はこれっきりにします。人を助けるなら最後まで自分は無事でないといけませんから」

 

 俺が耳郎から聞かされた情報を頼りにそう答えると、相澤先生は包帯越しからもわかるくらいに目を見開いた。

 

「耳が痛い話だな……助けてくれてありがとうな、ヒーロー」

 

 相澤先生にそう言われて胸が熱くなる。

 俺には相澤先生を助けるために飛び出した記憶はない。

 それでも、その時の俺が飛び出して良かったと思えた。

 今回は実力不足で自分が大怪我を負う羽目になってしまった。

 だけど、人を救うために動いたこと自体は間違ってはいないのだ。

 

「先生、俺頑張ります!」

 

 俺は意気揚々とバスへと乗り込んだ。

 USJに着くと、宇宙服のとうなコスチュームに身を包んだヒーローが待っていた。あれはスペースヒーロー13号だな。

 

「まあ、あんなことがあったけど授業は授業。というわけで、救助訓練。しっかり行っていきましょう」

「13号先生、もう動いて大丈夫なんですか?」

 

 ピンクのパツパツコスチュームに身を包んだ丸顔の女子が13号先生の容体を心配する。あのコスチュームなんかエロイな。一番エロイのは八百万のコスチュームだけど。

 

「ちょっと背中が捲れただけさ。先輩に比べたら大したことじゃないよ」

 

 13号先生は彼女の心配に笑って答えるが、ちょっとでも背中が捲れるのはとんでもないことだと思うのだが。

 

「授業を行えるのなら何でもいい。とにかく早く始めるぞ、時間がもったいない」

 

 このままだと無駄に会話が続きそうだと思ったのか、相澤先生は和やかな空気を打ち切るように救難施設へと向かった。

 

「ではまずは山岳救助の訓練です。訓練想定としまして登山客三名が誤ってこの谷底へ滑落。一名は頭を激しく打ち付け意識不明、もう二名は足を骨折し、動けず救助要請という形です」

 

 山岳ゾーンに来た俺達は13号先生から訓練の内容を聞いていた。

 

「じゃ、怪我人役はランダムで決めたこの三人」

 

 怪我人役は俺、峰田、耳郎の三人組。救助に駆け付けたのヒーロー役が芦戸、八百万、爆豪、切島の四人組に決まった。

 一先ず俺達三人は崖の下に移動して、救助を待つことにした。

 

「意識不明役って寝てればいいのか?」

「いや、目を閉じてじっとしてればいいんじゃないの」

 

 しかし、最近まで意識不明で入院していた俺が意識不明役とはこれいかに。

 

「救助されるに当たって胸および臀部にやむを得ず触れてしまった場合、それは罪に当たるのか否か……!」

「クズかよ」

 

 耳郎が小柄な男子、峰田に向かってゴミを見るような視線を向ける。

 

「お前に限ってはアウトだと思うぞ……なあ、耳郎。俺でもアウトかな?」

「アウトだよ! 意識不明なんだからおとなしく寝てろ!」

「のわぁぁぁ!?」

 

 俺は耳郎からイヤホンジャックを通して爆音を叩きこまれた。解せぬ。

 

「皆さん、安心してください! 今すぐ向かいます!」

 

 そんなやりとりをしていたら崖の上から八百万の呼びかけが聞こえてきた。訓練なのに、しっかりと本番さながらに行動するその姿は本当に立派だと思う。

 

「助かった、ありがとう!」

 

 耳郎も要救護者を想定してそれに答える。

 

「頼む! ヤオロヨッパイ降りて来てくれ!」

「クズかよ」

 

 峰田は……うん、ブレないのも才能の内だよな。

 ちなみに、降りてきたのは芦戸だった。それでも峰田は嬉しそうにしてたけど。

 

「そんじゃ、意識不明の上鳴から引き揚げるよ」

 

 出来るだけ体の力を抜いて意識不明の重症者を装う。芦戸は俺を担架に乗せて、爆豪と切島、八百万が俺を引き上げてくれる。

 

「……どうしましたの上鳴さん?」

「耳郎にやられた」

 

 まだ頭がガンガンする。まあ、あれも女の子の心音って思うと悪く……やっぱ悪いわ。

 

「一体、何を言ったんですの……」

 

 八百万はゲンナリしている俺に少し呆れていた。

 そのまま滞りなく訓練は進み、次は倒壊ゾーンに行くことになった。

 

 

 

「この倒壊ゾーンでの訓練想定では震災直後の都市部。被災者の数や位置が何もわからない状態でなるべく多くを助ける訓練です。八分の制限時間を設定し、これまた四人組での救助活動を行います。残りの十六名は各々好きな場所に隠れて救助を待つこと。ただし、その内八名は声を出せない状態と仮定します」

 

 倒壊ゾーンにやってきた俺達は13号先生から訓練の内容を聞いていた。要するに、かくれんぼというわけだ。

 俺は救助側で声を出してはいけないから、どこか建物の中にでも隠れるとするか。

 

「ありゃ轟」

「……上鳴」

 

 適当な建物の中に入ったのだが、既に先役がいた。

 

「悪ぃ、俺別のとこ行くわ」

「いや、いい。俺がどく」

 

 短くそう告げると、轟はどこかへ行ってしまった。あいつ、無口だな。クールというか、ドライというか……。

 まあ、記憶喪失を隠したい俺としてはそれがありがたいんだけども。

 

「はぁ……」

 

 つい耳郎を悲しませたくなくて記憶喪失のことをごまかしてしまったが、今後も記憶が戻らないままだったらどうしようという不安が頭をよぎる。

 

「何て顔だ。ヒーローなら常に笑顔を忘れちゃいけないなぁ」

「っ、何だ!?」

 

 近くの瓦礫が爆ぜ、筋骨隆々のマスク男が現れた。

 

「四日ぶりに暴れるとするか!」

 

 四日ぶりっていうと、丁度USJの襲撃があった時だ。ということは、こいつ潜伏してた敵か!

 

「くっ」

 

 すぐに全身の末梢神経に電気を流す。病み上がりで調子は出ないが、そんなことを言っている場合ではない。

 ここは逃げの一手に限る。

 

「おっと、逃がさないぞ」

「くっ、速ぇ」

 

 俺の反射速度を上回るなんてとんでもない奴だ。

 

「悪くない判断力だが、この俺から逃げることなんてできやしねぇさ!」

 

 あれ何かこの声聞いたことあるような気がするぞ。くぐもっているが、もしや……。

 俺はすぐさま敵の体内に流れる電気を感知してみる。

 驚いたことに敵の体内には激流のように電気が迸っている。大抵の場合、増強系の個性が肉体を強化している時は体内の電気が活発に駆け巡る。これだけの電気が常に神経や筋肉を刺激している状態なのは、はっきり言って異常だ。

 そして、そんなとんでもない増強系の個性と思わしき人物は俺の知る限り、一人しかいない。

 

「もしかして……オールマイト?」

「HAHAHA! まさかバレるとは思ってなかったぞ! 凄いな上鳴少年!」

 

 俺の言葉を肯定するようにアメリカンな笑い方をしてオールマイトがマスクを外す。

 

「どの道、協力はしてもらおうと思っていたんだが、どうしてわかったんだい?」

「いや、何つーか、増強系特有の体内を駆け巡る電気の量が規格外だったってのと、声ですかね」

 

 というか、敵の襲撃があったばっかりなのに何してんだこのヒーローは。

 

「……なるほど、私の体の中はそうなっていたのか」

 

 俺の言葉をオールマイトは興味深そうに頷いていた。

 

「オールマイト、個性解かないんすか?」

「えっ!?」

「いや、だってまだ体ん中凄い電気駆け巡ってるし、個性かけ続けるのキツくないっすか?」

 

 特に増強系の個性は使えば使う程体に負荷がかかる。緑谷がその良い例だろう。

 

「HAHAHA! まだこれからが本番だからね! さっきも言ったが協力して欲しいんだ」

 

 オールマイトはアメリカンな笑みを零すと、俺の質問をはぐらかした。

 

「というと?」

 

 オールマイトの意図を尋ねると、オールマイトは神妙な面持ちで語った。

 

「君達生徒は先の事件を何千、何万分の一で起こった事故だと思っている。しかしそうではない。ヒーローには絶えず危険が付き纏う、そのことを自覚して欲しくてね」

「ヒーローはいつだって命懸け、ですか」

「ああ、正直全員にサプライズといきたかったが、君は先の事件で重傷を負った身だ。無茶はできないと思ってね」

 

 重症なら緑谷もだと思うが、あいつの場合リカバリーガールの治癒で十分だったから、大丈夫だと判断したのだろう。

 

「わかりました。とりあえず、気絶した振りでいいすか?」

「ありがとう、上鳴少年!」

 

 こうしてどう考えても後で袋叩きに合いそうなオールマイトのサプライズが始まった。

 そして案の定――

 

『やり過ぎなんだよ、オールマイト!!』

 

 そして案の定、峰田のもぎもぎを利用したとりもちにくっついた状態でオールマイトは袋叩きに合っていた。

 お、俺も巻き込まれない内に逃げよう。

 

「てめぇもこのクソサプライズ共犯か!」

 

 残念。爆豪に見つかってしまった!

 

「わ、悪かったって! しょうがねぇじゃん、オールマイトの頼みだったんだからさぁ!」

「洒落になってないっての……」

「まったくですわ」

 

 耳郎と八百万も不機嫌そうにこちらに詰め寄ってくる。何かめっちゃ怒ってるんだけど!

 

「い、いや、ほら、ヒーローは常に命懸けって言うし、な? なあ、何か言ってくれよ緑谷!」

「えっ」

 

 緑谷は驚いた顔でこちらを見ると、唖然としたように立ち尽くしていた。ちょっと、何か言ってくれって!

 

「サ、サラダバー!」

『待てぇぇぇ!』

 

 こうしてかくれんぼから一転、地獄の鬼ごっこが始まったのだった。

 




これからも私は自分の書きたいものを好きに書いていくので、応援してくださる方はよろしくお願い致します!







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