【戦闘妖精雪風×ストライクウィッチーズ】妖風の魔女 Re:boot   作:ブネーネ
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仲間の為に

異世界から訪れたとされる捕虜二人が捕虜となってから一週間後。

ロマーニャ西部に臨時で設立された新504JFW基地へ扶桑組の宮藤と坂本は扶桑から送られた物資を運んでいた。

504JFWは元々はロマーニャの防衛を任されていた部隊で、ロマーニャ公国は惜しみなくロマーニャ三軍(陸・空・海軍)の何れにも属さない公室直属精鋭部隊「赤ズボン隊―パンターニ・ロッシ―」から五人の魔女をここへ配属させている。

しかしトラヤヌス作戦の際に起きたイレギュラーによって504JFWは半壊、むしろ半壊で済んだ事が奇跡にも思える惨事に巻き込まれた。

「いやー、助かったわ坂本少佐。あのタイミングでネウロイの巣が発生するなんて予想もしてなかったから」

「いや、気にしないで頂きたい。流石にここまでイレギュラーな事態は想定外だった」

「そうね、まさかネウロイがネウロイを攻撃するなんて…」

504JFW・アルダーウィッチーズ隊長のフェデリカ・N・ドッリオ少佐はロマーニャ魔女らしい朗らかで気楽な笑みを浮かべている、しかしその眼の下の隈までは隠せていない。

補給任務自体は彼女のサイン一つで終わる、しかし坂本少佐にはまだやる事があるようだった。

「…それでは、ロマーニャ周辺の連携ですが」

「そうね、パパっと確認しちゃいましょうか」

新しくヴェネツェアに出現したネウロイの影響から慌ただしく動いた情勢は今、ネウロイの巣を中心に戦力が大きく3つ存在する。

一つはロマーニャの首都ローマの西方に臨時基地を構えた504JFW

次いで反対側のローマの東方に再度編成され、アドリア海側を防衛する501JFW

そしてロマーニャとヘルウェティア連邦の隣、501JFWがネウロイから解放したガリア共和国に駐在・防衛する506JFW・ノーブルウィッチーズのBチーム

以上の三隊は有事の際に独立して動くことが出来るロマーニャ方面の攻撃魔女部隊、JFWの全てである。

現在ロマーニャの防衛任務は主に501JFWに移譲され、504JFWは主にローマ及びローマより西方の防衛と501JFWのサポートに回る事で両者が合意した。

「それじゃあこれでお終いね、詳しい内訳は纏めさせて501へ送るわ」

「了解した、ところで隊員の様子は如何かな?」

「聞いたと思うけど皆ボロボロ…特にアンジェラ中尉がね。応急的な処置は済ませたけど回復魔法持ちのウィッチを呼べるほどロマーニャも余裕があるわけじゃないから」

損害を受けたのは504JFWだけではなく周辺の住人や滞在していた部隊もまとめてネウロイに襲撃されていた。その為一時的にベネツェア難民の受け入れを行っているロマーニャでは病院等の施設も開放され、例え魔女であろうと場合によっては受け入れられない状況になっている。

「…もしかして宮藤ちゃんを貸してくれるの?」

「本当はすぐにでも連れて来たかったのだが…やむを得ない事情の為にここまで伸びてしまった、申し訳ない」

「いえ、来てくれるだけでも本当に嬉しいわ。よろしくお願いね、宮藤軍曹」

「は、はい!!」

 

 

 

「…臨時基地、ここも元々は別の建物だったのかな」

ちらほらと廊下には未開封の木箱が無造作に置かれ、壁の一部は剥がれて土壁がむき出しになっている。しかし造り自体はしっかりしているようで扉も最低限の修復で済ませている様だ。

「あら、宮藤ちゃん?」

振り返ればセミロングの癖のついた茶髪の少女、ズボンとシャツの赤色をジャケットの黒で締めて際立たせる少女がいた。

「…フェル中尉!!」

フェルナンディア・マルヴェッツィ中尉は赤ズボン隊所属の魔女である。

北アフリカ戦線で後の「三変人」と呼ばれる仲間二人とチームを組むようになり、ある時地上大型ネウロイを撃破した際に名誉ある赤ズボン隊に任命された経歴を持つベテランのウィッチだ。

「ホントに久しぶりねぇ、宮藤ちゃん」

「フェル中尉こそ、ガリア以来ですね」

「報告書見たわよ~?随分やんちゃしたらしいじゃない」

「あはは…」

「まあいいわ。宮藤ちゃん、私と摸擬戦してみない?」

「マルヴェッツィ中尉殿とですか?」

「駄目とは言わないのかしら?」

「いえ、せっかくの機会ですから。それで、私が勝ったらどうなるのですか?」

「そうね、ツケ一つでどう?扶桑人はそういうの好きでしょ」

「はい中尉殿、光栄であります」

宮藤軍曹は、とてもいい笑顔で敬礼を返した。

 

 

 

 

 

補給の道中の護衛を兼ねてストライカーと武装を積んでいた宮藤は標準装備の13mm機関銃に摸擬戦用のペイント弾を装填し、無銘の扶桑刀を装備してマルヴェッツィ中尉と同じ高度で対峙する。

ルールは一般的な摸擬戦を採用し、相手の体とストライカーにペイント弾を命中させれば勝利、シールドを展開したり弾切れになった場合はその者の敗北となる。

また扶桑刀を使う宮藤の為にマルヴェッツィ中尉のストライカーには吹き流しが取り付けられており、これを切り裂いた場合は宮藤の勝利となる。

『準備はいいか二人とも』

地上でマイクを持つ坂本少佐の隣に立っている扶桑海軍の軍服を纏っている茶髪の女がいる、504JFWの戦闘隊長、リバウの貴婦人とも呼ばれた竹井大尉だ。

『ルールは分かっているな?判定はこちらで行う、此方からの終了の合図が出るまで摸擬戦を続ける』

「了解」

「…いつでもいけます!!」

『よろしい、それでは…初めッ!!』

坂本少佐の開始の声と共に空に昇っていく彩光弾を合図に二人の距離は一直線に縮まって行く。

先手は宮藤による正面からの牽制射撃だった。

フェル中尉は上昇して回避、宮藤がフェル中尉の下を通り過ぎるタイミングに合わせてストライカーを軸に体を捻って反転する。

ストライカーユニットはレシプロ機とは違い翼で揚力を得る必要が無い、よってある程度の速度の上でならレシプロ機では不可能な空戦機動も可能になる。

反転を終えて宮藤の背を照準に捉えるも未だ反転しないのは距離を取る為か、しかし狙撃手ではない宮藤があえて距離を取る必要は無い筈。

発砲しても宮藤は体を振り子のように左右に不規則に揺らしながら射線から外れ緩やかに降下していく。

「弾切れ狙っているのなら無駄よ!」

一方で宮藤は当然ながら勝つことを諦めていたわけではなかった、しかし勝つためには、彼女が本領を発揮する為には彼女の土俵へと誘い込まねばならなかった。

宮藤は背後からの追撃を回避しながら中尉との距離や角度を覚られぬように横目で捉えながら条件を整える、三次元の罠を張り終えた宮藤は突如として急激に加速して上昇した。

「…え!?」

追跡する為に上昇を開始した時、上下左右の何処にも宮藤の姿はなかった。姿が見当たらない、まるで蜃気楼の様に消えて――――しまうわけがない。

宮藤は彼女の背後に居た、小回りが利くストライカーユニットの機動を活かした扶桑のマニューバ、上昇した後に全身で空気抵抗を受けながら逆噴射する事で急減速する。

本来はフェイントの上昇に釣られて加速し頭上を通り過ぎた敵機の腹へ射撃する木の葉落としのアレンジだ。

宮藤は中尉の上を飛び越え、減速する事によって背後に回った、視界にもし欠片でも宮藤を捉えたとしても相対的に離れていく為優位に立つことが出来る。

中尉はセンスで背後に居る宮藤を感じていた、速度も緩めておらずむしろそのまま加速して上昇を続け射線から逃れていた。

「舐めるんじゃないわよ!!」

宮藤の偏差射撃を背面姿勢からの下方逆宙返りにて高度を速度に変換して反転し、位置エネルギーの速度を乗せてペイント弾を放つ。

木の葉崩しのアレンジと言っても速度を失うのは同様であった。

ここぞとばかりに断続的に放たれる弾丸を宮藤は片方の魔道エンジンのみ回転数を急激に上昇させ疑似的なバレルロールで回避、もう一基の魔導エンジンと回転数を同調させ安定飛行へ戻す頃にはフェル中尉は既に反転しており再度宮藤の背後を取っていた。

宮藤は再び魔力を注ぎ込み急速上昇旋回、追跡する中尉は反射的に背後を取る為に旋回の径を縮めて内側へ潜り込んでいく。

そこへ宮藤は強引に上体を反らせて急激でさらに旋回コースの内側へ潜り込む、フェル中尉は宮藤の背後を取る事を諦め上昇して上を取る―――――筈だった。

上昇の頂点に届き見下す体勢となったフェル中尉を覆う一つの人影――――中尉の更に上に扶桑刀を抜いた宮藤が居た。

「なんで宮藤ちゃんが上に…!?」

――――扶桑のマニューバの一つ、背後を取る相手に対するカウンターを昇華させた巴戦の知恵の輪。

「左捻り込みのアレンジ!?」

背後をとって優位に立っていた筈が、絡まり解けた時には形勢が逆転している。

体を捻って迎撃しても急降下する宮藤を射線に捉える前に決着がつく、降下して逃げても全ての要素で負けている今の状況では何も覆せない。

無銘を上段に構えた宮藤が急降下して逃げるマルヴェッツィ中尉の背後から一閃し、見事吹き流しは両断され風と舞い落ちて行く。

 

『そこまで!!』

 

「ありがとうございました!!」

「お疲れ様…完敗ね」

空中で律儀に礼をする宮藤軍曹、呼吸の一つも乱していないその姿にマルヴェッツィ中尉は若干舌を巻いた。

 

 

504基地内の観測室にて数人の魔女が摸擬戦を観戦していた。

「あー!フェル隊長の負けかよー!!」

『三変人』の一角マルチナ・クレスピ曹長は賭けに負け茶菓子を没収される。

「まー撤退戦の負傷も癒えてないのに摸擬戦なんかするからだろ」

その点を鑑み一人勝ちした『大将』ドミニカ・S・ジェンタイル大尉はご機嫌で女房役が焼いたカップケーキを頬張っている。

「それにしてもあの最後のマニューバ、いい動きしてたわね」

賭けの胴元、ドッリオ少佐は賭けていた茶菓子の3割を懐に入れる

「あれが…扶桑の伝説の魔女ですか…」

珈琲を用意したのは『三変人』の一角、ルチアナ・マッツェイ少尉、さりげなく賭けになっていたお菓子を開けて口に含んでいる。

 

 

 

 

「いやー負けたわ!宮藤ちゃんいい動きするじゃない!なんでまだ軍曹なのよ!」

「不名誉除隊なので…なけなしの功績も0どころかマイナスになってしまいましたし…」

二人仲良く臨時基地で最も最初に取り付けられた大浴場――勿論、扶桑人の発案である――に浸かりながらお互いを称えていたが宮藤の顔が急に曇る。

「あー…そうだったわね、というかなんで不名誉除隊なんて事になってたのよ」

「私が勝ったので秘密です」

「へぇ~そういう事言っちゃうんだー」

「うぐぐぐ」

水しぶきが跳ねて二人の笑い声がこだまする中、宮藤の手がマルヴェッツィ中尉の体に軽くふれた時彼女が顔をしかめるのを見た。

「…中尉、怪我が治ってないんですよね?」

「え?…あはは、いやー別にホラ私元爆撃魔女だったし、ドッグファイトに長けてる宮藤ちゃんには分が悪いし―――」

「そうじゃなくて…治療するので背中向けて下さい」

「うー…分かったわよ」

元々中尉は軽度とは言え治療魔法を使える為に魔法医学科に所属していたが、途中で切り上げ戦闘職を希望したと何かで読んだ事がある。

その未練に加えてプライドが引っかかるのか、怪我を隠したがる癖があるようだった。

「はい、終わりです」

「は~あっさりねぇ。…ねえ宮藤ちゃんも504に来ない?」

宮藤が持つ固有魔法の『治癒魔法』は単純にして強大な力であり、場合によってはそれだけでも争いが起こり得る程の力だ。

そんな彼女が自分達504に来てくれればそれだけで―――もう傷つき苦しむ仲間を見なくてもよくなるのではないだろうか

「それは駄目です。504のみんなを守れるのは中尉達のみんなの筈です」

それを読んだのか宮藤はバッサリと切り捨てる。

「私はみんなを守る為に501の皆と一緒に戦います、だから中尉もみんなを守る為に504で戦うべきです。一人で出来る事なんてたかが知れているからこそ皆で出来る事をするべきだって思います」

「…あーあ、フラれちゃった。じゃあ今の内にイチャイチャしておきましょうか」

「ちょっと!中尉!?」

入浴後に504JFWのメンバーを片っ端から治療して回ると、その頃には坂本少佐の手続きも終了したらしくマルヴェッツィ中尉と何か話しているのが見えた。

「坂本さん、そろそろ時間ですよ」

「そうか、では行こうか宮藤」

宮藤は二人の会話が終わったであろうタイミングで少佐と合流する。

そして、トラックに乗り込む坂本に続いて乗り込もうとする宮藤に声をかけた。

「ねぇ宮藤ちゃん。私の事、フェルで良いわよ」

「…了解しましたフェルさん。お互いにフェアな摸擬戦はまたの機会に、ツケ1ですからね」

「オーケーオーケー、覚えておくわよ。今日はありがとうね」

「…それでは、また―――」

 

 

 

 




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