『刀剣乱舞』シリアス短編集   作:黄泉竈食
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審神者は多分、符術とか呪文とかなんかそういう系が得意な人だと思う、多分。よくわからん。

後藤はドンマイ。
キミと蛍丸のステータスの差は
作者と審神者のせいだよ。
恨むなら審神者を恨んでくれ。

俺はシラナイ。




オトナになりたい

「なー薬研背が大きくなる薬って作れねぇのか?」

 

 燭台切特製のプリンをつつきながら兄弟である薬研に問う。

 

「残念ながらそういうのはねぇなぁ。人間用ならあるんだが。それも、成長剤だし。俺っちたちは付喪神だからな、そう簡単には容姿は変わらんだろうよ」

 

 

 その答えを聞き落ち込む俺。瞳にはチビ達と話すいち兄を羨ましそうに映していた。

 

「大きくなりてぇなぁ」

 

 目の前のちゃぶ台にグデぇと雪崩込む。

 

「大きくなりたいの?」

 

 突然聞いたことの無い声が頭上から降ってきた。

 

「お、おまえ蛍丸、か?」

 

 薬研のどもる声が聞こえる。なんだよ。蛍丸がどうしたんだよ?体を起こし、腰のあたりの畳に手をついて仰け反るように後ろを見る。

 

「主に頼んでみれば?」

 

 そこには俺たちとはしゃぎ回る小さい子どもはいなかった。

 

「大きくしてくれるよ?」

 

面影を残しつつも2m近くある男士が立っていた。

「は?」

 蛍丸?そんなはずない。あいつは俺よりも身長は低かったはずだ。

 

「なんだよ、それ。」

 

「主に“身長伸ばして!”って頼んだらこうなった。」

 へへん!とでも言いそうな得意気な顔。

「お、」

「「お?」」

 

 なんだなんだと兄弟達が集まってくる。

 

「俺も頼んでくる!」

 それだけ言って、俺は脱兎のごとく大将の所へと走った。

 

「─一週間くらい続くらしいけどね。」

 

 もう、兄弟達の声も蛍丸の声も聞こえなかった。

 

「いっやっほぉぉい!!!」

 

 そのあと俺はいち兄と変わんないくらいまで大きくしてもらった。目線が高い。

 

「ありがとな!大将!」

 

「えぇ。それはいいのだけれど。仕事もきちんとこなすのよ。明日は出陣だからね?」

 

「わかってるって!」

 

 

 ────そう。わかってた、はず、なのに

 

「な、なんで」

 

 間合いが、わからない。

 

「グォォォオ!」

 ズシャャアア

「ぐっ正念場ってやつか」

 

 

 大きな体躯の割に小さな刀。

 

 

「はぁはぁっ…」

 

 大きくなりたかったはずなのに、、、。

 

「負けるかよ!」

 スカッ

 

「くそ!」

 

 攻撃が当たんねぇ

 

「とうっ」

 シャキーン

 

 あいつはあんなに強くなってるのに

「へへっ大きくなったら

 起動と打撃があがったや!」

 

 あんなに…。

「チッ!ケリつけてやる!」

 真剣必殺!

 ズガガァン

 

「はぁはぁ」

 なんとか、倒せたか?

「後藤!大丈夫かい?!」

「い、いち兄」

「中傷じゃないか!今すぐ帰ろう!」

「いや、次でボスマスだろ?

 これぐらいへーきへーき。」

「しかし、」

「大丈夫だって!」

「後藤…。」

「さぁ!進軍しようぜ!」

 

 この時帰っていればっ…。

 

「んじゃ、派手に戦いますかっと!」「えい」ズシャャア

 

「でかいからって、いばんなよ!」スカッ

 くそっなんでなんだよ!

「後藤!」

 

 え? ズシャャアア

 

「い、いち兄?」

「ぐっ再刃されたせいか…」

 いち兄がおれをかばって破壊一歩手前に…。

「そ、そんな!いち兄!」

 

 いち兄が折れちゃう…。

 

「オーラオラオラオラ!」

「首落ちて死ね!」

「闇討ち、暗殺、お手のもの!」

「とうっ」

 

その後のことはあまり覚えてない。

「後藤。一期さん背負って、帰城する。」

「うん。」

「泣いてるの?」

「泣いてないから…。」

「そ、わかった。」

 

 

 帰城してからは大変だった。俺もいち兄も帰るなりすぐさま手入れ部屋に押し込まれた。俺は薬研に一発殴られたらしいけどそれどころじゃなかったからそのまま手入れ部屋で寝てた。

 手入れは半日程度で終わった。けど、いち兄はその後一週間出てこなかった。その間に俺も蛍丸も体はすっかり縮んで元のサイズに戻っていた。

 

 

「いち兄…」

「五虎退。」

「後藤兄さん。いち兄ちゃんと目を覚ましますよね?折れたりしないですよね?」

「っっ!」

「……ぼく、虎くん達を探してきます。」

 

 二匹の虎を連れた五虎退は俯きながらその場を去っていった。

 こうやって秋田や五虎退に聞かれるとものすごく気まずい。

 

 

 俺が大人になりたいなんて馬鹿なことを言わなければ、大将に頼まなければ、いち兄がこんなことにならなかったのに…。

 

そっと手入れ部屋の襖を開ける。中には青白い顔のいち兄が横たわっている。

 

 いち兄が帰ろうって言った時に帰ればよかったんだ。

 

 無意識に握った拳に力が入り、ヌメった液体が伝う。強く噛んだ下唇も錆びた鉄の味がした。

「おい!後藤!やめろ!」

 薬研に声をかけられてはっとした。

「やげん。」

「おいおい。どうしたんだ。血が出るまで握りしめるなんて…。」

 薬研は小脇に抱えていた箱の中から消毒液とガーゼを取り出すと、丁寧に処置をしてくれる。

「薬研。俺、大きくなりたかったんだ。」

「急にどうしたんだ?お前が大きくなりたいって喚くのはいつものことだろう?」

 手当てしてもらったばかりの拳に力が入る。

「大きくなりたかったはずなのに戦場にでたら間合いがわからなくなった。起動が落ちたけど打撃が上がったから、大丈夫だって思ったんだ。だけど、間合いはわからねぇし目線が違うから違和感だらけだし四回も転んだし攻撃は当たらねぇ、挙句の果てにいち兄に怪我させちまった。こんなことなら、最初から大きくなんて…」

「それは…」

「それは違うよ。後藤。」

 薬研の言葉に被せるようにして声が聞こえた。

「「いち兄!」」

 振り返ると、少しやつれた顔をしたいち兄がいた。

 

「後藤は私に怪我をさせたかった訳では無いでしょう?私が自分でやったことだ。」

 

「で、でもその、おれ!謝りたくて!」

「謝られるより私は感謝される方が良いのですが?」

「え?でも、」

「後藤。」

「えと、ありがとう。」

「はい、よく出来ました」

 

 なでなでと髪を梳くその手はあまりに久しぶりで、頬を熱いものが伝う。

「後藤ーまぁた泣いてんのか?」

「ほっとけ!」

 薬研がいたの忘れてた。

 

「後藤。別に気に病む必要は無い。大きくなりたいならいくらでも主殿に頼みなさい。ね?」

 

「うん。でも、暫くはいいかな?」

 

 もう、こんなのこりごりだ。

 

 

 

 

 大人になりたい、なんてな。

 







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