チート転生者がダンジョンに行くのは間違っているだろうか   作:おがとん

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今回の話で、色々決着が付きます。
次回には、オーディン・ファミリアの団員のステイタスを載せようと考えています。
あまり時間はかけないと思いますが、遅くなる可能性も充分ございますので、ご了承下さい。
ではどうぞ


英雄とは

アポロン・ファミリアとの『戦争遊戯』は、オーディン・ファミリアの勝利で終わった。

 

そして、その際のこちらの勝利した場合の報酬(リワード)として、<カズト・キリガヤのオラリオの永久追放>を要求した。

 

それを承知の上でカズトは戦争遊戯を受けたのだが、恐らく負けるとは思っていなかったのだろう。どこからその自信が湧いて出るのかは置いておくとして……

 

要求の返答だが、"三日ほど待ってほしい"とのことだった。

 

これに怒ったのがアスナである。曰く、「戦争遊戯を勝利した要求に自分の身柄を求めたくせに、自分のことになったら時間が欲しいというのはおかしい」とのことだ。いや、めっちゃ正論なんだけどね……

 

だが、そこで待ったをかけたのが俺だ。

 

アスナには「この要求された三日間の間に襲われる危険性があるから、逆にそこを一網打尽にして、言い訳が出来ないようにしてオラリオを追放する」と言ったら、何とか納得してくれた(代わりに一日デートを約束させられたが……)

 

こうして、戦争遊戯については一区切りが付いた。

 

が、事はそう単純に進んではくれない。

 

そう、問題となったのは、俺がカズトが最後の悪足掻きにと放り投げた"火炎石"を防いだ盾、『熾天覆う七つの円環』について疑問を持たれたからだ。

 

この世界に住む住人達は、『宝具』という概念を理解できない。いや、理解は出来るかもしれんが、その存在を納得してくれないだろう。

 

なせなら、宝具とはかつて英雄が使っていた武具や、伝承に基づいた逸話が昇華されたものが一般にそう呼ばれる。

 

であれば、なぜこの世界にはそれ(宝具)が存在していないのか、という疑問が出てくるからだ。

 

そして、これを正しく説明するには、俺が別世界の住人であることを公表しなければならなくなる。

 

出来れば、そんな真似は避けたい。ロキ・ファミリアには既に伝えたが、あれはロキ・ファミリアの団員達が信用に値すると俺が判断したからだ。

 

よって、現在俺が別世界の住人であることを知っているのは、オーディンとファミリアの団員、ロキ・ファミリアの上層部のみなのだ。これ以上知っている人間を増やせば、どこから情報が漏れるか分かったもんじゃない。(ちなみに、うちのファミリアの団員には緊急用の"転移アイテム"を持たせている。『王の財宝』マジ有能過ぎだろ)

 

しかし、話さなければギルドからの信用は落ちる。今すぐどうこうなるということは無いだろうが、いずれ話さなければ後々面倒になる。

 

だからこそ、最も手っ取り早く、誰もが納得する万能の答え

 

    すなわち、"魔法"という概念だ。

 

これで全ての説明がつくのだからなんともまあ楽なこと。といっても、詳細は殆ど伝えていない。冒険者は己のスキルやら魔法やらをそうそう他人には話したりしないからな。

 

それでも何とか、と言われたので、ギルド職員の一人にだけなら話す、という条件を出した。

 

結果、話したのはエイナ・チュール。

 

なぜ彼女なのかと言えば、彼女は俺が冒険者になった時からの長い付き合いだし、何よりも夜架の担当になったのが大きい。故に、彼女には、俺の魔術のことは魔法であり、一度見た武器や装備を魔力を使って造り出すことが出来る、とだけ伝えた。まあ、間違ってはいないから問題ない。

 

さて、長々と思考に意識を費やしていたが、そろそろ来る頃だろうから、周囲に意識を巡らせるとしよう。

 

    今日は、戦争遊戯に勝利して三日目の真夜中。

 

予想通りなら、そろそろ……

 

ドゴォオオオオオオオン!!!!

 

!!来たようだな……

 

さて、惨劇の幕開けといこうか……

 

 

 

 

 

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「くそっ!なぜ俺が……ッ!」

 

彼、桐ケ谷和人は苛立っていた。本来なら勝てる筈だった戦争遊戯(お遊び)。真のデスゲームを経験した自分なら、その中でもトッププレイヤーとして生き抜き(勝ち残り)、現代でも稀に見る英雄と呼ばれた自分なら、どんな敵が相手でも必ず勝てると、そう確信(盲信)していた。

 

だが、現実は残酷だった。勝てる筈だった相手には敗れ、自分に相応しいと考えていた少女には見向きもされない(振られる)始末。

 

一体何が間違っていた。そう自信に問いかければ、自然に(狂った)答えに辿り着いた。

 

     そうだ、全部アイツが悪いんだ、と。

 

傍から見れば『いや、なに言ってんの?』となること間違いなしだ。

 

のだが、どうにも彼は思い込みが激しい部分がある。

 

したがって、一度自らが出した答えは間違っていないと結論付ける。否、そうしないと、()()()()()()()()()()()

 

生まれて以来、どの様な分野でも優れていた彼は、初めて敗北を知り、挫折を知り、屈辱を知った。

 

本来ならそれを糧に成長するものなのだが、なまじ優秀であり、失敗と呼べるような失敗をしてこなかったため、彼はそれ(絶望)に耐えることが出来なかった。

 

故に、彼はアポロンから囁かれた時、耳を傾けてしまった。

 

『彼へ仕返しするつもりはあるかい?』

 

    それが、地獄への片道切符だとも知らずに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、話はオーディン・ファミリアのホームの門が壊されたところへと戻る。

 

「出てこい!セイヤ・カミシロ!お前の使った()()()()()()()()()。さあ、もう一度僕と勝負しろ!!」

 

さて、現れてそうそう何を言い出すかと思えば……

 

「何がだ?」

 

「なに?」

 

「いや、だから何が反則なのかを聞いてるんだが?」

 

「そんなもの、お前の勝ち方全てに決まってるだろ!」

 

「ふーん、すべてねぇ……ならさ、俺が反則をしたっていう決定的な証拠でもあるのか?」

 

「そ、それは……し、証拠など無くても!お前が反則をしたのは確定だ!」

 

「ほ~う、それは何故だ?」

 

「簡単だ。()()()()()()()()。」

 

「……は?」

 

待て待て待て、ちょっ~と待てよ?

 

今、こいつ何て言った?

 

ボクガマケタカラ?

 

「……」

 

「おい、何を黙っている?……あぁ、それとも反則をしたのがバレたから喋れないのか!それならそうと言えばいいのに。そうだなぁ。僕は寛大だから、君が持ってる財産全てで許してやっても

 

ザンッッッッッッッ!!!!!!

 

「?……あ」

 

不思議な()がしてから凡そ数秒後、何故か目の前にいる筈の者(聖也)が居らず、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     代わりにあったのは、カズトの右腕にあった()()だった。

 

「あ、あぁ……あぁぁああああああああ!!!!!!!!」

 

「五月蝿いぞ。騒ぐな。皆が起きてしまう」

 

そう言った聖也の右手には、とある剣が握られていた。

 

かつてブリテンの王になることを求められた一人の少女が、湖の女王から賜った星が鍛えた最強の幻想(ラスト・ファンタズム)

 

――――聖剣エクスカリバー

 

人々の想いを具現化させた聖剣は、腕を切り捨てた状態で尚光り輝いていた。

 

「さあ、今から始めるのは蹂躙ではない、虐殺でもない。これから行うのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ただの、人殺しだ

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

その言葉を理解するのに、どれ程の時間が掛かっただろうか。

 

ひとごろし、ヒトゴロシ、人殺し……

 

「……人殺し?」

 

それは、誰のことだ?誰が殺される?

 

いつしか腕が無いことに泣き叫んでいた事も忘れ、ただ理解を拒み、認識を拒み、現実を拒んでいた。

 

一体、誰をコロスノダ?

 

この場には自分とセイヤ以外には誰もいない。そして"人殺し"と、彼は断言した。

 

この状況下で、殺される(狩られる)のは誰だ?

 

あぁ、よく分かった。今ようやく理解できた。強かったのは自分などではなく、傲っていたのは他人などでなく、ましてや、真に英雄と呼ばれるべき者などは……

 

「……僕なんかじゃ無かったんだ」

 

彼は俯いて、そう呟いた。

 

そう、彼は最後の最後に、その絶望(現実)を受け入れ、己が今までやってきた所業の愚かさに気づいたのだ。

 

だが、それはあまりにも遅すぎた。

 

犯した罪は数えきれず、積み重ねた悪行は決して許されない。

 

ならば、自分には何が出来るだろうか?

 

決まっている。こんな時に払う代償(償い)など、古今東西、古来より決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()。ようやく僕は、死ぬ間際で自分の愚かさと傲慢さに気づくことが出来た。そして、理解した。このことに対する対価など、僕の命を払ったところで足りしはない。僕が言えたことではないが、僕の装備品を売った金なんかは、貧しい子ども達にでも寄付してくれ。まあ、こんな僕なんかの使ってた装備品なんかを売った金なんかじゃ、子ども達ですら嫌がるかも知れないけどね」

 

「……」

 

二人の間に、長い沈黙が訪れる。

 

どれ程経っただろうか?一分、一時間?はたまた数秒だったのだろうか?それほどまでに、時間の感覚が分からなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが、最後の言葉か?()()()()()

 

「ッ!!」

 

彼は宣言した。

 

数十、数百の罪を重ねてきた罪人のカズトではなく、デスゲームとなった世界で戦い、そして呪われた現実を解き放った英雄キリトとして、彼を認めたのだ。

 

「勘違いするなよ?俺はお前がオラリオにいることまで認めたわけじゃない」

 

そう、例え聖也が認めたとしても、既に彼によって被害を被った人々は数知れない。

 

だからこそ、認められたのは英雄キリトとして、現実世界を救ったという()()のみ。

 

「お前が真に認められるには、更正するだけでは到底足りん。故にオラリオの外に出て、様々な苦難に遭い、数々の困難に打ち克ち、多くの試練を越えて人々を救い、誰もが認めるような人間になったのなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時は、戻ってくるといい」

 

「ッ!!!!……ぁあ……」

 

なぜだろうか、本来なら憎い敵からの言葉の筈なのに、こんなにも嬉しく思えるのは……

 

月夜に照らされた一人の顔に、一滴の雫が輝いていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「んー、はぁ~……朝、だな」

 

結論から言うと、昨日の早朝、カズトは陽が昇ってすぐにオラリオの外に出た。

 

彼の顔は、随分とスッキリしているように見えた。まあ、ようやく自分自身を見つめ直せるのだ。スッキリもするだろう。

 

そして驚くことに、見送りにアポロンが来たのだ。

 

その際、アポロンとカズトは少し話していたが、少ししてから、カズトが泣き出していたから、その場にいた者たちは察しているだろう。

 

あのアポロンが、随分とまあ変わったものである。

 

ヒュアキントスが文句の一つでも言うかと思っていたが、予想外なことにカズトを心優しげに見送っていた。

 

彼の心境がどんな風だったのかは、さっぱり分からん。

 

「おーい!聖也!!」

 

ありゃりゃ、予想以上に早いな。まだ8時前なんだがな?

 

「すぐ行くから、少し待っててくれ!」

 

さて、手早く準備しますか!

 

数分後

 

「……よし!装備品に不備なし。ポーションの数も問題なし。あとは……」

 

解析、開始(トレース・オン)

 

――――身体能力、異常なし

 

――――固有結界、異常なし

 

――――肉体状況、異常なし

 

――――魔術回路9()2()()、異常なし

 

「体調、オールグリーン」

 

さて、皆を待たせてるし、急ぐとしますか!

 

玄関を出てすぐ、ホームの門の辺りで皆は待っていた。

 

「もうー!遅いよ聖也!!」

 

「アスナの言う通りです。もう少し早起きすることを推奨しますよ?団長」

 

「ん、聖也、有罪(ギルティ)

 

「私としても、早起きをして欲しいですね。ついでに朝の鍛練にも付き合ってほしいですね」

 

「私は主様についていくだけですわ」

 

……やっぱり仲間がいるっていうのは

 

「いいもんだな」

 

「?どうかしたの、聖也?」

 

「いや、なにも。さぁ、そろそろ出発しようか!」

 

「あ!待ってよー!」

 

そうして俺達は、今日も今日とて、ダンジョンに潜る。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ダンジョンとは未知に溢れている。

 

それは、神々の予想すら裏切ることもしばしば。

 

そしてそんな中、ある小人族(パルゥム)の少女は、一人歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……冒険者なんて、嫌いです」

 




さて、いかがでしたかね?
最後の最後に、キリトくんは改心してしまいました。
いや、やっぱり主人公級のキリトくんを永久退場させるのって難しいんですよ
なので、生きてはいますが、オラリオからは出ます
果たして、彼はオラリオに帰ってこれるんですかね?(意味深)
次は前書きでも書いた通り、現在のオーディン・ファミリアの団員のステイタスを書かせてもらいます。
あまり時間はかけないつもりですが、遅くなったらすみません(´・ω・)
その次からは第2巻に入っていくつもりです。
いや、1巻の時点で大分オリジナル入ってるけど、一応は原作沿いにするつもりですよ?
というわけで、ほとんどの方は分かってると思いますが(隠す気0)、最後の台詞は誰だったんでしょうね?
はいそこ!分かったからって正体を言わない!

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