戦姫絶唱シンフォギア Fortune Duet   作:ノーザ

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お久しぶりです。
まず言っておきたいことがあります。

二ヶ月投稿しなくてすみませんでした。理由としてはあまり小説に携わることに時間が作れないでいました。
お待たせしてすみませんでした。本編をどうぞ。


あと後書きで発表することがございますのでそちらも。



第11話 吠えよ龍、その血に流れるは蒼炎の如し

暖かな光が差す街の中。

燦々と照らす太陽の光は夏にも関わらず何処か気持ちの良さそうだった。

空がそんな感じなのにもその街には誰もおらず、静寂に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある区域を除いて。

 

 

「うらぁっ!!」

 

 

奏空がアルカ・ノイズに向かって拳打を放った。赤い塵を撒きながら吹き飛ばされる。

現在彼は四方八方から迫るアルカ・ノイズと交戦していた。

だが今の姿はいつもと違う。紺色の追加装甲に包まれ、龍の横顔のヘッドホンを装備し、額にある龍の顔を思わせる装飾をした新たな姿『クローズモジュール』を起動した姿だった。

何より目立つのはコアの下の金色の龍のエンブレムだ。

 

 

囲まれているのにも関わらず、怯む様子は全然無かった。逆に徐々に押していた。

やがて彼は戦闘スタイルを拳から片手剣、ビートクローザーを装備する。

ビートクローザーを用いて人型、武士型などの二足歩行タイプを次々と薙ぎ倒していく。

倒していくうちに上空から飛行型がその身を槍と変え、降下してくる。

それを焦ることなく難なく避け、何処からかロックフルボトルを取り出して鍔の中央部の穴に挿し込むとグリップエンドを2回引っ張った。

 

 

『Special tune!』

 

 

PULL PULL IT(ヒッパ、ヒッパレー)!』

 

 

軽快な待機音が鳴り響くと刀身から金色の鎖が飛び出して蛇のように唸る。

 

 

『MILLION SLASH!』

 

 

「おらぁっ!!」

 

 

剣を振えば忽ち鎖が飛行型を叩き斬り、地面に接触する寸前に曲がって下から貫き、それを繰り返しているうちに上空の有象無象は赤い塵と化し、宙を舞う。

 

 

『はい、OKです。テストお疲れ様でした。』

 

 

何処から声が聞こえてくると、さっきまで市街地だったのが徐々に崩れて無機質な空間となった。

その無機質な空間こそ、S.O.N.G.の本部内にあるシュミレーションルームである。そこで彼は先日手に入れたクローズモジュールの実戦データの収集の為に、仮想ノイズと戦闘していた。

 

 

「クローズモジュール………流石ですね。イグナイトと引けを取らないレベルです。」

 

 

「彼の体に異常は?」

 

 

「バイタル、心拍数、適合係数共に安定しています。」

 

 

「安定………か。」

 

 

シュミレーションルームの管制室で、集めたデータをエルフナインを筆頭に弦十郎、凛音が見ていた。

 

クローズモジュール

 

ガリィとの戦闘時にハザードトリガーとドラゴンフルボトルが融合してグレートドラゴンフルボトルと化し、それをハザードレジスターに装填するとなれる、ハザードモジュールの代わりとなる、彼にとってのイグナイトモジュール。

戦闘力はイグナイトと同等の力を発揮し、比較的に近接特化型となっている。

 

 

「そして何よりも驚いたのが、通常形態でも防護フィールドが施してあることです。僕が取り付けようとしていた時には手の出しようも無かったのがいつの間にか構築していたなんて………。」

 

 

バルムンクは突然変異で生まれたギアである為、回路系統も複雑である。下手に弄ると回路に影響が出る可能性があったので手の施しようが無かった。

しかし、ガリィとの戦闘の後、彼のギアを解析するとなんと防護フィールドを発生する処置が施されいたのだ。

 

何故そうなったのかは、恐らくネビュラガスが変質して彼のギアの構成を書き換えたのだろう。

その為通常形態でも、アルカ・ノイズと戦えるようになった。

 

 

「しかし一体何故………。」

 

 

「それはアガートラームのお陰だと思います。」

 

 

「アガートラームが?」

 

 

「はい。実際にクローズモジュールを見てアガートラームと似てると思いませんでしたか?クローズモジュールを起動してる際に微弱ですが、アガートラームの信号を発していました。

これはマリアさんが暴走した際にハザードトリガーでイグナイトのエネルギーを吸収してそれをガリィにぶつけました。その時に、ハザードトリガーにアガートラームのイグナイトの力が残留していたから、アガートラームに近い力を持つことが出来たと思います。

砕いて言うなら『擬似アガートラーム』と言った方がわかりやすいでしょう。」

 

 

「『擬似アガートラーム』か………。」

 

 

「兎に角マリアさんのお陰で奏空さんに新たな力が得られので自分は何も問題ないと思います。」

 

 

「ふむ、それなら納得いくな。」

 

 

「そう………マリアのお陰ねぇ…………。」

 

 

弦十郎とエルフナインは納得していたが、凛音は何処か複雑な気持ちになるのであった………。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「むむ、むむむむ〜。」

 

 

学校帰りの切歌は自販機と睨めっこしていた。数あるボタンの羅列。種類は様々でメジャーなドリンクや、変わり種なドリンクなどがあった。

 

 

「これデースッ!!」

 

 

決まったのかボタンを押すが、何故か両手でそれぞれ違う箇所を押す。ガコンと飲料落ち、取り出すと案の定出てきたのは今の暑い季節にかけ離れたコーヒーのブラックだった。

 

 

「うへー!ブラックが出ちゃったデス!」

 

 

飲みたかったであろうドリンクじゃなくてゲンナリする。だったら初めからそれを押せば良かった話じゃないのか?すると彼女の持っていたブラックがひんやりした林檎ジュースになっていた。

 

 

「私、ブラックでも大丈夫だから。」

 

 

「ご、ごっつぁんデース………。」

 

 

既に開けていたブラックを口へ運ぼうとする。すると背後から手が現れてブラックからピーチジュースにすり変えられた。

 

 

「おっ、ブラックじゃ〜ん。ラッキー丁度飲みたかったんだ〜。」

 

 

腕の主は奏空だった。調の有無を聞かずにそのままぐいっと口に運んだ。

しかしブラックは砂糖が一切入ってない無糖。大人でも飲む人は数少ない。

それを一気に飲み干すと、予想通り酷く顔が歪む。

 

 

「えっと………大丈夫?」

 

 

心配そうに尋ねると、『待て』というジェスチャーをすると近くの空き缶入れに飲み干したブラック缶を入れる。そしてそのまま口に含んだブラックを全部出した。というか吐いた。

 

 

「わぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

「大丈夫デスか奏空っ!?」

 

 

滅多に出ない調の悲鳴が響き、二人は奏空(負傷者)に駆けつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー不味かった。誰だよブラックなんてものをこの世に生み出した奴………。」

 

 

「無理しなくていいのに………。」

 

 

「だからって捨てるのは勿体ないだろ。」

 

 

「全部出したんデスがそれは………。」

 

 

「エーナンノコカナーシラナイヨー?」

 

 

カタコトで誤魔化してナタデココ入りの飲むヨーグルトを口に含む。

あの後全部吐いた彼は自販機に駆けつけて今も飲んでいる

 

飲むヨーグルトを三つ買って無理矢理味を変えた。しかも普通の缶ジュースサイズの。しかし中にはイチゴポタージュという明らかに美味しくなさそうなものが入っており、そんなことも気付かずにそれを飲んだ直後また振り出しに戻った。

 

 

「悪いな二人とも。嫌なもの見せてしまって………。」

 

 

「…………ねぇ、奏空。」

 

 

「ん?」

 

 

「奏空は先日イグナイトの力を手に入れたんだよね?」

 

 

「え、あ、うん。いや、でもアレってイグナイトって言ってもいいのかな?」

 

 

「兎に角新しい力を手に入れたんだよね?それで思ったんだけど…………どうやったら自分に打ち勝つことが出来るのかな?」

 

 

一瞬だけ硬直し、うーんと唸って考え始める。

調と切歌のギアは既に改修及び、イグナイトの搭載は完了している。

8人の装者の中でまだイグナイトを起動していないのは彼女達だけだった。

自分に打ち勝つ方法。

マリアは『自分らしさを強さに変えて、弱いまま呪いに叛逆した。』と言っていた。

逆に自分は『破壊する力ではなく、明日を創る力にし、戦いを終わらせる者となる。』という想いで変身してみせた。

二人の場合はどういった想いでイグナイトのトリガーとなるのか。

さらに深く考えていると突然着信音が鳴った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

着信者は弦十郎。

内容は共同溝にアルカ・ノイズの反応が感知したということ。

丁度そこから近かった響と合流して迎え撃てと言われたが………。

 

 

「どうなってんだ一体?」

 

 

「やっぱり様子がおかしいデスッ!」

 

共同溝に入ると、そこには待機していたミカとアルカ・ノイズの姿が。

響はすぐさまギアを纏うとミカに突進して拳打を放った。『まだ全部言い終わってないんだゾッ!』とミカの話を遮って攻撃をしたのだ。

更にそこからアルカ・ノイズを倒していくが、途中から歌わなくなり、何かを悔やむように叫んだ。

戦いながら彼女の様子を見ているとあることに気付いた。

 

 

「(涙?)」

 

 

うっすらと彼女の目に溜まっていた雫。

二人にも見えたのかそれを疑問に思っていた。

 

 

「(何でそんな簡単にやり直したいって言えるんだっ!)壊したのはお父さんのくせに!お父さんのくせにっ!」

 

 

「馬鹿っ!共同溝を壊すつもりかっ!?」

 

 

柄にも無く声を荒げて奏空が静止するが、聞く耳持たずでノイズ達を天井に打ち付ける。

 

 

「お父さんのくせにぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 

腕のシリンダーを下げてパイルバンカーの如く撃ち放ち、天井が砕ける。

まるで硝子のように………。それを見た彼女は外から石を投げつけられて家の硝子が割れる映像が脳裏によぎった。

 

 

「(違う………壊したのはきっと………私も同じ…………。)」

 

 

「ションボリだゾッ!!」

 

 

「っ!ガァッ!?」

 

 

一瞬の気の迷いが油断を生むとは正にこのこと。動きが止まった響にミカは右腕から紅いカーボンスティックを射出して彼女の胸に被弾し壁に打ち付けられる。

 

 

「言わんこっちゃないデスッ!」

 

 

アルカ・ノイズを倒していち早く響の元へ駆け付ける切歌。それを見逃さないミカはそのまま熊の手から巨大な炎を噴射する。

響を介抱している切歌は逃げるのが遅れ、炎の塊に呑み込まれ…………。

 

 

「くっ………。うううう……………。」

 

 

………たに見えた。

ヘッドギアを巨大鋸に変えて二人を守るように盾になっていた。

 

 

「大丈夫………?切ちゃん………。」

 

 

苦しそうにこちらを振り向く彼女を見て切歌は何処か思い当たる顔をするとすぐに顔をしかめる。

 

 

「な………わけ………ないデス………。」

 

 

「っ?」

 

 

「大丈夫なわけっ!ないデスッ!!」

 

 

それはクリスのギアが破壊され、救護した際に彼女が言い放った言葉と酷似していた。

 

 

『護る筈の後輩に護られて、大丈夫なわけないだろうっ!』

 

 

実際の今の自分もそうだ。

こんな筈じゃないのに………。そして自然と自身のコアに手を伸ばす。

 

 

「駄目………無茶するのは…………私が足手まといだから?」

 

 

「っ!」

 

 

再び苦しい顔でこちらを向く調。

二人の想いはどんどんすれ違っていく。その隙を逃さないミカは更に火力を上げようとすると急に視界がブレた。

 

 

「ゴオッ!?」

 

 

「俺がいることを忘れるなっ!」

 

 

彼女の顔面目掛けて飛び蹴りを放った奏空だった。

剣を構えて調の前に出る。

 

 

「調、切歌っ!響連れて先に撤退しろっ!!」

 

 

「でもっ!」

 

 

「心配すんなって!俺はつよ「まだ話の途中だって言っているゾッ!!」やばっ!?」

 

 

再び火炎放射を放って来たミカに対して、大剣を盾のように持ち替えて防ぐ。

だが、刀身がすぐに熱くなり、その熱が柄まで達していた。

 

 

「あちちちちちちちちちちちっ!?」

 

 

「奏空っ!」

 

 

(あち)ぃっ!(あち)ぃっ!!あちぃっ!!アチィッ!!」

 

 

若干ふざけているように見えるが、常人なら大火傷しているのだ。ギアを纏っているお陰か、ある程度耐熱性を持っていたのが救いだ。

しかし熱さに耐え切れなくなった彼はジタバタ慌てはためく。その瞬間何かが落ちた音がした。

視線を落とすと、龍のクレストが目印のグレートドラゴンフルボトルが大剣の前に落ちていた。

 

 

「やっべぇっ!!」

 

 

拾おうとするにも火炎放射の所為で前に進めない。次第にボトルが熱で赤くなる。このままでは溶けてしまうのでは?という勢いで。

 

 

「デュフフフッ!このまま焼き殺してやるゾッ!『ミカ……。』っ!」

 

 

『いつまで道草食っているの?早く戻って来なさい。』

 

 

「ちょいと邪魔が入っただけだゾ。」

 

 

ファラからの念話を受信すると放ち続けていた火炎放射を停止させる。

すっかり熱で橙色に染まった大剣を奏空は落とした。

 

 

「運が良かったなジャリンコ供!今回はお預けだケド、次やる時は殺す勢いでやるからナ〜。」

 

 

転移石を熊の手で砕くと錬成陣が現れて、ミカは姿を消した。

全てが終わって全身の力を抜けた。まだ何かあるんじゃないかと消えた場所を凝視しながらボトルを拾おうとする。

 

 

「あっつっ!?」

 

 

しかしボトルの方もまだ橙色に染まっていてとてもじゃないけど触らない状態だった。

暫く放っておこうとしていると、キャップ部分から何かが漏れ出す。

その漏れ出したものは次第に形作り、見たことがあるものに変換する。

 

 

「ゼリー?」

 

 

ゼリー飲料のような形になり、キャップ部分がフルボトルと同じ形の水色で、パッケージ部分には龍の横顔がプリントされていた。

暫く呆気に取られていたが、二課からの通信で我に返り、フルボトル共々謎のゼリーも拾い上げてその場を離れた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

響が何故あんな風になっていたのか後から判明した。

父親と再会したが、その父親は長年響の家族から離れていた。彼女がいじめを受けている間に。

しかも自ら切り捨てたのにまたやり直せないかと向こうから言ってきたそうだ。

その対応に対して響は今更無理だと豪語したとのこと。

 

 

父親。

それはかつて彼にもいた者だ。顔は殆ど覚えていないけど優しく接してくれたことは覚えている。

そんなの父親じゃないと言いたいが、じゃあ自身の父親はどんな人物かと聞かれたら答えが揃えていない。

きっと優しかったとかそういう曖昧な答えでは説得力に欠ける。

それも問題だが、他にも目の前に別の問題が生じていた。

 

 

「ふんっ!」

 

 

「つーん。」

 

 

「…………。」

 

切歌と調が絶賛喧嘩中なのだ。

何故こうなっているかというと戦闘中でちょっとした揉め事が起こってそこで口論になり、治療中の時も互いの顔を合わさなかったそうな。

現在は気晴らしに出店がある神社に向かっていた。だがここに着くまで二人ともこんな感じだ。

 

 

「お前らいい加減仲直りしろよ………。」

 

 

「奏空には関係ないデスッ!」

 

 

「これは私達の問題。」

 

 

「…………。」

 

 

どうしたものかと頭を抱えてしまう。

もうすぐで目的の神社に着こうとしたその時、一際大きい爆発音が近くに響いた。

すぐに駆けつけるとやはりと言っていいか、鳥居の上にニヒルな笑いを浮かべたミカがいた。

 

 

「足手まといと軽く見てるのなら!」

 

 

顔の絆創膏をペリペリ剥がして各自、聖詠を口ずさんだ。

 

 

「♪Various shul shagana tron……」

 

 

「♪Zeios igalima raizen tron……」

 

 

「♪ close core balmunk tron……」

 

三人はギアを纏い、調が先手を打った。

 

 

『α式・百輪廻』

 

無数の丸鋸がミカに降り注ぐ。だがカーボンスティックを取り出して盾代わりに防ぐと一気に三人に距離を詰めた。

奏空目掛けて大きくカーボンスティックを振り下ろすが、大剣で受け止めた。

その隙に調と切歌は散開。調が回転するとスカートが鋸となり、ミカに刃が迫る。

 

 

『Δ式・艶殺アクセル』

 

 

しかしカーボンであっさり跳ね返され、追撃する切歌も弾き出される。

 

 

「これぽっちィ?これじゃギアを強化する前の方がマシだったゾ。」

 

 

「そんなことっ!あるもんかデスッ!」

 

「駄目っ!切ちゃんっ!!」

 

 

「無闇に突っ込むなっ!」

 

肩にカーボンを乗せて気怠けに溢すミカ。その挑発に怒りを覚えた切歌が鎌の刃を振り飛ばす『切・呪リeッTぉ』を放つ。鎌は被弾して爆煙を上げた。

 

 

「どんなもんデスッ!」

 

 

「こんなもんだゾッ!」

 

しかし爆煙の中から出てきたのは幾つもの大型カーボンスティックを宙に浮かせて腕を掲げているミカが現れる。熊の手を振り下ろすとそれに倣ってカーボンも地上に降下する。切歌は何とか避けようとするが、カーボンは彼女を囲むように地面に刺さって逃げ場が無くなる。

そして眼前には新たなカーボンが向かって来ている。

 

 

「躱せないのなら………受け止めるだけデスッ!!」

 

アームドギアを構えて迎え撃とうとするが、目の前に調が巨大鋸を展開してカーボンを防いだ。

ホッとした奏空だが、またしてもトラブルが生まれる。

 

 

「なんで、後先考えずに庇うデスかッ!」

 

 

「やっぱり………私が足手まといと………。」

 

 

再び口論が始まるのかと思ったが、切歌の発言で戸惑う。

 

 

「違うデスッ!!それは………調が大好きだからデスッ!!」

 

 

「えっ………?」

 

 

「大好きな調だから………傷だらけになるのが許せなかったんデスッ!!」

 

 

「私………が………?」

 

 

「私がそう思えるのは、あの時調に庇って貰ったからデスッ!皆が私達を怒るのは、私達を大切に思ってくれているからなんデスッ!」

 

 

「私達を………大切に思ってくれている………優しい人達が………。」

 

 

応戦してミカに挑んでいた切歌だが、攻撃に耐え切れずに吹き飛ばされてしまう。

 

 

「何となくで勝てるわけないゾォッ!!」

 

 

ワサワサと熊の手を動かせて挑発するミカ。だが、今の二人は何処か落ち着いていた。

 

 

「マムが残してくれたこの世界で、カッコ悪いまま終わりたくないっ!」

 

 

彼の脳裏に浮かんだのは戦闘後の響の顔。いつも明るい彼女とはかけ離れていた悲しい顔をしていた。

 

 

『無責任でカッコ悪かった………。』

 

 

大剣を握る力が増す。

彼女にはあんな顔二度とさせたくない。何かと救われたあの笑顔。

凛音(彼女)に近づく勇気をくれたあの笑顔。もう壊させやしない。

 

 

「だったら………カッコよくなるしかないデス………。」

 

 

「自分がしたことに向き合う強さを!」

 

 

二人はコアを握り締めて声高らかに上げる。

 

 

「「イグナイトモジュールッ!!抜剣っ!!(デスッ!)」」

 

『Danesleyf』

 

両端を押し込むと無機質な電子音が鳴り、宙に放ると変形して刺々しくなり、二人の胸に突き刺さった。体が黒に侵食され、二人の意識を呑み込もうとする。

 

 

「ごめんね………切ちゃん………。」

 

 

「いいデスよ……それよりも………皆に………。」

 

 

「………そうだ。皆に………謝らないと………その為に……… 強くなるんだっ!!

 

 

瞬間二人は黒を纏った。

調はツインテール型のヘッドギアからポニーテール型になり、小さな角が生えているように見え、切歌もヘッドギアが大型化し、肩の装甲も刺々しくなる。側から見たら悪魔を彷彿させる見た目となった。

 

 

『Just Loving X-Edge(IGNITED Arrangement)』

 

 

新たな形状になった獲物で二人はミカに仕掛ける。イグナイトを起動出来たことにより、更に気持ちが高まった彼女はこれまでの比じゃない程の猛威を振るう。

大型の鋸ヨーヨーを鷲掴みにして調を地に叩き付けられる。

 

 

「そんなんじゃ最強のワタシには響かないゾ!もっと強く激しく歌うんだゾッ!!」

 

 

両の掌からカーボンロッドを機関銃の如く乱射する。調の前に切歌が鎌を回転させて防ぐが、その隙に接近したミカに壁に叩き付けられる。

そこから追い討ちの如くカーボンロッドが飛び交い、彼女の退路を無くした。

そして目の前にはニヒルに笑って掌の噴射口から光りが………。

 

 

「向き合うんだ………でないと乗り越えられないっ!!」

 

 

ヘッドギアが3分割されて通常よりも多くの鋸を射出される。だが、ミカのロール髪が解かれて尻尾のようになぎ払う。二人のイグナイト相手でも全く怯まないミカに脅威を覚えた。

再びロール髪になると跳躍して上空に止まると円を描くように指を動かす。

すると円を描いた箇所からカーボンの柱が飛来して来た。三人は降下するカーボンを避けながら駆け出す。

 

 

「逃げててばっかりじゃジリ貧だゾォォォッ!!」

 

 

先程よりも巨大なカーボンロッドに乗って背を向けている切歌目掛けて迫った。

 

 

「知っているデスッ!!だからっ!!!」

 

 

鎌を使って地面に刺さったカーボンに引っ掛け、一周してミカを蹴り飛ばす。

 

 

「ゾなもしっ!?」

 

 

肩の装甲からワイヤーを射出する。ワイヤーはミカを捕らえず、禁月輪で向かって来ている調のアームドギアに接続。残ったワイヤーはミカを縛って爪が地面に刺さって完全に逃げなくなった。

 

 

「足りない出力を掛け合わせテェッ!?!?」

 

 

『禁殺邪輪 Zあ破刃エクLィプssSS』

 

 

挟み撃ちの形で二つの刃がミカを捕らえる。切歌は横、調は縦にそれぞれの刃を用いて彼女を斬滅しようとしていた。完全に逃げ場を失ったミカは何も出来まいと奏空は思っていると彼女の口角が釣り上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、突如としてミカが光を放った。

それは爆発にも近い光だった。倒したのかと思ったが、二人の悲鳴が耳に入ってそれは無くなった。

爆心地にはミカがいた。確かにミカだった。しかし、衣服が無くなって自身が造られた存在と主張するような機械仕掛けの身体。

ロール髪が解かれて紅いロングヘアを靡かせ、身体が熱を帯びるかの如く照らしていた。

 

 

「セイィィ!!正ィィィィ!!!星ィィィィィィィィィィ!!!!!

 

 

まだ強くなるって言うのか!?

ただでさえ素の性能がとんでもないのに更にそれを上げることが奴に出来るのか。

これは所謂、擬似イグナイト…………。

目に十字の星を光らせると、一瞬にして切歌の懐に転移した。

 

 

「ゴッ!?」

 

 

ミシミシと腹部に鋭い蹴りを入れられ、カーボンの柱に叩き付けられた。

彼女の元に駆け付けようとする調だが、いつの間にか接近されていたミカに回し蹴りで切歌同様カーボンの柱に叩き付けられる。

小さな体にとてつもない衝撃が走る。思わず胃の中の物が出そうになる勢いだった。

 

 

「どうダ?ワタシのチカラは?正直侮っていたダロ?イグナイトになれば倒せると思ったら大間違いだゾ。なんたってワタシは最強の自動人形(オート・スコアラー)だから

ナァ!!」

 

 

手にした希望が砕かれる音がした。

ようやく手にした力で、みんなと同じ位置に着けたと思ったらそれを嘲笑うかのように敵は軽々と越える。

 

 

 

 

 

 

………私は一体何をしている。視界の奥には柱に打ち伏した大切な人が倒れている。

早く助けなきゃ………。でないと殺されてしまう。

………いや………駄目だ。アイツは先に私を殺すつもりだ………。

ホラ………もうそこまで迫ってきている………。

あんなに息巻いて言っていたのに………。あの時と同じ………。

結局自分は何も出来ない子供なの?

 

無垢な少女の瞳から一筋の涙が地に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだ。まだ泣くには早すぎる。」

 

 

聴き慣れた声が聞こえた。

見上げると何度も見た黒い背中が。ずっと見てきた筈なのに今じゃ大きく感じてしまう背だった。

 

 

「奏空………。」

 

 

「カッコ良くなる………ね。それはヒーローになるってことだよな。………ヒーローってのは人々を守るだけじゃない………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんなピンチでも常にぶち壊して行くもの………。こんな言葉を知っているか?Plus Ultra(更に、向こうへ)ってな!!」

 

 

Plus Ultra(更に、向こうへ)…………。」

 

 

だが、誰もが最初からピンチを壊せるものではない。ピンチを壊し、さらにその先の向こうへ行けるものこそがヒーローなのだ。

それに対してミカはくだらないと言わんばかりに鼻で笑う。

 

 

「バカバカシィ!ナニがヒーローだァッ!?ナニがプルスウルトラダァッ!?そんなの世迷い言に過ぎナイッ!!第一何処にそのヒーローはいるんダァッ!?!?」

 

 

尚も身体を照らして手をワシャワシャして馬鹿にする彼女に、彼は不敵に笑う。

 

 

「いるさ………ここに………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒーローは俺だっ!!」

 

 

己がヒーローであることを示すように、ドンッと胸を叩いた。

 

 

「戯言ヲォッ!とっとと死ネッ!!」

 

 

両の掌から炎ではなく、紅いエネルギー弾を奏空目掛けて放つ。しかし彼は動かない。

それはただの見栄を張っているのか、背後に調がいるからか。

 

 

「駄目っ、奏空逃げてっ!!」

 

 

「……………。」

 

 

それでも彼は何も言わず立っていた。

その口角が釣り上がっていたのが薄らと見えた。

 

 

「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

そして紅いエネルギー弾が彼に被弾して爆煙を上げた。その光景を目の当たりにしていたミカは一人笑いこげる。

 

 

「ニーヘッヘッヘッヘッヘッヘッヘッ!!!バカなヤツッ!!最後まで抵抗せずにすんなり攻撃を受けやがっタッ!!さーて、残るはガキンチョの二人だけだしこんなのラクショ………。」

 

 

切歌の方へ向こうとすると奇妙な音が耳に入った。ゴボゴボと液体が注がれるような音。

それが更に大きくなっていく。

 

 

『潰レル!流レル!溢レ出ル!』

 

 

厳つい電子音が鳴り響き、煙が晴れて行く。そこに立っていたのは異形だった。

 

 

『Dragon in CROSS-Z CHARGE!BLAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

 

腕に白銀の装甲。肩はゼリー飲料のパックを模し、そこに龍の横顔が描かれた装甲。更に胸部には同じく龍の横顔が形作られた水色のクリアパーツ。

そして一番の特徴は遠くから見ると龍の顔のような仮面に包まれていた。

胸部装甲と同じ水色で、その奥には黄色い双眼が覗かせていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「奏………空………?」

 

 

あまりにも変わり果てた姿に困惑する調。すると次の瞬間………。

 

 

「ウガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

獣如く天に向かって雄叫びを上げた。

 

 

BGM『Beast out』

 

 

黄色の双眼がミカを捉え、姿勢を低く構えて一気に飛び掛かった。

しかし単調な動きな為、彼女は難なく避ける。彼の勢いは止まらず、刺さっていたカーボンの柱を殴り付けると殴られた箇所から亀裂が走り、粉々に砕けた。

このとてつもない力の奔流。肌で感じたことがある。

 

 

「暴走………?」

 

 

だとしたらそれしかない。

あんな獣混じりな雄叫びが暴走じゃなかったら一体何だろうか。兎に角今の彼は理性を完全に失っていた。

今度は体を捻って刺さっている柱に飛び跳ねてミカを囲む。何処から来てもおかしくない状態だが、彼女は難なく上空に跳躍して攻撃を避ける。

 

 

「残念ダッタナッ!!いくら新しい力を持ったとしても暴走したら意味がナイッ!!」

 

 

着地して一気に飛び掛かって熊の手が彼の顔に降りかかる。調が叫ぶが、今の彼には聞こえてないだろう。

鋭利な爪が彼の顔を引き裂いて…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰がいつ暴走したって?」

 

 

「ナッ!?」

 

 

仮面の下から声がすると、彼女の腕を寸前で掴んで止めた。よく見ると左腕のレジスターには四角いゼリー飲料のパックが装填されていた。

そして流れるようにゼリーパックを外して金色のボトルを装填する。

 

 

『GREAT CROSS-Z DRAGON!!』

 

 

「キャストオフ。」

 

 

音声は流れず、インストの変身音が流れると、背中にクローズモジュールのパーツが現れ、ゼリー部分の装甲や、肩と腕の装甲が飛び散るように外れてクローズモジュールの姿になった。

掴んだ腕を離さずにガラ空きになった彼女の腹部に鋭い左を入れて、吹っ飛ばした。

飛んでいる間に熊の手を地面に突き刺すことにより、数メートルのところで止まった。

 

 

「な、なんでダ………お前のアレは明らかに暴走していたハズ………。」

 

 

「馬鹿か。そう簡単に暴走すると思ってるのか。アレはお前が油断したところでカウンターを決める為の演技だったのさ。」

 

 

取り換える際に外したゼリーパックを見せつける。それは数時間前にミカの火炎放射で熱したグレートドラゴンフルボトルから出て来た成分が変異して出来たゼリーパックだ。

 

 

「コイツをレジスターにセットした場合、ゼリー状のものが顔、胴に纏い、水色の装甲と化す。装甲はあらゆる衝撃を吸収し、その衝撃をギアのエネルギーに変換させて貯蔵させる。

そしてグレートドラゴンフルボトルを装填することでそのエネルギーがクローズモジュールの力となる。さっきなった形態は名付けるなら『クローズチャージ』ってとこか?」

 

 

「チャージだが、何だが知らナイが、例えそんな力を持ったとしてもこのワタシを倒すことなんてデキナイゾ!!」

 

 

「いいや出来るね。」

 

 

熊の手を広げて彼目掛けて駆け出すが、全く動じずに左の拳を放つ。

腹部に衝突する瞬間、左腕にゲル状の物が纏わり付き、とてつもない衝撃波を放ってミカを吹っ飛ばした。

ゲル状の物は形を変えて左腕に二つのスロットがあるパイルバンカーのようなものが握られていた。

 

 

『TWIN BREAKER!』

 

 

『ツインブレイカー』

片手式簡易型のパイルバンカーであり、クローズチャージモード(後述チャージモード)の貯蔵したエネルギーで形成出来る専用武器。アームドギアに類する。然程大きく無いので戦闘に支障は出ない。

但し、チャージモードの後に使用可能なのでクローズモジュールの最初からは使えない。

 

 

「マダそんな武器を隠し持って………。」

 

 

「違う………()()()()()。」

 

 

「創ったァ?」

 

 

「そうだ…………よく聞け人形。俺達人間は最初から強いわけじゃない。だが、お前達と違うことが一つある!」

 

 

それは積み重ねが出来ること。

 

 

汗を流し、血を吐き、その鍛練で結果を出し、さらに上に行くことが出来る。

そして自身のことを一番把握することが出来ること。

 

 

「お前らみたいに燃料さえ有れば動く機械じゃない………。絶望に抗う力………それが人間(ヒト)の力だっ!!」

 

 

「人間の……力……。」

 

 

倒れている調に手を伸ばす。その手が今はとても大きく感じた。

 

 

「行こう調。俺達で奴を倒すんだ。俺達の手で………この戦いを終わらせるんだっ!ほら、切歌も起きろ!そんなんでやられるタマじゃないだろ!」

 

 

「えへへ、バレてたデスか〜。」

 

ひょいっと立ち上がって彼の隣に並び立つ。 

そうだ………たとえ相手が強くなったとしても、それでも挫けずに立ち向かうだけのこと!

 

 

「奏空!」

 

 

「行くぞ調!」

 

 

「うん!」

 

 

調も隣に並び立ち、新たな力を得た三人の装者が揃う。

対するミカは三日月のように釣り上げる。

 

 

「笑わせンじゃネェ!ワッパ供ォォォォォォォォ!!!」

 

 

最早口調も変わり出した彼女は掌からカーボンロッドを機関銃の如く乱射する。

三人はそのままカーボンを掻い潜るように駆け出した。

 

 

挿入歌『Burning My Soul 』

 

 

♪なんのために奪う?なんのための未来?

なんのために傷つけ、傷ついて生きてゆくのかな?♪

 

奏空はツインブレイカーを用いてミカにラッシュを叩き込む。削るような音を立て、火花が散る。

しかし彼女はまるで効いていないかのように払い除けた。

 

 

「チマチマ鬱陶シイゾォォッ!!」

 

 

またしてもカーボンロッドを乱射するミカ。彼はツインブレイカーの白い銃身を前に持っていく。

 

 

『BEAM MODO!!』

 

 

ばら撒くかのように弾丸を発射させてカーボンを打ち砕いた。

 

 

「これだけじゃねぇぜ!」

 

空いた掌に光が集まると、形作って見たことのある形状になる。

彼の持つボトルと似たようなグレーのボトルだ。容器の中央には機関銃のようなデザインが施されていた。それをツインブレイカーに差し込む。

 

 

『Single!』

 

 

待機音が鳴ると同時に灰色のエネルギーが二つの銃身に集まる。それをミカに向けて構え、トリガーを押す。

 

 

『Single Finish!』

 

 

勢いよく突き出すと先程のエネルギー弾が機関銃の如く放たれる。

しかも発射される瞬間、空中で弾丸の形となっていた。すぐにカーボンロッドを回して防ごうとするた虚しくすぐに割れて熊の手で防ぐことになる。

 

 

「こういうことも出来る!」

 

 

再び掌を広げると、今度は紫の蝙蝠と、水色のヘリコプターのフルボトルを作り出した。

グレートクローズボトルの下部にバットフルボトルを差し込む。

 

『コウモリ!Creation!!』

 

そして外してヘリコプターフルボトルを差し込んだ。

 

 

『ヘリコプター!Creation!!』

 

 

両手にそれぞれ紫と水色のエネルギー体が集まり、それを切歌と調目掛けて放った。

紫のエネルギー体が切歌に接触すると、彼女の背中から蝙蝠を模したゲル状の羽が生え、調には水色のエネルギー体が接触するとゲル状の飛行ユニットが背中に現れ、二つの水色のプロペラが現れる。

 

 

「こ、コレハッ!?」

 

 

「所謂、能力付与ってヤツだ。俺は一人だけで戦う力を持ってるんじゃねぇ!!これが創る力ってやつよぉっ!!」

 

 

飛行能力を手に入れた切歌は上空から斬り裂き、調は丸鋸と高速回転するプロペラを同時に投擲する。

まともに喰らって無防備な彼女に奏空は更に追い討ちを掛ける。

 

 

「こっちを見ろぉっ!!」

 

 

『ベアー!Creation!!』

 

新たに生み出した黄色のクマフルボトルによって両手にゲル状の巨大な熊の手が現れる。

そのまま蚊を潰すが如く、ミカを熊の手で包んだ。被弾した瞬間、熊の手が弾け、彼女自身も弾け飛んだ。

 

 

「キサマァァァァァッ!!」

 

すぐさま態勢を整えて鯖折りにせんと言わんばかりに彼に襲い掛かる。

それに対して冷静に新たなボトルを作り出した。

 

 

『発動機!Creation!!』

 

 

赤いオーラを纏ってミカと取っ組み合いになる。最初こそ互角に渡り合っていたが、赤いオーラが更に大きくなって次第に彼が押し始め、遂には彼女手首をへし折った。

 

 

「ギニャァァァァァァァァァァァァァァァッ!?!??」

 

 

感じたこともない激痛に思わず声を上げ、彼女の腹部に鋭い蹴りを入れて再び吹き飛ばした。

手首があらぬ方向に曲がって使い物にならなくなった彼女だが、鬼の形相のように睨み付ける。

 

 

『グガァァァァァァァァァァッ!!!!』

 

 

遂には獣のように咆哮を上げて三人に駆け出した。

それでも彼はまた新たなボトルを作り出し、元々あったロックフルボトルと共に、ツインブレイカーに差し込んだ。

 

 

『Twin!!』

 

 

待機音が流れ始め、二つの銃身にそれぞれ金と桃色のエネルギーが集まる。

 

 

『Twin Finish!!』

 

 

トリガーを押すと銃身から金の鎖と桃色のオーラを纏ったイバラが放たれる。

それらはミカを拘束するように身体に巻き付き、先端が地面に刺さって先程と同じようになる。

 

 

「次こそ決めるぞ調、切歌っ!!」

 

 

「ええっ!」

 

 

「合点承知デスッ!!」

 

 

二人は跳躍すると、切歌の右足の先端に刃が生え、調の左足の先端に丸鋸が生える。

奏空はドラゴンゼリーを下部へ取り付ける。

 

 

『Dragon Jelly!』

 

 

電子音と共に腕の装甲がクローズチャージと変換される。

 

 

「終わりだっ、鉄屑っ!!」

 

 

スイッチを押すとどういう原理か、ゼリーパックが横から圧力が掛かったようにクシャッと潰れる。

 

 

壊れよ、鉄屑(Scrap Breake)!!』

 

 

勇ましい電子音が鳴り響くと、水色のオーラを纏い、跳躍すると腕のピースパックから水色のゲル状のような物が噴射され、それが推進力となって一直線に降下した。

切歌と調も同時に降下し、緑、桃、水色の三つの矢となってミカに向かって落雷する。

 

 

『Trident Spear』

 

 

眼前まで迫った瞬間、彼女は何処か嬉しそうに釣り上げ、小さな胴体に大きな空洞が空いて爆発四散した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ミカの撃退後、S.O.N.G.が駆け付けて後処理をしたが、その時にクリスと弦十郎にうんと叱られた。応援を待たずにそのまま戦闘を続行したからだ。

奏空に関しては再検査の必要があるのでそのまま本部に向かうよう指示され、三人は帰路についた。

 

 

「はははー。怒られちゃったデスね………。」

 

 

「…………。」

 

 

「奏空?」

 

先程から顔を俯かせている奏空は、急に歩む足を止めて二人に向き変えると深々と頭を下げた。

 

 

「ごめんっ!!」

 

 

突然の謝罪に困惑する二人だが、彼は淡々と続ける。

 

 

「二人の気持ちに気付けなくて………。俺、ずっと皆んなを守ろうって思っていたんだけど……二人は強くなりたいって思っていたのに………本当にごめんっ!!」

 

 

再び頭を下げて謝る奏空。そんな彼に調はそっと近づいて耳元で囁く。

 

 

「奏空………顔を上げて。」

 

 

「っ?しら…………べ?」

 

 

言われた通りに上げた直後、小さな細い腕が彼の身体にキュッと巻き付いた。

瞬間的に硬直してしまうが、調は彼の胸に顔を沈めた。

 

 

「大丈夫だよ………奏空が謝ることなんて何一つも無い。奏空はただ、周りのことを守ろうということで頭がいっぱいになっていただけ。私は奏空のことも守ろうって言っていたの。だからね、約束して…………これからは一緒に戦おうって。」

 

 

「…………うん。」

 

 

頷くとそっと抱き締めた。

すると見兼ねた切歌が奏空の後ろから抱きついて来た。

 

 

「ちょ、切歌っ!?」

 

 

「調だけズルいデスッ!!私も抱き締めるデスッ!!」

 

 

「もう………切ちゃんってば………。」

 

誰が言ったかきりしらサンド。

奏空は暫く二人にされるがままになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また逝ったか………。ボトルの生成か………ますます楽しみだな。」

 

 

影で男が不気味に笑うのを知らずに…………。

 





ご覧になっていただきありがとうございました。
そして発表することがございまして、もう一つ新シリーズの小説を出そうと思っています。
勿論シンフォギアも出します。
二ヶ月間待って頂いたのにこんなことを言って申し訳ございません。
新シリーズと次回も楽しみに待って下さい。

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