オレは今。
何故だか長い坂道を歩いている。
周りは森で、辺りに家などはない。
「どうしてこうなった」
「俺が、……きき、たいです、よ。はァ、はァ」
隣で大荷物を抱えたイッセーが息切れしながら歩いていた。ちなみにオレは全てイッセーに持たしてある、最初はコイツが調子に乗ってオレの分まで運ぶと言ったからだ。
と、まぁその話は置いてといて。
なんでこんな森の中を進んでいるのかを話そうと思う。
1
ライザーは去り際にこう言った。
「そうだな、十日間、猶予をやろう。そしてその日が俺とお前達の決闘の日だ、せいぜい頑張るんだな」
余裕そうな顔で出ていった。
うーん、これは負けの予感。
「んで?どうするんだグレモリー、ハッキリ言うと今の戦力じゃ勝てないと思うけど」
「バカね、そのための十日よ」
バカですか。
もしかして修行とかすんの?
「山篭りよ!」
「絶対、ドラグ・ソボール読んだろ」
こうしてグレモリーの一言によって、オレ達はグレモリーが持つ別荘があるという森へと修行しにやって来たのだ。
2
しっかし、十日でどうにかなるもんかね。
イッセーはまだ伸び代がある。
木場も塔城も。
しかし相手はライザー。
聞いた所によるとフェニックス、つまりは不死鳥の名を冠する悪魔らしい。
「そんな奴にたった十日で勝てんのかね」
「何弱気になってんすか!」
「お前はいつも熱いな」
まぁ、イッセーの言いたいこともわかる。
グレモリーの事だったらなんでもやりそうだし。
「みんな、着いたわよ」
先頭のグレモリーが告げる。
ここで坂道は終了。
イッセーは完全に息切れ、その場に倒れ込む。
「や、と着い、た」
「何やってるのイッセー、まだまだこれからよ?」
「え?」
イッセーは予想外な顔をする。
うん、せめてアイツらと互角に戦える程の戦力が欲しい、じゃないと確実に負けるからな。
その為の時間が今はすごく惜しいし。
3
結果的に言えばイッセーはダメダメだった。
剣術は木場との練習は早々に退場。
これは塔城との体術の練習も同じ。
そして朱乃による魔力講座を受けるも、生成できる魔力は米粒くらいのモノだった。
「24ッ……25ッ……26ッ……ッ!」
今は筋トレで精一杯てか。
ダメだな、このままじゃ確実に負ける。
というかグレモリー、イッセーは牛じゃないんだから乗るなよ。
「グレモリー、イッセーの上に乗るのは流石にやりすぎだろ、お前重そうだし」
「この間から思ってたけど、私は貴方に何かしたの?」
何もされてないぞ。
ただお前をいじるのが面白いだけだ。
4
そして、その日の夜。
朱乃の手作りカレーを食し、プチ反省会。
やはり、イッセーをどうするかで持ちきりだった。
「あと九日、割と少ない期間だからな、思いつきでもいいから、なんでもしてみたらどうだ?」
「思いつき、ですか」
イッセーは腕を組んで悩む。
すると、グレモリーら女子達は一斉に立ち上がった。
「そろそろお風呂に入るわ」
「お、おお、お風呂!!」
「もう、お前に助言するのはやめるよ」
呆れる。
とことん呆れる。
グレモリーは悪戯な笑みを浮かべた。
「ふふ、イッセーも一緒に入りたいの?」
「も、もちろんです!!」
「グレモリー、……ビッチみたいだからやめとけ」
「う、うっさいわね!」
グレモリーは顔を赤くしながら言った。
その後に、朱乃も同じように俺を誘い始めた。
「ふふ、どうですか?」
「却下、そして俺を誘ってしまったら、木場が空気になるぞ、可哀想だろ」
「なんでそこで僕なんですか」
木場は苦笑しながら答えた。
するとグレモリーはまたも、悪戯な笑みを浮かべてイッセーに問うた。
「そうねぇ、小猫が良いって言ったら一緒に入ってあげるわ、どう?」
「嫌です」
即答、うん、これが普通の対応だ。
そしてイッセーは泣きながら床に膝を着く。
その姿を思いっきりスルーしてグレモリー達は浴場へと行ってしまった。
「イッセーくん、覗かないでね」
ここで木場が爆弾発言。
やめて差し上げろ、イッセーが死ぬぞ。
「死に腐りがれ!!!」
イッセーは部屋を飛び出して行った。
木場、お前は悪魔か。
いや、悪魔だ。
まぁ、顔のビジュアル的にそっち系も行ける口なのかもしれない。
「お前なら一生ネットの晒し者になっても、強く生きていそうだな」
「どいうことですか?」
分からないならいいや。
オレは水を飲みに台所へと向かった。