女だけどアムロ(女)になったから頑張って一年戦争する   作:めんつる
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敵の補給艦を叩いてシャアを引っ張り回せ!

『うぉぁああああああ!!!???』

「ちょっ!カイさん!?」

『うわぁああぁあぁぁああ!?ハヤト!どけ!どけぇええー!!!』

 

 ガンキャノンが体勢を思い切り崩しながら僕に向かって飛んでくる。

 アムロの父親の基本操縦シミュレーションを受けたとは言え、僕たちは不慣れなパイロットだ。

 シミュレーションの射出と実際の射出にこれほどの違いがあるとは思わなかった。

 

『カイ!操縦桿を後ろに引け!』

『んぬっっ!!』

「わぁああーー!!!」

 

 パイロット候補生のジョブさんの指示も虚しく、僕とカイさんは思い切り衝突した。

 コクピットのモニターに一瞬砂嵐が映り、体勢が崩れる。

 数秒の浮遊感の後、僕とカイさんのガンキャノンは隕石の地表に倒れ伏す。

 

「うっ……!か、カイさん、何やってんです!」

『ばかやろぅ!!お前がさっさとどかねぇから!』

『お前たち!しっかりしろ!早く起き上がれ!』

 

 接触回線のせいで、カイさんの怒鳴り声がより鮮明に聞こえる。

 ミノフスキー粒子というものがが非常に濃いせいで、

 どの機体に誰が乗っているのかわからないほど通信状態が悪いのだ。

 

「……アムロは?」

『知らねぇよ、先に行ったんじゃねぇの!?あのお姫様は!!』

「そんなに怒らなくても……」

『っせぇ!…………起きろって……のぉ!』

「このモビルスーツ……重いですね……!」

 

 僕とカイさんのガンキャノンがゆるゆると起き上がる。

 宇宙空間の低重力のせいでただ起き上がるだけでも一苦労だ。

 こんな中で、しかも女の子のアムロは戦っていたのか。

 

『ふたりとも起きたか!?アムロはここから数km進んだ場所で待機させている、急ぐぞ!』

『へいへい、パイロット候補生様のご指示のとおりに』

「カイさん、いちいち文句を言わないで!行きますよ!」

 

 ジョブさんのモニター越しの顔がカイさんの軽口一つに付き1段階ずつ険しくなっていく。

 この顔が般若の形相になるまであと何段階あるのだろう?

 そう考えながら手のビームライフルを両手で持ち、訓練した通りの飛行を行う。

 敵の監視内で土煙を上げると発見される恐れがある。相手は戦艦だ。目視員に発見されると一気に攻撃体型に移行するだろう。

 

 そうならないように推進剤を節約し、慣性で飛行する。

 

『ジョブ・ジョンさんよ』

『……何だ?』

『アムロはどうだい?名前は男らしいけどよ』

『……はぁ?』

「カイさんっ!」

 

 またしても軽口だ。2年留年して17歳。もはや青年に片足を突っ込んでいるとは思えない男だ。

 素行不良で留年したと聞くが、本当にそうだろうか、この緊張感のなさは学も……。

 

『何だいハヤト、お前はもう脈なしだろ?』

「それはカイさんが無理やり!」

『っ…いい加減にしろ!!ここは戦場だ!与太話は帰ってからやれ!!』

 

 ……こんな男を戦場に出してよかったのだろうか?

 そんな思考が頭をよぎる。

 カイさんはヘコっと頭を下げて通信を切る。

 

『全く……!』

「すみません……」

『いや、気にするな、そろそろアムロとの合流地点だ』

 

 ジョブさんがそう言うと、隕石のクレーターの影に片膝で立っているガンダム。

 そのガンダムの手元には、ふわふわと宇宙遊泳を楽しんでいる白いノーマルスーツを着た女の子が居た。

 アムロだ。いつも暗い顔をしているあのアムロとは違い、純粋な顔をしている。

 

 いつも見ている、というわけではないが、ザクがサイド7を襲ってからアムロの様子が変だ。

 口数が少なく、世話焼きのフラウ・ボゥが人前でアムロを怒鳴りつけるほど無愛想な子だったのに。

 父親の前では屈託のない笑顔を見せ、まるで宇宙を知らないような反応も見えた。

 

「……」

『おーおー、まるで人魚姫だ』

『あの子……宇宙は初めてなのか?』

 

 アースノイドとは言え、アムロもサイド育ち。宇宙を泳ぐなんて珍しいことじゃない。

 しかしアムロは……。

 

「カイさん……アムロ、やっぱりおかしいですよ」

『……あん?』

「だってカイさんも知ってるでしょ?アムロの宇宙嫌い」

『……あー……そういや……』

 

 アムロの女の子友達は宇宙船技師の娘だ。

 機械好きのアムロはその仕事の見学に連れて行ってもらったが、

 その時借りたノーマルスーツの酸素発生器が故障してた事があった。

 あの事件は学校でも大騒ぎになり、あれ以降アムロは宇宙船にすら嫌悪感を感じていた。

 

「……吹っ切れたのかな?」

『そうかもよ?』

 

 そんなアムロが宇宙を泳いで星を眺めている。

 確かに地球で見る星よりも綺麗だけど……しかし……。

 

「……」

『アムロ、合流した。作戦行動開始だ』

『あ、はい!ガンダム起動します!』

『宇宙遊泳はどうだったよ?アムロっちゃん』

『え……?あぁ、やっぱり地球とは違います。何だろ……幻想的です』

 

 どこか変だ……。

 

 

 ★

 

 

「っと……よし」

 

 コクピットを閉め、ガンダムを起動させてバイザーを上げる。

 はじめての宇宙遊泳だったけど、生まれて初めての感覚は言葉では言い表せないものだった。

 宇宙では星が星の形をしていない。地球で見る星とはぜんぜん違うものだ。

 太陽の反射で光る星もあれば、隕石の形をして光らない星もある。

 そして、その光っている星も瞬いていないのだ。しっかりと形を保って光っている。

 

「すごかったなぁ……」

 

 夜空の中に私がいる。それを感じた。

 そして今、その夜空を戦いで汚す。

 

『アムロ、俺達はこの場で待機して補給艦を狙う』

「はい。私はこの、地図の所に行けばいいんですよね?」

『そうだ。急いでな、俺達はリュウさんとダニエルのガンタンクの到着と同時に攻撃だ』

 

 コクピットの左モニターにタイムリミットが表示される。

 そして正面モニターに進行コースが投影された。このマークに沿って進めばいいわけだ。

 私はガンダムの操縦桿を押し、ペダルを踏む。

 お尻の下からダゥーン……と低い音が響き、ガンダムが宇宙を進む。

 

『お前は到着次第指示を待たずに攻撃しろ!いいな!』

「はい!」

 

 ガンダムが赤い機体、ガンキャノンから離れる。すると間もなくして無線が途切れた。

 何だかこの星妙に電波が悪い。出撃直後に少し待てと言われた時はぎりぎり聞き取れたけど。

 少し離れるだけでコミュニケーションもまともに取れないとなると、味方を撃つ可能性がある。

 ガンキャノンの色、シャアと同じ赤色だし。

 

「気をつけなきゃ…………っ!」

 

 グッと操縦桿を握り、スラストペダルを思い切り踏む。

 体が椅子に押し付けられ、ガンダムのスピードがさっきの数倍になる。

 ガンダムの操作に慣れないことにはシャアには勝てない。

 シャアはあの緑のザクを赤く塗っただけの機体で私を虐めた。ハンデはシャアにある。

 それなのに私はアイツに勝てなかった。

 

「っつぅう……!ぐっ!!」

 

 星のクレーターに沿って進むだけ。それなのにガンダムの制御ができない。 

 これでも、出力メーターの半分も出していない。このガンダムの本気の半分も出ていないんだ。

 それなのにこのスピード……時速1400kmのスピードを叩き出している。

 

「飛行機以上……まだ出るのこれ……!!?」

 

 更にスラストペダルを踏み込む。コクピットのメーターが3分の2くらいのところまで跳ね上がる。

 それでもガンダム自身にまだ余裕があるように見える。揺れるコクピットの中で速度計を確認する。

 5800km……ざっとマッハ5ってことだろうか。

 

「~~~~~ッッッッッ!!!!」

 

 声が出ない。恐怖を感じた私は操縦桿を思い切り後ろに倒し、ペダルを離す。

 するとガンダムは自動で姿勢を変え、足を前に突き出して仰向けになる。

 勝手に背中と足のジェットを吹かして減速した。

 

「っ!はぁっ……はぁ……!?」

 

 減速して速度を落とした私は、息を整えて前のモニターを見る。そこはちょうど目的地だ。

 コクピット左のタイムリミットはまだ数分以上残されている。

 少々早く来すぎたが、指示を待つなとの連絡だ。

 

「武器は……ビームライフル、ビームサーベル、頭のバルカン砲」

「まずは……安全装置外して、初めの一発を撃てるように……と。これだっけ」

 

 武器を確認し、右手のビームライフルを見る。

 操縦桿のボタンカバーを外し、黄色いボタンを押す。するとビームライフルの中心がピンク色にぼんやりと光った。

 それと同時に操縦桿のグリップの色々なボタンがせり上がり、すべてのボタンを押せるようになった。

 ボタンを押す順番や組み合わせで武器を捨てたり、特殊な動きができるようになる、らしい。

 

「よし。行こっ!!」

 

 ガンダムを上昇させて、クレーターを覗き込む。

 

 

 たしかにブライトさんの説明通りだ。左右にカブトガニ。真ん中に緑の戦艦のようなもの。

 近くには緑のザクが4機。赤いザクはまだ居ない。

 まず狙うのは……青いカブトガニ、パプアだ。

 

「よっ……」

 

 コクピット右後ろの代わった望遠鏡を覗く。これで狙いを定める。

 よくある狙い定めるマークがカブトガニの甲羅を狙う。

 私をそれをよく覗き込んで、発射ボタンを押した。

 

「っ!」

 

 ビームライフルの発射音がコクピットに響き、ピンク色の光が真っすぐ飛んでいった。

 その光は青いカブトガニを貫き、それと同時に爆発の音が遠くから響く。

 パプアの一部が爆発すると同時に、私に向けて銃弾がたくさん飛んできた。

 

「わっ……!!……あれ?」

【敵襲だ!撃て!撃て!】

【駄目だ!太陽を背にしてやがる!何も見えない!】

 

 ザクが一斉にこっちを狙って撃っているようだ。

 しかしその射撃は明らかに私より下手で、じっとしていても当たらない。

 もう一発、いやそれどころじゃない、もう3発はこの場で撃てそうだ。

 

「一気に大爆発させてやる!」

 

 右部分、左部分を狙い、ビームライフルを放つ。

 光の矢が狙ったところを居抜き、爆発に続く爆発を起こした。

 その時、銃弾の一発がガンダムに当たる。

 

「っと」

 

 ガンッ!と鈍い音が響き、攻撃を受けた部分と、攻撃を受けた方向をモニターに小さく表示させる。

 緑色のザクの一機が私に攻撃を当てたようだ。

 それと同時に他のザクも私を見つけ、正確な射撃を行う。

 

「撃ってきた…!盾、こう!」

 

 ガンダムの左手の盾を私の目の前に持っていく。大きな盾でガンダムの殆どの部分をカバーできるものだ。

 盾を構えた状態の視界は良好だが、このままでは撃つことが出来ない。

 私はこのまま急降下し、星の地表部分に着陸する。着陸もまた自動で、これまた便利な機能だ。

 

「ザクは4機……。多い……」

 

 ガンガンっと盾が銃弾を受ける中、ガンダムの首を動かし、右手のビームライフルを腰に取り付ける。

 そして、右手に背中に取り付けられている白い棒状のものを持つ。

 

「でも……」

 

 白い棒状のものを起動させ、私は私自身の記憶が覚えているガンダムの武器。

『ビームサーベル』を起動させた。ピンク色の刀身が現れると同時にザクたちが一瞬たじろいだ。

 ザクはビームサーベルを初めて見るのだろう。そりゃそうだ。私も初めて出したんだから。

 

【なんだ!あの武器は……!】

【連邦軍の格闘兵器……!?】

「動揺してる。今なら!」

【く、来るな!!来るなぁ!!】

 

 スラストペダルを思い切り踏み込み、ザクの集団に向けて突撃する。

 しかしザクはひるんだのか動けない。私は腕を前に突き出しザクに向けてその光の剣を、

 

「っでぇえい!!」

 

 超スピードで突き刺した。

 ビームという高熱はザクの胸を溶かし、まるで肉に包丁を突き立てるような抵抗を見せる。

 しかしあっという間にビームの刃は根本まで入り、サーベルはザクを突き抜ける。

 ザクと衝突した私は事故を起こしたかのような衝撃を受け、ガンダム自身もザクを貫いた状態で停止した。

 

「うっ……!!」

 

 傍から見たらヤクザの下っ端が突撃して敵に包丁を突き立てたかのような絵面だ。

 そんな任侠映画のワンシーンのような体勢を解き、ザクを蹴飛ばしてビームサーベルを抜く。

 他のザクの3機は銃を私に向けたまま動かない。

 

「次は……」

『アムロ!上だ!!!』

 

 突然ハヤト君の声がノイズ混じりに響く。

 とっさに上モニターを見るが遅かった。赤いザクの1つ目が光り、踵落としが炸裂する。

 

「ぐぁ!?っ……」

【どうだ!……これも凌ぐか】

 

 そのままシャアのザクは宙返りし、またしてもコクピットに蹴りを入れる。

 ベルトが締め付けられ、吐き気を催す感覚が私を襲いながら、ガンダムはノックバックする。

 

「うっ……ふぅ……ふぅ……シャア!」

 

 よろめいたガンダムを立たせ、ビームサーベルをシャアに向ける。

 するとシャアのザクは腰に取り付けられていた斧に手をかけ……

 

【甘い!】

「え……?」

 

 ると思ったらそのまま突撃してきた。

 ザクの肩のトゲがコクピットに大きく映し出される。

 こんな棘付きの球体が私に突き刺さったら……死ぬ!

 

「嫌っ!!」

【おおお!!】

「ぐ、ぐぅうう!!??」

 

 とっさに盾を前に出し、シャアのタックルを受け止める。

 シャアは私をそのまま突き上げ、地表に立っていたガンダムを宇宙空間へと誘う。

 

「シ、シャア!」

 

 私はビームサーベルを仕舞い、左側のレバーのボタンを押す。頭部バルカン砲だ。

 シャア相手に銃はまず当たらないだろうが、さっきから近いところに居るシャアと距離を取らないといけない。

 ビシシシッと放たれた銃弾はシャアのザクの左肩に命中し、シャアとの距離が開いた。

 しかしシャアのザクは元気だ。あの左右別の形をしているザクの肩……アレは盾みたいだ。

 

「はぁ……!はぁ……!!」

 

 息が上がる。ただのザクとの戦いでは絶対に感じない死の恐怖。

 色以外はほとんど普通のザクなのに、武器も今日はマシンガンすら持っていないのに。

 何故か私はシャアに勝てない。

 

「ま、負けられないの……私は!」

 

 地上からかなり離れたさっきのクレーターを見る。

 下ではカイさん、ハヤト君、ジョブジョンっていう人、リュウさんのモビルスーツが戦っていた。

 私がここでやられたら、ガンダムですら勝てないシャアが皆のところに行ってしまう。

 ザクのマシンガンで上半身だけにされちゃうガンキャノンやガンタンクは恐らく瞬殺だ。

 

 私は生唾を飲み込み盾も背中に取り付け、丸腰になる。

 シャアは倒せなくても、シャアを皆の所に向かわせない。

 

「パワー全開!!」

 

 いつもの戦術(2回目)を繰り出す。腕を前に突き出し、水平に突撃するあれだ。

 銃も剣も使える腕がないって言うなら一か八か、あの赤いあんちきしょうを……。

 ぶん殴る。

 

【何っ!?ぐぉ!!?】

 

 これで勝つ!シャア・……なんたら!!

 

 

 ★

 

 

「くそ!!」

 

 補給作業中に攻撃を受けた俺は放出されたザクの1機に搭乗していた。

 少佐が専用のザクで出撃し、白い奴を引き離した瞬間、連邦軍のMSが一斉攻撃を仕掛けてきたのだ。

 コクピットを貫かれた僚機、恐らくジョー・クロウだ。JQと呼んでやろうと思ったが、奴は白い奴の光の剣の餌食になった。

 

『ジーン伍長!少佐は!?』

「白い奴の相手だ!コム!お前は補給作業を手伝え!!パプアの残骸から少しでもムサイに積み込め!」

『しかし!ガデム大尉の指示が』

「大尉は戦死した!こうなったらザクも武装も食料も全部積み込むんだよ!」

「りょ、了解!!」

 

 パプア補給艦は白い奴の攻撃を受け、たった数発で撃沈した。

 予めザクを受け取っていなかったらザクごと潰されていただろう。

 もう一隻、ソア・キャノンを積み込んだパプアも、ソア・キャノンのコンテナを排出した時点で連邦のMSに撃沈された。

 キャノン装備のモビルスーツも携行ビーム兵器を所持していた。あっという間に二隻目もやられたのはその所為だろう。

 

 コムもクラウンも優秀なパイロットだ。受け取ったばかりのザク3機は被弾こそしているものの致命傷ではない。

しかしムサイのエンジンの出力が上がらない上に、補給物資の積み込みもまだだ。

このまま砲火の中に晒されてはいずれ全滅する。実戦経験の少ない新兵同然の俺でもそれは分かる。

 

「クラウン!戦車もどきを狙え!俺は―」

『ジーン!ドレンだ!応答しろー!』

 

 突然ファルメル艦長、ドレン少尉から通信が入る。

 返事をする前にドレン艦長は続けた。

 

『前方F-4時点にて木馬と思われる艦艇を発見した、白いモビルスーツの寝ぐらだ、ソア・キャノンを使い撃沈しろ!』

「ソア・キャノンでありますか!?」

『既にメガ砲のジェネレーターからエネルギー供給させている。後は貴様のザクで撃てばいい!』

「しかし、エンジンの出力が上がらない今……」

『なぶり殺されたくなければ抵抗しろ!発射方法は頭に叩き込んであるな!?』

 

 俺はヘルメットの中で静かに下唇を噛んだ。

 ドレン艦長、シャアの腰巾着様は眼下にある現場すら頭に無いようだ。

 確かに艦隊戦の知識は凄まじい。シャア少佐はそれを買って艦長に任命したのだろう。

 しかし今俺達の目の間で行われているのはモビルスーツ戦だ。MBTが切磋琢磨する戦争ではない。

 ビームと砲弾が飛び交う中で目立つ飛行をするのは恐ろしいリスクが伴う。

 

「っ……了解!」

 

 しかし、目の前に正体不明の艦艇が居るというのにメガ粒子砲が撃てない現状、

 受け取ったばかりの試作兵器に頼る艦長の心境も分からないでもない。

 ふと上を見ると少佐のザクは白い奴に腰のパイプを掴まれて宇宙を縦横無尽に引っ張り回されている。

 

「!?」

 

 一瞬目を疑ったが、気を取り直し、目の前に銃口を向けていた赤いキャノン型MSにマシンガンを牽制する。

 赤い奴がひるんだスキを突き、ムサイの側面に設置されている巨大なキャノン砲「ソア・キャノン」に向かう。

 

『ジーン!』

「数分でいい!クラウン、持ちこたえろ!赤い奴と戦車の注意を引け!」

『っ了解!!急げよ!!』

「コム!補給作業は!」

『サルベージはほぼ完了!後は積込みだけです!』

「了解!後は敵を撃退してからだ!クラウンを援護しろ!」

『了解!』

 

 コムがパプアの残骸からバズーカを二丁持ってでいくのを確認した。

 その一丁をクラウンに渡す。あの赤いキャノン型も白い奴と同じ装甲を使用しているとなると、

 やつの装甲はザクマシンガンでは破壊不能。ハイパーライフルも同じく受け付けないだろう。

 俺よりも新兵だと言うのに的確な判断力だ。

 

「リグ接続…腰部エネルギーパイプパージ、ソア・ジェネレーターにパイプ接続……」

 

 発射手順を開始する。連邦のMSパイロットは素人揃いなのか、誰もこちらに目線を向けていない。

 腰の動力パイプをパージし、ジェネレーターのソケットに外したパイプを接続する。

 モニターに照準器が現れ、ムサイから届いたデータを元に射撃諸元の入力を行う。

 

「射撃諸元入力……クソ……これで合ってるのか!」

『伍長!急いで!』

「充電率80…90…!サボット装填!!エネルギー解放!!」

 

 充電率110。撃鉄を起こして照準を合わせた。

 狙うは木馬。未知の艦艇だ。照準は正面、ブリッジより下を狙う。

 発射準備完了……。

 

「ソア・キャノン発射準備完了!!照準よし!」

『了解!撃て!!』

「了解!ソア・キャノン……発射!!」

 

 引き金を引く。

 それと同時にザクのモノアイが強烈な光を発し、全身がスパークする。

 ソア・キャノンの砲身にそのスパークが伝わる。

 

「うっ」

 

 砲身が強烈な光を放つ。

 その瞬間だ。ザクのズームカメラの目の前に赤い板状の物体が見えた。

 白い奴のシールドだ。しかしそれを認識する暇もなく、ソア・キャノンが発射された。

 データ認識されて響く不完全な音と凄まじい衝撃がザクに伝わった。

 

「ぐぅっ!!」

 

 一瞬システムダウンしたのか、すべてのカメラ、センサーが消える。

 しかし間もなくして自動で再起動し、外の映像が再び見えるようになった。

 ザクのパイプは焼き切れ、手足の動作に致命的な不具合が発生している。

 しかしそんな不具合を気にしていられない異常事態が発生していることを認識するのに時間はかからなかった。

 

「あ……あぁ……!」

 

 木馬は生きている……。

 白い奴もだ。信じられない事態だ。奴はあの一瞬でシールドを構え、跳弾させたのだ。

 その証拠として白い奴のシールドは真っ黒に焦げ、端の部分は融解している。

 

『バカな……!?』

「わ……!」

『ジーン!逃げろ!!』

 

 白い奴は、盾を捨て右手のライフルを俺のザクに向ける。

 2つ目が光り、ライフルの銃身からピンク色の光が見えた。

 もう脱出することなど出来ない。手足も動かず、動力パイプが焼ききれているせいでスラスターも動かない。

 

「シャア少佐!ドレン少尉!!助けてください!!!死……」

『ジーン!!』

 

 腰部動力パイプを損傷した少佐のザクが白い奴に突撃する。

 一瞬照準がぶれたが、奴のライフルが俺のザクに向けて発射された。

 目の前がピンク色に染まる。

 

「あ……あぁああーーーーー!!!!!!!!」

 

 コクピットの光が消え、コンソールや操縦桿、あちこちが爆発する。 

 その光景を最後に、俺の目の前は真っ暗になった。

 

 

 

 

 ★

 

 

 

「はぁ……!はぁ……!!」

 

 今の感じは何だったんだろう。

 シャアを引っ張り回してボコボコに殴っている間、

 一瞬嫌な予感がしてホワイトベースの目の前で盾を構えた。

 

「今の……何?」

 

 その瞬間、信じられないような衝撃が走り、意識が飛んだ。 

 そこからは完全に無意識だ。ぼーっとしているのにも関わらず盾を捨て、

 目の前、かなり遠い位置にあるザクに向けてビームライフルを撃ったのだ。

 シャアのザクが邪魔して壊れはしなかったが、あのザクが構えていたでっかい大砲をぶっ壊した。

 

「……私がやったんじゃない……今の何……?」

 

 操縦桿を握り、私は呆然とする。

 ガンキャノンとガンタンクたちは弾が切れたのか何もしなくなっていた。

 目の前の戦艦はエンジンを始動させ、壊れたザクとちょっとだけの荷物を持った生き残りのザクたちが戦艦に入っていく。

 シャアのザクもいつの間にかいなくなっていた。

 

「私も……生きてる?」

『アムロ!聞こえるか!補給艦の破壊に成功した。帰還してくれ!』

 

 ブライトさんの声がノイズ混じりに響く。

 私は自分でも違和感を感じるほど細い声で「はい」と返事をした。

 

「あ……ブライトさん……荷物は?」

『シャアは十分な補給が得られず、ザクだけ受領して去っていった、シャアの撃破には失敗したが作戦成功だ』

「そう……はぁ……良かった……」

 

 私はコクピットの中で深い溜め息をつき、操縦桿から手を離してシートにもたれかかる。

 またしても死ぬところだったけど、また生き残ることに成功した。

 それに何を食らったのか知らないけど、ホワイトベースの皆も守れた。

 

『ようアムロ、俺達の活躍見たかよ?ムサイに数発当てて補給艦をぶっ潰したんだぜ?』

「カイさん……ええ。見てました、すごかったですよ!」

『ニヒヒっ初陣で大金星ってトコだな』

『カイさん、調子に乗りすぎですよ!ほとんどジョブさんとリュウさん達の戦果じゃないですか』

『っせぇ!言ったもん勝ちなんだよこういうのは!』

 

 通信モニターにカイさん、そしてハヤト君の顔が表示される。

 それにリュウさん、ジョブ・ジョンさんの顔……それと、もう一人……この人だれだっけ?

 とにかく皆無事みたいだ。

 

「皆無事ですね?良かった……」

『へへ、アムロちゃんのご活躍も照覧いたしましてよ』

「カイさんも、すごかったです」

『ニャハハっ。おだてるのがお上手ですな。アムロ嬢』

 

 カイさんは意地の悪い笑いを見せて通信を切った。

 私も通信を切り、ガンダムをホワイトベースへと向ける。

 盾を壊しちゃった。父さんに怒られないか心配だ……。

 

「……それと……」

 

 うん、こっちは大丈夫みたいだ。シャア相手によく戦えたと思う。

 

「さっさと帰って寝よ……」

 

 私はガンダムをホワイトベースに入れ、元の場所に戻した。

 

 

 

 ★

 

 

「ジーンの容態はどうだ」

「重傷です、病院船に搬送しますか?」

 

 メガ粒子の直撃こそ避けられたものの、ザクは大破。ソア・キャノンも完全に破壊された。

 パイロットのジーンももはや五体満足の終戦は不可能なほどの傷を負わせた。

 更に補給艦2隻を撃沈。物資の搬入もままならないまま撤退を余儀なくされる。 

 ここまでの大敗は私の人生でも1度2度とないものだ。

 

「付近の補給艦は」

「木馬より大幅に離れますが1隻、地球衛星軌道上に進めば合流可能です」

「よし。そこでジーンを下ろし、改めて補給を受ける。追跡班。木馬の進路はどうか!」

「はっ、小惑星ルナツーに停泊したものと思われます、恐らく補給を受け、地球へ降下するものかと」

 

 私は頷き、今後の木馬追跡のプランを考える。

 現状S型ザクを一機大破させ、私のザクも損傷している状態で攻撃を仕掛けるのは無謀だ。

 ルナツーの進軍は諦めるべきだろう。白兵戦を行うにもモビルスーツに対する対抗手段がない。

 対モビルスーツ訓練を受けていないコムとクラウンではあまりにも力不足だ。

 

「よし、本艦はこのまま地球衛星軌道上へ向かい、補給を受ける」

「了解、進路設定急げ!」

「木馬襲撃は奴らの地球降下タイミングを狙う、攻撃隊は待機。整備班、残されたガトルのペイロードに7日分の増槽を装備させろ」

 

 木馬と白い奴、次こそは必ず仕留める。

 

「少佐」

「どうした、フリーベリ二等兵」

「ジーン伍長は……この後どうなるのでしょうか?」

「ん、容態を見るに恐らく両足は切断。その後は本人の意志だ」

「……五体満足での本国帰還は……」

「無理だろう。むしろメガ粒子砲の直撃を受けて生きているのが奇跡だよ」

 

 若干16歳で志願した女性オペレーター。

 彼女は次の補給時の人員移動ででこの船を下ろす予定だ。

 指折りの精鋭部隊に新兵を数人入れることで練度向上を図る予定であったが、この現状ではいたずらに兵を死なせるだけだ。若い彼女らをファルメルに乗せるには余りにも危険すぎる。

 

「そうですか……」

「君も、次の補給艦の合流時点で降りるのだろう?」

「は、はい。前線より離れますが、地球降下部隊の一人として邁進する予定です……」

「そうか、配属先は?」

「地球攻撃軍第四地上歩兵師団……えっと、第7モビルスーツ大隊F小隊です」

「F小隊ならば偵察任務や戦闘後の捜索が主だろう」

「だと、いいんですけど……」

 

 私は肩をすぼめて怯えた様子で居る彼女の肩を叩く。

 オペレート能力に関しては非常に優秀だが、彼女はいかんせん臆病だ。

 F小隊の隊長にはその旨を伝えておきたいところだ。

 

「君は優秀だ。アン・フリーベリ。自信を持つといい」

「は、はい……ありがとうございます……シャア少佐」

「フ……ドレン、私は少し休む。後を頼むぞ」

「了解です……そこの二等兵!いつまでもくっちゃべってないで進路監視しろ!」

「は、はい!!」

 

 私はヘルメットとマスクを取り、艦長室へと向かう。

 あの白いモビルスーツを奪取するのも優先事項だが、木馬の人員についても把握しなければならない。

 ……あのアルテイシアに似た女兵士……そして、私を知っていた白いモビルスーツのパイロット。

 

「ちぃ……」

 

 特に顔も知らぬ白いモビルスーツのパイロットだ。女の声で私の名を叫び、モビルスーツで殴りかかった。

 あれはジオン兵を排除する殴り方ではなかった、まるで仇敵を殺すかのような殺意のこもった拳だ。

 ……ザビ家の関係者か、アズナブル家の子息の関係者か……。どちらにせよ厄介な相手だ。

 

「……」

 

 手元の端末のアルバムからアルテイシアの小さい頃の写真を呼び出す。

 ……ザビ家への復讐が終わったとしても、アルテイシアには会えない。

 せめて今は無事で居ることを祈るしかなかった。

 




今回のアムロの行動の結果

・ハヤト、アムロに不信感を覚える。
・ガデム、戦うことなく戦死、補給物資の大半を損失
・シャア専用ザク損傷、ルナツー襲撃断念。
・ソア・キャノン試作品大破、ジェイキュー戦死。
・ジーン負傷、負傷兵として離脱。
・シャア、アムロへの警戒心増大。

以上の結果となりました。







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