女だけどアムロ(女)になったから頑張って一年戦争する   作:めんつる
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寒い時代

『Aパーツ分離、内部点検入れ!』

『腕部関節重点的にチェックしろよ!』

『プロムトーチ、ルナ合金溶解終了、破損箇所はどこです?』

 

 ガンダムの整備の人たちがガンダムをエッチラオッチラと整備している。

 その中心人物は父さんだ。作業用のツナギみたいな服を着て作業員に指示を出している。

 私はそれを見ながらあまり美味しくないスポーツドリンクみたいなものを飲んでいる。

 冗談抜きで本当に微妙な味だ。体には良さそうだけど。

 

「……」

 

 父さんたちがビームライフルを楽しそうに分解している姿を見ながら私は考える。

 さっきの意味不明な動きのことだ。あの時私は完全に無意識だった。

 頭の中で一瞬光のようなものが見えたと思ったら全ての動きがスローに見えた。

 あのザクがでっかいものでホワイトベースを狙っている姿。

 シャアが私を振り解き、斧を振る姿。それらがすべてゆっくりとコマ送りのように見えた。

 

「あれは……うーん」

 

 何だろう。アドレナリンとか、何とか?

 

「アムロ」

「ん?」

 

 そんな分かるわけもない思考に耽っていると、金髪の女の人……セイラさんが来た。

 相変わらずフワッとした金髪だ……。ピンクの制服が妙に似合う。

 多分似合うのこの人くらいだろうな……フラウはもはやあれ制服に見えないし。

 ちょっと可愛い感じにしたんだっけ?あれ。

 

「見事な働きだったわ」

「セイラさん……でしたっけ?」

 

 金髪の女性、セイラさんは微笑みながら私の隣に立った。

 

「ええ。セイラ・マス、ホワイトベースのオペレーターになったの」

「そうなんですか?」

 

 オペレーター……って言うとあれだ。通信する人だ。

 今回の戦闘ではえらく電波が悪くてほとんど通信が聞こえなかったが。

 

「でも、通信なんか聞こえませんでしたよ?」

「次からは聞こえるようになるわ、今回の戦闘はミノフスキー粒子が異常に濃くて、通信設備も初期状態のままだったのよ」

 

 ……??

 みの、なんとかが凄くて、通信機が初期状態?

 つまりあれか、初期不良ってこと?

 

「へぇ……でも次からは聞こえるんですよね?」

「保証するわ」

 

 セイラさんはキリッとした顔で私に言う。

 思わず「おぉぅ」と呟いてしまうほどのキリッ感だ。

 何だろう、この人軍人さん上がりか何か?

 

「ところで、セイラさんはコロニーでは何してたんです?警察とか?」

「いいえ、医療ボランティアとして。サイド7のクロス医療センターで働いてたの」

「ボランティア?タダ働きってことですか?……いくつ?」

「17よ、あなたは?」

「……」

 

 え?え?アムロいくつ?えっと記憶を……。子供で、宇宙世紀……宇宙世紀って何!?

 まぁいいや、えっととにかく私は……15歳……15歳!?

 

「あ、15です!15!」

「?……そう、若いのね?」

「よく、言われます、えへへ……」

「……こんな子が……」

 

 アムロ子供じゃん……。いや子供が戦うからロボットアニメの主人公なんだろうけどさ。

 えー……15歳の子供に戦わせてんの?ブライトさん、と寝込んでる艦長さん……。見境なしじゃない…色々と…。

 

 そうやって色んな意味で大人にドン引きしていると、セイラさんはガンダムを見て物憂げな顔をした。

 

「……セイラさん?」

「え?あ、あぁ。ごめんなさい」

「いえ、良いですけど……あぁ、そうだ。サイド7に来る前は何処に?生まれも育ちもサイド7?」

「え?それは……」

 

 サイド7。今更ながら私が暮らしてた場所だ。あのコロニーの名前らしい。

 サイド1とか、サイド2とかもあるんだろう。多分。

 私がそれを尋ねると、セイラさんはピクッと反応し、考える。

 青い目か……。あっちこっちで色んな目の人がいてもう色なんて気にしてないけど、綺麗な色の目だなぁ……。

 

「んー……ちょっと伏せておきたい過去なのよ……ごめんなさいね」

「?……失恋でもしたんですか?」

「それも伏せさせて欲しいわ……失恋はしてないけれどねっ」

 

 セイラさんは私のおでこを指で弾き、ながら私に答える。

 まぁ、素性を明かしたくない人も居るだろうし、深く追究しない方がいいか。

 

「……そういえばこの船、軍の基地に行くんでしたっけ?」

「ええ。一旦ルナツーって言う基地に入港して、そこで避難民を下ろすらしいわ」

「避難民……」

 

 そうだ。このホワイトベースには少数ながら避難してきた人も乗っているんだ。

 少数って言っても1~2世帯とかそんなレベルではなく、学校の一クラス分は乗っているらしい。

 その避難民には孤児となってしまった子供達も居るとか……。

 

「私達はその避難民に含まれないでしょうけどね」

 

 セイラさんは自分の制服を見ながらそう言う。

 

「軍人……ですか」

「嫌?」

「いいえ」

 

 私は首を振った。手に持ったノーマルスーツのヘルメットに映る私の顔を見る。

 見知ったアムロの顔の面影を残した女の子の顔だ。歌手のアムロでもなければ名探偵のアムロでもない。

 私は女だけどアムロだ。ガンダムのアムロなんだ。

 

「ガンダムのパイロットは私ですから」

 

 それに、主人公だし。

 

「……強いのね、あなたは」

「セイラさんも」

「私が?」

「敵の兵士と生身で戦うなんて、普通できませんよ」

 

 私がそう言うと、セイラさんが一瞬驚いたような顔をした。

 それを見て私が微笑むと、セイラさんも微笑む。

 

「アムロ、死なないでね。ジオンに負けないで」

「はい」

 

 ……じおんってちょこちょこ聞くけど、敵の軍のことかな?これも覚えないと。

 

『ブライトからアムロ・レイへ。至急ブリッジへ、繰り返す』

「あら、お呼びみたいね」

「ホントだ……ちょっと行ってきます」

 

 

 

 ★

 

 

 

「来たか」

「来ました!」

 

 ノーマルスーツを脱ぎ、制服姿となったアムロは素人の敬礼をする。

 緊張しているのか、目の焦点が合っていない。

 僕は高い位置でルナツーとの進路を監視しながらブライトさんとの会話を聞く。

 

「ザクの奇襲に対する反応、見事だった」

「は、はい!ありがとうございま」

「しかし、ガンダムの扱いをもっと上手にやってもらわなければ困る」

「す……?」

 

 ブライトさんはアムロに対して厳しい言葉を浴びせる。

 しかしこれはアムロを奮い立たせるためだと言っていた。独り言で。

 どうやらブライトさん、女を叱るのは慣れていないらしい。

 影でフラウ・ボゥという避難民の女の子にアドバイスを貰っていたのを見た。

 

「は、はぃ?」

「君がシャアを上手く引きつけていれば、あのザクの迎撃に回せた、という事だ」

 

 アムロはいまいちよく分かっていないらしい。

 敬礼をしたまま首を傾げている。

 

「え、えっと……私が下手っぴって事ですか?」

「そうだ。アムロ、君はもうガンダムのパイロットなんだよ!」

「は、はい、それは、分かってますけど……でも……」

「甘ったれるな!!」

「ひっ!?」

 

 ブライトさんがアムロを怒鳴りつける。かなり鋭い声だ。

 

「君にはホワイトベースを守る義務がある!それが現状だ!!」

「……」

「乗組員もパイロットも不足している今、実戦経験が豊富な君が戦場を仕切らなければならない!!戦闘の第一人者である君がそれを分からなくてどうする!」

 

 避難民がたまたまパイロットになった彼女にそれは無茶だ。

 ブライトさんもアムロが来る直前まで頭を抱えていた。アムロの役目を別のパイロットに任せるべきか、 

 それともアムロを奮い立たせ、無理を言ってでもホワイトベースと試作兵器を守る役を任せるか。

 パオロ艦長やレイ大尉どころか、僕とマーカーにも相談してきた程だ。

 

「ぶ、ブライトさん……でも私はっ」

「君とて必死にやっているのは分かる、だがこのままではホワイトベースを守るのは無理だ」

「……」

「シャアは待ってくれないんだ。分かってくれ」

 

 アムロは俯く。歯を食いしばる様子もなく、ただ俯いている。

 

「ぶ、ブライトさん!」

 

 ミライさんが舵を取りながらブライトさんを叱るように声を掛ける。

 

「何だ」

「それじゃアムロをただ罵倒しているだけじゃない!」

「っ……素人は黙っていてくれ!女だからといって甘やかすわけには」

「それはそうよ!でもそんな言い方じゃ。たとえ男の子でも……」

「ここは軍隊だ!学校じゃない!」

 

 マーカーがこちらを見た。僕は両腕を広げ、肩を少し上げる。

 マーカーも同じ反応だ。これは明らかに失敗だ。奮い立たせるどころかアムロの自信を失わせるだけ。

 アメとムチの使い方が下手なんだよ。ブライトは。

 

「……憎んでくれていいよ。だが」

「……!!」

 

 突然パシン!と乾いた音がした。

 アムロが、ブライトを殴った。

 左頬を腫らしてのけぞるブライトをアムロは目に涙を溜めて睨みつける。

 

「っ……!」

「……何が……気に入らないってのよ!!」

「……貴様……!」

「アンタじゃ動かせないくせに!!」

 

 歯を食いしばり、思わず手を上げるブライトをアムロはもう一発殴る。

 今度は右の頬に平手をぶつけた。ギリギリと歯を食いしばる音が聞こえる。

 アムロちゃん、本気で殴ったな。

 

「ガンダムは私が乗るのよ…!!」

「……アムロ!貴様!」

「じゃあ強くなってやるわよ!!馬鹿!!!!」

 

 そう吐き捨て、アムロは部屋を去っていった。

 

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

 

 数粒の涙が浮かぶブリッジは、息をするのも嫌になるくらい静かだった。

 

「……あ、あー!ブライトさん、ルナツーが見えました」

「……~~~……」

 

 話題を変えようと僕はレーダーに表示されたルナツーを手前のモニターに出す。

 それを見たブライトさんは、咳払いをして艦長椅子に座った。

 しかしブライトさんはあからさまに不機嫌で、頭を掻いている。

 

「女のヒステリーってのは、扱い難い……!」

「感傷的な子なのよ、15歳っていうのは」

「ミライ、それを教えてほしかったな……おかげで二度もぶたれた」

「あら、ごめんあそばせ。でもいい経験でしょう?」

「……二度とごめんだ」 

 

 ミライさんがブライトさんの愚痴を聞く。

 まぁ……結果はどうあれアムロが奮い立ったのは良いことだろう。

 そう考えよう。

 

「オスカ、ルナツーに着陸許可を」

「了解です!」

 

 僕は少しため息をつき、ルナツーの着陸管制に連絡をとった。 

 

 

 ★

 

 

 

「……!!……!!」

 

 怒りが収まらない。廊下をフヨフヨ浮かぶハロをぶん投げ、

 小さい子供三人組の緑の服を着た子にぶつけてしまった。

 が、私は謝らない。泣きそうになった子も私の顔を見て泣き止んでしまった。

 

 本当に腹が立つ。命がけで守ったと言うのにあの言い方だ。

 あの恩知らずの白目なし、今度はどうしてくれようか。

 

「あ、アムロ……どうしたの?」

「フラウ……ごめん、なんでもない……何?」

「い、いや、ほらこれ、洗濯したから」

 

 フラウは私の顔を見て少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。

 そして私にあの時汚した私服を渡す。

 

「あ、うん。ありがと」

「……ブライトさんに怒られたの?」

「そんなんじゃない!あいつ……私が必死で……!」

「……」

「私が……!!っ……ぅ……」

 

 収まらない怒りと理不尽さが涙となって体から抜けていく。

 私はフラウの胸を借り、その怒りと理不尽さを吐き出した。

 さっきハロをぶつけた3人組が影からそれを見つめている。

 ハロもまた、私の近くをフヨフヨと浮かび、何か言っている。

 

 私はそれでも泣き続けた。こんな時、本当のアムロならどうするんだろう。

 きっと私みたいな真似はせず、真摯に受け止めていたはずだ。

 

 

 

 

「アムロ……」

「分かってる……でも……」

「ううん、アムロ、今は辛い事忘れましょ?」

「……」

 

 フラウは私の背中を擦りながらそう言う。

 もはや優しい親友というよりも、お母さんの粋に達している。

 目頭がまだ熱い。歯を食いしばるとまだまだ涙が出る。

 

 そんな時、廊下から誰かがやってきた。青い制服で長身。

 カイさんだ。

 

「おやおやアムロちゃんとフラ…………どした?」

「カイさん、今アムロは……」

「……なんかあったのかよ?」

 

 カイさんが私の近くに立ち、不審な顔で私の顔を覗き込む。

 

「……泣いてんのか?」

「……」

「誰にやられた?リュウさんか?それともハヤトに何か言われたのか?」

「……いえ……誰も悪くないです……私が未熟なせいで……」

 

 私は答える。フラウは事の経緯を軽く説明した。

 

 フラウいわく、ブライトさんの叱責はブライトさんもかなり思い悩んでいたらしく、フラウにも相談していたらしい。私をガンダムから下ろして安全に暮らさせるか、それとも私の意志を尊重してガンダムに引き続き乗せるか、どちらにせよこんな悩みを抱えさせたのは私がシャアに勝てない未熟者だからだ。

 

 しかもそんなブライトさんの苦悩も知らず、感情のままにブライトさんを殴るなんて。

 

「……ブライトってあいつか?」

「そう、ブライトさんも悩んでたらしいけど……」

「そうか……アムロ、お前はガンダムに乗りたいんだろ?」

「……」

 

 私は頷く。

 

「俺は、なんだ。その、当事者じゃねぇからよく分からないけどよ」

 

 カイさんは頭をコリコリとかきながら続ける。

 

「乗りたいなら、へこたれずにガンバったらいいんじゃねぇの?俺も頑張ってるけど、アンタの親父さんに叱られっぱなしだったぜ?シミュレーションとか、戦いが終わってもサ」

「……はい」

「……まぁ、なんだ。俺達もこれからはパイロットだからさ、訓練ならいくらでも付き合うぜ?俺が嫌ならリュウさんやジョブさん、それにハヤトも居るじゃねぇの。強くなってブライトを見返してやりゃあそのモヤモヤもスッキリするだろ?な?それにブライトも、お前が死んじまったらたまんねぇから、そう言ったんだよ。死んだらなんにもならねぇんだからよ」

 

 カイさんとはちょっとしか面識がないが、アムロの記憶ではかなり嫌な人だった。

 しかし、今のカイさんはそんな嫌な感じは一切出ていない。むしろ年上のお兄さんとすら思える。

 肩をポンポンと叩き、照れくさそうに言葉をかけてくれている。

 

「それでフラウ、アムロ、ブライトに何したって?」

「……両頬をぶったそうよ?」

「うひゃ……」

 

 叱られたからって逆ギレするのはよくない。自分自身にそう言い聞かせた。

 

 

 

 

 ●

 

 

 

 

 そんな出来事があってから数時間が過ぎただろうか。

 ホワイトベースがルナツー、という所に降りたらしい。

 私はブライトさんの艦内放送を聞き、ホワイトベースを降りた。

 

 そこは何とも無機質な空間で、あちこちで何かを叫ぶような声が聞こえる。

 叫ぶ、と言ってもホラー的なあれではなく、指示する声が響くような感じだ。

 

「アムロ、整列だ、姿勢を正すんだ」

「あ……ブライトさん……あの……」

「おかげで色男になれたよ。君は良いのか?」

「はい……ごめんなさい……ブライトさん」

「過ぎたことだ。強くなってくれるなら言うことはないよ」

「……はい」

 

 両頬を腫らしたブライトさんが何故か隣に立つ。

 別にあてつけというわけではなく、Amuro、Brightの順に並ぶとこうなるらしい。

 でもちょうど良かった。隣り合って話すことが出来たし、謝ることも出来た。

 許してくれるといいけど……。

 

「……」

「……」

 

 で、並んだのは良いが、このルナツーの係員さんはいつになったら来るのだろうか。

 待てど暮らせど来ない。

 

「遅いですね……」

「あぁ」

 

 それに見回した所、父さんもいない。

 何処に行ったんだろうか。

 

『……!……!!……困ります!G-3は今後の研究のためにジャブローへ!』

『無理だと言った!ガンダムは君の玩具ではない!君はすぐにセカンドロットのガンダム開発に着手するべきではないかね!?』

『しかしG-3はまだ2号機と大差ない性能でまだ改修が!!』

『G-3の改装は我々ルナツー基地が請け負うと言っている!』

 

 いた。帽子を被った偉い人に青筋を立てて怒鳴りつけている。

 ジースリーって、確かあのバラされている灰色のガンダムだっけ?

 なんで普通にガンダム3号機って言わないんだろう?

 

「積み下ろし急げ!レイ主任!いい加減にしなければ反逆罪で拘束しますぞ!」

「横暴だ!……く……現場を知らん連中はいつもこうだ……!」

 

 父さんは地団駄を踏み、ブライトさんの前に立つ。

 しばらくして、ホワイトベースのハッチが開き、でっかいトレーラーが入っていった。

 

「G-3の引き渡しを条件に避難民の収容と補給を受けられるそうだ……パオロ艦長もここで治療を受けるらしい」

「そ、そうですか……レイ主任、ご苦労さまです」

 

 避難民とガンダムを天秤にした結果があのゴネっぷりなの……?父さん。

 

「しかし、G-3の改装プランを把握していない連中にこれをやらせるわけには……M.Cプランの完成を前提とした改修だと言うのに!!そもそも既存のガンダムすらまだ完全と言えない、フルアーマー装備にハイモビリティパック。Gダッシュ装備の計画にも着手しなければならないのに!!そもそもだ。こんな辺境の基地では全天周囲モニターの完成すら怪しいではないか!!まだレッドウォーリア計画の方が将来性がある!!」

 

 何だか激昂しているが何言ってるかわからない。

 つまりは、何が何でもガンダムを自分のものにしたいということだろう。

 手塩かけて作り上げたものを取られるのが嫌だっていうのは分かるけど、大の大人が……。

 

「ええい!納得いかん!!アムロ!来なさい!お前の操縦技術で無能共を黙らせる!」

「え!?ちょ、やめてよ!何で私まで!?」

「いいから来なさい!私達のガンダムを取られてもいいのか!」

「決定事項でしょ!?スポーツ漫画じゃあるまいし私云々の問題じゃないって!!可能性0だってば!」

「0にかけるんだよ!」

「0に何かけても0だってば!分かってよ父さん!ちょ……!誰か止めてぇ!!!」 

 

 襟首を捕まれ、父さんに引きずられる。

 嗚呼、これから父さんの力説を隣で聞いて私も同罪か……。

 

 

 ★

 

 

「……」

「……」

「……で、では、ホワイトベースクルー諸君。私がこの基地の司令官、ワッケイン少将です」

「は……はぁ……」

 

 レイ主任は自分の作品に対して異常なこだわりを持つと聞くが、これ程とは。

 普段は一般的な科学者だが、ガンダムの話になると途端にマッドサイエンティストとなる。

 娘想いとガンダムに対する愛が混ざり合い、今の主任は最早誰にも止められない。

 

 遠くでレイ主任の怒鳴り声とアムロの悲鳴が木霊する中、ワッケイン司令は続ける。

 

「あなた方は、本基地での補給作業の後、ジャブローへと向かっていただきます」

「ワッケイン司令……しかし、素人の我々だけでジャブローへ向かうのは厳しいのでは……」

「……現状、我々にも余剰戦力が無い。サイド7が襲撃された今、ルナツーは宇宙での最終防衛ラインだ」

 

 それは分かる、人員も物資も足りない今、ホワイトベースを素人に任せるのは無謀ではないか。

 ジャブローに直行するとは言え、道中何度シャアに襲われるかわかったものではない。

 それに相手は赤い彗星だ。

 

「避難民の収容だけでもいっぱいいっぱいなんだよ、今は……G-3の改修だって、本来ならばジャブローの仕事だと言うのに」

「……」

「……ブライト君。サラミスを道中の護衛につける。我々に出来るのはこれだけだ……本当に申し訳ないと思う」

 

 ワッケイン司令は目を伏せ、俺の肩を叩く。

 地上も宇宙もジオンの占領下にある現状ではこれが限界。

 そう自分を納得させるしかない。連邦軍の敗戦色が濃くなっている今、サラミス一隻を護衛に回してもらえるだけでも有り難いというのか。

 

「畜生、何が「ジオンに兵無し」だ……!」

「今の毒は、空耳として聞き流そう。私も同意見だからね、補給作業の間、束の間だが休息をとってくれたまえ」

「はっ」

「……この寒い時代、何時まで続くものか……」

 

 ワッケイン司令のつぶやきが妙に身に沁みた。

 俺は敬礼の号令をかけ、全員がワッケイン司令に敬礼する。

 そして、案内されたクルー待機室に入り、補給作業の終了を待つことにした。

 

 

 

 

 

「寒い時代、か」

 

 アムロにひっぱたかれた頬を擦り、天井に呟く。

 全くの素人である少女に戦わせた挙げ句、その少女を叱責する自分を思い出す。

 

(俺も寒い時代の人間……か)

 

 

 

『父さんもういいでしょ!?諦めてよ!!』

 

『いやまだだ!まだ基地司令官に掛け合っていない!』

 

『威嚇射撃までされたの分かってる!?止まってぇ!止めてぇ!!』

 

 

 

 レイ主任とアムロの熱い声を聞きながら、俺は少しの間目を閉じた。

 

 




今回のアムロの行動の結果

・アムロ、ブライトを2度もぶった
・G-3ガンダム、ルナツーに無傷で積み下ろす
・ホワイトベース内避難民、全員下船

以上の結果となりました。







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