ゲーム実況が好きな男がTS転生して配信者する話。

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最近増えてるので便乗しました。


その1

 俺はゲーム実況が大好きだ。

 子供の頃、貧乏だった俺はゲームを買う事が出来ず、ゲームをやりたいという欲をゲーム実況で満たしていた。

 

 楽しそうに、けれども時には暴言を吐き出し感情のままゲーム実況をする実況者に憧れていた。俺も、いつかゲーム実況がしたいと。

 

 そして大人になった俺は、環境を整えさぁゲーム実況を始めるぞと意気込んでいた……のだが。

 

「まさか、ゲーム実況を始めるその日にトラックに轢かれて死んで、そのまま女の子に生まれ変わるなんて思いもしなかったなぁ」

 

 前世と比べ、高くなった声に低くなった背、そして前世であった『ナニ』が存在せず、前世でなかった『おっぱい』が存在するという現実。

 

 俗に言う、トラック転生という物を俺は経験して、俺は前世とは違う性別、女へと生まれ変わったのだ。

 

 それからあれよあれよと16年の月日が流れ、今は花の女子高生というやつをやっている。

 今、改めて過去の記憶を思い返すと前世の俺が生きてた頃、小説投稿サイトではTSしてゲーム実況とかいう謎のジャンルが流行っていたなぁ……。

 

 なんて事、この日の為に買ったゲーミングPCを見て思いを馳せる。

 

「ついに……ついにだ、ゲーム実況者としての人生が始まる」

 

 前世と合わせ、40年目にしてついに、俺は、私はゲーム実況を始める事ができる。

 思えばとても長い道のりだった。今世は前世と違いそれなりに裕福な家庭ではあったが、それなりに厳しい古風な両親なのでパソコンやゲーム機を買ってもらうのにとても、とても苦労した。

 だが買ってもらえば私の天下の始まりだ。

 

「ソフトは……問題なし。キャプボも大丈夫」

 

 機材を一通り確認し、問題が無いことを確認すると高鳴る胸を押さえながら配信を始める準備をする。

 

 動画投稿サイト、『ニッカリ動画』

 昔は人気をはくした大手動画投稿サイトだったけど、今では他のサイトに視聴者を取られ悲惨な過疎サイト。

 ランキングにはホモビデオをネタにした動画しかないぐらいに終わっている所だけど、前世でよく見ていたサイトに似ていたのでここで配信する事を選んだ。

 

 ついに、幕を開けるのだ。ゲーム実況者としての人生が。

 その事実に胸が震える。

 

 PCの画面に表示されている配信開始ボタン。それを恐る恐る、噛み締めるように私はクリックした

 

「あー……あー……聞こえますか?」

 

 なんて事を呟いてしまうが、無名の配信者がいきなり配信を始めた所で人が来ているはずもなく、呟いてからやらかした。と思い顔が赤くなるのを感じる。

 

「なーんて言った所で私以外いないんですけどね! あはは……ん、あれ? いるっ! 七人いる! 閲覧七名様いらっしゃい!! こんな所にわざわざお越しいただきありがとうございます!」

 

 画面に表示される閲覧七名の文字に心が高鳴る。

 初めての配信、初めての視聴者に気分が高揚し、テンションが上がる。

 

『はじめまして、声かわいいですね』『こんな過疎サイトに新しい生主とか珍しいな』『顔出ししろ』

 

「わぁ、一気にコメントが……ふふん、声かわいいでしょう? そんなかわいい声の私がこの過疎サイト、ニッカリ動画の救世主になろうと思いやって参りました。後は顔は出しません。ゲームだけ見に来てくださいね」

 

 そしてコメントも貰い、ついに気分は最初からクライマックスなぐらいに上がっていく。

 

『なにをやるんですか?』『イキってるな』『声的に若そう』

 

「なにをやるんですか? そうですね、流行りに乗ってバトロワ系とかやって行こうかなと思ったんです……が、やっぱり初めての放送なので自分がやりたいゲームをやろうと思います。それにバトロワ系はあまり得意じゃありませんからね……と、そんなわけで、初回のゲームはこちら!」

 

 画面に映るのは『ペケットモンスター』と呼ばれているどこかパチモノ感があるゲーム。この世界ではそれこそ前世のポ〇モン並に人気があるゲームであり、今回プレイするのは初代。

 

『なっつ。しかも赤バージョンじゃん』『青版にしろ』『最新作でレート戦やれ』『ペケセン縛れ』

 

「ペケセン縛れ……ペケセンは縛りません。ですが普通にやる気はありませんよ? だって普通にやるとつまらないじゃないですか……と、コメントでも書いてある通りペケモン初代は色々バージョンがあるんですよね。赤、青、橙、緑……私は赤しかやった事ないんですけど、他のバージョンもやりたいじゃないですか。でも、時間が無いと難しい……な、の、で! 一気にクリアする方法を考えました!」

 

『話長い』『はよやれ』『つかどうやるつもり?』

 

 

 私は、ただの女生主として終わるつもりはない。ゲーム実況者として大成したい。

 だからこそ、私は前世で有名だった実況者達を模範し────駆け上がる。

 

 

「この一本のコントローラーを使って、ペケモン4画面同時にプレイしてクリアしたいと思います!」

 

『は?』『!?』『どういう事!?』『期待の新人現る』

 

 そんな、画面に映る四つのペケモンと共に、視聴者達の困惑した様子をコメント越しに感じる。

 そりゃそうだ、一本のコントローラーで4本のゲームを同時にプレイなんて正気の沙汰じゃない。でも、前世ではそれをやった実況者がいた。

 

 私は、ただの萌え声生主で終わる気なんてサラサラないし女である事を武器にする気もあまりない。

 

 単純に私は、ゲームが、配信が大好きだ。だからこそ、だからこそ────

 

 

「さぁて、猫被りは終わりだ。おいテメェらに見せてやるよ、私がそんじょそこらにいる投げ銭目当ての女生主じゃなくて、ゲームが大好きな実況者だって事をなぁ!」

 

 クソみたいな女生主共とは違い、ゲーム実況者としてトップを取ることをこの日、私は誓ったのだった。




気が向いたら続きます。個人的にゲームに命かけてる配信者が好きです。


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